獅子王と海の神殿の姫

若島まつ

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六十五、父の教え - l’enseignement -

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 灰色の雲が厚く空を覆う朝、テオドリックとスクネはイノイル軍が占拠する東岸部の港に向かってレグルス城の門を出た。
 これから馬上一日半ほどの道程をゆく。
 来月行われる国王同士の会見に備えた調整のためだ。これに、イノイル王国の王都オアリスからシトー家の家臣が王の名代として来訪する。
 二人の王太子はそれぞれ側近のイサクとヒクイを伴い、護衛はイノイルからスクネについてきた三名、そしてレグルス城から衛兵三名が随行している。みな手練れだ。
 テオドリックとスクネは互いに言葉少なく並走しているが、空気は悪くない。臣下同士も同様だ。友好的な沈黙と言える。少なくとも、互いが国王になった時には良い関係が築けるだろうという確信がある。
 五時間ほど経った頃、川べりで休憩を取った。馬に水をやった後、自分も携行していた瓢箪から茶を飲み、テオドリックが口を開いた。
「…オーレン王は、何故アメキを?」
「理由があると思うのか?」
「あんたも何か意図があると知っているはずだ」
 スクネは自分も腰に下げた瓢箪からすっかりぬるくなった茶を飲み、キセと同じ黒い瞳を細めてニヤリと笑った。
「あるとすれば、どういう意図だと思う」
「さあ。アメキは甘さに似合わず強いから、‘油断するな’かな」
 テオドリックが言うと、スクネは薄く笑って川に降り立った白い水鳥に視線を移した。
「あれは我が国で最も格式高く、神聖な酒だ。ごく限られた蔵でしか造ることが許されない。酒造りに携わる者でさえ、みな神官か、それに準ずる存在と見なされる。それを、父上は獅子の国の王太子にと送ってきた。俺の予想では、‘お前を認める’という意味じゃないかと思う。実際、父上はこの短期間で世論を和平の方向へ導いたことを評価している」
「あんたの報告書で?」
「それだけじゃない」
 間諜がもたらす情報のことだ。が、スクネははっきりとは言わない。テオドリックもイノイルに潜入させている手飼いの諜者がいるから、詮索はしない。スクネもそれを承知している。
「まあ、あとはやはり訓戒かな。息子の俺も父上の真意は掴みきれない」
 スクネが川べりの草の上にごろりと寝転がるのを見ながら、テオドリックは思案した。
 訓戒の意味があるとすれば、きっとそれはキセの神聖な部分を忘れるなと言うことだ。
 テオドリックは草の上に腰を下ろし、水鳥が飛び立つのを見た。
「…あの酒はオーレン王が俺に送ったと言ったか」
「ああ」
 スクネは眠たそうに答えた。
「キセがほとんど飲んだぞ」
「ふっ」
 と、スクネは思わず笑い出した。
「あいつ、酔うと可愛いだろう。オシアスになる前の甘えん坊に戻るんだ」
「酔ってなくてもキセはこの世でいちばん可愛い」
 テオドリックが大真面目な顔で主張した。「あんたは何を言っているんだ?」とでも言い出しそうな顔だ。
「ああ、はいはい」
 スクネはヤレヤレと首を振り、目を閉じた。
「まあ、…そうだな」
 まったく、呆れるほどの惚れ込みようだ。キセがテオドリックを家族の元に連れてきたときからベタ惚れなのは目に見えていたが、だんだんと拍車がかかっている。
 スクネにはわかっている。
 キセはこの世に生まれた瞬間から人々の心に光をもたらす存在だった。十歳の夏、自分と同じ黒髪の赤子を目にしたとき、この子をいちばんに守るのは自分だと誓い、その誓いを実行してきた。
