断罪の公爵令嬢は日本に転移して心変わりすると元の世界で成り上がります

三毛猫

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ハンバーグ

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街行く人々が私を一瞥する。

数日間の牢屋生活でパサパサでボサボサになった金色の髪。目鼻立ちは整った美女とよく言われた。細い体と長い脚はよくメイド達に自慢していた。
なかなか居ないのかこの国には私のような絶世の美女が。皆が注目する訳だ。


「中世ヨーロッパ風のドレスに似合ってるなー」
「お姫様みたい」
「綺麗だ」

すれ違う人々は絶賛の嵐。



「セバルスさん大丈夫?」

セバルスはニチカの肩を借りながら歩いている。
しかし暑い。私が牢屋にいた時は冬も近かった。

「ニチカ。今の季節は?」

「もう少しで夏ですよ」

変だ。季節も違う。


「着きました」

ニチカの家に着いた。

「大きい・・・」

下から見上げてもまだ上がある。高さで言えばアーマイン王国の首都にある王の城と同じぐらいの高さ。まさかニチカはこの国の王妃?
私はニチカの靴を履いてニチカは裸足で歩かせた。またも不敬罪だろうか。

「あの・・・ニチカ、様?私は不敬罪になります?」

「不敬罪?何がですか?さぁ上がって下さい」

恐る恐る城(建物)に入ってエレベーターという転移魔法で上昇する。エレベーターの扉が開くと沢山のドアのある通路に出た。

ニチカはその中から真ん中の部屋のドアを開いた。

「ここが私の部屋です。1K6畳。都内だとここでも家賃がまぁまぁ高くて。3人だと狭くてごめんなさい」

「部屋。一つの部屋か。次はもっと大きな部屋が見たいですわ」

一つの物置小屋だった。次に期待する。

「隣は別の人が借りていて。私の部屋はここだけ」

それからニチカのマンションの説明を受けた。

そして、この世のお金の流れの講座と
日本という国。
動く箱が車という乗り物。
テレビにスマートフォン、パソコンにコンビニ、スーパー、ファミリーレストランなどあらゆることを私は才色兼備の記憶力で吸収し遂にアーマイン王国と日本の格の違いに私は絶望した。




数時間後。


ニチカは私より背が低い。1番長い服を借りた。
ニチカは私をファミリーレストランに連れて行ってくれた。


席に着くとメイドがツルツルの紙を私に渡す。

「いらっしゃいませ。季節限定のメニューです。メニューがお決まりになられましたら、ボタンでお呼び下さい」

「ありがとうございます」

「ニチカ、これは国随一の天才絵師が描いた絵画なの?」

「メニュー表で、メニューに載っているのは写真です」

メニューの写真を見ると白い雪のようなものの上にアーマイン王国でも実っていたシィツルの実に似た果実が乗っている食べ物が美味しそうだ。
そして私は何故か字も読めた。

「か、き、ごお、り?」

「レリアさん日本語読めるのに他のこと何も知らないって不思議ですよね」

「馬鹿にしているの?」

「い、いいえ」
ニチカは苦笑いした。

「このお店、お肉とワインはあるかしら?」

「レリアさん何歳ですか?」

「18よ」

「駄目です。ワインは飲めません」

法律で20歳以下は飲めないみたいで私は諦めた。

「はんばーぐと、おれんじじゅーすを頼むわ」

「わかりました」

ニチカがテーブルの隅に丸いものを押すとメイドが素早くやってきた。ニチカが私の食べ物を伝えると、しばらくして目の前にハンバーグとオレンジジュースが置かれた。
ニチカはビーフストロガノフというグツグツと煮えた茶色の具材入りスープのようなものが届いた。

「いただきます。レリアさんも一緒に」

「いた、だきます」

ニチカの真似をして手を合わせてハンバーグにナイフを入れた。
柔らかい。今までアーマイン王国でこれほど柔らかい肉料理があっただろうか。切り分けてフォークで一欠片、口に運ぶ。
口の中に入れた瞬間、肉にかけられたソースの甘さと僅かな酸味、肉の表面の旨味に転嫁された焦げが絡み合い、噛んだ瞬間肉汁が口に広がる。
牢屋で硬いパンや雑穀しか食べてなかった私はハンバーグを食べて幸福感に包まれ、
温かさが喉を通りお腹まで落ち、全身に行き渡って涙腺が崩壊した。

「うぅ。うぅ・・・」

「ど、どしたの!レリアさん!?」

向かい合って座っていたニチカが私の隣に移動してきた。
そしてそれ以上何も言わず、私を抱き寄せて頭を覆うように抱き締めてくれた。

「うぅっ、うっ」
涙を堪えようとして、声が漏れて噛み締めた唇と下顎が震える。

「大丈夫。大丈夫だから」
小さくニチカは私が落ち着くよう囁いてくれた。

親にも、兄にも、誰からもこんなに温かく包まれ安心したことがなかった。
ニチカは私が泣き止むまで周りから見えないよう顔と頭を覆って抱き締めてくれた。





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