薄明かりの下で君は笑う

ひいらぎ

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「なーにぃ、志野……ベッドで寝るほど酔ってないしぃ」

「どうなっても知らないって言ったよな」

「……?」

「煽ってきたのはお前だ」

「え……しの、?」


目の色が変わった。
まるで獣のような鋭利な瞳がおれをとらえる。

怖いと思った。
やっていいと言ったのはおれなのに、足先から震えが起こり志野を見るのが怖くなる。


「ちょっと……待っ、んがっ」


首筋に噛みつかれ、上ずった声が漏れる。
触れたところから熱が高まっていく。
慣れているはずなのに、どうして。


「あっ……そ、こはっ」

「舌出せよ、肇」

「んッ」

「口閉じんな、許したのはお前だろ」

「んん、っ」


キスが怖くて口を閉じるおれの鼻を志野は容赦なくつまんで呼吸を困難にさせる。
空気を求めて口を開けた瞬間、強引に唇が重なり舌が挿入された。


「あっ、ン……ふぅん、」


舌をなで、歯列をなぞる。
ゾクゾクと背筋がうずいて苦しい。
あり得ない。
おれが怖がるとか、嫌がるとか、そんなのあり得ない。


「へぁ……はッ、はぁ……志、野、やめ、はんんっ」


頭の先からあふれてくる快感がおれを狂わせる。
おかしい、おかしいおかしい。
このおれが相手に乗せられるなんて。


「……はっ……キスだけでなんて顔してんだ。プロじゃねえの、お前」

「ッ……もう、やだ。やめたい……っ」

「ギブはっや。やめねーよ。さっきまでの余裕な顔はどうした?」

「しの、こわい……っ」

「怖くねえだろ……散々、男に抱かれてんだから」

「あッ」


布地越しに乳首をつままれ、腰がそり上がる。
怖いのに気持ちいい。
もっと触ってほしい、志野の手でおれの体を満たしてほしい。

…………あれ、なに考えてんの、おれ。


「い、やっ、あんっ、ちくび痛っ……」

「痛いのが好きってお前が言った」

「はぁ、はっ……あぁ、もっと……いたく、して……っ」

「……しねえよ、バカ」

「んんっ」


わからない。
志野はおれが求めた途端に力を弱めて抱きしめてきた。
なにがしたいんだよ、この男は。


「いやぁ……」

「……お前、泣くこともできたんだな」


……は?
おれが、泣いてる?  なんで。


「志野が……ドSすぎる、から」

「泣いてる顔の方がかわいい」

「クズ野郎かよ……」

「ふ、ホストってのはああ見えて独占欲が強いんだよ」


志野の声が、笑みが、おれの鼓動を高鳴らせる。
心臓がおそろしいほど震えている。
志野と出会ってから、日常に起こる出来事は初めての体験ばかりだった。

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