獅子王と海の神殿の姫

若島まつ

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九、パンと魚 - les pains et les poissons -

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 テオドリックは巡礼者への儀式が済むまでの間、浜辺の東屋に逗留することにした。無論、神官しか立ち入ることが許されていない神域である海には入らず、魚も獲らないという条件付きだ。
「でも、本当にそこでよろしいのですか?」
 と、夕食の焼き魚とパンとスープを盆に載せて持ってきたキセが困惑気味に尋ねた。既に儀式用の白い薄布のドレスからスカートの膨らみの少ない細身のドレスに着替え、その上に厚地の織物のローブを羽織っている。
「野宿にはもう慣れた。屋根があるだけましだ。それとも、僧坊のあんたのベッドに泊めてくれるのか?」
 テオドリックが盆を受け取って揶揄うようにニヤリと笑うと、キセは顔をぱあっと赤く染めた。自分でもいやになるほど心情が顔色に出る。
「す、すみません。この神殿の僧坊は女性しか立ち入ることができないので…」
 無理です。と、心苦しさに消え入りそうな声でキセが言った。
「それは僧房が男子禁制でなければあんたと同じベッドで眠れたということか」
「ちっ、違います!おおお同じベッドなんて、滅相もないです!あっ、困っている方がいたらもちろん喜んでベッドをお貸ししますが…、わ、わたしは床で。もちろん床です。クッションがありますから。あ、お祈り用のものではありませんよ。あ、あの、そうじゃなくて、宿をお探しになったりはしないのですかということをですね…」
 我ながら情けなくなるほどの慌てふためきようだ。殿方のこういう軽口には慣れていない。また揶揄われるかと思ったが、意外にも目の前のテオドリックは大真面目な顔をしていた。
「ここがいいんだ。近くにいた方があんたのことをよく知れる」
 その瞳の強い光がキセをますます困惑させた。あまりに突然の出来事で心の整理が追いつかない。重大で、それ以上に重要なことだ。
 キセはテオドリックの隣に座り、顔を向き合わせた。
「…わたしはオシアスとして、人々のために生涯を捧げるつもりです。その覚悟を決めて生きてきました。ですが、テオドリック、あなたのご覚悟が固いのもわかります。心から国民のことをお考えでいるのも。ですから、わたしも一生懸命考えます。わたしたちが、どのようになることが最善の道になるのか」
「‘わたしたち’というのは、イノイルとエマンシュナのことか、それともあんたと俺か」
 キセは一瞬目を瞑りそうになった。澄んだ海の色をした瞳に吸い込まれそうだ。が、真っ直ぐに見返した。神に祈る時も人と語らう時も、目を開き、心を開き、真心を込めなさい。とは、かつてオシアスであった母の教えだ。
「両方です」
 テオドリックが微かに唇を吊り上げて無言で頷くと、キセは眉を開いた。
「では、いただきましょうか」
「ん?」
 テオドリックは首を捻ってキセが持ってきた盆の上を見た。言われてみればパンやスープが二つずつある。最初から自分もここで食事するために用意したのだろう。
「俺に付き合ってここで食べることはない。あんたは神官とは言え王女だろう。風邪でも引かれては困る」
 王族としての立ち振る舞いが骨身にまで沁みているテオドリックには、そんな必要がないにもかかわらず、風をよける壁もテーブルもない粗末な東屋で食事をしようというキセの行動が俄には信じられなかった。そういう気分もあって、意図せず突き放したような言い方になってしまった。が、キセはにこにこしながら伸びやかに「いいえ」と言った。
