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「だからあんなに怒ってたんだね。おれが初めて亮雅の家に行ったとき」
「数年かかってんだよ、こっちは。人の気も知らねーであちこち好き勝手に遊びにいきやがって」
「うはは、しののん怒った」
「言っとくぞ、肇。俺は亮雅みたいに甘々な人間じゃねえ。お前が遊びで浮気でもしていたら二度と女を抱けねえ体にしてやる」
「え~? なにそれ、おれに甘々じゃんっ。浮気しなくてもそうしてよ」
「うっせえマゾガキ。黙って仕事させろ」
おれ……やっぱり志野に甘々だ。
いま他の誰かにこんな対応をされたらムカつくかもしれないのに、志野だとゾクゾクしてしまう。
でもそれは言わない。
言えない。
この人に罵倒されるのがちょっと好きとか、そんな恥ずかしいことを素で言えるわけがない。
「ぬんぬん、ぬーんぬん」
「……それ、陸も歌ってなかったか」
「当たりっ、陸ので覚えたよ。なんの曲か知らないけど。ぺん太もぬりえするっ」
「おい、ペンを取るな。猫かお前は」
志野からパソコン用のペンを奪って笑うと、横腹をくすぐられてビクンと体が飛び上がる。
「やっ! だめ、あははっ、もうしな、もうしないからぁ!」
おれがそう言うとピタリと手がやんだ。
でも、志野の手はスルスル上がってきて、ついに胸の辺りを優しくなではじめる。
乳首に指先がふれてピクっと肩が動いた。
指はふれるかふれないかギリギリの力でおれの乳首をなでていく。
「んぅぅ……」
「今日はなに食いたい?」
「ん……はぁ……塩、やきそば」
「んじゃあ肇も手伝えよ」
「ふぅんっ……は、てつだぅ……っ」
「仕事終わるまで我慢な」
「ぁ、ん、しの……きもち、ふぅ……」
強すぎず弱すぎない刺激が、おれの頭をとりこにする。
股間がうずいて苦しい。
だけど志野は仕事が終わるまでのあいだ、下をさわらせてくれなかった。
「はっ……はぁ……しのの、いじわる……っ」
「イタズラするお前が悪い」
乳首、気持ちよかった……
やっぱり志野にさわられるのが一番好きだ。
「ムズムズ……」
「肇、焼きそば作るから手伝えよ」
「むぅ……おれ先トイレいくっ」
ときどき思う。
どうして志野はおれに奉仕させようとしないんだろう。
相手を気持ちよくさせることより、自分の快楽のためにおれを使う男が多かった。
なのに志野は、おれがやろうとすると「それはいい」といって止めさせてくる。
人にされるのは嫌なのかな……
それとも、おれが下手だから?
もやもやとムズムズが両方攻めてきて、頭が混乱する。
心配になる。
志野はただ人に奉仕したい人、なのかな。
「んっ……やばい、もうでる……っ」
トイレで自分の性器をシゴいて射精した。
志野にされている想像をするだけで、いつもの数倍はやくイける。
でも、もやもやが消えたわけじゃない。
「志野ー、戻ったよ」
「ああ、肇か? あいつは色々と頑張ってるだろ。凛さんが見てなくても、すげえ努力してんだよ」
「っ」
志野は通話中だった。
相手はおそらく凛さんだ。
割ってしまったグラスのことを思い出して、じわりと汗がにじむ。
そのとき、志野と目が合った。
「噂をすれば、あんたの溺愛してる美少年が戻ってきたぞ。話したいって?」
「っ、」
「凛さんが話したいんだとよ」
スマホを渡されて冷や汗が流れだす。
志野はたぶん、あのことを話していない。
おれから言わないと。
「こ、こんばんは」
『どうしたのよ、肇くん。急にかしこまっちゃって』
「いや、その」
『志野から聞いたよ。毎日、うちの商品のこととか勉強してるんだってね』
「して、る」
『ふふ、ありがとう。肇くんが頑張ってくれてるから、うちの会社もすごく調子がいいわ』
「……あの、凛さん。おれ謝りたいことが、あって」
『え? 謝りたいこと?』
「凛さんが志野にあげた高いグラス、割っちゃって……ホスト1位の、お祝いのやつ」
おそるおそる言ってみたけど、聞こえてきたのは笑い声だった。
『あはは、全然いいわよ~そんなの。志野もべつに気にしてないでしょ? 数年残ってるだけでもすごいことよ。肇くんはケガしなかった?』
「おれは、してないよ。ありがとうございます……」
