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百一、二人の王 - les deux Rois -
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両国の船団は、アクイラ海峡の概ね中央で向かい合った。
それぞれの国王が乗る船は方向を変え、安全が確保できるギリギリの距離まで近付いて横並びになり、王は甲板に出て対峙した。
キセは右後方の船の舳先で、背伸びするようにしてその様子を眺めている。
「お父さま、お元気そうです」
ほのぼのと笑うキセに、テオドリックはちょっと苦笑して言った。
「ここからわかるのか?」
「もちろん、わかります」
「目がいいな」
テオドリックはイサクから望遠鏡を受け取った。
キセの視線の先、イノイルの黒い巨船に立つオーレン王は、長く伸びた黒髪をひとつに縛り、深海のような深い青のマントを潮風に靡かせて、周囲には護衛を配置せず、一人甲板に立っている。緋色のマントに身を包んだテオフィル王は護衛を二人そばに配置していたが、オーレン王に倣って彼らを後方へ下がらせた。
これで、二人の王の会話を聞くことができる者は、当事者以外にはいなくなった。数メートルも離れると、二人の声は波と風の音に完全に掻き消されてしまう。
先に口を開いたのは、オーレン王だった。
「久しいな、テオフィル・マクシミリアン」
一つ目の名と二つ目の名を両方呼ぶのはイノイルの習わしだが、オーレン王がテオフィル王をこう呼んだ理由はそれだけではない。
彼らが過去に唯一顔を会わせたとき、オーレン・ヴィットーレ・シトーは漁師上がりの海軍司令官で、一方テオフィル・マクシミリアン・アストルは王家の相続人に過ぎなかった。オーレンはそれを懐かしむ一方、「自分が何者か忘れるな」と、暗に牽制しているのだ。
「オーレン・シトー。相変わらず若々しい。わたしだけ三十年も年を取ってしまったようだ」
テオフィル王が大真面目に言うと、オーレン王は快活な笑い声を上げた。
テオフィルの脳裏に、三十年前のオーレンの姿がありありと蘇ってくる。
髪は黒々と波打ち体躯は大きく、軍服の上からでもそれがよく分かるほどに筋骨は逞しく、軍神が人間になって現れたらこのようだろうと思わせる姿だった。多少顔に増えた皺を除けば、その時とまったく変わらない男が、目の前にいる。同時にその時抱いた畏怖が戻ってくる。まだ十代の若者だったテオフィル・マクシミリアンは、敵軍の司令官の荒々しさの中に見える優雅な男ぶりに、すっかり心酔してしまったのだ。しかし、今は当時とは違う。同じ国王として対等に立つべきだ。
「キセ姫は素晴らしい娘だ。立派な王妃になる」
テオフィル王のこの言葉の意味するところは、恫喝に近い。
愛娘を自分たちが終生預かるのだから、妙な真似はするなという意味が含まれているからだ。ところがオーレン王は目を細め、ウンウンと頷いて言った。
「そうだろう。あれほどの娘はいまい」
と、娘の自慢話を始めたオーレン王は、すっかり娘を溺愛する父親の顔になっている。
「そなたの子もよい男だ。わしはあいつが気に入った」
オーレンは言った。
「…だから、息子の計画に乗ったのか」
テオフィルには、これがずっと不思議だった。テオドリックとキセがいかに愛し合っていようが、本気でこの計画を覆そうと思えば、老練なオーレンには造作もないはずだ。王が大切な娘を差し出してまで和平を締結しなければならないほど、イノイルはこの戦において不利な立場では決してない。
が、オーレンの返答は伸びやかなものだ。
「割に合わんだろうよ。こんな戦、長引かせる価値はない。そう思わんか」
