獅子王と海の神殿の姫

若島まつ

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三十四、彷徨 - errante -

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 祝祭の二日目を迎えた王都アストレンヌは、昨日よりも多くの人でごった返していた。
 この日は王城での宴のために国中の領主や有力貴族たちがその一族や家臣と共に街道を煌びやかな行列で埋め尽くし、民衆がそのパレード見たさに王都へ集結するのだ。国内の遠方からこのためにわざわざ旅行に来る者も多く、それぞれの家名や紋章が記された地図付きのガイドブックが土産物屋に売り出されるほど、国民にとっては馴染みのある行事になっている。
 今も大通りにどこかの家の行列が通り民衆が手を振ったり花びらをまいたりしているが、キセは沸き立つ民衆の背中を横目で眺めるだけに留め、胡桃色の外套のフードを目深に被ってとぼとぼと道の端を歩き続けた。
 どこかに行きたいわけではない。宴に出たくないから飛び出してきたのでもない。ただ、眠れない夜を越えて昇る朝陽を見た瞬間、足が勝手に外へ出て行ってしまったのだ。思考する機能が止まってしまった頭の代わりに、身体が働こうとしているようだった。
 普段なら楽しそうな民衆と活気に溢れる街を見れば心が躍るはずだ。それなのに、人々の笑い声を聞いても、おいしそうなパイの店の前でミートパイが焼ける香ばしい匂いを嗅いでも、美しい鳥の声を聞いても、いつものように心が動かない。
 空は抜けるように青く、白い雲が陽光を弾き返すように輝いているというのに、心が感じることをやめてしまったようだった。
 こんなに空虚な自分が存在することにひどく驚き、同時に恐ろしくもあった。きっとこれは心が助けを求めている合図なのだ。でも、どうしたらいいかわからない。異常事態だ。
 あてもなく歩き続けているうちに、中心部からかなり離れてしまったことに気付いた。通りは入り組んで細く薄暗く、辺りにある建物はぼろぼろの木造ばかりで、なんだか変なにおいがする。それに、まだ昼間だと言うのに不自然なほど人影が少ない。
 急に不安が襲って来た。
 来た道を戻ろうかと振り返ったが、少し先で同じような細い路地が三つに枝分かれし、それらの奥も分岐している。足元しか見ていなかったせいでどの道を戻ったらよいのか分からない。
 キセは困惑して辺りを見回した。目についたのは、何軒か先にある黒い石造りの建物だ。髪の長い女神の顔がファサードに彫られている。
(助かりました)
 と、キセは両手を組んだ。女神の家だ。神殿ならきっと神官に道を聞くことができる。
「ごめんください」
 と律儀に声をかけてから古びた大きな黒の扉を押すと、錆びた蝶番が擦れる悲鳴のような音が鳴り響いた。中は薄暗く、足元にはひび割れた床が広がり、最奥部には蜘蛛の巣と埃をかぶった祭壇と月の女神の像がある。
 キセは小さな失望を覚えた。既に廃寺になっているらしい。何だか物悲しく、少し薄気味悪くもある。が、キセは神官だ。立ち寄った神殿がいかに廃れていようとも神々はそこに存在すると信じている。
 キセは女神に祈りを捧げるために祭壇のある方へ進んでいった。祭壇の前で埃っぽい床に膝をつこうとした時、女神の後ろからユラリと影が動いて誰かが現れたので、キセはひゃっと短い悲鳴をあげて跳び上がった。
「嬢ちゃん、仕事探しかい」
 と、その中年の男はガラガラと嗄れた声で言った。目は細く歯は黄色く、右の頬と目の下に古い切り傷があり、身体はひょろりとしているのに物凄い威圧感がある。
「お、お仕事…ですか?」
 キセは恐る恐る聞き返した。
「ああ、そうさ。ここではあんたみたいな若い女に仕事を紹介してる。そう聞いて来ただろ?」
 男はニヤニヤと笑った。
 キセの悪い癖だ。聞かないほうがいいと本能的に分かっていてもその先を知りたくなってしまう。
「…神殿のお仕事でしょうか」
 それなら、悪くない。このまま祈りの生活に戻るという道もある。一瞬キセの頭によぎったこの考えはもちろん実現することはない。が、この一瞬の躊躇は相手に隙を見せることになった。
「よお、嬢ちゃん」
 男がキセにつかつかと近付いてきた。普通はここで離れようとするものだが、キセはしなかった。初対面の人に失礼な態度を取ることになってしまうと考えているからだ。
 しかし、すぐに後悔した。男が無遠慮にキセの顎を掴み、上を向かせたからだ。
「俺が紹介するのは男どもを神の元に連れて行く仕事さ。あんたは別嬪さんだからたんまり稼げるぜ」
 ニタリと下品に笑った男の息は、ひどい悪臭がした。
 どうやって逃れれば失礼にならないかとばかり考えていたが、その顔を見た途端、急に恐ろしくなった。キセは顔を背けて男の手から逃れ、一歩下がってぺこりと頭を下げた。
「…あの、わたし、ここを神殿と間違えてしまいました。お仕事の紹介は結構です。すみません」
「おいおい、ちょっと待ちなよ」
 引き返そうとしたキセの腕を男が強い力で掴んだ。
「ここは綺麗な嬢ちゃんがのこのこやって来てすぐに帰れるところじゃねえんだぜ」
 ぞっとした。すぐさま離れたいと思った。離してくださいと言おうとしたが、声が出ない。
(テオドリック――)
 パニックで何もわからなくなる前に心の中で叫んだのは、テオドリックの名前だった。
 が、次の瞬間、突然身体が自由になった。目の前で男が祭壇の角に頭を強かに打って床に倒れ込み、すぐそばにはたった今その頬を殴り飛ばした拳を握ってガイウス・コルネールが立っている。蔦模様の金の刺繍が施された黒い絹の上衣に真新しい白のズボンという正装は、この場にはあまりに不釣り合いだ。
「彼女に触るな、下衆野郎」
 ガイウスは静かに怒りを発してキセの肩を引き寄せて後ろへ下がらせ、男が動かないことを確認すると、キセの手を引いて足早に廃寺を後にした。
「あ、ありがとうございます、ガイウスさま。でも、あの、あの方の手当てを…」
 ガイウスはピタリと立ち止まって空を仰ぎ、息を吐いてキセを見た。もともと鋭い灰色の目がもっと細まっている。キセにも腹を立てているようだ。
「あなたを襲おうとした輩に、手当てなど必要ない」
「そういうわけにはいきません。命はどのような方にも平等です」
「まったく、お人好しが過ぎる」
 ガイウスはやれやれと首を振ってキセを見た。きっとあの不逞の輩に何か対処するまでここを動かないつもりだろう。観念したガイウスはピイッと口笛を吹いて離れたところに待機していたらしい従者に指で合図をし、男の様子を見るよう指示した。
「これでいいかな」
「はい、ありがとうございます」
 キセはほっとした様子で微笑んで見せた。
「それから、助けていただいたことも…。本当にありがとうございました」
 ガイウスは口を真一文字に結んで両手を腰に当て、キセに凄んで見せた。キセは臆病なウサギのようにびくついて肩を竦めたが、ここで甘い顔をしてやれる事態ではない。
「一体、あんなところで何をしていたんだ」
「あの、ちょっと、…お散歩をしていたら迷ってしまって…あなたは何を?」
「あなたを追いかけてきた」
「え…」
「ほら、乗って」
 ガイウスは神殿の前に待たせていた毛並みのよい立派な鹿毛馬の前で立ち止まり、キセに手を差し伸べた。鞍は美しい植物の装飾があしらわれた布張りで、七芒星と‘C’の文字が紋章として首部分の装飾に描かれている。キセはガイウスの手を取り、鐙に足を掛けて馬に跨がった。
「目の前をコルネール家の行列が通ったのにやはり気付かなかったんだな。わたしは王都に入ったところで家中の者と合流したが、それからすぐ屋敷へ向かう途中であなたを見つけたんだ。様子がおかしかったから後を追いかけた。人混みを抜けるのに苦労したが、…まさかこんなところに迷い込むとはね」
 ガイウスはちょっと責めるような口調で言い、キセの後ろに跨がって手綱を取った。
「す、すみません…」
「あれがどういう場所か知らないのか?」
「ええと、若い女性に仕事を紹介するところだと言っていましたが…」
「女衒の闇取り引きが行われる場所だ」
「ぜげん?」
「つまり、親や親族から売られた娘が仲介人に引き渡される場所だ。あの男は娘たちを騙して違法な娼館に売り飛ばしている」
「そんな!」
 キセの顔から血の気が引いた。廃れようとも神の家でそのような恐ろしいことが行われているなど、信じられない。ひどい冒涜だ。今までに売られてしまった女性たちのことを思うと、胸が締め付けられる。
「そういうことを生業としている奴らは大勢いる。あなたには関わりのない世界だろう。あんな場所へは二度と行ってはいけない」
 背中から聞こえてくるガイウスの声は淡々としていた。
 本当に関わりのない世界なのだろうか。と、キセは思った。知ってしまった以上、関わりがないということはない。しかし、だからと言って自分に何ができるというのだろう。当てもなくふらふらと彷徨っているだけの自分に。
「それより」
 ガイウスの鋭い声がキセの思考を振り払った。
「わたしは宴のためにアストレンヌ城へ向かわなければならないが、あなたも共に連れて行ってよいのかな」
「あっ。…そ、それは…」
 とてもよろしくない。が、テオドリックの婚約者であると知られている以上、ダメだと言うのも憚られる。キセが返答に窮していると、ガイウスが笑った。
「あなたは嘘がつけないな。隠し事も下手だろう」
「…はい」
「では、気晴らしにどこかへお連れしよう。どこに行きたい?」
「えっ、でも、春の宴は…」
「弟もいるし、問題ない。悲しそうな顔をした女性を一人にする方がよほど問題だ」
「でも――きゃあ!」
 馬が突然猛スピードで走り始めたので、キセは悲鳴を上げた。
「おっと、安心してくれ。この馬は街にもよく慣らしてあるし、わたしは同じ失敗は繰り返さない」
「ずいぶん自信があるのですね」
「そう。自信家なんだ。前向きで、ずる賢くもある」
 ガイウスの得意げな様子に、キセは思わずぷっと吹き出した。前向きでずる賢い。確かにそういう資質も必要かもしれない。

 スクネは言葉を失った。
 目の前にいる絶世の美女が今何と言ったのか、頭の中で理解しようと言葉を反芻した。
「俺と結婚はしないが、婚約者として君をエスコートしろということか」
「そうだ」
 ネフェリアは艶然と微笑んだ。凜々しい軍装もよく似合っていたが、ドレスで着飾った姿も目が覚めるほど美しい。
「あれから貴殿に言われたことについて考えていたんだ。確かに一理ある」
 とネフェリアが事務的な調子で言った。
 ことの発端は馬術大会の翌日のことだ。スクネはネフェリアに会うべく軍の訓練を覗きに行った。と言っても、口説くつもりで行ったわけではない。ネフェリアの騎射は美しかった。女性であれほどの腕前を持つ者を、スクネは知らない。だから、彼女が指揮官としてどのように指揮を執るのか見てみたかった。単純な興味本位だ。
 その日は前日の馬術大会と同じ鍛錬場で模擬戦を行うらしいとイサクから聞いていたので、スクネは従者のヒクイを伴って客席の一番高い位置からその様子を見ていた。ネフェリアは深い緋色の軍装を纏って騎乗し、部下たちに横一列の陣を編成させていた。反対側には対戦する別部隊の見るからに経験豊富な筋骨隆々の指揮官が騎乗し、白い腕章を付けた兵たちを指揮している。それぞれの部隊に大きな旗を持った者が一人いて、それが大将であるらしい。
 ぐわぁんと鐘が鳴って模擬戦が始まると、先に相手方の陣形が変わった。ネフェリアはそれに対抗するべく太鼓で合図を出したが、驚くべきはその展開の速さだった。
 結局、三回戦のうち、ネフェリアの軍は二回勝利した。
 スクネが馬に乗って鍛錬場を後にしようとしたとき、その帰路に立ち塞がった者がいた。ネフェリアだ。赤い手綱と鞍を付けた芦毛の馬に乗り、こちらへゆっくりと近付いてくる。
「イノイルの王太子殿下だな。わたしはネフェリア・ジュヌヴィエーヴ・ララ・アストル准将。テオドリックの姉だ。もう知っていると思うが」
「お目にかかれて光栄だ、ネフェリア・アストル准将。わたしはスクネ・バルーク・シトー――肩書きは省略する」
 ネフェリアは喉の奥で笑った。
「貴殿の用向きは弟から聞いている。わたしを口説きに来たのだろう」
「まあ、そうだが、今日は違う」
「まさか、訓練の見学のためだけに来たのか?」
「ああ」
 さっさと先手を打ってこの面倒ごとを終わらせてしまおうと思っていたネフェリアにとっては、出鼻を挫かれたようなものだ。甘い言葉を囁くどころか、女性として扱う素振りがない。まるで軍人同士の会話だ。
(やる気があるのか)
 と思わなくもないが、王女として扱われるよりもこちらの方が性に合っていることは確かだ。
「昨日は素晴らしい騎射を見せてもらった。勉強になるよ。矢を放ってから次を番えるまでの切り替えの速さは、テオドリックよりも優れていた」
 ネフェリアはスクネのくそ真面目な顔をまじまじと見て、口を開いた。この男の意見を聞いてみたいと思ったのだ。
「…今日の模擬戦の感想は」
「左翼の動きが鈍かった。特に先頭にいた男、槍捌きはいいがもう少し馬術の鍛練を積んだ方がいい。あと馬蹄の点検も。だが陣形の変化が見事だ。よく訓練されているのが一目でわかる」
「はっ」
 ネフェリアは声を上げて笑った。
「ちょうど同じ助言をそいつにしてきたところだ。だが、そうだな。馬具の点検も全員にさせよう」
「ならよかった」
 スクネは目を細めた。
「途中まで共連れと行こう。貴殿の意見をもっと聞きたい」
 ネフェリアの居城であるヌンキ城は、レグルス城よりも手前にある。自然、スクネがネフェリアを送り届ける格好になった。夏空のような青の屋根に壁は白く華奢ながら装飾の美しい尖塔が何本も立ち、中央の円柱型の主郭を囲んでいる。レグルス城やアストレンヌ城に比べると規模も小さく階数も三階までと低いが、庭は野のように花々が茂り小さな池が門の外からも見え、美しい趣きのある城だ。
 別れ際にネフェリアがスクネに笑いかけて言った。
「楽しい時間だった、スクネ殿。礼を言う」
「こちらこそ。君となら良い軍議ができそうだ。この次は海戦の想定でやりたいものだ」
「では春の宴で会った時にやろう。王城のわたしの執務室に海図がある。船の模型を動かしながら遊ぼうじゃないか」
「はは」
 とスクネが屈託ない笑い声を上げた。互いに敵軍の指揮官だというのに共に戦略を競って遊戯するとは、なかなか皮肉が効いている。それに、色気がまったくない。
「そんな時間があれば良いな。俺はともかく、君は求婚者や軍の上層部から誘いが掛かって忙しいんじゃないか?なかなか面倒くさそうだ」

 以降、宴の日までネフェリアが考え続けたスクネの言葉とは、これのことだ。
「面倒ごとを避ける盾として俺を使うつもりなんだな」
「その方が互いに都合が良いじゃないか。わたしは快適な時間を、貴殿はわたしを口説く好機を得ることになる」
 スクネは寝室として使っている客間の扉の前でこの国の王女に向かって肩を竦め、黒い眉を悪戯っぽく上げて、仕方がないというようにちょっと苦笑して見せた。
「五分で支度する。待っていてくれ」
 想定とは違うが、自分と一緒にいて快適だと感じられるのは、まあ、悪くはない。
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