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第2章 邂逅
第16話 テスタメント……
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――ズガァァアン!
アポカリプスを併用した背負い投げにより、地下に轟音が鳴り響く。
地震ともいえる揺れと衝撃により、舞い上がる噴煙。
その凄まじさは、圧倒的な破壊力を証明している。
だが……
(……投げる寸前に、引手が切られた)
自分の手を見ながら、感触を思い出す。
腰には乗せていたので、すぐにいつも通りの両手背負いから片手背負いに切り替えたが、ある程度はダメージが軽減されているだろう。
とは言っても、重力を操るアポカリプスを併用した、片手とはいえ、一撃必殺の背負い投げ。
落ちる姿勢をある程度コントロールされたとは思うが、かなりのダメージのはずだ。
「ぐっ……」
噴煙が晴れ、中から現れるスコール。
やはりかなりのダメージのようで、腰から外した刀を杖に、なんとか起き上がろうとしているという状態だ。
そして、スコールが驚異じゃなくなった瞬間に、周りが騒めきだす。
「さ、さすが魔王様の力を受け継いだ者だ!」
「人間如きなどと言って失礼しました! あなたこそが新たな魔王様だ!」
「さあ、裏切者に止めを!」
(そうだ……止めを刺さなきゃ)
……ここで、やらなきゃいけない。
ここで倒さなければ……私はまた、あの地獄に落とされる。
『うわ、これ完全に殺し屋の目だろ』
『殺し屋女子高生、マジやべえ……』
今まで楽しかったものも……
『あ、姫野さん……お、おはよう……』
『も、もうすぐ授業始まるね! 私、準備しなくちゃ!』
好きだった場所も……
『あの子って……』
『いい子だと思ってたんだけどねぇ』
暖かかった人達も、失ってしまう……
あの地獄に……あの暗い場所に……
(嫌だ……)
……右腕に集めた全力のアポカリプス。
絞め技をする力は残ってなくても、これで首を握りつぶしてしまえば……
(暗いのは嫌だ……私にも光を……)
「やってしまってください!」
「魔王様万歳!」
(光……)
「さあ、止めを!」
「これが、魔族の新たな時代の始まりです!」
(私を恐怖の目で見ない……私を慕ってくれる人達……)
さっきまでと違う、全員が私を見てくれている。
私を見ながら話し、応援してくれている。
(あれが……私の求めた光……)
そこに、鞘から刀を抜く金属音が響く。
「はぁ……はぁ……」
そこには、なんとか立ち上がり、口で鞘を固定し、なんとか刀を抜いたスコールがいた。
目を虚ろながらも、宿る闘争心は衰えることなく、破壊された右手の代わりに左手で刀を握る。
「ま、まだ動けるのか……」
「化け物だ……」
鬼とも言うべきその姿に、周りが怯える。
「ぐっ……!」
鞘を捨て、破壊された右手をだらんとさせながらも、なんとか私に近づこうとするが、足がもつれてその場に崩れ落ちる。
なんとか片膝で踏ん張るが、もはやそこから動けないようだ。
「く……そが……ぁ!」
もはや戦闘を諦め、最後の攻撃とばかりに刀を投擲するが、それは私に届かず、足元に転がる。
「……投げる力も残っちゃいねえ、か」
そして、ついに諦めたのか、そのまま座り込む。
「……そいつで殺ってくれ。その刀は、使い手の……俺たち一族の命も吸ってきた。仲間の怨念と一つになって、魔王を恨み続けるのが、一族のアタマ張ってる俺の役目なんでね」
そのまま、観念して目を閉じるスコール。
「駄狼が! 魔王様の力を思い知ったか!」
「お前たち一族の怨念など、ただの残りカスだ! その妖刀に宿るのは、偉大なる魔王様のお力のみよ!」
「さあ魔王様! あの生意気な狼を処罰してください!」
そう言いながら、全員が私を見る。
飛び交う歓声……
私の頑張りを認めてくれてた人達……
そして、そんな人たちに囲まれる……
(光だ……)
あの暗い場所とは違う。
ただひたすら、暖かく、明るくて、居心地がいい……
(でも……)
スコールの刀を拾う。
スコールとの戦いによるダメージによって、まだ視界はぼやけたままで遠くも見えない。
刀を持つだけで腕だけでなく、全身に痛みが走る。
だが、こんな状況でも、止めをさすだけならできるだろう。
(私が欲しかった光は……)
刀を構え、真っすぐにスコールの方を向く。
そして、スコールを狙い、刀を……
(光は……)
刀を……!