テオフィルは表情を変えなかったが、内心ではひどく驚いていた。長年戦場に身を置き、自ら先王を弑して国王に成り上がったような男が、戦に対する嫌悪感を露わにしたからだ。
「正直、そなたの国は我が軍で潰せる自信がある。士気も統率力も我が軍の比ではないからな」
オーレンは白々と言ってのけた。最早怒る余地もない。テオフィルにしてみれば、まったくその通りだと思っているからだ。軍は国王の意向など気にしないし、王都に国中から軍隊をかき集めたところで、この広大な国土で中央に軍を集めるまで何か月かかるか知れたものではない。その間にイノイルの優勢に転じ、離反勢力が現れ、王国の瓦解を招くなど、容易に想像できる結末だ。
「だが、テオドリックの国は別だ。あいつが国王として指揮を執ったら勝てる保証はない。供も付けずに我が国へ忍び込んだ挙げ句、わしの娘欲しさにわざわざ城まで嫁取りに来るような男だぞ。おまけに――まったく驚いた。大嵐のようにあっという間に周りを巻き込んで、千年の戦をさっさと終わらせてしまいよる。そんなやつを敵に回したらとんでもなく面倒なことになる。互いにここで手打ちにするのが上策だろうよ」
ふ。とテオフィルは笑った。
「確かに、一理ある」
「なあ、テオフィル・マクシミリアン。我らはもう引き時だ。そういう時を見誤ってはいかん。これからは血ではなく、金で世を動かす時代だ。わしはわしの役目を果たした」
なるほどそういう発想は、名族ではなくむしろ庶民の出身であるからこそできるのだろう。と、テオフィルは思った。国の歴史は戦の歴史だ。長く続く王族は血をもって地と民を支配してきたが、金に着目したことはそれほど多くない。オリーブの実を潰して油を得るように、民を絞れば集まってくるものだったからだ。
だが、オーレンにとっては違う。イノイルの民が元々功利的で、交易により富を得た商人的な気風を持っていると言うこともあるが、オーレンにはすべての民が富を得てこそ国が豊かになるという基本的な考えがある。怠惰に王権を握り続けたアストルの歴代の国王たちとは全く思想が違っているのだ。
これを、きっとテオドリックは自分の国で実現したいのだろう。テオフィルには息子の考えがよくわかる。
「あとは息子たちに任せる。そなたもそういう腹積もりなのであろう」
オーレンの言葉に、テオフィルは頷いた。
「…わたしたちは戦の象徴だ。子供たちの舞台にわたしたちはいないほうがいい」
「では、合意だな」
オーレンはニヤリと笑った。テオフィルも無言で頷き、髭の下で笑った。
「タレステラに占拠している部隊は、我が子スクネとその妃ネフェリア・ジュヌヴィエーヴに撤退の指揮を執らせる。あれの王太子としての最後の仕事だ」
「その後は、どうするつもりだ」
「言った通りだ、テオフィル・マクシミリアン。我らはもう退く。後のことは知らん。息子たちの仕事だ」
オーレンは腰に下げた革袋から陶器の小さな盃を取り出し、次に二十センチほどの長さの瓶を取り出して盃を満たしてから瓶を革袋にしまうと、それを隣の船に立つテオフィル目がけてびゅっと投げた。革袋が弧を描いて着地した先は、見事にテオフィルの手元だった。テオフィルが中を開けると、白い酒瓶と小さな陶の盃がひとつ入っている。
「誓いの盃だ、エマンシュナ国王。この日をもって我らは家族となる」
テオフィル・マクシミリアンは盃を酒で満たしてオーレンに向かって掲げ、対峙するオーレンと同時に盃を乾かした。
この時、テオドリックたちの乗る船では、異変が起きていた。
望遠鏡で父親たちの様子を観察していたテオドリックの後方上空で、何かがキラリと光った。キセの脚が動いたのは、ほとんど本能だ。
「テオドリック!」
一瞬のことだった。キセは横へ跳躍し、テオドリックの胴にしっかりとしがみついた。舳先に立つ二人の身体がぐらりと海へ傾いた。テオドリックはキセの身体を強く抱きとめたが、海へ向かう勢いは止められない。
