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第二十一話 秘密
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「ネクロマンサーとルリーナさんって姉妹なんですか?」
「それはっ⋯⋯違うんです⋯⋯」
ボクの問いかけにルリーナさんは「違う」と都合が悪そうに濁った瑠璃色の瞳を逸らした。
忌み嫌われてるネクロマンサーと血縁関係だったと知られれば、ボクからどんな目で見られるか分かったものでは無いし隠したいんだろうな。
「違うんですっ⋯⋯魔王のせいでおかしくなってるだけで、ミレイナは本当は良い子なんです!」
「違う」と都合が悪そうにしていたのは自分との血縁関係が露呈することじゃなくて、ミレイナが悪く思われる事が嫌だったということか。
いや実際印象最悪なんだけどね。やってる事集団殺人未遂なわけだし。
そして罪に問うとしたら暴行罪、こっちの世界で適用されるのかどうかは分かんないけど。
「私とミレイナは元々故郷でもそこそこ有名な魔女の家計に産まれました」
「唐突に過去編ですか?」
「ミレイナのことを勘違いされたままは嫌なので、聞いてくれますか?」
「まあ、どうぞ」
どちらにせよ敵の情報は知っておいて損は無いだろうし「長いのは嫌ですよ」と付け加えたけど聞いておく事にする。
ボクが聞く体勢に入ったのを合図に、ルリーナさんは語り始めた。
「先程も言いましたけど、私達は元々そこそこ有名な魔女の家に産まれました」
「ほうほう」
「親が有名だ必然的に子もまた注目の的になるもので、親の顔に泥を塗らないように毎日必死に魔法を練習しました」
親が有名人だと子供にかかる期待が大きいっていうのはどこの世界でも同じなんだな。
ボクも両親も脚光を浴びる所かどこにでもいる一般人だったから、「へー大変そうー」位の感想しか出てこない。
「なので努力は報われるというか、ミレイナと私は歳の割にはかなりの魔法の実力が着きました。地元では天才姉妹ともてはやされるくらいにです」
「そこそこ順風満帆じゃないですか」
「そうですよ! 順風満帆だったはずなんです、皆からの期待を一新に背負って有力な魔女としての人生を送るはずだった!!!」
「順風満帆」という言葉が癪に触ったのか、ルリーナさんは初めて大声を挙げた。
一瞬にして空気が張りつめボクの身体は驚いたのか、ビクリと肩を震わせる。
「す、すみませんっ! つい感情的になってしまいました⋯⋯その⋯⋯」
「最後まで聞くので、続けて下さい」
「ありがとうございます。私達が地元の外でも天才姉妹の名で知れ渡った頃、噂を聞き付けたのかは知りませんが魔王軍がやって来ました」
「魔王軍⋯⋯」
「ほんと、あの日から全てが狂いましたよ」
ここからのルリーナさんの話は中々に凄惨なもので、あまりの内容に聞いていて思わず顔をしかめてしまった。
⚫
数年前の雪が降りしきる寒い日のこと、私が十七歳でミレイナがまだ十歳の頃に事件は起きた。
その日私達はちょっとの用事、確か親のお使いだっけ? 詳しくは覚えてないけど確かそんな様な感じで街を出ていた。
で、ここからはしっかりと脳に焼き付いているし、今でも鮮明に街に戻った時の地獄絵図が思い出せる。
ミレイナとホウキに乗って街に着いた時、建物は既に半壊していて至る所に炎が燃え広がっていた。後、倒れている人たちも沢山いる。
「お姉ちゃん⋯⋯これどうなって⋯⋯」
「ミレイナ、私達ここにいちゃいけない気がする」
当時まだ幼かったミレイナが呆然と私の袖を引っ張ってくる。
ミレイナには分からないかもしれないけど私はもう十七歳だし、何者かによって襲撃があった事は直ぐに察しがついた。
その上でこの街に留まることは危険だと判断した。
「お姉ちゃん、私達ここにいちゃいけないの?」
「ミレイナ、周りを見たら分かるでしょ? ここにいたら悪い奴に襲われちゃうかもしれないもん」
「悪いやついるの? だったらお母様は? お母様は強い魔女だから大丈夫だよね!?」
「それはっ⋯⋯」
