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第七話 初めて戦う魔物がドラゴンだった
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初めての街の外の世界。
ルアさんと二人で街を出てた先には何も無いだだっ広い草原が広がっていて、ボクの空色の瞳は晴れた青空を映した。
そして草原には見慣れない生物達、いやモンスターが蠢いていて流石ファンタジー世界と思わず舌を巻いてしまう。
ふと、ボクの足元に何か冷たくて柔らかい感触が伝わる。
「えっ!! 何ですかこれ!?」
「ノエルお姉さんそれスライムです! 本当に、本当に雑魚なんですけど敵意を持っているので、気を付けて!」
足元を見るとゼリーの様な水色の生物が引っ付いていた。
ルアさん曰く、スライムらしい。そして本当に、本当に雑魚らしい。
「いたた⋯⋯」、どういう原理かは知らないが、スライムがボクの足に噛み付いているのか若干の痛みが走る。
「だから敵意を持っているので。早く倒した方がいいですよ」
「マジですか·····。えいっ!」
敵意を持っていると知ってボクは足元のスライムを、引っ付かれていないもう片方の足で思い切り踏み潰す。
踏み潰すと「グチャッ」という音ともにスライムは破裂した。正直なんかグロい。
「うわっ⋯⋯!? キモ!?」
「あはは、スライムはすぐ破裂しますからねー。普通に体液とかまろびでるので気持ち悪いですよね。私も苦手です」
「はぁ·····最悪。服にかかりましたし」
ご機嫌を斜めにしつつも、ボクはある事を思い付く。
もしもここが王道のファンタジー世界なら、魔物を倒した報酬として経験値を得て、レベルアップの概念があるのでは。
ほら、良く自分のステータスが数値化されて表情されるのがゲームでもあるだろう。
「ねえルアさん。魔物を倒したら経験値を得られて、レベルアップするとかご存知です?」
「え? 魔物を倒すだけでレベルアップできたら、人間も獣人も人生苦労しませんよ? 数をこなせば出来る様になる人が多いから、そう感じるだけで、数をこなしてもできない人はいつまでも出来ませんし」
「現実的な意見ありがとうございます」
「いえいえ?」
レベルアップシステム、無かったみたい。
まあ確かに経験値が目に見えて数値化されて入ってきて、自分の能力が数値化されて測られるなんて嫌か。
他人と見比べた時に明らかに数字で優劣が着くわけだし。
流石にそこまでこの世界はファンタジー気質ではないみたいだ。
「ノエルお姉さん向こうにドラゴンがいますよ。怖いですねぇ·····」
「うわ、関わらない様にして行きましょう」
ルアさんの指さす方向に、ゾウ程度のサイズの赤い皮膚のドラゴンがいた。
大きさがリアルなだけに逆に関わり合いたくない。
「ボクはそんなに魔物と戦う気はないので、ホウキに乗って一気に草原を駆け抜けちゃいましょう」
「えぇ⋯⋯いいんですか? 勇者なら魔物を倒すべきじゃ」
「いやいや⋯⋯別に魔王だけ倒せば良くないですか?」
「魔物とは、魔王の所有物という意味で魔物です。つまり皆人間に敵意を持った、魔王の手先です。コツコツ倒していった方が良くないですか?」
ルアさんの説明が入る。
魔物ってこの世界だとそういう意味だったんだ。
ていうか魔物達は所有物扱いされてよく平気だな。ボクだったら絶対無理だ。
「コツコツ倒せって言われても。ボクまだあのドラゴンを倒せる程強くないですよ?」
「本当の実力とは自分でも気付かないものです! さあノエルお姉さんいざファイティン!!」
「戦いませんからね。頭から食い殺されるのがオチです」
ゾウ程度の動物園等で見知った大きさである分、リアルな相手の脅威を知っている。
奴等レベルとなれば人間なんて叩き付ければ直ぐに壊れるガラス細工のような物だ。
