断罪の公爵令嬢は日本に転移して心変わりすると元の世界で成り上がります

三毛猫

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「5ゴールドと嬢ちゃんの話をしたら計画に参加したいって職人集めたぜ」

「ダロさんから聞きました。よろしくお願いします。鍛治工房してます。これは計画の足しにして下さい」

「ありがとう」

ダロが5ゴールドとダロが連れてきた2人が合わせて4ゴールド集まった。
これで工場の建物は建てられる。

さっそく工場建設を依頼した。
半月後、職人が20人働ける大型工房が出来上がり、『ウィーナ大型工房』と名付けた。
道具や炉を運び込み設備は整った。あとは人材のみ。

私とダロとセバルスは酒場に入った。
昼間から職人たちが酔っ払っていた。

「みんな聞いてくれ。嬢ちゃんから話がある」

「あ?ダロの旦那。町の真ん中に大きな屋敷を建てて景気が良いなぁ」

酔っ払いがダロに絡む。

「離れなさい!」

私は酔っ払いを睨んだ。

「なんだぁ」

「あれは屋敷ではありません。私とダロ、セバルスでこの町に大きな鍛冶工房を建てました。鍛冶工房は今、職人の方を募集しています。給金は月に3シルバー」

「3シルバーだと!ふざけんじゃねぇ!職人の給金も知らないような小娘の元で誰が働くってんだ!」

ダロさんから聞いていた。一般の鍛冶職人は頑張っても月に1シルバー稼げるかどうかの世界。酔っ払いは異次元の給金に憤慨している。

「私は知っています。毎日貴方達が火の色を見やすい夜中に鉄を打ち、汗水流して働いていることを。確かに私は刃物や道具を作ったことは分かりません。しかし私は物を大量に作る方法を知っています!大量に物を作り市場に流し月に3シルバーは必ず支払います」

「俺はやるぜ。どうせ工房は畳もうか考えてたところだ」

1人が名乗り出た。

「3シルバーか。給金が本当に貰えるならいい話だ。乗った!」

また1人が名乗り出た。
そして酒場にいた17人の職人が最終的に参加を決めた。

「嬢ちゃん大丈夫なのか?3シルバーも?」

ダロは心配していた。
まだ何も始まってないところで毎月3シルバーを20人分支払う。
1シルバー10枚で1ゴールド。
つまり毎月6ゴールド職人たちに支払う。

「勝算はあります」

私は職人たちと新しく完成した工場に入った。

「ここが新しい仕事場になります。私とダロさんとセバルスで町に商会を作りました。『ニチカ商会』です」

「ニチカ?」

「ニチカは私を変えてくれた恩人の名前からいただきました。そして製作した商品は全てニチカ商会が買取流通させます」

「俺たちはそれぞれ作ったらいいのか?」

「いいえ。これまでは個々に1つの物を仕上げていました。例えばこの包丁は、鉄を熱し打ち伸ばして形を作って研ぐのを1人でしていました。これからは、同じ工程を同じ人が繰り返していく方法で作ります。同じ物を同じ仕上がりで大量に作ります」

私は20人を3分割した。
熱した鉄を鋼と合わせて打ち伸ばし、刃物
の形にする組に10人。
刃物を再度熱して仕上げる組に6人。
最終仕上げで研ぐ組に4人を配置。

初日こそ慣れない感じはあったが、現役の職人たちだけに作る早さは日に日に早くなった。1日20本製作がやっとだったものが1日100本作れるようになった。

そして、最初の商品『ニチカ商会ウィーナ町製の包丁』を隣国ケプラ帝国で販売することが決まった。
アーマイン王国に隣接するケプラ帝国はアーマイン王国と友好関係にある小国でケプラ帝国の首都ケプラナに露店を建てて販売を始めた。

私はセバルスはケプラナの露店に立ち、街の人々に声を掛けて包丁の切れ味と使い心地を宣伝した。

「みなさま。この包丁は今までの鉄製の包丁より切れ味も耐久力もある包丁です」

セバルスは執事ながら料理人並みの包丁捌きで野菜や肉をカットして、調理を始めた。肉の匂いに釣られて人が集まってくる。
焼いた肉を小さく一口大にカットして提供する。

「店員さん、肉は無料で食べれるのかい?」

「はい。無料ですよ。お肉は私達の作った包丁でカットしました。断面を見て下さい。生のお肉の繊維が崩れてませんよね?薄い木の板でも簡単に切れますよ」

私は木材を包丁でカットした。

「へー。凄い切れ味だな。よし、1つ貰おうか。幾らだ?」

「500ブロンズです」

「質がいいのに1シルバーもしないのか!よし、買った」

1000ブロンズで1シルバーになる。
私の調べでは鍛冶職人の月の給金が1シルバー。公爵家の執事のセバルスで2シルバー。
町人の平均的な給金は1~3シルバー。
高価な包丁だと1シルバーで販売する店もある。

アーマイン王国やケプラ帝国でも見たことがない無料の肉の提供と包丁の切れ味の実演販売の販売方法で包丁は飛ぶように売れた。
あっという間に持ってきた包丁1000本を売り切った。

翌日、ケプラ帝国からアーマイン王国のウィーナ町に戻り職人全員を集めた。

私は革袋を机に置き、集めた職人を1人ずつ呼び手渡しで3シルバーを渡した。

「本当に3シルバー貰えるのかい」

「約束したから当たり前でしょ。私に付いてきてくれて、ありがとう」

職人はシルバーを受け取って笑顔で皆の元に戻った。
次の職人は
「俺、20年鍛冶屋やって初めて3シルバー稼いだよ!ありがとう」
と目に涙を浮かべて喜んでいた。

20人全員に配り終えると私より身分の低い者を初めて仲間と思えるようになっていた。そして公爵家で身分が高かった私は、私より身分の低い者を馬鹿にしていた過去を恥じた。

「馬鹿なことをしていたわ」

「お嬢様?」

セバルスは私の顔をチラリと見た。

「独り言よ」

「今日のお嬢様のお顔はどこか晴れやかです」

「そうかしら?」

私はセバルスの言葉に照れた。



「みんな聞いて」

3シルバーを持って楽しそうに騒ぐ職人達を遮る。

「今から酒場で宴会をしましょう」

「なんだよ稼いだシルバー根こそぎ使わせる気か?」

「違います。お酒代、食べ物の代金は私が出します」

「レリアーナの嬢ちゃんいいのかよ!太っ腹だなー」

「こら!俺たち職人の長なんだから、レリアーナ様と呼べよ」

「レリアーナで構いません。みんな仲間ですから」

「いいのかよー!今日から俺はレリアーナちゃんと呼ぶぜ」

「俺も!」

「さぁ行きましょう!」

「「おう!!」」
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