断罪の公爵令嬢は日本に転移して心変わりすると元の世界で成り上がります

三毛猫

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断罪された令嬢

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「ここは、ウィーナ!」

まさか再びアーマイン王国の領地に戻ってくるとは思わなかった。

私が住んでいたアーマイン王国の首都から外れた見覚えのあるウィーナという町にいた。私が子どもの頃に父と親戚の辺境伯を訪ねた帰りに休憩で寄った町だ。土壁の二階建ての物が点在する田舎町で、農耕地から肥料の臭いが町まで流れて臭くて父と執事に文句を言って休憩を早めてもらったのが懐かしい。


セバルスと私は町の中心を通る道にいた。

「ニチカから借りた服だと目立つわね」

「お嬢様どういう意味でしょう?」

「セバルス。私は罪人よ。私は処刑の最中に消えて逃亡したと思われているかもしれない。王国の兵が私を探しているかも」

「わかりました。では私にお任せを」

セバルスは痛む足を引きずりながら、民家を数軒回り、私とセバルスの服を手に入れてくれた。

「銀貨で町人から買いました」

「さすがセバルスね」

セバルスが買ってきた町人に馴染むような服を茂みの中で着替えてウィーナ唯一の飲食店の酒場に入ると昼間から賑わっていた。

カウンターで水を注文するセバルス。

「これを」

セバルスから受け取ったカップに入った水を飲む。

「まずい」

日本の綺麗な水に慣れた私にとってウィーナの水は泥臭い味がした。



私は酒場にいた町人の会話に耳を傾けた。

愚痴や日常会話が殆どだったが、私の噂話をする2人の男がいた。
私はその男のテーブルに座った。


「おっ!どうした嬢ちゃん」

「先程話していたレリア嬢の話、私に聞かせてくれますかしら?」

「いいぜ。王都でよ捕まっていた不敬罪のレリアって公爵家の令嬢様が数日前、処刑されたらしい」

「処刑ですって!?逃げたという噂は?」

「逃げた?そんな話は聞いてねぇよ」

私は処刑されたことになっていた。光に包まれて消えた私のことを処刑人が嘘をついて誤魔化したとも思えない。王国が捕らえて王国が管理する牢獄から私のような小娘が脱走したとなっては面目が立たない。王国自体の不信感や不安に繋がるから処刑したことにしたのか。とにかく私には好都合だった。

「でもよ、嬢ちゃん。どんな不敬罪を働いたしらねぇけど俺はよ。王国に楯突くそんな人が貴族様の中から現れて嬉しかったぜ」

「なぜです?」

「先代の王はよかった。しかし今の王は何でも罪だ罰だとうるせぇ。税の取り立ても厳しい。この町は鍛冶や農耕が盛んだったけど、税にほとんど取られて小作人も雇えない。若者は王都に流れるわ。やってらんねーよ。これも不敬罪か?なぁみんな!」

男は段々と声が大きくなってみんなを煽り始めた。

「「そうだ!そうだ!」」
「ダロの旦那よく言った!」

周りの人々が賛同する。

「重税で生活を破綻させるのが王の勤めか!」

「静かにして。私に考えがあります」

「嬢ちゃんどうした急に?」

私が立ち上がると酒場にいた町人たちから視線が集まる。

「私は異国でアーマイン王国にない産業と知識を深めました。私に町を変えさせて下さい!」

酒場は静まり返った。少し経って1人が吹き出して笑い始めると伝染して1人、また1人と笑い酒場にいた殆どの町人が笑い転げた。

ぐっと怒りを堪えて耐えた。

「お嬢様、行きましょう」

セバルスは私の肘を引っ張る。

「絶対あの素晴らしい国のように物で溢れ、食べ物や水でさえ美味しい町に変えてみせます!」

「嬢ちゃん名前は?」

「レリア」

「断罪の令嬢と同じ名か」

「いえ、レ、レリアーナよ」

「レリアーナ。俺はこの町で小さな商店をしているダロだ。嬢ちゃん俺と組まないか?」

「いいですわ。ダロさん、私と取引しましょう」

「決まりだ」

ダロは私と握手を交わした。

「みんな!そう笑ってやるなよ。嬢ちゃんは本気だぜ。それに此処にいる誰よりも濁ってねぇいい目をしている。じゃ、俺は店に戻るわ」

私とセバルスとダロは酒場を出た。

ダロは24歳でウィーナに店を構えた。
現在34歳。店では武器や道具を売っている。店の自慢話を散々聞かされた挙句、町外れのダロの店に着いて私は肩を落とした。

「貴方、口だけね。ボロ屋じゃないの」

寂れた木造の平家の店の周りには草が生い茂り、人が出入りした痕跡がない。木は所々朽ちて腐り落ちている。

「まぁ、中古で買って補修はしてないから10年も経てばそれなりに朽ちるさ」

店内は薄暗く商品には埃が被っていた。
ダロに少し商売の期待をしていたのが馬鹿だった。

「ダロ。貴方幾らかゴールドを借りれる?」

「まぁ、商会に頼み込めば5ゴールドぐらいは借りれるかな。嬢ちゃん、借金してどうしようって魂胆だ?」

「ウィーナは鍛冶の職人が多いって昔聞いたことがあるわ」

「まぁそうだか。酒場にいた連中は殆ど鍛冶職人だ」

ダロは頭を掻きながら答えた。

「ここウィーナに鍛冶工場を作ります!」

「工場?」

「そう。今までは1人が1つの工房を持って品質の統一がないバラバラの製品を作っています。それを集団で同じ規格のものを大量に作って市場に流します」

「確かにそんなやり方話聞いたことねぇ。面白いことを考えるな」

私は日本の図書館で読んだ本に書かれたことを全て転用した。大量生産の流れは学んできてウィーナで実現させるわ。
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