「わたし、物心ついた頃から風邪を一度も引いたことがないのが自慢なんです。それに、ご飯は誰かと一緒に食べる方が美味しいですから。ご心配ありがとうございます」
 テオドリックはまたしても不思議な生き物を見るような気分になった。海風の吹き付ける東屋で、一つの盆に載ったものを誰かと食そうという女性とは今まで会ったことがなかった。それがイノイル王国の頂点に君臨する国王の娘であれば、尚更だ。
「あ…」
 テオドリックの沈黙を不安に思い始めたキセが、顔色を変えてあわあわと立ち上がった。
「も、もしかして、お邪魔だったでしょうか。お一人の方がよかったら、わたしは――」
「いや、いい。いてくれ」
 テオドリックはちょっと慌ててキセの手を掴んだ。キセはほっとしたように顔を綻ばせ、再び椅子に腰を下ろした。
「よかった。余計なお世話だったらどうしようかと思いました」
「そんなことはない。俺は…あまり誰かと食事する習慣がないから、少し驚いただけだ」
 テオドリックは盆を二人の間に置き、魚介と野菜のスープが入った手のひらほどのボウルを取り上げた。陶の器から伝わる熱さと貝の出汁の香りが空腹を思い出させ、胃を動かした。
 キセは自分もちまちまとスープやパンを口に運びながら、大口を開けて料理を頬張る王太子をまじまじと眺めた。テーブルも用意されていない場所で大きな口を開けて簡素な食事をとっているのに、どこか気品と優雅さが滲み出ている。
「いつもお食事はお一人でされるのですか?」
「ああ。母が亡くなって姉弟にそれぞれ城が与えられてからは、大体がそうだな。たまに従者と食事するが、大抵は時間が合わない」
「そうですか…」
 キセの沈んだ声に、テオドリックは驚いてその顔を見た。何故かしおれている。
「そういうあんたは、いつも食事の相手がいるのか?他に神官はいないようだが」
「はい。神官助手として一緒に暮らしている者がいます。ですが今日は買い物に街へ出ていて明日まで戻らないので、あなたが来てくださって嬉しいんです。今日も一緒にごはんを食べる人が見つかりましたから」
 キセは顔をキラキラとさせて笑った。
「俺がここに来た目的を知ってもか」
「はい」
 テオドリックの眉間には皺が寄っているが、一方でキセの表情は変わらず穏やかだった。不可解だし、不安もある。本当にエマンシュナとイノイルが婚姻を結ぶということを理解しているのだろうか。
「…殺し合っている国の王太子でも?」
 さすがに意地が悪かっただろうか、とテオドリックは思った。和平のための政略結婚を提案しておいてこちらが不利になるような言動は避けたいが、それでも訊かずにはいられなかった。この重大事にそれほどの動揺も見せず、疑心も抱かず、無防備なほど感情を顔に表す彼女が、どれほどのことを理解しているのか探ってみたかったのだ。
 案の定、キセはこの言葉で顔に陰りを見せた。ところが、その理由はテオドリックの予想とは違っていた。
「それほどの危険を冒してまで、王太子殿下自らここへ来てくださったのでしょう。お供もつけずに。お父さまが港や街道の警備を厳しくしているのは、承知しています」
 キセは両手に持っていたスープのボウルを盆に置き、両手を膝に置いて背筋をぴんと伸ばした。
「わたしはあなたを信頼します、テオドリック。あなたは誠実な方です。わたしの返事を待つと言ってくださいました。それに、身体の心配もしてくださいました。あなたはお優しい方です」
 そう言って、キセは微笑んだ。

 妙な姫だ。
 テオドリックは硬い長椅子に身体を横たえて組んだ両手を枕にし、耳を打つほどに近くで響く波の音を聴くともなしに聴きながら、キセ・ルミエッタ王女のことを考えた。
 彼女はあらゆることが予想と違っている。
 王族が戦禍を逃れて神殿に匿われることはそれほど珍しくないが、まさか本当に神官として一生を捧げるつもりで出家したなど考えてもみなかった。しかも、オーレン王はキセが神官としての修行に入ることに反対していたらしい。キセは匿われていたのではなく、自ら志願して神官になったというのだ。
 それに、「英傑オーレンの娘」というからにはさぞ気性が荒いのだろうとどこかで思っていた節がある。それが実際に会ってみれば心穏やかで気立てが良く、どこかふわふわした娘だった。確たる証拠もないのに、突然現れた男をエマンシュナの王太子だと信じてしまったことも、想定外だ。それなのに、心に太い芯が一本通っていて、多分それは誰にも折ることができない。なんとなく、そんな気がする。
 驚いたことはこれだけではない。キセは自分でパンを焼き、自分で魚を料理し、スープを煮ていた。王族の女性が自ら料理するということは、テオドリックの知る限りエマンシュナの歴史には前例の無いことだ。それも、どの料理も美味だった。料理が美味しくなる出汁の取り方を母が教えてくれたのだと、キセは嬉しそうに言った。
 護衛が近くにいないことも、普通であれば有り得ない。如何に神官として神殿に暮らしていても、付近を僧兵が守っていても、王家の若い娘は一人になってはいけない。実際に敵国の王子に入り込まれたではないか。キセは自分のことを王女だとは認識していないのだ。と、テオドリックは思った。その意識の無さは、腹立たしいほどだ。
 ところが、その苛立ちもキセは笑顔で吹き消してしまった。
 食事の最後にテオドリックが礼を告げると、キセは春の日のようににっこりと笑いかけた。燭台の灯りとぼんやりした月明かりの下で、彼女の笑顔が眩しく見えた。
「俺の食事の用意はしなくていい」
 と告げたのは、そういう自分に動揺したという理由もある。ちょっと落ち込んでしまった様子のキセにそれぞれが用意した食事をここで一緒に取るのはどうかと提案すると、キセはまたあのきらきらとした笑顔を見せた。新月の夜空を映したような瞳に引き込まれそうだった。
神官オシアスは魔術も使うのか)
 と、一瞬頭をよぎった馬鹿な考えを振り払った。惹かれてはいない。彼女とは個人的な感情で結びついてはいけない。
(俺は父のようにはならない)
 テオドリックは暗闇の中、目を閉じた。

 キセは祭壇の前に膝をつき、朝の儀式を始めた。寝不足で頭がぼんやりする。
(修業が足りません…)
 あまりの情けなさに自分を張り倒したい気分だ。
 共に食事をしていた時は普通に話せていたのに、食事を終え紳士的にも僧坊まで送りに来たテオドリックの唇が手の甲に触れた後は、それが唇に触れた瞬間をありありと思い出して平静ではいられなかった。暗闇の中で目を閉じると否応なしにテオドリックの唇の柔らかい感触と吐息の熱さが蘇り、穏やかな眠りとは程遠い場所に意識を連れて行ってしまう。その上、エマンシュナへ嫁ぐかどうかという重大な決断をしなければならない。考えも感情もぐちゃぐちゃのまま、昨夜はほとんど眠ることができなかった。
 儀式を終えたあと、キセは律儀にも昨夜の約束通り浜辺の東屋へ赴いた。儀式用の薄衣のドレスのまま、手には朝食のパンと温め直した昨夜のスープが載った盆を持っている。
 顔を合わせれば狼狽えてしまうことは目に見えているが、それよりもキセにとっては約束を守ることの方が重要だ。
 しかし、辺りを見回しても姿がない。
 暫く東屋の椅子にちょこんと座って海を眺めながら待っていると、小さな籠を手からぶら下げたテオドリックが岩場の階段を降りてきた。キセの心臓がばくっと大きく跳ね、じわじわと顔が熱くなった。思わずテオドリックの形の良い唇に目が行ってしまう。
 キセが口元をもじもじさせて挨拶をすると、何故かテオドリックは一歩下がって硬い表情のまま挨拶を返した。テオドリックの持つ籠の中には、川魚が三匹入っていた。
「神域では獲っていないぞ」
「承知しています」
 キセはくすくす笑った。
 彼女の見るところ、テオドリックは器用な男性だ。誰も知らないキセの居場所を探し当て、何日も正体を気取られずにネリの地までやって来た。その上、小枝を小さなナイフで削って串を作るのも、魚を串に刺すのも、岩場で拾った石を重ねて竃を作るのも、火を起こすのも手早い。
「お上手ですねぇ」
 キセがテオドリックの手元を覗き込んで感嘆すると、テオドリックはニコリともせずに「軍で学んだ」と言った。
「魚の串焼きを作る王子さまって、なんだか新鮮です。他にはどんなことが得意ですか?」
 テオドリックは石の竃の火の周りに魚の串を立ててキセの方を向き、唇を吊り上げて見せた。
「夫になる男に興味が湧いた?」
「おっ…」
 キセの頬に血色が昇る。あまりに素直な反応に、テオドリックはおかしくなった。
「夫では、ありません。わたしはオシアスですから」
「今は、な。王妃よりも神官でいたいと思う理由は何だ?敵国の王妃はやはり嫌か」
 キセはかぶりを振った。
「それこそ、人が勝手に作ったものです。女神さまのもとでは敵も味方もありません。わたしがオスイアさまに仕えるのは、そういうもののない平穏な場所を、誰しもが心の中に持てるように導くためです」
「だがそれを食い物にする連中もいる。世の中善人ばかりじゃない」
 テオドリックが反駁した。
「心より命を救うべきだ。今、あんたと俺以上にそれができる人間はいない」
「ですが、心を救うことは命を救うことと同じくらい大切です」
「ああ、しかし一人の命を救うことは大勢の心を救うことになる。とりわけ戦で落とす命は」
 ぱちん、と小さく火が爆ぜた。
「祈るだけでは命は救えない」
「そんなことはありません。祈り、寄り添うことで救える命もあります」
「多くはないだろ。それよりもあんたの力で最大限にできることをしろよ」
 キセは答えず、丸く硬いパンをかじった。別段気を悪くしたわけではない。ただ、キセには答える材料がなかった。ネリへ訪れ、祈り、女神に感謝して去って行った巡礼者たちのその後の人生を、キセはほとんど知らない。ふとテオドリックの手元に目を止めた。テオドリックならば魚を串に刺して焼くように、命を救うことも器用にやってのけるのだろうか。
「…本当にお上手です。王子さまの知られざる秘密ですね」
 テオドリックがきれいな焼き目のついた魚を石の竃からひとつ取り上げ、ちょっと唇を吊り上げた。
「あんたの兄上たちは魚を焼かないのか?」
 そう口に出して、これは失言だったかも知れないと思った。キセは二番目の兄を泥の道の事件で亡くしている。が、テオドリックの心配に反してキセの穏やかな微笑は曇らない。
「子供の頃は兄弟みんなで釣りに行って、よく焼いていました。弟のウキは小さかったので上手に出来なくて、‘シトー家は漁師の家系なのに’って三番目のイユリお兄さまが笑うんです。そうすると二番目のミノイお兄さまが‘俺は漁師の家系じゃないがお前より上手いぞ’って、よくイユリお兄さまに言い返していました」
 テオドリックはよく焼けた魚を頬張りながら、嬉しそうに思い出話をするキセを見た。ミノイ――泥の道の事件で対峙した王子だ。過去の記憶が蘇ってくる。が、一つ引っかかることがある。
「…ミノイ王子が‘漁師の家系じゃない’とは、どういう意味だ」
「ミノイお兄さまは、養子なんです。前の王家の血筋で、反対意見も多かったようですが、結局はお父さまが引き取ることになったそうです。政治的な目的があったことは事実ですが、お母さま方も自分の子供たちと同じように育てました。うちはわたしを入れて六人兄弟ですが…みんな本当に仲が良くて、大好きな家族なんです」
 キセは悲しみなどおくびにも出さず、笑った。
 ミノイが養子だった事実は、多少なりとも衝撃的だ。しかし、それよりも胸が締め付けられた。罪悪感か、羨望かも知れない。テオドリックの姉弟は母親が死んで以来、姉弟全員で顔を合わせたことは数えるほどしかない。
「…そうか」
 と、テオドリックは短く言った。自分がミノイ王子の最期にそばにいたと知ったら、この笑顔は曇ってしまうだろうか。
「テオドリックにもご兄弟がいらっしゃいますか?」
 と、今度はキセが尋ねた。
「うちは四人だ。姉が二人と弟が一人。長姉のサフィールは嫁いでいて家庭菜園に夢中、次姉のネフェリアは軍人だ」
「女性の軍人さんですか!かっこいいです」
 目を輝かせたキセに向かって、テオドリックは目を細めた。
「弟のオベロンは十六歳であんたと同じくらいだ。弓が上手い」
「わたしは十七歳ですから、弟さんが一つ年下ですよ」
 キセがスープのボウルを両手に持ちながらフフンと得意げに胸を張った。
「わたしの末の弟のカイはまだ四歳で、すごく甘えん坊なんです」
 テオドリックは口に運ぼうとした魚をピタリと止めた。
「…長兄のスクネ王子はいくつだ?」
「二十七です」
「…母上は随分…、健康体なんだな」
 テオドリックは驚きながらも言葉を選んだ。女性の年齢についての話題はあまり進んで口にするべきではない。キセはちょっと首を傾げて不思議そうにしていたが、「ああ」と眉を開いた。
「お母さまは三人いるんです」
 キセが言うには、長兄のスクネ王太子と三番目のイユリ王子を産んだのが第二妃のシノ・カティア妃で、キセと二人の弟を産んだのが元オシアスであった第三妃のオミ・アリア妃であるらしい。第一妃のユヤ・マリア妃は子供に恵まれなかったが、他の二人の妃と協力して子育てに励み、国王の内向きの右腕として能力を発揮している。家庭や城、式典など、内向きのことはこのユヤ・マリアが中心となって取り仕切っているという。
「ユヤお母さまは凄い方なんです」
 と、キセは目を輝かせた。
 ユヤ・マリアはオーレンの幼馴染みでシトー家と同じく代々漁師の家柄であり、結婚した当時はまだオーレンは一介の軍人に過ぎなかった。ユヤはその躍進を陰で支え、とうとう夫が国王になった暁には国王の妻として恥ずかしくないように自ら作法や儀典の教師となる者を選んで雇い、それらの全てを自らに叩き込んだ。更には盤石ではなかった王位を固めるために国内の有力貴族の娘を夫に娶らせ、前王朝の血を引くミノイを養子に引き取る手筈を整え、国内で大きな影響力のあるオスタ教の神官を夫の三番目の妻として迎え入れた。自分が最初の王妃であるにも関わらず他の二人をよく立て、よく支えている。年長者のこういう態度もあり、三人の母親たちは憎み合うどころか互いを尊重し合い、姉妹のように仲が良いらしい。
「なかなかできることではありません。本当に尊敬します」
 キセはそう言ってパンを口に運んだが、テオドリックの胸は嫌悪感でいっぱいになった。エマンシュナの法律では男が複数の妻を持つことは有り得ないし、その逆もない。そもそも、愛人という存在自体が不快極まりない。あのヴェロニク・ルコントがいい例だ。
「妾腹とはな」
 と不用意な言葉を声に出してしまったのは、色欲に狂って国政を顧みなくなった父親への怒りであって、決してキセの出自を卑下したわけではなかった。が、内実はどうであれキセへの八つ当たりだ。
 キセの傷付いた表情を見て、テオドリックはこれがいちばんの失言だったことを知った。テオドリックが神を否定しても亡くなった兄の話題に触れても笑顔を絶やさなかった彼女が、今にも泣き出しそうなほど目元を赤くしている。
「…骨を捨ててくる」
 テオドリックはそれだけ言ってその場を後にした。これ以上、どうしていいか分からなかった。
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