キセの漆黒の瞳が波に散らばる太陽の輝きを映して煌めいた。そこには恐怖など、微塵もない。
「信じてくださいますか」
「無論だ」
二人がそのまま海へ飛び出すと同時に、空を裂いて飛来した矢はテオドリックの影を射て甲板へ突き刺さった。間髪を容れずもう二本、テオドリックとキセの影を追いかけて甲板と縁に刺さった。
船内は、恐慌状態に陥った。が、王太子と王太子妃付きの従者たちは冷静に対処した。
「帆柱!」
セレンが叫び、高い帆柱の上を目がけてナイフを投げた瞬間、小さな呻き声と共に人影が踊った。血の雫が数滴落ちてきたが、影は曲芸師のように身軽に動き続け、物見台の縁に跳び移るとそこにいた丸腰の兵士を蹴り上げて昏倒させ、同時に再び矢を放った。影の人物は恐るべき早業で甲板から放たれた矢をも躱し、更に柱の足場に飛び乗って駆け、標的の姿を追って海へ飛び下りた。
「止めろ、止めろ!」
護衛の兵士の中にいたジャンが落ちていく襲撃者へ矢を放つと同時に、セレンは腰から革の鞘ごと剣を抜いて海に浮かぶ主人たち目がけて投げた。ジャンの放った矢は着水直前に襲撃者の肩を射、セレンの投げた短剣は海風に邪魔されてテオドリックとキセの浮かぶ位置から十メートルほど手前に落ちた。
「しまった」
セレンは臍を噛んだ。襲撃者は致命傷を受けず、海を血で染めながら泳いで主人たちの元へ近付こうとしている。
「くそ!矢を――」
「だめ!姫さまと殿下に当たる!」
セレンは矢を番えようとしたイサクを押さえて阻んだ。
同じ頃、キセは冷たい海に浮かび、テオドリックの腕を掴んだまま、セレンが投げて寄越した剣が波に呑まれていくのを見た。
「あいつはまだ武器を持っている。キセ、あんただけでも遠くへ泳いで逃げろ」
「いいえ。でも、ちょっと待っていてくださいね」
今まさに襲撃者に命を狙われているとは思えないほどのんびりとした声で言うと、キセはテオドリックの腕から離れ、ドレスをヒレのように翻し、身体をくねらせて、まるで遊泳する人魚のように潜水した。キセは物凄い速さで剣の沈んだ方向へ進んでいく。
ぶる、とテオドリックの身体が震えた。手負いとなり怒り狂った襲撃者がサメのようにこちらに向かって来るからではない。それに立ち向かっているからだ。そして間違いなく、女神の加護はこちらにある。
ひとつ波が去ると、その真後ろに血走った目を見開いた襲撃者が迫っていた。潮を掻き、飛沫を上げながらナイフを振り上げ、頭上に刃が光る。
そしてこの瞬間、海の中でテオドリックの手に冷たいものが触れた。
テオドリックはそれを掴み、うねる波に身体を乗せて、海中から剣を振り上げた。
刃は飛沫を上げて海の上に陽光を散らして閃き、斬りかかってきた襲撃者の肩から腕を裂いた。ナイフは襲撃者の手を離れて血飛沫と共に海に落ちた。
襲撃者は痛みに呻き、波に呑まれそうになりながら必死にもがいている。
「続けるか」
テオドリックが波打つ水中を掻きながら重くなった上衣を海面に脱ぎ捨てて問うと、波の向こうで襲撃者が何かを叫んだ。
「‘やめておく’とおっしゃっているようです」
キセが海面に顔を出して言った。ドレスの裾をヒラヒラと美しいくらげのように舞わせ、器用に手足を使って一定の位置に浮いている。
「人魚みたいだ」
テオドリックのこの言葉は、見た目の美しさだけを言っているのではない。想像以上の泳ぎだった。あの距離を、しかも波に攫われて沈もうとしていた剣を取ってテオドリックの手元まで運んでくるなど、どうやって泳いだのかテオドリックには想像もつかない。
「すごかった。あんたが海そのもののようだった」
「テオドリックも、エノシガイオスのようでした」