そんな相手と戦う気にはならない。
ましてや相手はドラゴンだ。絶対死ぬ。
「でも街の外に出た人達が魔物に襲われたら大変ですよ? 人助けだと思って助けてみては」
「ボク、別にあの街の人達あまり好きでは無いので。そう言われても助ける気にはなりません。ほら行きますよ」
ボクはホウキに跨り、ルアさんに後ろに乗るように促す。
ボクは慈善事業で勇者をやっていない。
自分がお姫様になる為に冒険に出ている。
当然助ける人間はボク自身が決める。
「私もあの街の人達嫌いだし別にいいや!」
「でしょう? またかなりの速度で飛ぶかもしれないので、しっかり捕まっていて下さい」
「はい! 了解です!」
ルアさんがボクの身体をギュッと掴んだのを確認すると、「ホウキさん、飛んでください」と声に出す。
するとふわりとボク達を乗せてホウキが宙に浮く。
ホウキの能力発動条件はどうやら声に出す事みたいだ。
もしかしたらホウキにも意志というものがあるのか。
「ホウキさん、全速力でこの草原を駆け抜けて下さい」
まるでボクの言葉が聞こえているように、ホウキは一直線に物凄い速度で風を切り飛び始めた。
「ちょ、ルアさん落ちないでくださいねっ⋯⋯!」
「はい、しっかり掴まってます!!」
「痛い痛い! どんな力で掴んでるんですか!?」
痛みが走る程の力で身体を捕まれ、あまり前を見ていなかったせいか。
気が付けば目の前にあのドラゴンがいた。
ヤバい、ぶつかった上で殺される。
「ぐはっ!」
「うわっ!?」
「グルゥ!?」
案の定衝突し、ボクとルアさんとドラゴンの三人? が一斉に声を上げた。
ボクたちはホウキからぶつかった衝撃で、振り落とされて地面に転がる。痛い。
「いてっ⋯⋯ルアさん大丈夫ですかっ?」
「あ、私は着地したので大丈夫です。大丈夫じゃないのはノエルお姉さんだけです」
「そうですか、残念ながらお互い大丈夫じゃなさそうですよ」
ボクは此方を睨み付けながら「グルル」と唸る、ドラゴンを指さす。
いきなり飛んで来た人間に衝突させられたら、そりゃあ怒るか。
ガチ死にそう。
「グルゥ⋯⋯貴様ら、我に何か恨みでもあるのか」
「え、アナタ喋れるんですか」
唸りをあげることしか出来ないと思っていたけど、ドラゴンは言葉を発し始めた。
ルアさんがこっそり、「ドラゴンは知能が高いので人間の言葉を理解しています」とボクに耳打ちした。
成程、なら素直に謝れば許してもらえるかもしれない。
「あの、ボクまだホウキの扱いに慣れていなくて、ぶつかってしまってすみませんでした」
「そうか。死んで償うのなら許そう」
「はい?」
「お主勇者だろう? 見たら分かる、お主の杖から聖なる魔力を感じる。遭遇した勇者は必ず殺せというのが魔法様からの命令だ」
ドラゴンはボクの事を一瞬で勇者だと見抜いた。
てか聖なる魔力って何。
そんな大層な物放っている自覚はない。
よく分からないけどその魔力、位置情報オフみたいな感じで消せないかな。
「ちょちょちょ! ノエルお姉さんヤバいですよ! このままじゃ私達殺されちゃいます!!」
「ハッ! そうでした⋯⋯」
悠長な事を考えている暇はない。
ルアさんはボクの横で震えている。
もう完全にドラゴンに萎縮してしまっている。
その証拠に「食べるのはノエルお姉さんだけで、私は故郷に帰らなきゃいけないので⋯⋯」
等とほざいている。
ふざけるな。
「ルアさん。貴様ボクを売る気で?」
「ノエルお姉さん、大人しく売られてください! ごめんなさい!」
「貴様ら話は済んだか? 直ぐに仲間を売る辺り貴様ら下等生物には幻滅する。醜い争いは止めて両方我に食われろ」
ドラゴンはボクたちの言い争っている姿を見て威圧するように睨みつける。
これはルアさんと言い争っている場合じゃない。
ボクとルアさんは瞬時に横目でアイコンタクトを取る。