「……葵!」
「……っ!?」
レムリアさんの声が聞こえる……
「もう勝負はついたわ! 貴女がその手を汚す必要はない!」
いつも迷惑かけて……魔王の力を全然使えてなくて……レムリアさんの真似もできてなくて……
昼まで寝ている私を叱りつけ……完璧じゃないメダリストの娘でも、そばに居てくれる……
(光……)
――ギシっ……
「……なんだ?」
「奇妙な音が……」
地下室に響き始める、金属の軋むような音。
それは、アポカリプスを宿した右手で持つ刀から。
そして……
――メキッ……
私の足元……絨毯の下にある、何かの石材と思われる床から。
――ギシッ……メキメキッ……
ふたつの音は徐々に大きくなる。
「こ、この音は……なっ!?」
「魔王様! 何を!」
徐々に巨大化するアポカリプス……
目標を設定せず、ただ衝動のままに展開されたアポカリプスは、小型のブラックホールのように周囲の空気を吸い込み始める。
そして、四方に吐き出される重力とも磁力ともいえる衝撃は、地下室を大きく揺らし、特に影響が大きい私の足元の床は、重力でへこみ始める。
「ま、魔王様、おやめください!」
「このままでは、地下室が……!」
聞こえてくる声……
私が欲しかった光……
私が欲しかった……光は………
「……こんなものじゃなぁい!!」
言葉と感情を一気に吐き出しながら、私はアポカリプスを地面に叩きつける。
ゴガァン! という、爆発音と、石や金属が圧し潰される音が混ざった轟音。
衝撃による暴風が地下室に吹き荒れ、魔王に関わる道具……彫像や祭壇、魔王の名残があるものを全て消し飛ばす。
そして……
――バキィィィイイイン!
アポカリプスの影響を直接受け、一緒に地面に叩きつけられた刀……魔王が直々に魔狼帝に授け、その力と呪いが込められていたという、妖刀ミスティルテインが粉々に砕ける音が、地下室に鳴り響くのであった。
アポカリプスを併用した背負い投げにより、地下に轟音が鳴り響く。
地震ともいえる揺れと衝撃により、舞い上がる噴煙。
その凄まじさは、圧倒的な破壊力を証明している。
だが……
(……投げる寸前に、引手が切られた)
自分の手を見ながら、感触を思い出す。
腰には乗せていたので、すぐにいつも通りの両手背負いから片手背負いに切り替えたが、ある程度はダメージが軽減されているだろう。
とは言っても、重力を操るアポカリプスを併用した、片手とはいえ、一撃必殺の背負い投げ。
落ちる姿勢をある程度コントロールされたとは思うが、かなりのダメージのはずだ。
「ぐっ……」
噴煙が晴れ、中から現れるスコール。
やはりかなりのダメージのようで、腰から外した刀を杖に、なんとか起き上がろうとしているという状態だ。
そして、スコールが驚異じゃなくなった瞬間に、周りが騒めきだす。
「さ、さすが魔王様の力を受け継いだ者だ!」
「人間如きなどと言って失礼しました! あなたこそが新たな魔王様だ!」
「さあ、裏切者に止めを!」
(そうだ……止めを刺さなきゃ)
……ここで、やらなきゃいけない。
ここで倒さなければ……私はまた、あの地獄に落とされる。
『うわ、これ完全に殺し屋の目だろ』
『殺し屋女子高生、マジやべえ……』
今まで楽しかったものも……
『あ、姫野さん……お、おはよう……』
『も、もうすぐ授業始まるね! 私、準備しなくちゃ!』
好きだった場所も……
『あの子って……』
『いい子だと思ってたんだけどねぇ』
暖かかった人達も、失ってしまう……
あの地獄に……あの暗い場所に……
(嫌だ……)
……右腕に集めた全力のアポカリプス。
絞め技をする力は残ってなくても、これで首を握りつぶしてしまえば……
(暗いのは嫌だ……私にも光を……)
「やってしまってください!」
「魔王様万歳!」
(光……)
「さあ、止めを!」
「これが、魔族の新たな時代の始まりです!」
(私を恐怖の目で見ない……私を慕ってくれる人達……)
さっきまでと違う、全員が私を見てくれている。
私を見ながら話し、応援してくれている。