キセはちょっとはにかんだように笑い、よくわからない言葉で惚れ惚れとテオドリックの勇姿を賞賛した。
「何だって?」
「オスイアの女神さまの伴侶です。海の武神なのですよ。イッカクの角で作った槍で海に害をなす者と戦います」
「ふ。そうか」
テオドリックは笑い出した。命を狙われた海の中で神々についての講釈を聞くとは、なんとも奇妙なことだ。
「ありがとう、キセ。あんたに命を救われた」
「テオドリックもです。いつも守ってくださって、ありがとうございます」
二人が情熱的に見つめ合い、今にも唇が触れ合おうかというところで、イサクが不自然なほど大きな咳払いをして縄梯子を船上から降ろして来た。ずぶ濡れの二人はそれを上がって船へ戻った。
潮風に晒された身体が一気に冷える。冷えているはずの心臓がばくばくと脈動を速めて、キセを何とも形容しがたい不思議な気持ちにさせた。海に落ちた時に感じるはずだった恐怖や興奮が遅れてやってきたようだ。
セレンが駆け寄ってきて毛皮の外套をキセに被せ、唇を固く結んで強い視線を投げてくる。今にも泣き出しそうだ。
「守るのはわたしの仕事なのに」
と、その茶色い目が訴えているような気がした。
「ご心配をおかけしました」
キセが心の底から申し訳なく言うと、セレンはギュッと目蓋を瞑り、まっすぐキセを見て微笑んだ。
「はい、とても。でも姫さまと殿下を信じてました」
そして、セレンは鼻を鳴らしてキセを抱き締めた。
テオドリックはイサクから受け取った外套を羽織ると、セレンに剣を差し出した。
「いい剣だ。助かった」
「光栄です」
セレンはキセとテオドリックの前に両膝をつき、両手で剣を受け取った。
「海に浸けてしまっては手入れが必要だな。イサクが腕利きの研ぎ師を紹介する」
「それは心強いですね」
キセとセレンは顔を見合わせて笑った。
「それはいいが――」
と、イサクはテオドリックに向かって言い、波の上に力無く浮かぶ小柄な男を顎でしゃくった。
「あいつどうする」
「引き上げて縛っておけ。ヴェロニク・ルコントに雇われたならその倍の金を出すと言えば洗いざらい喋るだろ」
「痛めつけなくていいのか?」
「誰にも気付かれずに単身敵船に乗り込んで襲撃してくるようなやつだぞ。痛めつけたところで無意味だろ」
テオドリックが白々と言ったので、イサクは肩を竦めて頷いた。これ以上物騒なことを口にしたら、ただでさえ物騒な話でキセの耳を汚したことに腹を立てているセレンの怒りを買いかねない。
「で、あれは誰だ」
「さあな」
テオドリックが肩を竦めると、キセがその後ろからひょっと顔を出して言った。
「御者さんです」
「御者?」
「ジャンさんを襲ってわたしをドーリッシュ邸へ連れて行った方です。ルコント侯爵夫人のお友達が見つかりましたね」
キセは朗らかに言った。
テオドリックは襲撃者に対する怒りがふつふつと沸いたが、一方でそのしつこさには舌を巻いた。顔の形が変わる程度には殴ってやりたくもある。しかし、無抵抗の相手に暴力を振るうような真似は、王太子としての矜持が許さない。何より、キセが望まないだろう。
「尋問しておけ。望むならジャンにやらせろ」
テオドリックは今まさに海から男を引き上げようとしているジャンや他の兵士を一瞥し、吐き捨てるようにそれだけ言うと、キセの手を掴んで下の甲板へ繋がる階段へ向かった。
「ここは冷える。下の船室で暖を取るから港に着いたら呼べ」
テオドリックがイサクとセレンに言うと、キセはキョロキョロと周囲を見渡して躊躇した。
「ですが、お父さまがたが…」
「気にするな。自分の子供がびしょ濡れになっているのに気づいたらあっちも集中できないだろ」
「た、確かにそうですね」
キセは大真面目に頷いた。
テオドリックは階段の下へ姿を消す前に、臣下たちに一言付け加えた。