ルアさんの綺麗な桃色の瞳はまるで出会った当初のような恐怖に染った怯えた色に変わっていた。
「ルアさん、出来るだけ遠くに下がっていてください」
「で、でも⋯⋯ノエルお姉さんは? 本気で置いて逃げるなんて、流石に無理ですよ⋯⋯」
「ボクにとっておきの名案があります。いいから、早く」
ボクがこの状況を打開する考えがあるという事を察したのか、ルアさんは意外と大人しく出来るだけ遠くへと駆けていった。
「行かせるか! 我の全身を蝕む獄炎を喰らえ!」
「おっと、技を出す前にネタバレをしてしまったら幾らでも対策が取れてしまいますよ?」
ドラゴンがご丁寧に今から繰り出す技を解説し終えて、ルアさん目掛けてくぱっと大口を開いた所で、ボクは杖を振るい、炎の弾をドラゴンの体内に放り込む。
「ぐあぁっ!?」
「あ、炎を扱う癖に他者からの炎は効くんですね」
ドラゴンが炎を放つ前にボクの炎が炸裂して、相手の技は不発に終わる。
その間にルアさんはできるだけ遠くへと避難していた。
「ノエルお姉さん、本当に大丈夫なんですか!? 考えってなんですか!?」遠くからルアさんが叫ぶ声が聞こえる。
「ん、そうですね⋯⋯ボクの考えは⋯⋯」
ボクが話している途中なのに「小娘っ⋯⋯やってくれたな!! 下等生物が!」と憤慨したドラゴンが怒声を浴びせてきた。
ただでさえ赤い皮膚をしているのに、怒りでさらに赤くなっている。
「小娘、我に勝てる秘策があるらしいな。下等生物の人間が足りない脳で弾き出したその策とやらを我に聞かせてくれないか?」
「随分嫌味な言い方ですね。その下等生物に一撃くらわせられてる癖に」
「減らず口をっ⋯⋯先程の一撃は油断していただけで⋯⋯!」
油断していようがしまいがボクにしてやれた事実は変わらないと反論したかったが、言い争いになりそうだからやめておいた。
「さて言いそびれたボクの名案ですけど。単純明快です、殺られる前に殺る!!」
ボクはまた杖を振るい、火炎魔法をドラゴンに浴びせた。
そしてボクの先制攻撃を合図に、ドラゴンとの壮絶な殺し合いが始まった。
ルアさんと二人で街を出てた先には何も無いだだっ広い草原が広がっていて、ボクの空色の瞳は晴れた青空を映した。
そして草原には見慣れない生物達、いやモンスターが蠢いていて流石ファンタジー世界と思わず舌を巻いてしまう。
ふと、ボクの足元に何か冷たくて柔らかい感触が伝わる。
「えっ!! 何ですかこれ!?」
「ノエルお姉さんそれスライムです! 本当に、本当に雑魚なんですけど敵意を持っているので、気を付けて!」
足元を見るとゼリーの様な水色の生物が引っ付いていた。
ルアさん曰く、スライムらしい。そして本当に、本当に雑魚らしい。
「いたた⋯⋯」、どういう原理かは知らないが、スライムがボクの足に噛み付いているのか若干の痛みが走る。
「だから敵意を持っているので。早く倒した方がいいですよ」
「マジですか·····。えいっ!」
敵意を持っていると知ってボクは足元のスライムを、引っ付かれていないもう片方の足で思い切り踏み潰す。
踏み潰すと「グチャッ」という音ともにスライムは破裂した。正直なんかグロい。
「うわっ⋯⋯!? キモ!?」
「あはは、スライムはすぐ破裂しますからねー。普通に体液とかまろびでるので気持ち悪いですよね。私も苦手です」
「はぁ·····最悪。服にかかりましたし」
ご機嫌を斜めにしつつも、ボクはある事を思い付く。
もしもここが王道のファンタジー世界なら、魔物を倒した報酬として経験値を得て、レベルアップの概念があるのでは。
ほら、良く自分のステータスが数値化されて表情されるのがゲームでもあるだろう。
「ねえルアさん。魔物を倒したら経験値を得られて、レベルアップするとかご存知です?」
「え? 魔物を倒すだけでレベルアップできたら、人間も獣人も人生苦労しませんよ? 数をこなせば出来る様になる人が多いから、そう感じるだけで、数をこなしてもできない人はいつまでも出来ませんし」