 幼い頃から国内外問わずに舞い込んでくるキセの意向を無視した縁談はスクネが中心になって握り潰してきたし、父親が密かに画策していたミノイとの婚約も撤回させようとしていた。ミノイが生きていたなら、兄妹として育った二人の意思を尊重するよう父に要求し、母親たちを味方に付けて白紙にさせていたはずだ。
 小さい頃から可憐で心優しいキセの周りには、当然のように良くない思惑を持つ者も近付いてきた。そういう者たちを片っ端から排除してきたのもスクネだ。四つのキセに意地悪をしてきた城下の男児に年長者らしくもなく本気の恫喝をしたことさえある。
 スクネは兄として愛するキセを守り続けた。
 そして今、その役目を降りても良いと思ったのは、テオドリックが端から見ていてちょっと呆れるほどの深さでキセを愛しているからというだけではなく、キセが他の誰でもない自らの強い意志でテオドリックを選んだからだ。
 いつか来ると思っていたその日を迎えた時、思ったよりもショックを受けなかったのは、キセが今まで誰にも見せたことのない顔でテオドリックに笑いかけていたからだ。あれは兄に守られるべき妹ではなく、愛する伴侶の隣に立つ、自立した女性の顔だった。
 春の宴の前後で二人の関係に変化があったことに、スクネは気付いていた。正直、キセの首に複数刻まれた所有印を見つけたときはテオドリックをぶん殴ってやろうかと思ったが、やめた。キセの纏う輝くような幸福の空気が、スクネの怒りを浄化したからだった。
(イユリなら間違いなく殴りかかっていただろうな)
 今エマンシュナにいるのが自分でよかった。と、スクネはちょっとおかしくなった。
 敵国での思いがけない出会いは、宝になった。自分にとってもそうだ。
 何故か、ネフェリアの勝ち気な顔が思い浮かんだ。目を開けると、空いっぱいに灰色の厚い雲が広がった。

 キセは湿った空気の匂いを吸い込み、厚い雲の切れ間から太陽が微かに鈍い光を覗かせるのを眺めた。後ろで一つに束ねた黒髪がそよそよと風に揺れる。
「今頃はどのへんにいらっしゃるのでしょう」
「半分くらいは進んだのではないかと思いますよ」
 シダリーズが朗らかに言って空を見上げた。この空模様ではお散歩日和とは言えないが、身体を動かすには太陽が出しゃばりすぎない方がちょうど良い。
「お姫さまがた」
 二人がハスキーな声の主を振り返ると、深い緋色の軍服を涼やかに着こなしたネフェリアが青々とした芝を踏みながら芦毛の馬を引いて来るところだった。
「ネフィもお姫さまですよ」
 シダリーズがくすくす笑って言った。
「ああ。だが今日のわたしはキセ・ルルーの教師だ。騎射のな」
 キセも裾にスリットの入った細身のドレスの下に乗馬用のズボンとブーツを履き、愛馬のトルノを引いて、背には矢筒を負い、弓を肩に掛けている。
 以前騎射をしてみたいとキセが言い出してから、イサクは約束通り職務の合間にキセの騎射の教師となり得る者を軍の中で探していた。軍の馬術大会に出る程の腕前の者であれば、王女の教師として相応しかろうというのが理由だ。そして、それを知ったネフェリアが名乗りを上げたのだった。
 テオドリックの留守によってキセに余暇ができ、たまたまネフェリアの非番もそれに重なったので、この日にレグルス城の庭園の広々と開けた場所で騎射の練習をすることになった。ついでに、シダリーズはそれを聞きつけて面白がり、見学にやって来た。
「ネフェリアさまに教えていただけるなんて、恐れ多いです」
「可愛い妹のためだ。何も恐れ多く感じることはない」
 ネフェリアがいつも宮廷の女官たちをうっとりさせる爽やかな笑顔で言った。
 この日のために、レグルス城の使用人と庭師たちは、迅速に庭を整え、騎射のコースと的を用意した。普段から要求の少ないキセのために、特に誰から指示が出たわけでもないのに皆が自発的に動いたのだ。