「誰も近づくな」
何か文句を言いたそうに口を開きかけたセレンをイサクがどうどうと抑え、主人たちを見送った。
それぞれの国王が乗る船は方向を変え、安全が確保できるギリギリの距離まで近付いて横並びになり、王は甲板に出て対峙した。
キセは右後方の船の舳先で、背伸びするようにしてその様子を眺めている。
「お父さま、お元気そうです」
ほのぼのと笑うキセに、テオドリックはちょっと苦笑して言った。
「ここからわかるのか?」
「もちろん、わかります」
「目がいいな」
テオドリックはイサクから望遠鏡を受け取った。
キセの視線の先、イノイルの黒い巨船に立つオーレン王は、長く伸びた黒髪をひとつに縛り、深海のような深い青のマントを潮風に靡かせて、周囲には護衛を配置せず、一人甲板に立っている。緋色のマントに身を包んだテオフィル王は護衛を二人そばに配置していたが、オーレン王に倣って彼らを後方へ下がらせた。
これで、二人の王の会話を聞くことができる者は、当事者以外にはいなくなった。数メートルも離れると、二人の声は波と風の音に完全に掻き消されてしまう。
先に口を開いたのは、オーレン王だった。
「久しいな、テオフィル・マクシミリアン」
一つ目の名と二つ目の名を両方呼ぶのはイノイルの習わしだが、オーレン王がテオフィル王をこう呼んだ理由はそれだけではない。
彼らが過去に唯一顔を会わせたとき、オーレン・ヴィットーレ・シトーは漁師上がりの海軍司令官で、一方テオフィル・マクシミリアン・アストルは王家の相続人に過ぎなかった。オーレンはそれを懐かしむ一方、「自分が何者か忘れるな」と、暗に牽制しているのだ。
「オーレン・シトー。相変わらず若々しい。わたしだけ三十年も年を取ってしまったようだ」
テオフィル王が大真面目に言うと、オーレン王は快活な笑い声を上げた。
テオフィルの脳裏に、三十年前のオーレンの姿がありありと蘇ってくる。
髪は黒々と波打ち体躯は大きく、軍服の上からでもそれがよく分かるほどに筋骨は逞しく、軍神が人間になって現れたらこのようだろうと思わせる姿だった。多少顔に増えた皺を除けば、その時とまったく変わらない男が、目の前にいる。同時にその時抱いた畏怖が戻ってくる。まだ十代の若者だったテオフィル・マクシミリアンは、敵軍の司令官の荒々しさの中に見える優雅な男ぶりに、すっかり心酔してしまったのだ。しかし、今は当時とは違う。同じ国王として対等に立つべきだ。
「キセ姫は素晴らしい娘だ。立派な王妃になる」
テオフィル王のこの言葉の意味するところは、恫喝に近い。
愛娘を自分たちが終生預かるのだから、妙な真似はするなという意味が含まれているからだ。ところがオーレン王は目を細め、ウンウンと頷いて言った。
「そうだろう。あれほどの娘はいまい」
と、娘の自慢話を始めたオーレン王は、すっかり娘を溺愛する父親の顔になっている。
「そなたの子もよい男だ。わしはあいつが気に入った」
オーレンは言った。
「…だから、息子の計画に乗ったのか」
テオフィルには、これがずっと不思議だった。テオドリックとキセがいかに愛し合っていようが、本気でこの計画を覆そうと思えば、老練なオーレンには造作もないはずだ。王が大切な娘を差し出してまで和平を締結しなければならないほど、イノイルはこの戦において不利な立場では決してない。
が、オーレンの返答は伸びやかなものだ。
「割に合わんだろうよ。こんな戦、長引かせる価値はない。そう思わんか」
テオフィルは表情を変えなかったが、内心ではひどく驚いていた。長年戦場に身を置き、自ら先王を弑して国王に成り上がったような男が、戦に対する嫌悪感を露わにしたからだ。
「正直、そなたの国は我が軍で潰せる自信がある。士気も統率力も我が軍の比ではないからな」
