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第一章カトリの街

エピソード41 リリエル書店とユリーラさん

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「おはようございます⋯⋯」


早朝。

私はリリエル書店にやって来ました。


リリエル書店に着くと、既にレリルさんが私を待っていました。寒いし先に入ったらいいのにと思いましたが、どうやら心細くて入るに入れなかったそうです。


「良かった、来てくれたんですね」


「さすがに来ないわけはいかないと思ったので」


適当な挨拶を済ませた後、私たちは互いに書店に入ろうと言い出せず、店の前で彷徨っていると。


「アンタたち、何してるの?」


店の中から分けた前髪に茶髪の髪と瞳、そして何より乱雑に着こなされた服装をしたリリエル書店の店主が出てきました。


ちなみに年は妙齢、とでも言った所でしょうか。



「あの、私魔法学校の生徒で⋯⋯」


「ああ、そういえば生徒を寄越すって連絡が入ってたね」


レリルさん素の状態だと人見知りなのでしょうか、店主さんを前にオドオドとしています。


まあ人見知りでなくてもこの店主さん、中々乱暴というか圧のある雰囲気を纏っています。


店主さんはチラリと私に気が付いたようで、「お」という表情をしました。


「アンタ、いっつも立ち読みに来る⋯⋯」


「レミリエルです、レリルさんの付き添い出来ました」


ああ、やっぱり立ち読みの人で認識されていましたか。


「レミリエル、今日は立ち読みしていった分しっかり働いてもらうからね」


「ええーー」


「ええーじゃないから、お前何冊タダで読んだと思ってるんだ」


何故か付き添いできたのに私に飛び火してるんですが!?


「え、と⋯⋯頑張ります」


助け舟出せという視線をレリルさんに送ってみるも、ガチガチに緊張していて全く視線に気付いて貰えませんでした。


「はぁ⋯⋯」


「そうだ、私はここの店主のユリーラだ。よろしく頼む」


ユリーラさんですか。


いい名前ですね、声には出しませんが。


「じゃあ早速働いてもらうからな。ホコリ取りで店中の本に被さったホコリを取ってもらう」


「店中ですか?」


「店中なんて、またまたご冗談を」


「そうだレリル。そして黙れレミリエル」


怒られました。


店中をぐるりと見渡すと、そこそこ広いと言える大きさです。


全て掃除するとなるとかなり骨の折れる作業になります。


「いいから、ん」


ユリーラさんは私たちは二人にホコリ取りを手渡して、お客のお会計を始めました。


「ユリーラさん忙しそうなので、掃除しましょうよ、レミリエルさん」


「はあ、やりますか」


余所行きの声で会計に来たお客を次々に捌いていくユリーラさんに感心しつつも、パタパタと本に被さったホコリを払っていきます。


「あの、ファンタスティックな恋って置いてますか?」


「は、はい?」


「恋愛小説なんですけど⋯⋯」


いきなりお客さんに話しかけられました。


少し同様してしまいましたが、持ち直してどこに本が置いてあったか脳内で探します。


恋愛小説の方はあまり見ないので、よく分からないと脳からの司令が降りました。


「あのぉ、ありますかね」


「えっ、あ、ご自分でお探し下さい」


お客さんに急かされて、咄嗟に意に反した言葉が出てしまいました。


すぐさまユリーラさんから「こらぁ!レミリエル」と怒声が飛んできます。


「お客様、ファンタスティックな恋はこちらにございます」


「あ、ああ。ありがとうございます」


ユリーラさん、接客の態度は凄く丁寧で二面性を感じてしまいます。


そして「次下手なこと言ったら潰すぞ」という視線が飛んできました。


怖い。


これはレリルさんも怒られてしまうのではと思いましたが意外や意外。


お客さんに話しかけられても「少々お待ちください」とすぐさまユリーラさんに聞きに行ったり、丁寧に本を掃除しています。


「レリルさん意外と真面目なんですね」


「怒られたくないだけです」


レリルさんはきっぱりと言い放ちました。


確かに、レリルさん怒られるのとか特に嫌がりそうですね。


「なので仕事に戻ります!」


「え、ああ、はい」


私との会話を早めに切り上げ、レリルさんは本をパタパタとはたいています。


「一人でも平気だったんじゃないんですか⋯⋯」


私の呟きを誰が拾うわけでもなく、ただ淡々と時間が流れていきました。


もう少し頼ってくれてもいいのにと思いましたが、考えれば考える程モヤモヤします。


そうした中、時間は過ぎていきました。



「おいお前ら、昼休憩だ」


私達はユリーラさんに休憩室へと案内されました。


レリルさんは「ありがとうございます。また午後からもよろしくお願いします」とユリーラさんに頭を下げていました。


初めて会った時とは大違いです。


モヤモヤした気持ちのまま私たちは休憩へと入りました。



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