獅子王と海の神殿の姫

若島まつ

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三、憂国の王子 - le Prince héritier du Pays du Lion -

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 エマンシュナ国王テオフィル・マクシミリアン・アストルの第三子にして嫡男テオドリック・レオネ・アストルが王家の居城アストレンヌ城で産声を上げたのは、エマンシュナ王国とイノイル王国の休戦協定が結ばれてからまもなく十年が経とうかという頃のことだった。
 この時期はイノイルよりも長く争っている西隣のアミラ王国との戦争もエマンシュナの勝利で終わりを迎え、長いエマンシュナの歴史の中で最も平穏な時代だった。
 自然、テオドリックは戦を知らない。
 国民を統べ、未来の平和を担う者として帝王学や経済、複数の言語のほか、馬術、刀剣術、武術などの英才教育を受け、テオドリックもまた幼い頃から周囲の期待を裏切らなかった。
 王妃である母親が流行り病で亡くなった時も、十三歳という若年ながら悲しみに暮れる父王に代わって政務を行い、家臣たちを驚かせた。家臣や国民のテオドリックへの期待はいっそう高まった。
 とは言え、テオドリック本人は王位にそれほど興味はない。
 住居や服や名声と同様に、生まれてから当然のように与えられるものを、当然のように享受してきた。息を吸い、吐くのと同じようなものだ。例えば父王の気が変わって二人の姉のうちのどちらかや六つ年下の弟が王座に就くことになったとしても、呼吸するようにそれを受け入れるに違いない。――と、この年若い王太子は漠然と考えていた。
 テオドリックの王位に対する執着など、その程度のものだ。それどころか、これまで自分から欲しいと思ったものがあったかどうかさえ、定かではない。そういうことを熟考するには、生まれてからこれまで自分の意思とは関係なく与えられるものが多すぎた。
 誘惑も同様だ。
 テオドリックは、高貴な血統だけではなくエマンシュナ人の理想とする優雅さと美男子の条件を全て揃えている。
 金色の獅子の家紋に似つかわしく、アストル家には輝くような明るい金色の髪をした子供が生まれることが多い。テオドリックも例に漏れず、満月の光のような美しいアッシュブロンドの髪を持ち、優美な曲線を描く切れ長の目と母親譲りの深いエメラルドグリーンの虹彩が思慮深さを、引き締まった唇が誇り高さを表している。
 幼年の頃から稀代の美男子と言われ、長じてからは背の高さや、やや細身ながらも精悍な体つきが更にその男ぶりを上げた。
 そのテオドリック王太子を放っておくほど、エマンシュナの上流階級の女たちは盲目でも謙虚でもない。妻になれなくとも愛人に、一夜の遊び相手にと、貴族の子女や未亡人、果ては夫が健在の夫人たちまで、お目にかかる機会あらばこぞってこの高貴で美しい少年に近づこうとした。
 最初のうちは訳がわからず礼儀正しい拒絶を見せていたテオドリックも、性の興味が深まる年頃にもなるとそういう類の子女や夫人たちに手をつけ始めた。時には一夜の相手が一人ではないこともあった。時間を置いて一人ずつ相手にしたり、同時だったり、そう言ったことはその日の気分による。
 ただし、彼女たちと関係を持つ前にテオドリックはキッパリと宣言する。この関係は一夜に限ったものであり、王太子ではなくただの男としてしか君たちを相手にしない、と。ここで少しでも相手の表情に陰りが見えれば、それまでだ。王太子として育てられるうちに培ったものの一つが、こうして相手の表情を読み解く術だった。
 そういう享楽的な生活も、心から渇望して手に入れたわけではなかった。周囲から見れば有能でこの上なく華やかな王太子は、自分をこの世で一番空虚な存在だとさえ思っていた。
 それが、十七歳の夏に一変した。
 泥の道で起きた事件である。

 休戦協定延長の調印の日、テオドリックは王の名代として先頭を行く叔父レオナール・アストル元帥の後方に控えていた。