オーレンは白々と言ってのけた。最早怒る余地もない。テオフィルにしてみれば、まったくその通りだと思っているからだ。軍は国王の意向など気にしないし、王都に国中から軍隊をかき集めたところで、この広大な国土で中央に軍を集めるまで何か月かかるか知れたものではない。その間にイノイルの優勢に転じ、離反勢力が現れ、王国の瓦解を招くなど、容易に想像できる結末だ。
「だが、テオドリックの国は別だ。あいつが国王として指揮を執ったら勝てる保証はない。供も付けずに我が国へ忍び込んだ挙げ句、わしの娘欲しさにわざわざ城まで嫁取りに来るような男だぞ。おまけに――まったく驚いた。大嵐のようにあっという間に周りを巻き込んで、千年の戦をさっさと終わらせてしまいよる。そんなやつを敵に回したらとんでもなく面倒なことになる。互いにここで手打ちにするのが上策だろうよ」
ふ。とテオフィルは笑った。
「確かに、一理ある」
「なあ、テオフィル・マクシミリアン。我らはもう引き時だ。そういう時を見誤ってはいかん。これからは血ではなく、金で世を動かす時代だ。わしはわしの役目を果たした」
なるほどそういう発想は、名族ではなくむしろ庶民の出身であるからこそできるのだろう。と、テオフィルは思った。国の歴史は戦の歴史だ。長く続く王族は血をもって地と民を支配してきたが、金に着目したことはそれほど多くない。オリーブの実を潰して油を得るように、民を絞れば集まってくるものだったからだ。
だが、オーレンにとっては違う。イノイルの民が元々功利的で、交易により富を得た商人的な気風を持っていると言うこともあるが、オーレンにはすべての民が富を得てこそ国が豊かになるという基本的な考えがある。怠惰に王権を握り続けたアストルの歴代の国王たちとは全く思想が違っているのだ。
これを、きっとテオドリックは自分の国で実現したいのだろう。テオフィルには息子の考えがよくわかる。
「あとは息子たちに任せる。そなたもそういう腹積もりなのであろう」
オーレンの言葉に、テオフィルは頷いた。
「…わたしたちは戦の象徴だ。子供たちの舞台にわたしたちはいないほうがいい」
「では、合意だな」
オーレンはニヤリと笑った。テオフィルも無言で頷き、髭の下で笑った。
「タレステラに占拠している部隊は、我が子スクネとその妃ネフェリア・ジュヌヴィエーヴに撤退の指揮を執らせる。あれの王太子としての最後の仕事だ」
「その後は、どうするつもりだ」
「言った通りだ、テオフィル・マクシミリアン。我らはもう退く。後のことは知らん。息子たちの仕事だ」
オーレンは腰に下げた革袋から陶器の小さな盃を取り出し、次に二十センチほどの長さの瓶を取り出して盃を満たしてから瓶を革袋にしまうと、それを隣の船に立つテオフィル目がけてびゅっと投げた。革袋が弧を描いて着地した先は、見事にテオフィルの手元だった。テオフィルが中を開けると、白い酒瓶と小さな陶の盃がひとつ入っている。
「誓いの盃だ、エマンシュナ国王。この日をもって我らは家族となる」
テオフィル・マクシミリアンは盃を酒で満たしてオーレンに向かって掲げ、対峙するオーレンと同時に盃を乾かした。
この時、テオドリックたちの乗る船では、異変が起きていた。
望遠鏡で父親たちの様子を観察していたテオドリックの後方上空で、何かがキラリと光った。キセの脚が動いたのは、ほとんど本能だ。
「テオドリック!」
一瞬のことだった。キセは横へ跳躍し、テオドリックの胴にしっかりとしがみついた。舳先に立つ二人の身体がぐらりと海へ傾いた。テオドリックはキセの身体を強く抱きとめたが、海へ向かう勢いは止められない。
キセの漆黒の瞳が波に散らばる太陽の輝きを映して煌めいた。そこには恐怖など、微塵もない。
「信じてくださいますか」
「無論だ」