 馬場は二百五十メートルの直線で、そこから五メートルほど向こうに赤く塗られた的が三つ、等間隔に立てられている。よく見ると、的の中心にはハートマークが描かれていた。この城の使用人の遊び心だ。
「用意してくださったみなさんのためにも、がんばります!」
 キセは意気込んでトルノにまたがった。キセは貴婦人の頂点に立つべき女性だが、馬に乗る時に誰の手も借りない。王女であろうがオシアスであろうが、軍門の出であることを誇れと、父オーレンにはそう言って育てられた。
「最初はゆっくり走らせて、一度馬上で弓を引く練習をしようか。キセの馬と弓の腕前がどのようなものか見せて欲しい」
 初っ端から馬と弓の両方をさせるとはなかなか手厳しいが、ネフェリアはスクネからキセの馬術の腕前を聞き知っている。曰く、キセが乗るとどんなに気性の荒い馬も不思議と彼女の思い通りに動くらしい。
「キセ、がんばって!」
 シダリーズがいつのまに用意させたのか、コースから離れた場所に置かれたふんわりした椅子にゆったり腰掛け、キセに手を振った。お茶の給仕のためにやってきたはずのテレーズが、シダリーズの後ろの小さな椅子にちゃっかり腰掛けてニコニコしながら自分もお茶を飲んでいる。
 キセは二人に大きく手を振って応え、トルノの麦の穂のようなたてがみを優しく撫でて、愛情たっぷりに声をかけた。
 ネフェリアが驚いたのは、キセの馬術の巧みさだけではない。
 キセは鐙に両足をしっかりと掛けたまま両手を手綱から離して体勢を整え、矢を番えて放った。矢は的に刺さらず緩い弧を描いて手前で草の上に落ちた。が、初めて――しかも見様見真似でここまでできるとは、正直予想していなかった。
「ううっ、難しいですね!馬上だとなかなか力が入りません。引き絞りが全然足りませんでした。トルノ、もう一度お願いします」
 そう言いながら、キセは弾けるような笑顔で馬の首をぽんぽんと叩き、ぶるると楽しそうに鼻を鳴らしたトルノの手綱を握って再びスタート位置に戻った。
 オシアスとして祈りを捧げる生活も苦ではなかったが、生来身体を動かすのが好きなのだ。
 二度目、三度目は的をかすりもしなかったが、一度馬を降りてネフェリアが矢を番えるタイミングやちょうど良い肘の角度を教えてやると、四度目の出走でハートの下の角にカツンと当たった。矢は刺さらず草の上にぽとりと落ちたが、目覚ましい進歩だ。
「やりました、トルノ!当たりましたよ」
 馬の首にきゅっと抱きついて喜ぶキセを眺めながら、ネフェリアは舌を巻いた。
 馬術もさることながら、弓の腕もなかなかのものだ。馬に乗っていないときのキセは、弓を引けば必ず三十メートル以上は先にある的の中央に当てた。そこらへんの貴族の子女では太刀打ちできないだろう。
「訓練はお父上の意向か?」
 と、休憩中にネフェリアが訊ねた。
「はい。馬と武術と釣りは、男も女も関係なくシトー家の必修科目なんです。兄や弟には剣術のお師匠さまがついてましたが、わたしはお父さま直々に弓を習いました」
「驚いたな」
 イノイルという国に、ネフェリアは改めて興味を持った。
 オーレン王のキセへの溺愛ぶりはスクネから聞き及んでいる。恐らく弓の方が剣よりも玉のような肌を傷つける危険が少ないと判断したのだろう。
 が、この一見儚げな姫君に国王自ら訓練を行い、一人前の腕前に仕上げたことは賞賛に値する。
 そして、スクネだ。
 何度か軍の鍛錬場で共に稽古をしたが、得物によって巧みに戦術が変わる。その太刀筋は女のネフェリア相手でも隙がなく、容赦ない。他の者はいかに優勢になろうと、王女である彼女に遠慮して最後の一撃までは絶対に行わない。が、スクネは違った。完膚なきまでに相手を敗北させるまで、絶対に攻撃をやめない。
