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志野が欲求不満なときにおれの体を差し出すようにはなったが、そこに愛があるかといえばノーだろう。
見ず知らずの男に声をかけるクセは治らない。
志野はなにも言わないしおれもそれがルーティンだった。
だが、どういうわけかおれは、その日を境に志野以外の人間とキスをしなくなった。
「んっ……志野、あっ、んぅ」
「締めつけんなよ……肇」
「あぁんッ、ちょと……うぁ、あ」
志野のモノがおれの中にいる。
興奮状態に陥っているおれはただこの時間が続けばいいのにと、快感に溺れることしかできない。
何度も何度も奥を突かれ、正常な思考が保てなくなっていく。
大きく腰がふるえると同時に、おれは2度目の射精をした。
「はッ、あぁっ……きもち、ぃ……しの」
涙が頬をつたった。
元ホストというだけあって志野はセックスが上手い。
男の性感帯を理解していること自体ふしぎだが、絶妙にいいところに触れてくる。
いままでしてきた誰とのセックスよりも上手くておれ好みだ。
「……ずっと泣いてんな」
「うぅぅ……腰が痛い」
「お前、本当はセックス嫌いだろ」
「っ、なんでそう思うわけ? よすぎて泣いてるだけじゃん」
「誰にも踏み込まれたくない領域でもあんの。嬉し涙には見えねえけど」
「ッ……」
「怖いんじゃねえの。誰かに見捨てられんのが」
「違う……そうじゃない」
「寝るのは嫌いでも見捨てられる方がもっと怖い。だからお前は興味もない人間に色目を使う。独りにされるよりずっとマシだもんな」
「違うッ!」
そうじゃない。
違う。
おれはそんな弱い人間じゃない。
…………本当に?
「おれ、は」
弱くない……?
セックスが嫌い? おれが?
「言えよ、ひとりは怖いって。なにを隠す必要が」
「お前にはわからないッ!!!」
おれは気が動転していた。
気がつけば、デスクに置いてあるカッターナイフに手を伸ばしていた。
「おい肇!」
「ひとりなんて怖くもなんともねえよ!!」
ナイフの刃を首筋に当てた瞬間、志野に腕をつかまれ壁に強く打ちつけられる。
カラン、と床に落ちる音がしたと同時に、おれの腕に血がたれた。
「っ……え、ぁ、志野……」
志野の頬に大きな傷ができている。
紅色の液体が頬をつたい、こぼれていく。
志野を傷つけてしまった。
おれのせいで。
「志野っ……ごめ、おれのせい、でっ」
「バカ野郎!」
「っ」
「お前が一番傷つけてんのはお前自身だろうが! 俺に謝んじゃねえッ」
「……っ」
「言っただろ、自傷はすんなって。俺はお前がそれをやめられるならいくらでも盾になってやる。こんなのはかすり傷だ」
「し、の……」
涙があふれて止まらなくなった。
おれは自分のことを守るのに必死なのに、志野はそんなおれを守ろうとする。
バカみたいだ。
おれも、弱い人間なのに。
「ごめん……ごめん、っ」
「二度とこんなことはするな。ひとりにはしねえよ、だから安心しろ」
ずっと強い人間でいないといけないものだと思っていた。
世の中はひどく冷たくて、両親でさえおれを愛してはくれなかったから。
だから自分の本当の姿は隠してきた。
故意ではない、呼吸をするくらい無意識にやってきたことだ。
だが志野はおれを抱きしめてくれる。
本当は弱くて脆いおれを、安心させようとしてくれる。
ふしぎな男だ。
いままで出会った誰よりも。
見ず知らずの男に声をかけるクセは治らない。
志野はなにも言わないしおれもそれがルーティンだった。
だが、どういうわけかおれは、その日を境に志野以外の人間とキスをしなくなった。
「んっ……志野、あっ、んぅ」
「締めつけんなよ……肇」
「あぁんッ、ちょと……うぁ、あ」
志野のモノがおれの中にいる。
興奮状態に陥っているおれはただこの時間が続けばいいのにと、快感に溺れることしかできない。
何度も何度も奥を突かれ、正常な思考が保てなくなっていく。
大きく腰がふるえると同時に、おれは2度目の射精をした。
「はッ、あぁっ……きもち、ぃ……しの」
涙が頬をつたった。
元ホストというだけあって志野はセックスが上手い。
男の性感帯を理解していること自体ふしぎだが、絶妙にいいところに触れてくる。
いままでしてきた誰とのセックスよりも上手くておれ好みだ。
「……ずっと泣いてんな」
「うぅぅ……腰が痛い」
「お前、本当はセックス嫌いだろ」
「っ、なんでそう思うわけ? よすぎて泣いてるだけじゃん」
「誰にも踏み込まれたくない領域でもあんの。嬉し涙には見えねえけど」
「ッ……」
「怖いんじゃねえの。誰かに見捨てられんのが」
「違う……そうじゃない」
「寝るのは嫌いでも見捨てられる方がもっと怖い。だからお前は興味もない人間に色目を使う。独りにされるよりずっとマシだもんな」
「違うッ!」
そうじゃない。
違う。
おれはそんな弱い人間じゃない。
…………本当に?
「おれ、は」
弱くない……?
セックスが嫌い? おれが?
「言えよ、ひとりは怖いって。なにを隠す必要が」
「お前にはわからないッ!!!」
おれは気が動転していた。
気がつけば、デスクに置いてあるカッターナイフに手を伸ばしていた。
「おい肇!」
「ひとりなんて怖くもなんともねえよ!!」
ナイフの刃を首筋に当てた瞬間、志野に腕をつかまれ壁に強く打ちつけられる。
カラン、と床に落ちる音がしたと同時に、おれの腕に血がたれた。
「っ……え、ぁ、志野……」
志野の頬に大きな傷ができている。
紅色の液体が頬をつたい、こぼれていく。
志野を傷つけてしまった。
おれのせいで。
「志野っ……ごめ、おれのせい、でっ」
「バカ野郎!」
「っ」
「お前が一番傷つけてんのはお前自身だろうが! 俺に謝んじゃねえッ」
「……っ」
「言っただろ、自傷はすんなって。俺はお前がそれをやめられるならいくらでも盾になってやる。こんなのはかすり傷だ」
「し、の……」
涙があふれて止まらなくなった。
おれは自分のことを守るのに必死なのに、志野はそんなおれを守ろうとする。
バカみたいだ。
おれも、弱い人間なのに。
「ごめん……ごめん、っ」
「二度とこんなことはするな。ひとりにはしねえよ、だから安心しろ」
ずっと強い人間でいないといけないものだと思っていた。
世の中はひどく冷たくて、両親でさえおれを愛してはくれなかったから。
だから自分の本当の姿は隠してきた。
故意ではない、呼吸をするくらい無意識にやってきたことだ。
だが志野はおれを抱きしめてくれる。
本当は弱くて脆いおれを、安心させようとしてくれる。
ふしぎな男だ。
いままで出会った誰よりも。
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