幼い子供にも分かるように「直ぐに逃げないと」説明したつもりだったけど、どうやらミレイナはお母様が心配だったみたいだ。
いくらお母様が強い魔女でも、街を半壊されるような相手だったら勝てるかどうかなんて分からない。
信じたくはないけど多分、お母様は負ける。
薄情かもしれないけど私はお母様がもし命の瀬戸際に立たされたら、迷わず見捨ててミレイナと逃げるつもりだ。
「お姉ちゃん! お母様の所に行こうよ、ねえ!!」
「お母様は強いから心配しなくても大丈夫。逆に今行ったらお母様の邪魔になっちゃうよ?」
「でもお母様に会いたい! お母様は強いから私たちが行っても守ってくれるもん」
ミレイナはこうなったら頑固だし、ほとほと困った。
そりゃあ私だって今すぐお母様に会いたいけど今回ばかりは折れる訳には行かない。
私の選択一つで妹の命がかかってるんだから、自分の気持ちは押し殺して冷静にならないと。
「ルリーナ⋯⋯ミレイナ⋯⋯逃げなさい⋯⋯」
そんな事を考えていると今誰よりも会いたかった母の掠れた声が何処からか聞こえてきた。
今にも息絶えそうな声色だ。
「お母様っ⋯⋯!?」
「お母様!! 大丈夫!?」
私達から少し離れた所に小さな少女に首を絞められ、既に瀕死の状態に陥っているお母様が居た。
腕の経つ魔女として知られていたお母様が私よりも幼く見える少女に殺されかけているという事実が信じられなくて、「ふぇ?」なんて間の抜けた声を出してしまった。
ただその少女がこちらを見た時直ぐに、お母様が敗北を喫した理由が直ぐにわかった。
少女は冷たい眼差しをこちらに向けながら口を開いた。
「今巷を騒がしている天才姉妹も言うのはお前達だな?」
少女はお母様の首を絞めながら品定めするようにこちらを見てくる。
本能的にミレイナを自分の後ろへと、少女の視界に入らないように隠す。
そして少女はにたりと不敵な笑みを浮かべて名乗った。
「私の名前は魔王ユシリル。君たち人類の敵だよ」
この日、ずっと平穏な毎日を過ごしていた私たちの目の前に魔王が現れた。
そして、何もかも歯車がズレるかのように崩れ去っていく始まりの日だった。
「それはっ⋯⋯違うんです⋯⋯」
ボクの問いかけにルリーナさんは「違う」と都合が悪そうに濁った瑠璃色の瞳を逸らした。
忌み嫌われてるネクロマンサーと血縁関係だったと知られれば、ボクからどんな目で見られるか分かったものでは無いし隠したいんだろうな。
「違うんですっ⋯⋯魔王のせいでおかしくなってるだけで、ミレイナは本当は良い子なんです!」
「違う」と都合が悪そうにしていたのは自分との血縁関係が露呈することじゃなくて、ミレイナが悪く思われる事が嫌だったということか。
いや実際印象最悪なんだけどね。やってる事集団殺人未遂なわけだし。
そして罪に問うとしたら暴行罪、こっちの世界で適用されるのかどうかは分かんないけど。
「私とミレイナは元々故郷でもそこそこ有名な魔女の家計に産まれました」
「唐突に過去編ですか?」
「ミレイナのことを勘違いされたままは嫌なので、聞いてくれますか?」
「まあ、どうぞ」
どちらにせよ敵の情報は知っておいて損は無いだろうし「長いのは嫌ですよ」と付け加えたけど聞いておく事にする。
ボクが聞く体勢に入ったのを合図に、ルリーナさんは語り始めた。
「先程も言いましたけど、私達は元々そこそこ有名な魔女の家に産まれました」
「ほうほう」
「親が有名だ必然的に子もまた注目の的になるもので、親の顔に泥を塗らないように毎日必死に魔法を練習しました」
親が有名人だと子供にかかる期待が大きいっていうのはどこの世界でも同じなんだな。
ボクも両親も脚光を浴びる所かどこにでもいる一般人だったから、「へー大変そうー」位の感想しか出てこない。
「なので努力は報われるというか、ミレイナと私は歳の割にはかなりの魔法の実力が着きました。地元では天才姉妹ともてはやされるくらいにです」
「そこそこ順風満帆じゃないですか」
「そうですよ! 順風満帆だったはずなんです、皆からの期待を一新に背負って有力な魔女としての人生を送るはずだった!!!」