 そういうスクネが、ネフェリアは好きだ。もうすぐシダリーズを連れて帰国してしまうのが惜しいとさえ思う。しかしこれは朋友への惜別の情に他ならない。と、彼女は考えている。
「スクネさまも娘に武術を習わせるでしょうか」
 シダリーズがティーカップを庭のテーブルに置いて、ウウン、と思案するように言った。
「なんだリーズ、気が早いな。そなたは娘に武術を習わせるのは反対か?」
 ネフェリアが優しく訊ねた。
「わたしは、もし自分の子が女の子なら、あんまり危ないことはさせたくないです。だって、わたしの子がネフィやキセのように武芸の才能に恵まれるなんて思えないもの」
 シダリーズはふう、と憂鬱そうな溜め息をついた。
「リーズは身体を動かすのが苦手なんだ」
 と、ネフェリアは怪訝そうに首を傾げるキセに教えてやった。
「それも、ものすごく。度を越してるんです。走ったら必ず五メートルも行かないところで自分の足に躓いてしまうの。馬も人の手を借りて乗るのが精一杯で、馬丁に引いてもらわないと、一人では進めません」
 シダリーズは恥ずかしそうに言った。
「はあ…。なんだかものすごく不安になってきました。アストル家の血はともかく、わたしの運動音痴の血が武門の名を汚してしまいそうです…」
「そんなことを言うな、リーズ」
 ネフェリアはシダリーズの肩をぽんぽんと叩いた。
「スクネは何も運動ができるか否かでそなたを選んだのではないぞ」
「そうです。お兄さまはリーズを大切にしていますよ。わたしの家族も心優しいリーズが大好きになります。絶対です」
 シダリーズはちょっとぎこちなく笑って、お気に入りの茶菓子をぱくぱく食べ始めた。

 キセが「二人の王太子が無事アクイラ砦に到着した」との報を鳩から受け取ったのは、翌日の昼下がりのことだった。この日も空を灰色の雲が覆い、昨日よりも一層どんよりとしている。いつもはカラリとしている夏風が湿り気を帯びて雨の匂いを運び、木々や葉の青くささを強く感じさせる。
「遠いところありがとうございます。雨が降りそうですから、鳥小屋で美味しいごはんを食べてゆっくり休んでくださいね」
 キセは小さな書簡を運んできたカワラバトの顔をちょいちょいと指でつついて労い、使用人にも礼を告げて鳩を渡した。
「大雨になる前に到着されてよかったです」
 キセが言うと、サロンのソファで刺繍をしていたシダリーズが顔を上げた。シダリースは昨日から泊まりこんでキセとの女の子同士の会を楽しんでいる。
「大雨になる?」
 シダリーズは首を傾げた。
「はい。風が強くなってきましたし、空気の匂いもなんだかそんな感じです」
「ふうん…」
 シダリーズは窓に近づいて外の空気を吸ってみた。が、特に変化はわからない。
「大雨になったら、今夜も泊まっていってくださいね。たくさんお話ししましょう」
 暗い空を明るく照らすような笑顔でキセが言った。
「いいですね。今日は一緒に刺繍ができそうですか?」
 とシダリーズが聞いたのは、キセが昨晩ひどい筋肉痛で針を持つことができなかったからだ。ぷるぷると手が震えて刺繍どころではなかった。
 キセは笑い出して、「はい、ぜひ」と答えた。

 一方、アクイラ海峡を臨む東岸の砦では、この責任者であるアジロ・バルカ将軍と、シトー家で最も信頼されている家令のミシナ、そして、長らく不在にしていたキセの侍女セレンが代表してテオドリックを迎えた。
 セレンは、長い茶色の髪をきつくひっつめ、ドレスの袖に騎士の証である剣と鷲の紋章を付けていた。
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