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第二章 世界旅行

エピソード55 経営難のケーキ屋と天使初コンサル(プロローグ)

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     私は今、恐らくお菓子作りに使うのであろうボールや泡立て器が置いてある調理室にいます。

    目の前にはコック帽と白衣装に身を包んだパティシエさんが神妙な面持ちで私を見つめます。

「甘すぎ⋯⋯です」

「えっ!?」

    私の宣告にパティシエさんはガクリと肩を落とし、「せっかく若い子向けに夢かわ甘々スイーツを作ったのに⋯⋯」とブツブツ呟きます。

   何を隠そう私は今、ケーキ屋さんの料理長に「ケーキは美味しいはずなのに売れない⋯⋯、自信がなくなってきたから味見をして欲しい」との相談を受け無料でケーキを食べ散らかした上に文句を言っています。

    事の顛末はこうです。

    ふらっと「飛び疲れて来たしそろそろどこかの街で休憩したいなぁ」なんて思い、立ち寄った街でたまたまこのケーキ屋さんの目の前を通り過ぎようとしました。

「お腹空きました⋯⋯けどお金ない⋯⋯死ぬ⋯⋯」

     街に立ち寄ったはいいけど、財布の中身がスッカラカンな私は食事にありつく事も出来ずにお腹を鳴らせてフラフラと歩いていました。

     そんな時に、肩まで切りそろえられた紅色の髪に、夕焼け色の瞳をした女性に「ちょっと」、と話しかけられました。空腹のせいかエリルに見えました。

    その女性は、コック帽と白衣装だったので、「食べ物にありつけるかも」と思った私は「はい?どうされましたか?」と余所行きの声で媚びへつらうように可愛らしく首を傾げます。

「ウチのケーキ味見してくれない⋯⋯?」、女性は落胆した様子をしていました。

    一方の私は、はい来ました、甘い物はあまり得意ではありませんが着いていきます、と二つ返事で了承をしました。

    そして空腹感に任せてのこのこと着いていきました。

   そして今に至ります。

「甘すぎ、かぁ。だからウチのケーキ売れないのかな」

「私が甘いもの得意じゃないだけなので、好きな人は好きだと思いますよ?」

    私の慰めに料理長さんは「売上が物語っているわ」と肩を落としました。あらら。

「どうして売れないでしょうね?甘いものが好きな人には受けると思うんですけど⋯⋯」

「この街には古くから馴染んでるお菓子屋さんが沢山あるから皆そっちに買いに行くのよ。このままじゃ経営難でお店を畳まなくてはいけなくなるわ⋯⋯」

   料理長はわなわなと震えだしました、そして「憧れだったケーキ屋を開いたのはいいけど、こんなんじゃ娘だっているのに⋯⋯これから学費もかかるし習い事だってさせたいし」と凄く切実な悩みをブツブツと言い始めました。

    お店をプロデュースした事は無かったんですけど、仕方ないですね⋯⋯。食べ物の恨みは大きいと言いますが、食べ物を頂いた感謝も大きいということで人肌脱ぎますか。

「料理長さん、私がこのお店をプロデュースして見事に繁盛させて見せますよ」

    いざ、私のプロデュース力が試される時です。





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