「現実的な意見ありがとうございます」
「いえいえ?」
レベルアップシステム、無かったみたい。
まあ確かに経験値が目に見えて数値化されて入ってきて、自分の能力が数値化されて測られるなんて嫌か。
他人と見比べた時に明らかに数字で優劣が着くわけだし。
流石にそこまでこの世界はファンタジー気質ではないみたいだ。
「ノエルお姉さん向こうにドラゴンがいますよ。怖いですねぇ·····」
「うわ、関わらない様にして行きましょう」
ルアさんの指さす方向に、ゾウ程度のサイズの赤い皮膚のドラゴンがいた。
大きさがリアルなだけに逆に関わり合いたくない。
「ボクはそんなに魔物と戦う気はないので、ホウキに乗って一気に草原を駆け抜けちゃいましょう」
「えぇ⋯⋯いいんですか? 勇者なら魔物を倒すべきじゃ」
「いやいや⋯⋯別に魔王だけ倒せば良くないですか?」
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ルアさんの説明が入る。
魔物ってこの世界だとそういう意味だったんだ。
ていうか魔物達は所有物扱いされてよく平気だな。ボクだったら絶対無理だ。
「コツコツ倒せって言われても。ボクまだあのドラゴンを倒せる程強くないですよ?」
「本当の実力とは自分でも気付かないものです! さあノエルお姉さんいざファイティン!!」
「戦いませんからね。頭から食い殺されるのがオチです」
ゾウ程度の動物園等で見知った大きさである分、リアルな相手の脅威を知っている。
奴等レベルとなれば人間なんて叩き付ければ直ぐに壊れるガラス細工のような物だ。
そんな相手と戦う気にはならない。
ましてや相手はドラゴンだ。絶対死ぬ。
「でも街の外に出た人達が魔物に襲われたら大変ですよ? 人助けだと思って助けてみては」
「ボク、別にあの街の人達あまり好きでは無いので。そう言われても助ける気にはなりません。ほら行きますよ」
ボクはホウキに跨り、ルアさんに後ろに乗るように促す。
ボクは慈善事業で勇者をやっていない。
自分がお姫様になる為に冒険に出ている。
当然助ける人間はボク自身が決める。
「私もあの街の人達嫌いだし別にいいや!」
「でしょう? またかなりの速度で飛ぶかもしれないので、しっかり捕まっていて下さい」
「はい! 了解です!」
ルアさんがボクの身体をギュッと掴んだのを確認すると、「ホウキさん、飛んでください」と声に出す。
するとふわりとボク達を乗せてホウキが宙に浮く。
ホウキの能力発動条件はどうやら声に出す事みたいだ。
もしかしたらホウキにも意志というものがあるのか。
「ホウキさん、全速力でこの草原を駆け抜けて下さい」
まるでボクの言葉が聞こえているように、ホウキは一直線に物凄い速度で風を切り飛び始めた。
「ちょ、ルアさん落ちないでくださいねっ⋯⋯!」
「はい、しっかり掴まってます!!」
「痛い痛い! どんな力で掴んでるんですか!?」
痛みが走る程の力で身体を捕まれ、あまり前を見ていなかったせいか。
気が付けば目の前にあのドラゴンがいた。
ヤバい、ぶつかった上で殺される。
「ぐはっ!」
「うわっ!?」
「グルゥ!?」
案の定衝突し、ボクとルアさんとドラゴンの三人? が一斉に声を上げた。
ボクたちはホウキからぶつかった衝撃で、振り落とされて地面に転がる。痛い。
「いてっ⋯⋯ルアさん大丈夫ですかっ?」
「あ、私は着地したので大丈夫です。大丈夫じゃないのはノエルお姉さんだけです」
「そうですか、残念ながらお互い大丈夫じゃなさそうですよ」
ボクは此方を睨み付けながら「グルル」と唸る、ドラゴンを指さす。
いきなり飛んで来た人間に衝突させられたら、そりゃあ怒るか。
ガチ死にそう。
「グルゥ⋯⋯貴様ら、我に何か恨みでもあるのか」
「え、アナタ喋れるんですか」