 王都アストレンヌから凡そ三日の道程を全員が騎馬で移動し、アクイラ海峡で海から道が現れる時を待った。
 とても快適な旅とはいえなかった。何しろこの数日間は、普段の夏よりも蒸し暑い日々が続いていたから、様相を整えるために分厚く着込んだ礼装は重く、苦痛この上なかった。
 それでも、叔父からこの公務に誘われた時は嬉しかった。幼い頃から自分の子供たちと変わらずに接してくれるこの叔父を実の父親同然に愛していたし、王族ながら軍の司令官として稀な能力を発揮していることも尊敬していた。
 叔父レオナールは、テオドリックが知る誰よりも公平な人物だ。そういう叔父が重要な公務の副官として自分を選んでくれたことが、ただ嬉しかった。王の息子ではなくテオドリック・アストルとして存在を本当に認めてもらえたと実感した。
 やがて海が引いて道が現れ、潮の匂いが立ちこめる砂の上を進んだ。海水を含んだ柔らかい砂地の上を行くために、馬には藁靴を履かせた。やがて、両軍が道の中央で対峙した。ここが再び海に沈むまでそれほど多くの時間は掛からない。必要最低限の手順で事を進めるはずだった。
 テオドリックはこの時放たれた矢がどの方角から来たのか、はっきりと記憶している。
 後に父王は公式に否定したが、明らかに自軍の最後方から放たれたものだった。ヒュウ、と空気を裂いて頭上を飛んで行く太い矢は、鋭い矢尻を、相手の隊列の先頭にいるイノイルの王子へ向けて空に弧を描いた。
 鮮明なのは、そこまでだ。
 あとは怒号と耳をつんざくような剣戟の音、身体を打ち付ける何か大きな衝撃だけが混乱した記憶として残っている。みな泥と血にまみれて入り乱れ、もはや誰が味方かも判らなかった。
 足元に転がってきた首さえ、家臣のものか敵なのか判別できない。確かなのは、その時既に自分が落馬していたという事実だ。
 恐怖に震えて立ち尽くすテオドリックの身体が人形のようにいとも簡単に倒され、気付いた時には何者かが自分の上にのしかかっていた。腕が生にしがみつくように動き出した。相手の顔も判らぬうちに剣を抜いた。
 これまで習ってきた剣術などは頭になかった。技も型もない。ただ夢中で振った。相手の短剣が自分の首を貫く前に、自分の剣が相手の頚部の皮と肉を裂き、ゴリ、と何か硬いものに当たって止まった。
 ――骨。
 と、認識する前に噴き上がった生温い血が視界を真っ赤に染めた。
 みるみるうちに生気を失っていく灰色の目が自分を殺した男の顔を焼き付けるように真っ直ぐ見つめてくる。
 テオドリックは動けなかった。
 男の身体が全ての力を失って倒れ込んでくると、今度は激しいパニックが襲ってきた。
(連れて行かれる)
 普段なら思いつきもしないような馬鹿げたことだが、本気でそう思った。夢中で男の軍服の胸を掴み、もがきながらその下から這い出た。死体を退かそうとするうちに相手の軍服からボタンを引きちぎっていたが、手が強張って開かず、それを握りしめたままへたり込んだ。
「潮が上がるぞ!」
 と、遠くで誰かが叫んだ。これを皮切りに、双方の生き残った者たちが乱れに乱れて互いの岸へ撤退していった。どうやって岸へ戻ったのかなど、全く記憶にない。気付いたら両手を血が滲むほど握り締めたまま金色の獅子の旗が揺れる砦の前に横たわっていた。周囲では取り乱した様子の家臣たちが自分を取り囲んで何事か言っていたが、何も聞こえなかった。
 砦で待機していた従者のイサクが転げるようにして駆け寄って来るのが見えた。
 イサクは王太子に群がる家臣たちを下がらせ、テオドリックの上衣を脱がせて傷を確認し、全身にベットリとついたものがほとんど返り血だと分かると大きく息を吐いた。
「イサク…」
 テオドリックが初めて声を発した。声になっていたかどうかも定かではない。が、イサクには確かに聞こえた。
「今は何も言わなくていい」
 と、この従者であり乳兄弟でもある青年は、弟のように共に育った少年の肩を安心させるように叩き、肩を担ぎ上げて無言で砦の中へ連れて行った。
 テオドリックは砦の司令官が使う執務室の寝台に運ばれた。何度か嘔吐した後ひどい眠気が襲ってきたが、意地でも眠らなかった。泥の道から帰った者が全員砦へ入った後、十二人が死んだと聞かされた。叔父もそのうちの一人だった。

 この日以来、テオドリックは荒れた。
 荒れた――と言っても周囲に当たり散らすことやものを怒りに任せて投げるようなことはない。そういう気分のまま軽挙に及べるようには、この少年は生まれついていない。
 ただ、腹のうちに煮えたぎるような怒りを抱え始めた。これまで経験したことのないものだ。それも、叔父を殺した敵国の兵に向けたものではなく、かと言って命令もなしに最初に矢を放った誰かに対するものでもなく、もっと広義のものだ。
(この世が悪い)
 もっと言えば、このような世にした先人たちが悪い、と思った。そして、それを正すように父王に進言さえした。
 しかし、肝心のテオフィル王はのらりくらりと息子の言葉を躱すのみで特に何をするとも約束しなかった。テオドリックは父王に、イノイルの要請通りに最初に矢を放った首謀者を探すか、その者が既に死んでいるのであれば関係者を洗ってこの事態に対する責任を国家として取るべきだとさえ言った。
「そうでなければまた戦乱が起きます。俺は俺の国をそんなふうにするつもりはない」
 あんな情けない自分にはもう二度と戻りたくない。とテオドリックは強く思った。ところが、テオフィル王は壇上の玉座から「頭が高い!」と一喝した。
「イノイルのオーレン王には既に使者を送った。わたしはそのような下知はしていない。本当に矢が我が軍から飛来したものかも判らぬのだ。首謀者を探すなど、無駄なことだ」
「俺は見ました。明らかに我が軍の後方から放たれたものだった」
 テオドリックは食い下がったが、テオフィル王は一笑に付した。
「そなた、我が軍の者が矢を放った瞬間を確かに見たと言うのか」
「…いいえ」
 そう答えるしかなかった。実際に矢が飛んできた方向ははっきりしているが、自軍の中の何者かが矢を放った瞬間を見たわけではない。テオドリックは父親の金色の髭の下で唇が歪むのを見た気がした。
「では口を噤んでいよ。まだわたしの愛する嫡男でありたければ」
 この言葉に身体中の血が凍る思いがした。壇上を見上げると、そこには口髭を撫でながら口元を緩める中年の男がいた。
「ヴェロニクがわたしのために南国の果物を取り寄せてくれたのだ。これからシェダル宮へ行く。そなたも自分の城へ帰って休むがよい」
 愛妾の住む城に出掛けるために玉座を離れる国王を、テオドリックは半ば茫然と見送った。
(これが国王か)
 目の前には、金色の玉座が残された。
 何代も前の王が当時の最先端の技術を持つ最高の職人に造らせた椅子だ。背もたれと座面には金糸で獅子の見事な刺繍が施された緋色のビロードがふっくらと張られ、四本の脚は太く雄々しい獅子を模し、そのひとつひとつに流れるような毛並みと鋭い爪が彫り込まれている。この椅子を磨くことさえも、選ばれた者にしか許されていない。
 この豪奢な玉座が、突然陳腐なものに見えた。
(父上はあんな男だったか)
 幼い頃は尊敬していた。思慮深く、勤勉で、芸術の才能に溢れ、他者に心を分けることのできる人だった。そういう父こそ国王に相応しいと思っていたし、自分がいつか王になるならばこうありたいと思っていた。
 それが、テオドリックの知らぬ間に変わってしまったらしい。
(いつからだ)
 と自問して初めて、何年もまともに会話をしていなかったことに気付いた。
 子供の頃は二人の姉と年の離れた弟と両親で王城に住み、謁見の間やサロンや大広間を駆け回り遊び場にして暮らしていた。重臣に叱られることもしばしばあったが、それでも笑い声の絶えない場所だったはずだ。
 変化があったのは、母が病死してからだったろう。
 母エヴァンジェリーヌはマルス大陸西南部のヤナリ公国という小さな国の公女で、父とは西方への貿易ルートを確保するための政略結婚だったが、子供の目から見ても深く愛し合っているのがわかるほどに二人は仲が良かった。
 その母が、急死した。九年前のことだ。胎には五人目の子がいた。
 テオフィルは悲しみのあまり重臣はおろか子供たちとさえも話ができない日々が続き、半年ほど玉座にも座ることもできなかった。
 この時テオドリックは王の行うべき政務と負うべき責任を全てその身に引き受けた。二人の姉や家臣たちはよく支えてくれたが、それでも十三歳のまだ子供と言うべき年齢の王太子が背負うには重すぎた。母の死を悼む間も気が済むまで涙を流す余裕もないほどに多忙で、重圧に押し潰されそうな日々だった。
 今なら分かる。この時期の自分は心が麻痺していたのだ。
 半年ぶりに玉座へ戻った父は、最愛の妻の面影を残した子供たちを王都の別の城に移し、自分は早々に若い愛人を作って城を与え、そこに入り浸るようになった。
 この時期から父親と面と向かって話をしたことは、数えるほどしかない。
 テオドリックは空っぽの玉座の前に立ち尽くし、今まで目を瞑ってきたことをまざまざと自覚した。母が死んだあの日、一生分の愛も情熱も、父の中から枯渇してしまったに違いない。自分たちは母だけでなく、父をも失ってしまったのだ。
(なんということだ)
 怒りが身体中を血流となって巡り、心臓が痛いほどに鼓動した。腰に佩いた剣を抜いてあのふざけた玉座をズタズタにしてやりたい衝動に駆られた。
 が、耐えた。
 拳があの日のように固まって開かない。爪が手のひらに食い込んで皮膚に傷を作った。
(俺は愚かだった)
 今最も腹立たしいのは、与えられることに慣れすぎて、失ったものに目を向けることさえしなかった自分自身だ。

 テオドリックはこの日から行動を始めた。
 形式ばった剣術の稽古をやめ、軍の鍛錬場で兵卒たちと同じ訓練をするようになった。無論、身分は同輩たちには明かさない。ただ「デレク」と名乗り、兵卒と同じ装飾の殆どない深い赤の軍服を着て、平民と同じ粗野な言葉遣いで話した。テオドリックが直々に頼み込んだ軍の司令官は内心穏やかではなかったが、その頼み通り他の兵卒と同じように厳しく接したし、指導も手を抜かなかった。
 人目を引く美麗な容姿だから露見が早いかもしれないという司令官の予想に反し、王太子は巧く彼らに溶け込んだ。テオドリックが開花させた新しい才能だった。
 同じ頃にテオドリックはエマンシュナ国内では手に入れにくいイノイルに関する情報を集め始めた。軍の訓練が終わるとイサクを連れ立って場末の酒場へ赴き、仕事に向いていそうな者を見繕って間諜としてイノイルへ放った。
 父は勿論、全て余人の知らぬところだ。王城から離れてアストレンヌ郊外のレグルス城で暮らしていることは、こういうことには都合が良かった。
「オーレンには娘がいるらしい」
 ということを、間諜の仕入れた情報で知った。オーレン・シトーは用心深い男で、如何に戦を停止しているとは言っても敵国に自分たちの国の情報を易々とは漏らさなかった。その存在が公になっているのは嫡男のスクネ王子と泥の道で死んだミノイ第二王子のみで、他に子供がいるのか、更には妻の名前さえも判然としない。
「年は」
 馬術の鍛錬を終えたばかりのテオドリックが鹿毛の馬から降り、シャツの襟で首に流れた汗を拭った。従者のイサクが長い脚を交差させ、厩舎の壁に寄りかかっている。
「十四か十五だそうだ」
 イサクはそう答えてテオドリックに歩み寄って手綱を預かり、レモン水の入った瓶を差し出した。
「嫁いでいるか」
「いや――」
 テオドリックはレモン水で喉を満たしながらイサクの答えを聞いた。頭の中で構想が浮かんだのは、この時だ。兄弟のように育ったイサクにはテオドリックが何を考えているのか手に取るように分かる。
「残念だが所在が不明だ。情勢が激化してからはオアリス城では暮らしていないらしい」
 イサクは馬を厩舎に繋いで馬桶に水を汲み、首をポンポンと叩いてやった。
「安全のために何処かへ隠したか」
 テオドリックは汗に濡れたシャツを脱ぎ、シャツでそのよく鍛えられた身体を拭った。兵卒と同じ訓練をするようになってからというもの、以前にも増して精悍な体つきになっている。
「そのようだな。オーレン王も娘が可愛いらしい」
 肩を竦めたイサクに向かって、テオドリックはシャツを投げ渡した。
「では次にやることは分かっているな」
 テオドリックは暗い笑みを見せた。
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