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Last Season
乙女心と海の空
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レニー様は人間として行為をした日を堺に少しずつではあるが放精が出来るようになった。ほんの僅かに白みがかった液を出せるようになったのだ。
私は毎日たくさん愛されて放卵をしている。しっかりとした精がかからないと受精は出来ないが、赤ちゃんが出来る日も近いかもしれない。
「クララちゃん、どうしたんだい?ぼんやりして」
「レニー様……。私……、いえ、ちょっと疲れちゃったみたいです」
「無理させちゃったかな。この前は僕の両親に会ってもらっただろう。今度はクララちゃんのご両親にもご挨拶に行かないとね。赤ちゃんが出来る前に急がないと」
「はい……!」
新しいふたりの寝床で抱き締め合っていると、レニー様がヒレを軽く絡ませてきた。
「クララちゃん、僕の事、愛してる?」
「愛してますっ!どうしたんですか?急に……」
「もうすぐ3ヶ月経つだろう?……行ってしまうの?」
「……っ、レニー様、大切なお話があるんです。……聞いていただけますか?」
アキ様のお汁を搾り取ってからちょうど3ヶ月が経つ。前回会った場所で迎えが来るのを待っているところだ。
「僕はあそこの岩山で休んでいるから」
「ありがとうございます。レニー様」
「……本当にこれで良いのかい?」
「はい。これで良いんです」
『__私、アキ様の事、もしかしたら少しだけ、……好きなのかもしれません。でも、私が一生お側に居たいのはあなただけです、レニー様。私、アキ様とお別れします。最後に会ってこれでおしまいです』
今日はクルーザーではなく、初めて連れ去られた時に乗った小型のボートで迎えにやって来た。運転はもちろんおじさんだ。アキ様も同乗している。
ボートが私の目の前に止まる。心を奮い立たせ、アキ様に近付き話し掛ける。
「アキ様、あのですね。私、もうあなたの事搾り取る事は……」
「えぇ、分かってますよ。そんな気がしました」
「私、よく分からないんですけど……、もしかしたらあなたの事ちょっとだけ……」
「クララさん、それ以上は」
人差し指を私の唇に当てられて言葉を塞がれてしまう。
「僕の身勝手に巻き込んで申し訳ありませんでした。貴方には素敵な王子様が出来ましたし。これ以上貴方を捕まえておく事は難しそうです」
アキ様の指を掴み、精一杯の声を振り絞る。手に変な力が入ってしまう。
「……アキ様はこれからどうするのですか?お汁は……。他の女王様を探すのですか……っ?」
「ぐぅっ!く、クララさん、指が変な方向に曲がって……!い、痛いっ、あ、ありがとうございますっ」
「あらやだ、ごめんなさい!」
「やっぱり僕の女王様はクララさんだけかもしれませんね」
笑いながら、彼は言葉を続ける。
「まぁ僕は一人でも大丈夫ですよ。今までの行為の数々は、仕込んでいた複数アングルからのカメラでキチッと収めています!それを見ながら一人で出す練習をします!いざという時はクララさんのヒレの中にGPSを埋め込んでおいたので……。流石に海底では感知しませんが、海面に上がってきた時に把握出来ます」
途中から意味の分からない単語を連発されたが、もう私がいなくてもアキ様は平気なようだ。
「クララさん、目を閉じてください」
「え?あ、はい……」
言われるがままに瞳を閉じると、唇に何か柔らかい感触がした。思わず目を開いてしまうと、すぐ近くにアキ様のお顔があった。
「今のって……」
「僕からの特別な贈り物です。クララさんが、世界一幸せな人魚になれますように」
アキ様からの特別な贈り物。
「アキ様、私からも贈り物を……。もう少し海面に近付けますか?」
「はい、……このくらいで良いですか?」
「もうちょっと身を乗り出して……」
ボートからギリギリまで身を乗り出したアキ様の顔面へ、渾身の空中ヒレ捌きをプレゼントした。
「ぎゃっ!!……っっ!!」
「アキ様はもともと私のヒレ捌きを見てお気に召してくださったんでしょう?私からの精一杯の贈り物です。気に入っていただけました?」
「……っ、奥歯がっ!……ぅぅっ」
「お気に召してくださったようで何よりです!」
ボートの上で喜んで悶えているアキ様へ、最後のお別れを言った。
「さようなら、アキ様」
「えぇ、どうかお元気で、クララさん」
岩山の方へと振り向き、泳ぎ出す。波の音に掻き消されてよく聞こえなかったが、アキ様が何かを呟いた気がした。振り向いてはいけないような気がして、私は急いでレニー様の元へと向かった。
「今度こそさようなら、僕の女王様」
人魚のお姫様は誰と結ばれる事もなく泡となり儚く消えてしまったけれど、人魚の女王様は人魚の王子様と結ばれるようだ。