二人がそのまま海へ飛び出すと同時に、空を裂いて飛来した矢はテオドリックの影を射て甲板へ突き刺さった。間髪を容れずもう二本、テオドリックとキセの影を追いかけて甲板と縁に刺さった。
船内は、恐慌状態に陥った。が、王太子と王太子妃付きの従者たちは冷静に対処した。
「帆柱!」
セレンが叫び、高い帆柱の上を目がけてナイフを投げた瞬間、小さな呻き声と共に人影が踊った。血の雫が数滴落ちてきたが、影は曲芸師のように身軽に動き続け、物見台の縁に跳び移るとそこにいた丸腰の兵士を蹴り上げて昏倒させ、同時に再び矢を放った。影の人物は恐るべき早業で甲板から放たれた矢をも躱し、更に柱の足場に飛び乗って駆け、標的の姿を追って海へ飛び下りた。
「止めろ、止めろ!」
護衛の兵士の中にいたジャンが落ちていく襲撃者へ矢を放つと同時に、セレンは腰から革の鞘ごと剣を抜いて海に浮かぶ主人たち目がけて投げた。ジャンの放った矢は着水直前に襲撃者の肩を射、セレンの投げた短剣は海風に邪魔されてテオドリックとキセの浮かぶ位置から十メートルほど手前に落ちた。
「しまった」
セレンは臍を噛んだ。襲撃者は致命傷を受けず、海を血で染めながら泳いで主人たちの元へ近付こうとしている。
「くそ!矢を――」
「だめ!姫さまと殿下に当たる!」
セレンは矢を番えようとしたイサクを押さえて阻んだ。
同じ頃、キセは冷たい海に浮かび、テオドリックの腕を掴んだまま、セレンが投げて寄越した剣が波に呑まれていくのを見た。
「あいつはまだ武器を持っている。キセ、あんただけでも遠くへ泳いで逃げろ」
「いいえ。でも、ちょっと待っていてくださいね」
今まさに襲撃者に命を狙われているとは思えないほどのんびりとした声で言うと、キセはテオドリックの腕から離れ、ドレスをヒレのように翻し、身体をくねらせて、まるで遊泳する人魚のように潜水した。キセは物凄い速さで剣の沈んだ方向へ進んでいく。
ぶる、とテオドリックの身体が震えた。手負いとなり怒り狂った襲撃者がサメのようにこちらに向かって来るからではない。それに立ち向かっているからだ。そして間違いなく、女神の加護はこちらにある。
ひとつ波が去ると、その真後ろに血走った目を見開いた襲撃者が迫っていた。潮を掻き、飛沫を上げながらナイフを振り上げ、頭上に刃が光る。
そしてこの瞬間、海の中でテオドリックの手に冷たいものが触れた。
テオドリックはそれを掴み、うねる波に身体を乗せて、海中から剣を振り上げた。
刃は飛沫を上げて海の上に陽光を散らして閃き、斬りかかってきた襲撃者の肩から腕を裂いた。ナイフは襲撃者の手を離れて血飛沫と共に海に落ちた。
襲撃者は痛みに呻き、波に呑まれそうになりながら必死にもがいている。
「続けるか」
テオドリックが波打つ水中を掻きながら重くなった上衣を海面に脱ぎ捨てて問うと、波の向こうで襲撃者が何かを叫んだ。
「‘やめておく’とおっしゃっているようです」
キセが海面に顔を出して言った。ドレスの裾をヒラヒラと美しいくらげのように舞わせ、器用に手足を使って一定の位置に浮いている。
「人魚みたいだ」
テオドリックのこの言葉は、見た目の美しさだけを言っているのではない。想像以上の泳ぎだった。あの距離を、しかも波に攫われて沈もうとしていた剣を取ってテオドリックの手元まで運んでくるなど、どうやって泳いだのかテオドリックには想像もつかない。
「すごかった。あんたが海そのもののようだった」
「テオドリックも、エノシガイオスのようでした」
キセはちょっとはにかんだように笑い、よくわからない言葉で惚れ惚れとテオドリックの勇姿を賞賛した。
「何だって?」
「オスイアの女神さまの伴侶です。海の武神なのですよ。イッカクの角で作った槍で海に害をなす者と戦います」
「ふ。そうか」
