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「____てことなんですよ」
「どういうことだよ」
幾年ぶりに再会した幼なじみの亮雅と2人で街に出ている理由は、いくつかある。
まず、志野がいないこと。
そして優斗くんも今日はいないこと。
「お互いぼっちさみしいじゃん」
「べつにさみしくねーよ」
「志野がどうしても1人で出かけるなって言うから、それなら亮雅と遊びに行けばいいじゃんって思って!」
「ほんっと変わんねえな、その小学生並みの無邪気さ」
「わーい、亮雅に褒められた~」
「褒めてねえよ」
「でもなんだかんだ会ってくれるとこ優しいよな、相変わらず」
「お前がゴミクズみたいな人間だったら二度と会ってない」
ちょっとムカつくのは、亮雅の身長が伸びすぎなところだ。
中学の頃から元々170後半はあった。
でも俺との身長差はなぜか縮まらない。
むしろあの頃より数センチは差ができている。
「亮雅、身長高すぎ。バス停にある柱じゃん。10センチくらい分けてくれてもいいのに」
「誰にも見下ろされないのは最高だ」
「わーっ、なんかムカつく。亮雅のくせに。優斗くん絶対見る目ないな」
「フッ……見苦しい嫉妬すんなよ。いくらほしがっても身長は分けてやれねーぞ」
おれを煽るように笑う亮雅のスネを蹴ろうかと思った。
全然変わってないのは亮雅も同じだ。
この生意気小学生め。
「つーか、あの人がお前置いて県外行くとか珍しいな」
「うん、めちゃくちゃ悩んだって言ってた。言ってないけど」
「俺は突っ込まねえぞ」
「反応してる時点で亮雅の負けだっつの~。みそ汁亮雅のおごりなっ」
「チョイスしょぼ。志野さんよくお前と四六時中いれるよな……脳の酸欠で死なねえのか」
「おれといっしょにいるの疲れて関西行ってたりして」
「それを笑顔でいうお前のメンタルどうなってんだ」
志野は仕事でマネージャーとともに関西に行ってしまった。
悩んでいる素振りは一度も見ていないし、家を出るときもあっけなかった。
さびしくない……わけがない。
でもおれも28歳の男だ。
志野に甘えてばかりで1人ではなにもできないなんてよくない。
そういう気持ちで、志野を笑顔で見送った。
「いいんだよ。志野には志野の時間も大切だし、おれも大人だし。たまには別行動も新鮮でいい」
「……どうだか。強がってるようにしか」
「あ! みるモンだ! なぁなぁ、おれもあのアイス食べたいんだけどっ」
「そんなに目を輝かせるな。お前この寒い時期によくアイス食おうと思うよな」
「アイス売ってるんだからほしくなるだろ」
「みるモンアイスってなんだよ」
みるモンが店の前で宣伝しているアイスは期間限定のみるモン仕様になっている。
カップにシャーベットが2つと、頂上を飾るみるモンの顔付きシャーベット。
店内の飾りつけもみるモンになっていて、一言で表すとかわいい。
「ねえみて……あの2人めちゃめちゃかっこよくない?」
「わぁっ、なにあれモデル……!? ヴィジュアルよっ……」
店内からそんな声が聞こえてくる。
顔が好きと言われた経験は数知れずであまり驚きもなかったものの、初めから体目的に近づいてくる欲求不満の男たちとはまたちがう。
なんというか、嬉しい。
「みるモーン、元気にしてたかぁ?」
手を振るみるモンの頭をぽんぽんとなでて再会を喜ぶ。
志野が中身はどうの言ったせいでそれを想像してしまって笑いそうになるが、見た目はかわいいんだから問題ない。
「あのっ」
「え?」
女子高生に声をかけられた。
マフラーで少し口元を隠している彼女は、瞳を輝かせている。
「どうしたの?」
「おふたりは……その、モデルさん、とかですか……? す、すごくかっこよくて突然すみませんっ」
「あはは、緊張しすぎだよ。ただの会社員なのに。ああ、でもこっちの人はアイドルだよ」
「アイドルっ……!?」
「バカバカ、やめろ。本当にそうだと思うだろ。ごめんねー、こいつバカなだけだから無視していいよ」
「あ、そ、そうなんですねっ……なにか活動とか、されてないんですか……? もしSNSとかしてたら、フォローしたいなって思って」
「えすえぬえす? なにそれ、食べれるの?」
「……。気持ちは嬉しいんだけど、俺たちはただの一般人だし活動も特にしてないんだ。ごめんな~」
「それは、失礼しましたっ……ありがとうございました、お仕事がんばってください!」
「ああ、ありがとう。お嬢さんもがんばって」
「がんばれ~」
「ひゃぁっ……ありがとうございますっ!」
アイドル顔負けの笑顔で女子高生のハートを無自覚に射抜いてしまう罪深い男。
これを見た優斗くんがヤキモチを焼く想像ができた。
