道沿いにある謎の廃墟が気になったので潜入してみた。

三毛猫

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道沿いにある廃墟

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 街中に郊外、何処にでも廃墟はある。朽ちて外壁が剥がれ落ち中の部屋が露になり、住人が使っていた木製の棚には本が数冊倒れている。
見て分かりやすい廃墟もあれば、分かりにくい廃墟もある。

毎日通学する道中にある廃墟は、分かりにくい廃墟だった。
なぜ廃墟かが分からないか……。
建物の周りの駐車場には草一つ生えていないからだ。駐車場は大型バスが10台停めレルほどの広さがある。広い駐車場の真ん中にポツンと廃墟がある。


人が住まなくなった廃墟なら、いくらアスファルトの駐車場でも草は生える。数年経てば草だらけになり、10年も経過すれば草は生い茂る。
草一つ生えていないというのは廃墟ではない可能性がある。


俺が通う高校のクラスの一部男子の間では、駐車場に草一つない廃墟……いや、謎の建物の中に何があるのか興味が募り、空き家ならば溜まり場にしようと考えていた。

謎の建物は、町の交通量も多い主要道路沿いにある一階建てのコンクリート製の建物だ。
ニ畳ほどの建物で小さい。
コンクリートの外壁には窓が2つと入口があるが全てシャターで閉じられていて外から中の様子は伺うことは出来ない。

高校二年の夏休み、夏休み中に謎の建物を調べに行くと言っていた友達は行方不明になり、俺は謎の建物に潜入することを決めた。


懐中電灯を持ち、廃墟に着いた。広い駐車場を通り建物に近づいた。
コンクリートの外壁は経年の汚れで黒ずみ、灰色になっていた。生まれる前からある建物で誰も何のために建てられたかは知らない。
シャターも錆が酷い。

入口のシャターは簡単に開き、中に入ることができた。建物の中は狭く、地下に続く階段があるだけで他には何もない。


真っ暗な階段を懐中電灯で照らす。
階段以外、何も見えない。
ゆっくり階段に近づき、一歩階段を下りた。
コンクリート製の階段は建物の四角い構造に沿って伸びていた。
鉄製の手すりもあり、少し身を乗り出して下を懐中電灯で照らす。

「嘘だろ……」


懐中電灯の光は地下深くまで伸びていた。
深すぎて全く底が見えない。
怖すぎて帰ろうとした時。

「うー」といううめき声が聞こえた。

咄嗟に「真也!」と友達の名前を呼んだ。
すると「その声は彰か?彰!助けてくれ!」と地下深くから返ってきた。

行方不明になっていた彰だった。

「何処にいる!?」

「階段を下りた先だ。ずっと下りて途中で懐中電灯を落とした!真っ暗で何も見えない」

「今から行くからな!」

「気をつけろよ。俺も彰の方に少しずつ近づくから」

俺は階段を下りた。
下にいる真也は階段を上がっているようだ。
足音が聞こえる。


「数日間ずっと居たのか?」

「そうだ。懐中電灯を落として真っ暗になって怖くて動けなくなった。彰!気をつけろよ。懐中電灯を落とすなよ」

「わかったよ」

「彰!懐中電灯を落としてわかったけど、ここは深すぎて底がないらしい。懐中電灯を落とした時に地面にぶつかった音がしなかったからな」

誰が何のために地下深くまで階段が続く謎の建物を建てたか分からない。

「もう少しか?」

「いや、声は近づいているがまだまだだ!」

段々と真也の声が近づいているが、姿が見えない。

螺旋状にグルグルと階段を下りていく。


「うわぁぁぁあぁぁ!」

下から真也の叫び声が響いた。


「どうした!!」

叫び声が止みしばらくして

「彰ー!階段から落ちて、かなり下の階段の手すりに引っ掛かった。足を怪我した!」


最悪の事態だ。
俺は急いで階段を下った。


「真也!待ってろよ」

「真也!大丈夫か!何か返事をしてくれ!」

「真也?」


しばらく下りていった時には真也の返事はなくなり、静寂と闇が俺を包んだ。



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