テオドリックは笑い出した。命を狙われた海の中で神々についての講釈を聞くとは、なんとも奇妙なことだ。
「ありがとう、キセ。あんたに命を救われた」
「テオドリックもです。いつも守ってくださって、ありがとうございます」
二人が情熱的に見つめ合い、今にも唇が触れ合おうかというところで、イサクが不自然なほど大きな咳払いをして縄梯子を船上から降ろして来た。ずぶ濡れの二人はそれを上がって船へ戻った。
潮風に晒された身体が一気に冷える。冷えているはずの心臓がばくばくと脈動を速めて、キセを何とも形容しがたい不思議な気持ちにさせた。海に落ちた時に感じるはずだった恐怖や興奮が遅れてやってきたようだ。
セレンが駆け寄ってきて毛皮の外套をキセに被せ、唇を固く結んで強い視線を投げてくる。今にも泣き出しそうだ。
「守るのはわたしの仕事なのに」
と、その茶色い目が訴えているような気がした。
「ご心配をおかけしました」
キセが心の底から申し訳なく言うと、セレンはギュッと目蓋を瞑り、まっすぐキセを見て微笑んだ。
「はい、とても。でも姫さまと殿下を信じてました」
そして、セレンは鼻を鳴らしてキセを抱き締めた。
テオドリックはイサクから受け取った外套を羽織ると、セレンに剣を差し出した。
「いい剣だ。助かった」
「光栄です」
セレンはキセとテオドリックの前に両膝をつき、両手で剣を受け取った。
「海に浸けてしまっては手入れが必要だな。イサクが腕利きの研ぎ師を紹介する」
「それは心強いですね」
キセとセレンは顔を見合わせて笑った。
「それはいいが――」
と、イサクはテオドリックに向かって言い、波の上に力無く浮かぶ小柄な男を顎でしゃくった。
「あいつどうする」
「引き上げて縛っておけ。ヴェロニク・ルコントに雇われたならその倍の金を出すと言えば洗いざらい喋るだろ」
「痛めつけなくていいのか?」
「誰にも気付かれずに単身敵船に乗り込んで襲撃してくるようなやつだぞ。痛めつけたところで無意味だろ」
テオドリックが白々と言ったので、イサクは肩を竦めて頷いた。これ以上物騒なことを口にしたら、ただでさえ物騒な話でキセの耳を汚したことに腹を立てているセレンの怒りを買いかねない。
「で、あれは誰だ」
「さあな」
テオドリックが肩を竦めると、キセがその後ろからひょっと顔を出して言った。
「御者さんです」
「御者?」
「ジャンさんを襲ってわたしをドーリッシュ邸へ連れて行った方です。ルコント侯爵夫人のお友達が見つかりましたね」
キセは朗らかに言った。
テオドリックは襲撃者に対する怒りがふつふつと沸いたが、一方でそのしつこさには舌を巻いた。顔の形が変わる程度には殴ってやりたくもある。しかし、無抵抗の相手に暴力を振るうような真似は、王太子としての矜持が許さない。何より、キセが望まないだろう。
「尋問しておけ。望むならジャンにやらせろ」
テオドリックは今まさに海から男を引き上げようとしているジャンや他の兵士を一瞥し、吐き捨てるようにそれだけ言うと、キセの手を掴んで下の甲板へ繋がる階段へ向かった。
「ここは冷える。下の船室で暖を取るから港に着いたら呼べ」
テオドリックがイサクとセレンに言うと、キセはキョロキョロと周囲を見渡して躊躇した。
「ですが、お父さまがたが…」
「気にするな。自分の子供がびしょ濡れになっているのに気づいたらあっちも集中できないだろ」
「た、確かにそうですね」
キセは大真面目に頷いた。
テオドリックは階段の下へ姿を消す前に、臣下たちに一言付け加えた。
「誰も近づくな」
何か文句を言いたそうに口を開きかけたセレンをイサクがどうどうと抑え、主人たちを見送った。
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