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第二十二話 魔王
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「魔王って本当にあの魔王ですか⋯⋯?」
「お姉ちゃん、あの人怖いよぉ⋯⋯! お母様が死んじゃう!!」
ミレイナも肌で魔王の邪悪な気配を感じとって只者ではないと判断したのか、私を掴むての力が強くなった。
私の問いかけに魔王ユシリルは「そうだ」と頷いて見せた。
街は魔王ユシリルが放ったであろう炎魔法で燃え盛っていて気温が高いせいか頬に汗が伝う。
いや、どっちかと言うとこれは気温のせいというか冷や汗だよな。
それに魔王の存在は幼い頃からずっと聞かされてきた。
私がお母様から聞いた魔王の特徴は人間に害をなすもの、見た目は幼く少女の様である事、そして遭遇したらまず逃げること。
そして聞いた外見だと魔王は腰まで伸びた銀の髪に緋色の瞳、服装はゴシックな衣装にマントを羽織っている。
今目の前にいる相手は私が幼い頃から聞いてきた条件と髪型から服装までも全てが一致する。多分他人の空似ということはまずない。
「実を言うと私はお前達姉妹を探していたんだ」
「私達を探しにって、アナタとは何の関わりもなかったのにどうして⋯⋯」
「ルリーナ! 耳を貸さないで、今すぐにでも逃げなさい!!」
魔王の問いかけに答えるとお母様が絶叫を上げるかのように叫んだ。
ただ実の母が殺されかけているのに何の気なしに逃げられる娘なんてまずいない。
私とミレイナはその場で立ち尽くした。
「君は随分とうるさいな。母親の愛情というやつか? 愚かだな、今口を開かなければ命まで取るつもりは無かったのに」
「アナタに⋯⋯娘を差し出す気なんて⋯⋯ある訳ないでしょ⋯⋯」、再び強く首を絞められたお母様は途切れ途切れに語る。
「そうか、じゃあ死ね」
ここから先は本当に思い出したくない。
全力を出した魔王によってお母様は絞殺。
怒りで冷静さをかいた私は魔王に飛びかかるも即死、本当にあっけない位に命を奪われて「人間」としての人生を終えた。
人間としての人生を終えた私が次に目覚めたのは幽体としてだった。
「君は妹の方か、名はなんと言う」
「名前はミレイナ。私に何の用ですか?」
「要件はひとつ、君を私の六本の指にネクロマンサーとして加えたい」
幽体になって時既にミレイナは魔王軍れの勧誘をされていて、しかも六人しかいないと言われる魔王軍の幹部への勧誘だった。
お願いミレイナ逃げて。逃げられるかなんて分からないけどその場から逃げて。
私の思いとは裏腹にミレイナは打って変わって淡々とした様子をしている。
目の前で母と姉が殺された十歳の子供だとは思えないくらいに落ち着いている。
「ネクロマンサーですか、何故私が選ばれたのですか?」
「強力な魔法使いの姉妹がいると聞いてね、まだ若いみたいだし魔王軍に引き入れるべきだと思った」
「私は人間ですが」
「そんなの私の力があればどうとでもなる。姉の方は冷静さをかいた時点で失格だったが、君のその歳で家族を失っても平静を保てている、是非私の魔王軍に来てもらいたい」
多分ここで断ったらミレイナは殺されてしまうし、ネクロマンサーという魔物になっても私はミレイナに生きていて欲しい。
「分かりました、よろしくお願いします」
「話が早くて助かる。じゃあネクロマンサーになる為に魔王の魔力を君に捧げよう」
「ん、お願いします」
けれど何処かで私達を殺した魔王を憎んで、断って欲しいという気持ちがあったせいか、あっさりと魔王軍への加入の道を決めたミレイナに少しだけ失望してしまった。
それから直ぐにミレイナはネクロマンサーとして適合して、容姿は変わらずとも確実に人間ではなくなり、
亡者を従える力を手に入れたミレイナは私を初めとする多くの亡者と共に人間の住む街を手当たり次第に攻撃をして魔物たちの領地とした。
いくら人間に「助けてくれ」と懇願されてもミレイナは冷酷無慈悲に攻撃する事を辞めなかった。
元々明るくて優しかったミレイナがここまでの豹変ぶりを見せた事、私なんかにはもうミレイナの心境が分からなくなっていた。
⚫
「そしてこの街もいつもと同じ様に占領しようとした所、勇者であるノエルさんに会いました」
「お二人にそんな過去があったなんて、お話してくれてありがとうございました」
「妹は本当にいい子なんです、だからこれ以上ミレイナに罪を重ねて欲しくない」
実の妹が大量に人を殺めるところなんて見たくなはいし、そうだろうな。
次の言葉を言いにくそうに息を飲むルリーナさんを見て、何が言いたいのか容易に想像がついた。
「妹を、これ以上罪を重ねないように殺して下さい」
「やっぱりそう来ますよね⋯⋯」
随分とドラマチックな展開になったけど、さてどうしたものか。
悩む間もなく命の取り合いになる衝突は避けられない、ボクに元人間が殺せるかどうか⋯⋯。