「どういうことだよ」
幾年ぶりに再会した幼なじみの亮雅と2人で街に出ている理由は、いくつかある。
まず、志野がいないこと。
そして優斗くんも今日はいないこと。
「お互いぼっちさみしいじゃん」
「べつにさみしくねーよ」
「志野がどうしても1人で出かけるなって言うから、それなら亮雅と遊びに行けばいいじゃんって思って!」
「ほんっと変わんねえな、その小学生並みの無邪気さ」
「わーい、亮雅に褒められた~」
「褒めてねえよ」
「でもなんだかんだ会ってくれるとこ優しいよな、相変わらず」
「お前がゴミクズみたいな人間だったら二度と会ってない」
ちょっとムカつくのは、亮雅の身長が伸びすぎなところだ。
中学の頃から元々170後半はあった。
でも俺との身長差はなぜか縮まらない。
むしろあの頃より数センチは差ができている。
「亮雅、身長高すぎ。バス停にある柱じゃん。10センチくらい分けてくれてもいいのに」
「誰にも見下ろされないのは最高だ」
「わーっ、なんかムカつく。亮雅のくせに。優斗くん絶対見る目ないな」
「フッ……見苦しい嫉妬すんなよ。いくらほしがっても身長は分けてやれねーぞ」
おれを煽るように笑う亮雅のスネを蹴ろうかと思った。
全然変わってないのは亮雅も同じだ。
この生意気小学生め。
「つーか、あの人がお前置いて県外行くとか珍しいな」
「うん、めちゃくちゃ悩んだって言ってた。言ってないけど」
「俺は突っ込まねえぞ」
「反応してる時点で亮雅の負けだっつの~。みそ汁亮雅のおごりなっ」
「チョイスしょぼ。志野さんよくお前と四六時中いれるよな……脳の酸欠で死なねえのか」
「おれといっしょにいるの疲れて関西行ってたりして」
「それを笑顔でいうお前のメンタルどうなってんだ」
志野は仕事でマネージャーとともに関西に行ってしまった。
悩んでいる素振りは一度も見ていないし、家を出るときもあっけなかった。
さびしくない……わけがない。
でもおれも28歳の男だ。
志野に甘えてばかりで1人ではなにもできないなんてよくない。
そういう気持ちで、志野を笑顔で見送った。
「いいんだよ。志野には志野の時間も大切だし、おれも大人だし。たまには別行動も新鮮でいい」
「……どうだか。強がってるようにしか」
「あ! みるモンだ! なぁなぁ、おれもあのアイス食べたいんだけどっ」
「そんなに目を輝かせるな。お前この寒い時期によくアイス食おうと思うよな」
「アイス売ってるんだからほしくなるだろ」
「みるモンアイスってなんだよ」
みるモンが店の前で宣伝しているアイスは期間限定のみるモン仕様になっている。
カップにシャーベットが2つと、頂上を飾るみるモンの顔付きシャーベット。
店内の飾りつけもみるモンになっていて、一言で表すとかわいい。
「ねえみて……あの2人めちゃめちゃかっこよくない?」
「わぁっ、なにあれモデル……!? ヴィジュアルよっ……」
店内からそんな声が聞こえてくる。
顔が好きと言われた経験は数知れずであまり驚きもなかったものの、初めから体目的に近づいてくる欲求不満の男たちとはまたちがう。
なんというか、嬉しい。
「みるモーン、元気にしてたかぁ?」
手を振るみるモンの頭をぽんぽんとなでて再会を喜ぶ。
志野が中身はどうの言ったせいでそれを想像してしまって笑いそうになるが、見た目はかわいいんだから問題ない。
「あのっ」
「え?」
女子高生に声をかけられた。
マフラーで少し口元を隠している彼女は、瞳を輝かせている。
「どうしたの?」
「おふたりは……その、モデルさん、とかですか……? す、すごくかっこよくて突然すみませんっ」
「あはは、緊張しすぎだよ。ただの会社員なのに。ああ、でもこっちの人はアイドルだよ」
「アイドルっ……!?」
「バカバカ、やめろ。本当にそうだと思うだろ。ごめんねー、こいつバカなだけだから無視していいよ」
「あ、そ、そうなんですねっ……なにか活動とか、されてないんですか……? もしSNSとかしてたら、フォローしたいなって思って」
「えすえぬえす? なにそれ、食べれるの?」
「……。気持ちは嬉しいんだけど、俺たちはただの一般人だし活動も特にしてないんだ。ごめんな~」
「それは、失礼しましたっ……ありがとうございました、お仕事がんばってください!」
「ああ、ありがとう。お嬢さんもがんばって」
「がんばれ~」
「ひゃぁっ……ありがとうございますっ!」
アイドル顔負けの笑顔で女子高生のハートを無自覚に射抜いてしまう罪深い男。
これを見た優斗くんがヤキモチを焼く想像ができた。
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