唸りをあげることしか出来ないと思っていたけど、ドラゴンは言葉を発し始めた。
ルアさんがこっそり、「ドラゴンは知能が高いので人間の言葉を理解しています」とボクに耳打ちした。
成程、なら素直に謝れば許してもらえるかもしれない。
「あの、ボクまだホウキの扱いに慣れていなくて、ぶつかってしまってすみませんでした」
「そうか。死んで償うのなら許そう」
「はい?」
「お主勇者だろう? 見たら分かる、お主の杖から聖なる魔力を感じる。遭遇した勇者は必ず殺せというのが魔法様からの命令だ」
ドラゴンはボクの事を一瞬で勇者だと見抜いた。
てか聖なる魔力って何。
そんな大層な物放っている自覚はない。
よく分からないけどその魔力、位置情報オフみたいな感じで消せないかな。
「ちょちょちょ! ノエルお姉さんヤバいですよ! このままじゃ私達殺されちゃいます!!」
「ハッ! そうでした⋯⋯」
悠長な事を考えている暇はない。
ルアさんはボクの横で震えている。
もう完全にドラゴンに萎縮してしまっている。
その証拠に「食べるのはノエルお姉さんだけで、私は故郷に帰らなきゃいけないので⋯⋯」
等とほざいている。
ふざけるな。
「ルアさん。貴様ボクを売る気で?」
「ノエルお姉さん、大人しく売られてください! ごめんなさい!」
「貴様ら話は済んだか? 直ぐに仲間を売る辺り貴様ら下等生物には幻滅する。醜い争いは止めて両方我に食われろ」
ドラゴンはボクたちの言い争っている姿を見て威圧するように睨みつける。
これはルアさんと言い争っている場合じゃない。
ボクとルアさんは瞬時に横目でアイコンタクトを取る。
ルアさんの綺麗な桃色の瞳はまるで出会った当初のような恐怖に染った怯えた色に変わっていた。
「ルアさん、出来るだけ遠くに下がっていてください」
「で、でも⋯⋯ノエルお姉さんは? 本気で置いて逃げるなんて、流石に無理ですよ⋯⋯」
「ボクにとっておきの名案があります。いいから、早く」
ボクがこの状況を打開する考えがあるという事を察したのか、ルアさんは意外と大人しく出来るだけ遠くへと駆けていった。
「行かせるか! 我の全身を蝕む獄炎を喰らえ!」
「おっと、技を出す前にネタバレをしてしまったら幾らでも対策が取れてしまいますよ?」
ドラゴンがご丁寧に今から繰り出す技を解説し終えて、ルアさん目掛けてくぱっと大口を開いた所で、ボクは杖を振るい、炎の弾をドラゴンの体内に放り込む。
「ぐあぁっ!?」
「あ、炎を扱う癖に他者からの炎は効くんですね」
ドラゴンが炎を放つ前にボクの炎が炸裂して、相手の技は不発に終わる。
その間にルアさんはできるだけ遠くへと避難していた。
「ノエルお姉さん、本当に大丈夫なんですか!? 考えってなんですか!?」遠くからルアさんが叫ぶ声が聞こえる。
「ん、そうですね⋯⋯ボクの考えは⋯⋯」
ボクが話している途中なのに「小娘っ⋯⋯やってくれたな!! 下等生物が!」と憤慨したドラゴンが怒声を浴びせてきた。
ただでさえ赤い皮膚をしているのに、怒りでさらに赤くなっている。
「小娘、我に勝てる秘策があるらしいな。下等生物の人間が足りない脳で弾き出したその策とやらを我に聞かせてくれないか?」
「随分嫌味な言い方ですね。その下等生物に一撃くらわせられてる癖に」
「減らず口をっ⋯⋯先程の一撃は油断していただけで⋯⋯!」
油断していようがしまいがボクにしてやれた事実は変わらないと反論したかったが、言い争いになりそうだからやめておいた。
「さて言いそびれたボクの名案ですけど。単純明快です、殺られる前に殺る!!」
ボクはまた杖を振るい、火炎魔法をドラゴンに浴びせた。
そしてボクの先制攻撃を合図に、ドラゴンとの壮絶な殺し合いが始まった。
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