(あれが……私の求めた光……)
そこに、鞘から刀を抜く金属音が響く。
「はぁ……はぁ……」
そこには、なんとか立ち上がり、口で鞘を固定し、なんとか刀を抜いたスコールがいた。
目を虚ろながらも、宿る闘争心は衰えることなく、破壊された右手の代わりに左手で刀を握る。
「ま、まだ動けるのか……」
「化け物だ……」
鬼とも言うべきその姿に、周りが怯える。
「ぐっ……!」
鞘を捨て、破壊された右手をだらんとさせながらも、なんとか私に近づこうとするが、足がもつれてその場に崩れ落ちる。
なんとか片膝で踏ん張るが、もはやそこから動けないようだ。
「く……そが……ぁ!」
もはや戦闘を諦め、最後の攻撃とばかりに刀を投擲するが、それは私に届かず、足元に転がる。
「……投げる力も残っちゃいねえ、か」
そして、ついに諦めたのか、そのまま座り込む。
「……そいつで殺ってくれ。その刀は、使い手の……俺たち一族の命も吸ってきた。仲間の怨念と一つになって、魔王を恨み続けるのが、一族のアタマ張ってる俺の役目なんでね」
そのまま、観念して目を閉じるスコール。
「駄狼が! 魔王様の力を思い知ったか!」
「お前たち一族の怨念など、ただの残りカスだ! その妖刀に宿るのは、偉大なる魔王様のお力のみよ!」
「さあ魔王様! あの生意気な狼を処罰してください!」
そう言いながら、全員が私を見る。
飛び交う歓声……
私の頑張りを認めてくれてた人達……
そして、そんな人たちに囲まれる……
(光だ……)
あの暗い場所とは違う。
ただひたすら、暖かく、明るくて、居心地がいい……
(でも……)
スコールの刀を拾う。
スコールとの戦いによるダメージによって、まだ視界はぼやけたままで遠くも見えない。
刀を持つだけで腕だけでなく、全身に痛みが走る。
だが、こんな状況でも、止めをさすだけならできるだろう。
(私が欲しかった光は……)
刀を構え、真っすぐにスコールの方を向く。
そして、スコールを狙い、刀を……
(光は……)
刀を……!
「……葵!」
「……っ!?」
レムリアさんの声が聞こえる……
「もう勝負はついたわ! 貴女がその手を汚す必要はない!」
いつも迷惑かけて……魔王の力を全然使えてなくて……レムリアさんの真似もできてなくて……
昼まで寝ている私を叱りつけ……完璧じゃないメダリストの娘でも、そばに居てくれる……
(光……)
――ギシっ……
「……なんだ?」
「奇妙な音が……」
地下室に響き始める、金属の軋むような音。
それは、アポカリプスを宿した右手で持つ刀から。
そして……
――メキッ……
私の足元……絨毯の下にある、何かの石材と思われる床から。
――ギシッ……メキメキッ……
ふたつの音は徐々に大きくなる。
「こ、この音は……なっ!?」
「魔王様! 何を!」
徐々に巨大化するアポカリプス……
目標を設定せず、ただ衝動のままに展開されたアポカリプスは、小型のブラックホールのように周囲の空気を吸い込み始める。
そして、四方に吐き出される重力とも磁力ともいえる衝撃は、地下室を大きく揺らし、特に影響が大きい私の足元の床は、重力でへこみ始める。
「ま、魔王様、おやめください!」
「このままでは、地下室が……!」
聞こえてくる声……
私が欲しかった光……
私が欲しかった……光は………
「……こんなものじゃなぁい!!」
言葉と感情を一気に吐き出しながら、私はアポカリプスを地面に叩きつける。
ゴガァン! という、爆発音と、石や金属が圧し潰される音が混ざった轟音。
衝撃による暴風が地下室に吹き荒れ、魔王に関わる道具……彫像や祭壇、魔王の名残があるものを全て消し飛ばす。
そして……
――バキィィィイイイン!
アポカリプスの影響を直接受け、一緒に地面に叩きつけられた刀……魔王が直々に魔狼帝に授け、その力と呪いが込められていたという、妖刀ミスティルテインが粉々に砕ける音が、地下室に鳴り響くのであった。
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