「順風満帆」という言葉が癪に触ったのか、ルリーナさんは初めて大声を挙げた。
一瞬にして空気が張りつめボクの身体は驚いたのか、ビクリと肩を震わせる。
「す、すみませんっ! つい感情的になってしまいました⋯⋯その⋯⋯」
「最後まで聞くので、続けて下さい」
「ありがとうございます。私達が地元の外でも天才姉妹の名で知れ渡った頃、噂を聞き付けたのかは知りませんが魔王軍がやって来ました」
「魔王軍⋯⋯」
「ほんと、あの日から全てが狂いましたよ」
ここからのルリーナさんの話は中々に凄惨なもので、あまりの内容に聞いていて思わず顔をしかめてしまった。
⚫
数年前の雪が降りしきる寒い日のこと、私が十七歳でミレイナがまだ十歳の頃に事件は起きた。
その日私達はちょっとの用事、確か親のお使いだっけ? 詳しくは覚えてないけど確かそんな様な感じで街を出ていた。
で、ここからはしっかりと脳に焼き付いているし、今でも鮮明に街に戻った時の地獄絵図が思い出せる。
ミレイナとホウキに乗って街に着いた時、建物は既に半壊していて至る所に炎が燃え広がっていた。後、倒れている人たちも沢山いる。
「お姉ちゃん⋯⋯これどうなって⋯⋯」
「ミレイナ、私達ここにいちゃいけない気がする」
当時まだ幼かったミレイナが呆然と私の袖を引っ張ってくる。
ミレイナには分からないかもしれないけど私はもう十七歳だし、何者かによって襲撃があった事は直ぐに察しがついた。
その上でこの街に留まることは危険だと判断した。
「お姉ちゃん、私達ここにいちゃいけないの?」
「ミレイナ、周りを見たら分かるでしょ? ここにいたら悪い奴に襲われちゃうかもしれないもん」
「悪いやついるの? だったらお母様は? お母様は強い魔女だから大丈夫だよね!?」
「それはっ⋯⋯」
幼い子供にも分かるように「直ぐに逃げないと」説明したつもりだったけど、どうやらミレイナはお母様が心配だったみたいだ。
いくらお母様が強い魔女でも、街を半壊されるような相手だったら勝てるかどうかなんて分からない。
信じたくはないけど多分、お母様は負ける。
薄情かもしれないけど私はお母様がもし命の瀬戸際に立たされたら、迷わず見捨ててミレイナと逃げるつもりだ。
「お姉ちゃん! お母様の所に行こうよ、ねえ!!」
「お母様は強いから心配しなくても大丈夫。逆に今行ったらお母様の邪魔になっちゃうよ?」
「でもお母様に会いたい! お母様は強いから私たちが行っても守ってくれるもん」
ミレイナはこうなったら頑固だし、ほとほと困った。
そりゃあ私だって今すぐお母様に会いたいけど今回ばかりは折れる訳には行かない。
私の選択一つで妹の命がかかってるんだから、自分の気持ちは押し殺して冷静にならないと。
「ルリーナ⋯⋯ミレイナ⋯⋯逃げなさい⋯⋯」
そんな事を考えていると今誰よりも会いたかった母の掠れた声が何処からか聞こえてきた。
今にも息絶えそうな声色だ。
「お母様っ⋯⋯!?」
「お母様!! 大丈夫!?」
私達から少し離れた所に小さな少女に首を絞められ、既に瀕死の状態に陥っているお母様が居た。
腕の経つ魔女として知られていたお母様が私よりも幼く見える少女に殺されかけているという事実が信じられなくて、「ふぇ?」なんて間の抜けた声を出してしまった。
ただその少女がこちらを見た時直ぐに、お母様が敗北を喫した理由が直ぐにわかった。
少女は冷たい眼差しをこちらに向けながら口を開いた。
「今巷を騒がしている天才姉妹も言うのはお前達だな?」
少女はお母様の首を絞めながら品定めするようにこちらを見てくる。
本能的にミレイナを自分の後ろへと、少女の視界に入らないように隠す。
そして少女はにたりと不敵な笑みを浮かべて名乗った。
「私の名前は魔王ユシリル。君たち人類の敵だよ」
この日、ずっと平穏な毎日を過ごしていた私たちの目の前に魔王が現れた。
そして、何もかも歯車がズレるかのように崩れ去っていく始まりの日だった。
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