妻が妊娠したが俺の子ではなかった冒険者の俺が転生してレベル1の村人になったから、人生やり直す

ユナリア編

魔大戦の始まり Ⅴ

夜が明けた。夜の間、黒い魔物アスレは城に攻撃を仕掛けなかった。

ファッジオの部屋に兵士が駆け込む。
「ファッジオ様！南の町に黒い魔物が現れた模様」

「昨日の黒い魔物達は引いてくれなかったか。兵を集めよ。私は此処で休む。指揮は弓兵長に任せる」

「はっ！」

ファッジオは兵に大丈夫と言ったが、体に違和感を感じていた。昨日の頭の負傷で右の手足が完全に動かなくなっていた。
加えて、頭が痛み時より意識が薄れる。
この状態では指揮はおろか、周りの支えなしでは立っている事すら出来ない。

ベッドから這って小窓から外を眺める。　
晴天。兵士達の慌しい声が聞こえてくる。小窓から下を覗くと城壁に配置された兵士が見える。
城壁の前にはアスレを筆頭とした黒い魔物が昨日より数を増して城の兵士と対峙していた。



しばらくして角笛が鳴る。開戦の合図だ。
黒い魔物には無意味な矢が城から放たれる。黒い魔物は全軍突撃を仕掛けてきた。

ファッジオの部屋に息を切らした伝令兵が来た。
「城外に出ていた兵が壊滅しました！」

伝えると戦場に戻っていった。

その後また伝令兵が部屋に駆け込んだ。
「南の城門が破壊されそうです！」

あっという間に劣勢になった。　

ファッジオは立って小窓を見ていたがバランスを崩して床に倒れた。
うつ伏せになり何も出来ない自分に苛立つと床を2回叩いた。
伝令兵がファッジオを起こして肩で支えると伝令兵が外を眺めて固まった。

「どうした？」

「あれをご覧ください！」

兵士が指差したのは城下町の先にある森。
森の中から現れた光の聖騎士団が城に向かって平原を駆けていた。

「まずい！この状態で更に聖騎士団が加われば城はもたない！急ぎ聖騎士団のことを弓兵長に伝えよ」

「御意！」

ファッジオをベッドに寝かせると伝令兵は部屋を出る。

城壁にいた弓兵長に伝令兵がヴェラニア皇国が進軍したと伝えると弓兵長の顔は青ざめた。

「弓が効かない黒い魔物を創り上げて城下を襲い、更に後続の本隊をぶつける。これが光の聖騎士団の策なのか……」

光の聖騎士団は数刻の後に城下町を抜けて黒い魔物の背後に出た。
黒い魔物の攻撃が止み、城壁にいた兵士も手を止めた。
城壁にいた魔王国とオラルド帝国の兵士達はヴェラニア皇国聖騎士団の出現で強固な守りを誇るゴモラ城を死守することに絶望感を抱いた。


すると城壁に群がる黒い魔物に対して横一列に綺麗に整列する光の聖騎士団から一騎前に出た。
背中に背負った剣を抜き高らかに掲げると大声で話し始めた。

「私はヴェラニア皇国騎士団のフィオナ！除隊した元聖騎士団団長アスレ！黒の魔石で魔物と化し、ヴェラニア皇国を裏切った罪で処罰する！よって私達は一時的に魔王国とオラルド帝国に加勢する！」

「「おーーー！！」」

魔王国とオラルド帝国の兵士達は歓喜の声を上げた。


「突撃ー！」

フィオナの合図で人馬は一斉に黒い魔物に向かって走った。
フィオナは黒い魔物に近づくと馬上から飛び降りて黒い魔物の群れに飛び込むと魔法を付与した剣で一振りに5体の魔物を倒した。

「強い！」城壁の上から見ていた兵士は思わず声を漏らした。


俺は弓を背負いながら剣で黒い魔物を倒す。俺の側でロンも戦う。
ガロンは素早い拳の連撃で魔物を粉砕していく。


「あの弓を背負った綺麗な娘は弓兵っぽいのに全然弓使わないな！それにしても強者が多い。俺たちも負けてられないぞ！」
城壁の兵が俺を見て喋りながら投石で攻撃を加えた。



その時、空が突然暗くなり上空に黒い雲ができた。黒い雲の中から熱い小石が黒い魔物に降り注ぐ。黒い魔物に効果的に効き多くが溶けて消えた。


「久しぶりに大魔法を見た。なんて魔法だったか……」

「究極魔法メテオラじゃ」

「驚かすなよ！ロキじゃないか！」
俺の隣に現れたのは老婆姿のロキだった。

「誰かの？知り合いか？」
ユナリアになった俺とロキが会うのは初めてだ。俺は戦いながら簡単に説明する。

「そうだったか。昔のことは余り思い出せない」
ロキは困った顔をした。

「また婆さんになったのか？」

「究極魔法は魔力消費が激しいからのー。若い頃に変身し続けるのは魔力を使う」

「どちらにせよまた再会できて嬉しい」

「それならよかった。もう一撃いくから守ってほしい」

ロキは詠唱を始めた。