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地下の先には
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俺は階段を駆け下りた。友達が怪我して待っている。
ようやく真也がいたであろう場所には真也の脱げたパーカーが置いてあった。
パーカーを拾おうとして屈んだ瞬間、懐中電灯を落とした。
「最悪だ……」
暗闇で前が見えなくなり、一気に鼓動が早くなる。
上を見上げると地上の光は見えない。
下を見ても何も見えない。
今まで真也を助けたい一心でここまで来たが、暗闇に包まれると一気に恐怖心が増した。
行くか……戻るか……。
俺は恐怖心を押し殺して先に進む決断をした。
数時間は階段を下ったと思う。
さっきまで大丈夫だった膝が恐怖か疲労感か緊張感からか震えが止まらなくなり、その場にうずくまった。
真也も俺と同じ状態に陥って何日も動けなくなったに違いない。
「くそっ!」
膝を叩いて再出発した。
また数時間経った。
俺は階段を下りきって地の底に着いた。
地の底にも真也はいなかった。
ただ地の底にはドアがあった。ドアを開くとパソコンや計器が複数台置いてある研究室の部屋に10人ほどの白衣を着た大人がこちらを見て拍手していた。
ポカンとしていると白髭の一人の男に招き入れられた。
「おめでとう。君は恐怖心を乗り越え探究心のまま突き進み、この地下深くのゴールにたどり着いた」
「どうゆうことですか?」
「説明しよう。ここは探究心を探る研究所で、探究心や恐怖心の関連性等を調査している」
「それより真也は?」
「大丈夫。安心したまえ。我々が救助して地上に送り届けた。幸い、軽い捻挫で済んだようだ。それより聞きたまえ。第一フェーズでは疑念と好奇心を求めるかを調べるために廃墟を作り駐車場にだけ草を生えないように仕込んだ。長年かけ、建物に侵入したのは5人のみ。そのうちの一人の君だけが最後のゴールまで来れたのだよ」
「人の心をもて遊ぶ研究なんだな!」
ここの研究者には怒りを覚えた。
「怒るのも理解できる。人は暗闇の中にいると恐怖心から逃げたくなる。緊張感から解放されると緊張感や恐怖心を作り出したものに当たる傾向があるのは仕方ない。喉が乾いただろう心が落ち着くハーブティーを用意した。さぁ飲んで」
俺はカップに入ったハーブティーを飲んだ瞬間、眠気に襲われた。
「大丈夫か!おーい!聞こえるか?」
ライトの光が眩しい。
「救助者一名発見。宮城彰君だね?」
「あっ……はい」
俺は救助された。
どうやら、謎の建物の中で気を失い寝ていたらしい。
救助されてから警察や消防の人に事情を説明した。
まず友達の真也を助けようとしたこと。
地下に続く階段を下りたこと。
謎の研究室があったこと。
警察も消防の大人達も真剣な目で
「地下深くと言ったが、ここは地下一階までで謎の研究室もない」と言って、建物の地下を見せてくれた。
確かに地下深く続く階段はなかった。
さらに
「真也という男子生徒は君の学校にはいない」
と言った。
真也という友達も地下深く続く階段も全て俺の虚構だと大人達は言った。
しかし不可解なことは、俺が入った廃墟の広い駐車場には草一つ生えていない事実に、小さな廃墟は何か巨大な組織によって管理されている気がして胸がざわついた。
完
ようやく真也がいたであろう場所には真也の脱げたパーカーが置いてあった。
パーカーを拾おうとして屈んだ瞬間、懐中電灯を落とした。
「最悪だ……」
暗闇で前が見えなくなり、一気に鼓動が早くなる。
上を見上げると地上の光は見えない。
下を見ても何も見えない。
今まで真也を助けたい一心でここまで来たが、暗闇に包まれると一気に恐怖心が増した。
行くか……戻るか……。
俺は恐怖心を押し殺して先に進む決断をした。
数時間は階段を下ったと思う。
さっきまで大丈夫だった膝が恐怖か疲労感か緊張感からか震えが止まらなくなり、その場にうずくまった。
真也も俺と同じ状態に陥って何日も動けなくなったに違いない。
「くそっ!」
膝を叩いて再出発した。
また数時間経った。
俺は階段を下りきって地の底に着いた。
地の底にも真也はいなかった。
ただ地の底にはドアがあった。ドアを開くとパソコンや計器が複数台置いてある研究室の部屋に10人ほどの白衣を着た大人がこちらを見て拍手していた。
ポカンとしていると白髭の一人の男に招き入れられた。
「おめでとう。君は恐怖心を乗り越え探究心のまま突き進み、この地下深くのゴールにたどり着いた」
「どうゆうことですか?」
「説明しよう。ここは探究心を探る研究所で、探究心や恐怖心の関連性等を調査している」
「それより真也は?」
「大丈夫。安心したまえ。我々が救助して地上に送り届けた。幸い、軽い捻挫で済んだようだ。それより聞きたまえ。第一フェーズでは疑念と好奇心を求めるかを調べるために廃墟を作り駐車場にだけ草を生えないように仕込んだ。長年かけ、建物に侵入したのは5人のみ。そのうちの一人の君だけが最後のゴールまで来れたのだよ」
「人の心をもて遊ぶ研究なんだな!」
ここの研究者には怒りを覚えた。
「怒るのも理解できる。人は暗闇の中にいると恐怖心から逃げたくなる。緊張感から解放されると緊張感や恐怖心を作り出したものに当たる傾向があるのは仕方ない。喉が乾いただろう心が落ち着くハーブティーを用意した。さぁ飲んで」
俺はカップに入ったハーブティーを飲んだ瞬間、眠気に襲われた。
「大丈夫か!おーい!聞こえるか?」
ライトの光が眩しい。
「救助者一名発見。宮城彰君だね?」
「あっ……はい」
俺は救助された。
どうやら、謎の建物の中で気を失い寝ていたらしい。
救助されてから警察や消防の人に事情を説明した。
まず友達の真也を助けようとしたこと。
地下に続く階段を下りたこと。
謎の研究室があったこと。
警察も消防の大人達も真剣な目で
「地下深くと言ったが、ここは地下一階までで謎の研究室もない」と言って、建物の地下を見せてくれた。
確かに地下深く続く階段はなかった。
さらに
「真也という男子生徒は君の学校にはいない」
と言った。
真也という友達も地下深く続く階段も全て俺の虚構だと大人達は言った。
しかし不可解なことは、俺が入った廃墟の広い駐車場には草一つ生えていない事実に、小さな廃墟は何か巨大な組織によって管理されている気がして胸がざわついた。
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