結論は直ぐに出る訳でもなく、ボクは困った様に眉を寄せる事しか出来なかった。
「お姉ちゃん、あの人怖いよぉ⋯⋯! お母様が死んじゃう!!」
ミレイナも肌で魔王の邪悪な気配を感じとって只者ではないと判断したのか、私を掴むての力が強くなった。
私の問いかけに魔王ユシリルは「そうだ」と頷いて見せた。
街は魔王ユシリルが放ったであろう炎魔法で燃え盛っていて気温が高いせいか頬に汗が伝う。
いや、どっちかと言うとこれは気温のせいというか冷や汗だよな。
それに魔王の存在は幼い頃からずっと聞かされてきた。
私がお母様から聞いた魔王の特徴は人間に害をなすもの、見た目は幼く少女の様である事、そして遭遇したらまず逃げること。
そして聞いた外見だと魔王は腰まで伸びた銀の髪に緋色の瞳、服装はゴシックな衣装にマントを羽織っている。
今目の前にいる相手は私が幼い頃から聞いてきた条件と髪型から服装までも全てが一致する。多分他人の空似ということはまずない。
「実を言うと私はお前達姉妹を探していたんだ」
「私達を探しにって、アナタとは何の関わりもなかったのにどうして⋯⋯」
「ルリーナ! 耳を貸さないで、今すぐにでも逃げなさい!!」
魔王の問いかけに答えるとお母様が絶叫を上げるかのように叫んだ。
ただ実の母が殺されかけているのに何の気なしに逃げられる娘なんてまずいない。
私とミレイナはその場で立ち尽くした。
「君は随分とうるさいな。母親の愛情というやつか? 愚かだな、今口を開かなければ命まで取るつもりは無かったのに」
「アナタに⋯⋯娘を差し出す気なんて⋯⋯ある訳ないでしょ⋯⋯」、再び強く首を絞められたお母様は途切れ途切れに語る。
「そうか、じゃあ死ね」
ここから先は本当に思い出したくない。
全力を出した魔王によってお母様は絞殺。
怒りで冷静さをかいた私は魔王に飛びかかるも即死、本当にあっけない位に命を奪われて「人間」としての人生を終えた。
人間としての人生を終えた私が次に目覚めたのは幽体としてだった。
「君は妹の方か、名はなんと言う」
「名前はミレイナ。私に何の用ですか?」
「要件はひとつ、君を私の六本の指にネクロマンサーとして加えたい」
幽体になって時既にミレイナは魔王軍れの勧誘をされていて、しかも六人しかいないと言われる魔王軍の幹部への勧誘だった。
お願いミレイナ逃げて。逃げられるかなんて分からないけどその場から逃げて。
私の思いとは裏腹にミレイナは打って変わって淡々とした様子をしている。
目の前で母と姉が殺された十歳の子供だとは思えないくらいに落ち着いている。
「ネクロマンサーですか、何故私が選ばれたのですか?」
「強力な魔法使いの姉妹がいると聞いてね、まだ若いみたいだし魔王軍に引き入れるべきだと思った」
「私は人間ですが」
「そんなの私の力があればどうとでもなる。姉の方は冷静さをかいた時点で失格だったが、君のその歳で家族を失っても平静を保てている、是非私の魔王軍に来てもらいたい」
多分ここで断ったらミレイナは殺されてしまうし、ネクロマンサーという魔物になっても私はミレイナに生きていて欲しい。
「分かりました、よろしくお願いします」
「話が早くて助かる。じゃあネクロマンサーになる為に魔王の魔力を君に捧げよう」
「ん、お願いします」
けれど何処かで私達を殺した魔王を憎んで、断って欲しいという気持ちがあったせいか、あっさりと魔王軍への加入の道を決めたミレイナに少しだけ失望してしまった。
それから直ぐにミレイナはネクロマンサーとして適合して、容姿は変わらずとも確実に人間ではなくなり、
亡者を従える力を手に入れたミレイナは私を初めとする多くの亡者と共に人間の住む街を手当たり次第に攻撃をして魔物たちの領地とした。
いくら人間に「助けてくれ」と懇願されてもミレイナは冷酷無慈悲に攻撃する事を辞めなかった。
元々明るくて優しかったミレイナがここまでの豹変ぶりを見せた事、私なんかにはもうミレイナの心境が分からなくなっていた。
⚫
「そしてこの街もいつもと同じ様に占領しようとした所、勇者であるノエルさんに会いました」
「お二人にそんな過去があったなんて、お話してくれてありがとうございました」
「妹は本当にいい子なんです、だからこれ以上ミレイナに罪を重ねて欲しくない」
実の妹が大量に人を殺めるところなんて見たくなはいし、そうだろうな。
次の言葉を言いにくそうに息を飲むルリーナさんを見て、何が言いたいのか容易に想像がついた。
「妹を、これ以上罪を重ねないように殺して下さい」
「やっぱりそう来ますよね⋯⋯」
随分とドラマチックな展開になったけど、さてどうしたものか。
悩む間もなく命の取り合いになる衝突は避けられない、ボクに元人間が殺せるかどうか⋯⋯。
結論は直ぐに出る訳でもなく、ボクは困った様に眉を寄せる事しか出来なかった。
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