ふたりの寛容さに泣きそうになっていたら、志野が頭をなでてきた。
「数年かかってんだよ、こっちは。人の気も知らねーであちこち好き勝手に遊びにいきやがって」
「うはは、しののん怒った」
「言っとくぞ、肇。俺は亮雅みたいに甘々な人間じゃねえ。お前が遊びで浮気でもしていたら二度と女を抱けねえ体にしてやる」
「え~? なにそれ、おれに甘々じゃんっ。浮気しなくてもそうしてよ」
「うっせえマゾガキ。黙って仕事させろ」
おれ……やっぱり志野に甘々だ。
いま他の誰かにこんな対応をされたらムカつくかもしれないのに、志野だとゾクゾクしてしまう。
でもそれは言わない。
言えない。
この人に罵倒されるのがちょっと好きとか、そんな恥ずかしいことを素で言えるわけがない。
「ぬんぬん、ぬーんぬん」
「……それ、陸も歌ってなかったか」
「当たりっ、陸ので覚えたよ。なんの曲か知らないけど。ぺん太もぬりえするっ」
「おい、ペンを取るな。猫かお前は」
志野からパソコン用のペンを奪って笑うと、横腹をくすぐられてビクンと体が飛び上がる。
「やっ! だめ、あははっ、もうしな、もうしないからぁ!」
おれがそう言うとピタリと手がやんだ。
でも、志野の手はスルスル上がってきて、ついに胸の辺りを優しくなではじめる。
乳首に指先がふれてピクっと肩が動いた。
指はふれるかふれないかギリギリの力でおれの乳首をなでていく。
「んぅぅ……」
「今日はなに食いたい?」
「ん……はぁ……塩、やきそば」
「んじゃあ肇も手伝えよ」
「ふぅんっ……は、てつだぅ……っ」
「仕事終わるまで我慢な」
「ぁ、ん、しの……きもち、ふぅ……」
強すぎず弱すぎない刺激が、おれの頭をとりこにする。
股間がうずいて苦しい。
だけど志野は仕事が終わるまでのあいだ、下をさわらせてくれなかった。
「はっ……はぁ……しのの、いじわる……っ」
「イタズラするお前が悪い」
乳首、気持ちよかった……
やっぱり志野にさわられるのが一番好きだ。
「ムズムズ……」
「肇、焼きそば作るから手伝えよ」
「むぅ……おれ先トイレいくっ」
ときどき思う。
どうして志野はおれに奉仕させようとしないんだろう。
相手を気持ちよくさせることより、自分の快楽のためにおれを使う男が多かった。
なのに志野は、おれがやろうとすると「それはいい」といって止めさせてくる。
人にされるのは嫌なのかな……
それとも、おれが下手だから?
もやもやとムズムズが両方攻めてきて、頭が混乱する。
心配になる。
志野はただ人に奉仕したい人、なのかな。
「んっ……やばい、もうでる……っ」
トイレで自分の性器をシゴいて射精した。
志野にされている想像をするだけで、いつもの数倍はやくイける。
でも、もやもやが消えたわけじゃない。
「志野ー、戻ったよ」
「ああ、肇か? あいつは色々と頑張ってるだろ。凛さんが見てなくても、すげえ努力してんだよ」
「っ」
志野は通話中だった。
相手はおそらく凛さんだ。
割ってしまったグラスのことを思い出して、じわりと汗がにじむ。
そのとき、志野と目が合った。
「噂をすれば、あんたの溺愛してる美少年が戻ってきたぞ。話したいって?」
「っ、」
「凛さんが話したいんだとよ」
スマホを渡されて冷や汗が流れだす。
志野はたぶん、あのことを話していない。
おれから言わないと。
「こ、こんばんは」
『どうしたのよ、肇くん。急にかしこまっちゃって』
「いや、その」
『志野から聞いたよ。毎日、うちの商品のこととか勉強してるんだってね』
「して、る」
『ふふ、ありがとう。肇くんが頑張ってくれてるから、うちの会社もすごく調子がいいわ』
「……あの、凛さん。おれ謝りたいことが、あって」
『え? 謝りたいこと?』
「凛さんが志野にあげた高いグラス、割っちゃって……ホスト1位の、お祝いのやつ」
おそるおそる言ってみたけど、聞こえてきたのは笑い声だった。
『あはは、全然いいわよ~そんなの。志野もべつに気にしてないでしょ? 数年残ってるだけでもすごいことよ。肇くんはケガしなかった?』
「おれは、してないよ。ありがとうございます……」
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