人魚と人間の恋とは往々にして実らないものらしい。でも、きっとこれで良かったのだと思う。
__私の物語はこれでおしまい。
私は毎日たくさん愛されて放卵をしている。しっかりとした精がかからないと受精は出来ないが、赤ちゃんが出来る日も近いかもしれない。
「クララちゃん、どうしたんだい?ぼんやりして」
「レニー様……。私……、いえ、ちょっと疲れちゃったみたいです」
「無理させちゃったかな。この前は僕の両親に会ってもらっただろう。今度はクララちゃんのご両親にもご挨拶に行かないとね。赤ちゃんが出来る前に急がないと」
「はい……!」
新しいふたりの寝床で抱き締め合っていると、レニー様がヒレを軽く絡ませてきた。
「クララちゃん、僕の事、愛してる?」
「愛してますっ!どうしたんですか?急に……」
「もうすぐ3ヶ月経つだろう?……行ってしまうの?」
「……っ、レニー様、大切なお話があるんです。……聞いていただけますか?」
アキ様のお汁を搾り取ってからちょうど3ヶ月が経つ。前回会った場所で迎えが来るのを待っているところだ。
「僕はあそこの岩山で休んでいるから」
「ありがとうございます。レニー様」
「……本当にこれで良いのかい?」
「はい。これで良いんです」
『__私、アキ様の事、もしかしたら少しだけ、……好きなのかもしれません。でも、私が一生お側に居たいのはあなただけです、レニー様。私、アキ様とお別れします。最後に会ってこれでおしまいです』
今日はクルーザーではなく、初めて連れ去られた時に乗った小型のボートで迎えにやって来た。運転はもちろんおじさんだ。アキ様も同乗している。
ボートが私の目の前に止まる。心を奮い立たせ、アキ様に近付き話し掛ける。
「アキ様、あのですね。私、もうあなたの事搾り取る事は……」
「えぇ、分かってますよ。そんな気がしました」
「私、よく分からないんですけど……、もしかしたらあなたの事ちょっとだけ……」
「クララさん、それ以上は」
人差し指を私の唇に当てられて言葉を塞がれてしまう。
「僕の身勝手に巻き込んで申し訳ありませんでした。貴方には素敵な王子様が出来ましたし。これ以上貴方を捕まえておく事は難しそうです」
アキ様の指を掴み、精一杯の声を振り絞る。手に変な力が入ってしまう。
「……アキ様はこれからどうするのですか?お汁は……。他の女王様を探すのですか……っ?」
「ぐぅっ!く、クララさん、指が変な方向に曲がって……!い、痛いっ、あ、ありがとうございますっ」
「あらやだ、ごめんなさい!」
「やっぱり僕の女王様はクララさんだけかもしれませんね」
笑いながら、彼は言葉を続ける。
「まぁ僕は一人でも大丈夫ですよ。今までの行為の数々は、仕込んでいた複数アングルからのカメラでキチッと収めています!それを見ながら一人で出す練習をします!いざという時はクララさんのヒレの中にGPSを埋め込んでおいたので……。流石に海底では感知しませんが、海面に上がってきた時に把握出来ます」
途中から意味の分からない単語を連発されたが、もう私がいなくてもアキ様は平気なようだ。
「クララさん、目を閉じてください」
「え?あ、はい……」
言われるがままに瞳を閉じると、唇に何か柔らかい感触がした。思わず目を開いてしまうと、すぐ近くにアキ様のお顔があった。
「今のって……」
「僕からの特別な贈り物です。クララさんが、世界一幸せな人魚になれますように」
アキ様からの特別な贈り物。
「アキ様、私からも贈り物を……。もう少し海面に近付けますか?」
「はい、……このくらいで良いですか?」
「もうちょっと身を乗り出して……」
ボートからギリギリまで身を乗り出したアキ様の顔面へ、渾身の空中ヒレ捌きをプレゼントした。
「ぎゃっ!!……っっ!!」
「アキ様はもともと私のヒレ捌きを見てお気に召してくださったんでしょう?私からの精一杯の贈り物です。気に入っていただけました?」
「……っ、奥歯がっ!……ぅぅっ」
「お気に召してくださったようで何よりです!」
ボートの上で喜んで悶えているアキ様へ、最後のお別れを言った。
「さようなら、アキ様」
「えぇ、どうかお元気で、クララさん」
岩山の方へと振り向き、泳ぎ出す。波の音に掻き消されてよく聞こえなかったが、アキ様が何かを呟いた気がした。振り向いてはいけないような気がして、私は急いでレニー様の元へと向かった。
「今度こそさようなら、僕の女王様」
人魚のお姫様は誰と結ばれる事もなく泡となり儚く消えてしまったけれど、人魚の女王様は人魚の王子様と結ばれるようだ。
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__私の物語はこれでおしまい。
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