10 / 10
*10
しおりを挟む
「…………」
「……」
気まず。
隼人さんの過去を聞いてから俺は激しく緊張している。
キスをしないというより、できないのか。
ということは本命の恋人をつくることも……
なんにせよ、バックボーンが重すぎる。
俺が迂闊に踏みこんでいける話じゃない。
「お前は」
「え、っ?」
考えごとをしていたおかげで、肩がビクッと大きくふるえてしまった。
隼人さんにはそれがどう映ったのか、悲しげな瞳が揺れる。
「そういうのねえの」
「……そ、ういうの。俺は、彼女にフラれたことぐらいっていうか」
「フラれた?」
「はい……セックスが、下手だから、って」
自分のトラウマを打ち明けるのが恥ずかしくて目を伏せる。
男にとってセックスが下手だといわれるのは何よりプライドが傷つけられることじゃないだろうか。
「下手……」
「わ、わかってはいるんです。たしかに前戯とか、なにやったらいいのか全然だったし……っ」
「まー、たしかに。要は下手だな」
「うぐッ」
そうだ、隼人さんはこういう人だった。
「けど上手くなってるよ。半年前に会ったときより」
「へ……」
想像もしていなかった言葉をかけられ、目が点になる。
隼人さんに……褒められた?
思わず硬直して唖然とする俺に彼は呆れた顔をした。
「自信もてよ」
「ご、ごめんなさい」
「なんで謝る。つーかその女は要を大して好きじゃなかったんだろ? ヴィジュがいいからって手だした女の言うことを気にするなよ」
「そう、だったんですかね」
「当たり前だ。本当に好きだったらセックスどうこうですぐふるかよ。要は特に、見た目のせいで勝手な期待する女は多そうだし」
「……」
心臓がドクンドクンとなっている。
隼人さんにはカリスマ性があって、言葉のひとつひとつに説得力を感じる。
泣きそうだ。
「泣きそうな顔すんなよ」
「な、泣きそうになってません。隼人さんがそんなこと言ってくれるとは……思ってなくて」
「お前のなかで俺の印象最悪じゃねえ? 地味に傷ついたんだけど」
「実際、最低じゃないすか……いつか刺されても知んねえ」
「……ふはっ、ひでぇの。ごめんな」
「ッ」
これだから隼人さんは心臓に悪い。
急に声色を変えてきて。
そんな顔をされたら、期待してしまうじゃないか。
かき乱すのはやめてほしいのに。
「……」
気まず。
隼人さんの過去を聞いてから俺は激しく緊張している。
キスをしないというより、できないのか。
ということは本命の恋人をつくることも……
なんにせよ、バックボーンが重すぎる。
俺が迂闊に踏みこんでいける話じゃない。
「お前は」
「え、っ?」
考えごとをしていたおかげで、肩がビクッと大きくふるえてしまった。
隼人さんにはそれがどう映ったのか、悲しげな瞳が揺れる。
「そういうのねえの」
「……そ、ういうの。俺は、彼女にフラれたことぐらいっていうか」
「フラれた?」
「はい……セックスが、下手だから、って」
自分のトラウマを打ち明けるのが恥ずかしくて目を伏せる。
男にとってセックスが下手だといわれるのは何よりプライドが傷つけられることじゃないだろうか。
「下手……」
「わ、わかってはいるんです。たしかに前戯とか、なにやったらいいのか全然だったし……っ」
「まー、たしかに。要は下手だな」
「うぐッ」
そうだ、隼人さんはこういう人だった。
「けど上手くなってるよ。半年前に会ったときより」
「へ……」
想像もしていなかった言葉をかけられ、目が点になる。
隼人さんに……褒められた?
思わず硬直して唖然とする俺に彼は呆れた顔をした。
「自信もてよ」
「ご、ごめんなさい」
「なんで謝る。つーかその女は要を大して好きじゃなかったんだろ? ヴィジュがいいからって手だした女の言うことを気にするなよ」
「そう、だったんですかね」
「当たり前だ。本当に好きだったらセックスどうこうですぐふるかよ。要は特に、見た目のせいで勝手な期待する女は多そうだし」
「……」
心臓がドクンドクンとなっている。
隼人さんにはカリスマ性があって、言葉のひとつひとつに説得力を感じる。
泣きそうだ。
「泣きそうな顔すんなよ」
「な、泣きそうになってません。隼人さんがそんなこと言ってくれるとは……思ってなくて」
「お前のなかで俺の印象最悪じゃねえ? 地味に傷ついたんだけど」
「実際、最低じゃないすか……いつか刺されても知んねえ」
「……ふはっ、ひでぇの。ごめんな」
「ッ」
これだから隼人さんは心臓に悪い。
急に声色を変えてきて。
そんな顔をされたら、期待してしまうじゃないか。
かき乱すのはやめてほしいのに。
0
お気に入りに追加
25
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。





皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる