獅子王と海の神殿の姫

若島まつ

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十、巡礼者の口付け - un baiser d’un pèlerin -

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 この日、夕陽が傾く頃になってもテオドリックの姿が見えなかった。昼時にキセがスープとパンを持って東屋へ来ても現れず、結局キセはすっかり冷めたスープを食べ終えた後に翌日の儀式の準備に勤しむことになったのだ。
 キセは神殿の全ての燭台に火を灯し、両手の指を組んで石の床に跪き、両手を開いたオスイア神の穏やかな顔を見上げた。心にあるのは、テオドリックが最後に見せた顔だ。
 昨夜目の前に現れたエマンシュナの王太子テオドリックはもっと自信に満ちて見えたが、あの時の顔は違っていた。何故か、自分よりも傷付いているように見えた。
 キセが神殿の奥の僧房でぼんやり夕餉の支度をしていると、後ろから誰かに声をかけられた。
「キセ姫さま」
 と肩を叩かれてキセは驚いて「きっ」と声を上げ、魚を捌いていたナイフを調理台に取り落とした。
「わっ、どうなさったんですか。何度も呼んだんですよ」
「セレン…」
 泊まりがけで買い物に出掛けていた侍女だ。キセよりも十センチほど背が高く、暗い栗色の髪を後ろで一つに束ね、ネリ神殿特有の翼を広げた鷲と女神の紋章を刺繍した青の外套を着ている。セレンはキセが生まれた時から侍女として仕え、キセがオシアスになるため王城を去る時も、自ら願い出て神官助手としてここまで付いてきた。
「お帰りなさい。何事もなかったですか?」
「万事順調でしたよ。明日の儀式に使う海産物もほとんどただで手に入りましたし、たくさんの方々が是非オシアスにって、食糧もたくさん寄進してくれました」
 セレンが言うと、キセは大きな黒目をキラキラと輝かせ、海の方角に向かって両手を組み、女神への感謝の言葉を口にした。セレンは眩しいものを見るように目を細めた。仕えるべき主君でありながら、セレンは赤子の頃から側にいるこの七つ年下の姫が妹のように可愛くて仕方がない。
 セレンは馬車から荷下ろしを手伝おうとしたキセを押し留め、「それより」と言った。
「オシアスの祝福を待っている巡礼者が神殿の外で待っていますけど、お通ししていいですか?」
「あっ、……はい。…どうぞ」
 いつになく歯切れの悪いキセの返答を、セレンは怪訝に思った。どことなくぼんやりしているし、様子がいつもと違う。
 オシアスを待つ巡礼者は、歩いて二日の道程をやってきた若い夫婦だった。キセは心の奥で小さな失望を感じたことに動揺し、激しく自己嫌悪した。オシアスとして抱いてはならない感情だ。若い巡礼者たちのためにいつもよりやや長めの祈りをし、二人が子宝に恵まれるよう祝福を授けた。
 笑顔に涙を浮かべて礼を述べた夫婦を見送った後で僧房へ戻ったキセは、あまりの情けなさに涙を流した。これに仰天したのは侍女のセレンだ。鍋で煮ようと皮を剥いたばかりの芋をバラバラと床に落とすほど慌てて仔細を聞こうとしたが、キセは鼻を赤くして涙を拭い、
「これはわたしが対処するべきことです」
 と言うばかりで理由を語らなかった。セレンのことは誰よりも信頼しているが、エマンシュナの王太子が自分を妻にするために一人で現れたなどという重大な秘密をセレンにまで背負わせるわけにはいかない。
 この日、キセは夜が明けるまで海の神域で心を無にして舞い、オスイアへ祈りを捧げた。

 テオドリックは岩場に座り、薄衣のドレスをひらひらと靡かせながら浜辺で舞い続けるキセを見つめている。
(どうかしていた)
 自分の言動に、自分だけではない、多くの人命と王国の命運が懸かっている。それを忘れていたわけではないが、キセ姫にはあまりに多くの感情を見せすぎた。
 彼女と話しているといつもの調子でなくなるのは確かだ。あれほど純真で正直で心からの笑顔を見せてくれる存在は今までいなかった。互いの家族の話で童女のように喜び、時には目を丸くして驚き、鈴を転がすように笑う。そういう彼女だから、ついこちらも正直に話しすぎてしまう。
 しかし、それではだめだ。
(誘惑しろ、あの姫を)
 簡単なはずだ。今までテオドリックが艶っぽい視線を送って誘いに乗ってこなかった女性はいなかった。初めて会った時、キセは確かに自分に見惚れていた。それほど難しいことではないはずだ。上辺だけの自分を魅入らせるのは、得意分野ではないか。失言はまだ挽回できる。
 縁を薄く削いだような十四日目の月が、ゆるゆると浜に寄せる波と祈りを捧げる乙女の姿をぼんやりと照らした。
 目的は一貫している。迷うことなどない。
 テオドリックは立ち上がり、暫くキセの白くたゆたう姿を眺めた後、その場を後にした。

 満月の夜は毎回普段よりも多くの巡礼者が訪れる。彼らが持つ祈りの道具は帆立の貝で出来た首飾りであったり、指輪や小さな像など様々だが、特にネリ周辺のオスイア神に帰依する者たちが持つそれは、他の地域のものと比べて一風変わっている。
 髪の長いオスイア神の傍らに、青い鷲が描かれているのだ。これはこの地に元々あったオスイア信仰とイノイル民族の青い鷲の伝説が結びついた結果であり、中には青い鷲がオスイアの遣いであり、イノイル人をこの地に導いたのが実はオスイア神であるという説もある。キセの指輪も、横顔の女神のカメオを囲う金の環の頂上は翼を広げた鷲を象っている。
 キセは巡礼に訪れた者ひとりひとりの手を両手で包んで祈りを捧げ、最後には笑顔で「女神さまの祝福がありますように」と彼らを送り出す。彼らの心には、底知れない悲しみがあることをキセは知っている。キセが神々の言語とされている古代の言葉で祈りを唱えるとき、一番に思うのが彼らの幸福についてだ。悲しみを消すことは出来ない。五年前に兄を亡くしていやと言うほど学んだことだ。だからそれ以上の幸福が彼らに訪れることを、海の女神に願う。
 中でもキセの胸を一番に締め付けるのは、戦で家族を亡くした人々の祈りだ。この日、三十六番目の巡礼者は痩せ細った老人だった。所々すり切れた麻の織物の外套を着、杖をついて遠路をやって来た。自分の命は長くないから、最後に一人で成し遂げるための巡礼であったという。
 老人はキセのたもとを手繰り寄せるようにして手を取り、落涙して嗚咽を漏らした。
せがれの身体が戦地から帰って来んのです。もう命ある間に息子の死に顔を見ることは叶いますまい。せめてオシアス、同じ悲しみを抱える親がいなくなりますよう、すべての子供が親と健やかに暮らせますよう、共に祈ってくだされ」
 その言葉は深い慟哭のようだった。キセは老人の骨張った手があまりにも脆く頼りなく、耐えきれずに涙を溢した。この老人はあと数か月もしないうちに亡くなるだろう。老人はキセが祈りの言葉を唱え、祝福を授けると、どこか安堵したように微笑み、何度も礼を言った。
「ありがとうございます、オシアス。これで安心して家に帰り、命を終えることが出来ます。ありがとう…」
 キセはその弱々しい後ろ姿を、しばらく無言で眺めた。
 初めて‘死’と言うものを目の当たりにしたような気分だった。おかしな話だ。兄の亡骸を目にした時も心に塞がることのない穴が空いたように苦しかったが、その時よりも、死に向かい、戦がなくなることを必死に願いながら生きている老人の手を取った今の方が死を身近に感じた。
 途方もない祈りだ。オシアスとして祈りを捧げたところで、自分はあまりに無力で、ちっぽけだ。女神は人々の心を守ってくれる。暗闇の中の光になる。しかし、戦を終わらせるのは神ではない。人間の役目だ。
 テオドリックが神に対して否定的な理由が、理解できた気がした。彼らの望みを自分が背負わなければならないからだ。祈ることで、神に責任を押し付けるように感じているのかもしれない。だとしたら、あまりに孤独な道行きではないか。
「あんたの力が必要だ、ルミエッタ」
 頭の中でテオドリックの声がした。

 五十人ほどの巡礼者に祝福を授けた後、この日の巡礼の儀式を終えたことを女神に報せるための祈りを捧げるべく、キセは浜辺へ下りた。浜辺を円く囲う岩の壁には既にいくつもの蝋燭が灯され、隅の東屋の四方には火が灯っている。東屋の奥から、帆立の首飾りを首に下げたテオドリックが近付いてきた。初めて会った時に着ていた正装だ。あの時は気が付かなかったが、上衣の裾に金色の糸で向かい合う二頭の獅子の刺繍が施されている。テオドリックが歩くたびに裾が揺れ、まるで獅子を従えているように錯覚した。
(やっぱり)
 月明かりの下で見るテオドリックは月神のように美しい。キセは泣きたくなるほどの想いでその姿を眺めた。
「オシアス」
 テオドリックは波打ち際に立つキセの足元に跪き、その手を取った。
「最後の巡礼者に祝福を授けてくれ」
 速くなる鼓動を耳の奥で感じる。これからする決断を、身体が危ぶんでいるのかもしれない。
 キセも膝をつき、テオドリックの手にそっと触れ、その甲に優しく口付けをした。
「あなたにも、女神さまの祝福がありますように」
 その時、柔らかい前髪の奥で月明かりを受けたテオドリックの緑色の瞳が鈍く光った。
「女神じゃない」
 この低い声を聞いた瞬間、キセの鳩尾がぎゅう、と締め付けられた。
「俺が欲しいのはあんたの祝福だ、キセ」
 痛いほどに心臓が跳ね上がると同時に手を強く引かれ、キセはテオドリックの胸に倒れ込んだ。その後はあっという間だった。
 テオドリックの指が頭の後ろから髪の中に入り込み、キセに上を向かせると、初めて会った日のように唇を覆われた。
 いや、違う。あの時よりももっと深く、熱い。
 キセは抵抗しなかった。理由はよくわからない。ただ、これだけははっきりしている。すぐに終わらせたくない。
 テオドリックがキセの唇を舌でなぞる。キセは肌があわあわと逆立つような感覚を覚えた。それが性的な興奮であることは、まだ理解できない。ただ奇妙で味わったことのない熱っぽさが血管を通って全身に広がっていくようだった。
 ――甘い。
 テオドリックは柔らかい唇の輪郭に沿って舌を這わせ、震える細い顎を摘まんで唇を開かせ、その間から舌を挿し入れた。
「ん…」
 キセの控えめな唸り声がテオドリックの身体を熱くする。舌を奥まで這わせ、キセの舌を絡め取ると、キセは苦しそうに息を荒くした。不意に掴んだ肩は細く、触れた頬は温かい。
(だめだ。呑まれるな)
 これは誘惑だ。乙女の唇に平常心を奪われている場合ではない。膝に触れる砂と打ち寄せる波の冷たさが、辛うじてテオドリックの理性を留めた。
「キセ」
 意図せずかすれた声になった。キセが潤んだ真っ黒の瞳でテオドリックを見上げる。
「あんたを妻にしたい。俺と来てくれ」
 テオドリックは口を開きかけたキセ腰を抱き寄せてもう一度口付けし、今度は違う角度から舌を挿し入れた。上顎から舌へと内部を蹂躙し、キセの甘い吐息を飲み込み、だんだんと熱くなる柔らかな肌を阻むドレスの布を邪魔に感じ始めた頃、唇を解放した。
「…それは‘はい’か」
 キセは頬を紅潮させ、ぼうっと蕩けるような視線でテオドリックを見上げた。いつの間にかテオドリックの腕に縋り付くように袖を掴んでいた。こういう感覚は、今まで知らない。少しの間を置いて質問の意図に気付いたキセは「あっ」と慌てて手を離し、顔を隠した。どんな顔をしていたか、まったく分からない。
「ち、違っ…!あ、いえ、‘いいえ’ということではなくて、あの、今のは、今のはそうではなくて」
 テオドリックは思わず笑い声をあげた。
「大切なことだ。顔を見て答えを聞かせてくれ」
 キセはそろそろと両手を顔から下ろし、深く息を吐いて熱くなった頬を冷やした後で、テオドリックの目をまっすぐ見た。
 不覚にも心臓が跳ねた。テオドリックは動揺したが、表情には出さなかった。キセの夜空のような瞳は、気持ちを落ち着かなくさせる。キセはその後何度か深呼吸した後、テオドリックの手を握った。
「あなたと行きます。あなたの――」
 鼓膜に心音がうるさいほど響いてくる。キセは自分の手では包みきれないテオドリックの大きな手をきゅっと握った。
「妻になります」
 大変な決断をしてしまった。それも、両親や兄弟にも告げず、二日前に突然現れた男が本当にエマンシュナ王の息子か偽物かなどと疑いもせずに、目の前の男を夫にすると女神の御前で宣言してしまった。もしかしたら正しい判断ではないのかもしれない。返事を言葉にした後で底知れぬ不安が震えとなって身体中に警告を発した。
 しかし、次の瞬間にテオドリックが見せた表情がキセの震えを止めた。
 テオドリックは大きく安堵の息をついてキラキラと周囲の夜闇まで輝かせるような笑顔を見せ、すくっと立ち上がるとキセの手を強く引いて立ち上がらせ、その胸に抱き締めた。
 潮の香りよりもテオドリックの匂いが濃くなり、キセの身体に熱を灯した。テオドリックの強い力を感じて心臓が割れるように脈打ち、ひどく落ち着かない。しかし、この腕の中にいると不思議と迷いが晴れ、自分の選択は正しいのだと感じた。
「キセ・ルミエッタ・シトー」
 腕の中で固まっているキセに向けてテオドリックが囁いた。声がキセの耳に直接届き、胸をざわざわさせる。
 テオドリックが両肩に手を乗せ、キセの目を正面から真っ直ぐに見つめた。
「俺たちが対処すべき問題は山積みだが、俺はあんたを必ず守る。決して裏切らない。信じるか」
「はい」
 キセは明朗に答えた。自分の選択に完璧な自信がなかったとしても、これだけは断言できる。初めて会った時から、テオドリックは信頼に足ると直感していた。
「じゃあもう一度キスしてもいいな」
「えっ…」
 キセが返答する間もなく腰を強く引き寄せられ、緩やかな弧を描くテオドリックの唇が下りてきた。キセは目を閉じてそれを受け入れた。
 ――が、唇は触れ合うことなく、テオドリックの手がキセの身体から離れた。肌に残された僅かな温もりを名残惜しく感じた自分にひどく動揺しながらキセがそろりと目蓋を開くと、テオドリックが苦々しげに唇を引き結んで両手を挙げている。
「オシアスから離れなさい」
 背の高いテオドリックに重なっていて青いドレスの裾しか見えないが、その後ろで誰が何をしているのかキセにはすぐにわかった。テオドリックの背後で、セレンが短剣を突きつけているのだ。
「セレン!この方は…」
「姫さま、早くこちらへ」
 セレンはテオドリックの背に短剣の切っ先を突きつけたままキセの手を引いて自分の後ろに隠し、じりじりと後方へ下がった。
「お怪我はありませんか」
「セレン、誤解です。この方は――」
「何が誤解ですか、襲われておいて!お人好しにも程があります!」
「おそっ…違います!ど、どこから見ていたのですか?」
 キセが顔を真っ赤にして頓狂な声を上げると、セレンは憤然と息を吐いた。
「やっぱり一人にするんじゃありませんでした。僧兵も配備していたのに、簡単に悪い虫に入り込まれるなんて。まったく、役に立たないんだから」
「セレンったら、皆さん自ら志願して警備に当たってくださっているんですよ。彼らにはとても助けられています」
 セレンは主君の苦言を黙殺し、目の前の男に向かって短剣を構え続けた。太い眉をキッと吊り上げ、ゆっくりと動き始めた敵を注視している。
 テオドリックは両手を挙げたまま振り返り、不機嫌そうに溜め息をついた。
「エマンシュナの王太子に向かって虫呼ばわりとはな」
 声を上げる前に、セレンは剣を振り上げた。厳格な軍人の父と兄たちを持つセレンは、敵への対処方法が身に染みついている。エマンシュナ人――しかも王太子。即ち敵だ。ほとんど条件反射と言っていい。
「セレン!やめてください!」
 キセが飛び上がってセレンの右腕を押さえ、その拍子に短剣の柄で額を打ち付けた。
「あいた!」
「姫さま!」
 セレンが狼狽した瞬間をテオドリックは逃さず、目にも止まらぬ速さで跳躍してセレンの腕を脇で押さえ、短剣を叩き落とした。
「くそ!」
 セレンが悪態をついた。
 キセはじんじんと痛む額を無視して反射的に短剣を拾ったが、それ以上どうしたらいいか分からずにぴゅうっと浜を駆けて二人から離れ、長い髪を掴んで短剣の刃を当てた。
「ふ、二人とも落ち着いてくれないと、わたし、髪をばっさり切っちゃいますからね!いいんですか!?セレン、もう可愛い結い方を試せなくなっちゃいますよ!」
 それを見たテオドリックはセレンの腕をパッと離し、睨めつけてくるセレンを無視してキセに駆け寄った。
「それは困る」
 キセはほっとしてテオドリックが差し出した手に短剣を渡した。
 テオドリックは剣を持たない方の手でキセの少しだけ赤くなった額にそっと触れて瘤ができていないことを確認し、そこに労るようなキスをした後、黒い髪を一筋手に取り、そこにもそっと口付けをした。テオドリックの目がこれ以上ないほどに強く輝いている。
「あんたは髪が短くても綺麗だろうが、誰かのために髪の一本でも自分を傷つけようとしないでくれ」
「…はい」
 と返事をしたかどうか、心臓の音がうるさくてわからない、が、セレンが再び悪態をつくのははっきりと聞こえた。
「お前」
 テオドリックは刺すように言った。キセに話かけていた甘い声とは別人のような冷たい声色だ。
「二度とキセの側で剣を振るな。状況判断が甘すぎる」
「今あなた、わたしの姫さまのことをキセと呼びました?」
「お前の姫ではない」
 激昂するかも、とキセは思ったが、セレンは腕を組んで指をトントンさせ、苛立ちを逃すように細く長い息を吐いた後、二人に暗い色の瞳を向けた。まだ怒っている。
「言いたいことはいろいろありますが、まず姫さまのおでこを冷やします。そしたら、説明を聞かせていただけます?」
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