異世界魔剣士タイムトラベラーは異世界転移を繰り返して最弱でしたが特殊能力が開花します

三毛猫

文字の大きさ
上 下
15 / 18

異世界人

しおりを挟む
あれから約1年が経とうとしていた。季節は夏になり猛暑でも毎日トレーニングを続けていた。翔吾の家に住み、家の一部屋をトレーニングルームに改築して筋力と体力を向上させていた。


「先輩。いつになったら異世界に行けると思います?」

「こっちが聞きたいよ。何かきっかけが必要なのかと色々試したけどダメだった」

「いっそ遊びに行こう!」

翔吾は海に行きたいと熱望した。

電車に乗り、久しぶりの通勤ルートを通る。一旦電車を降りて乗り継ぎの為、別会社の鉄道の改札を通って跨線橋の階段を登ろうと階段を見上げた。

階段の登り切った先に水着を着た女性が立っていた。西洋人だろうか。キリッとした目に鼻は高く顎はシャープだ。緑色の髪の毛が腰まで伸びている。モデルなのかスタイルが良い。夏だから、海に近い駅だから水着なのかもしれないが目立って仕方ない水着姿の女性を何故か誰一人見ない。

「なぁ、翔吾。あの人見える?」

「なんで美女が水着姿で駅に?」

翔吾と俺には見えていた。しかし他の人は見向きもせずに階段を登る。水着美女は、階段を登ってくる人を華麗に避けて楽しんでいた。まるで他から見えない様子だった。

そして俺と翔吾も階段を登り水着美女とすれ違った。

「君達、私が見えてるのね」と耳打ちされた。

瞬きをした一瞬の間に水着美女は俺の喉元にナイフを当てた。

「動かない方がいい。少しでも動いたら、おわり。君たちをずっと探していた」

「俺を?」

「そうよ。ずっと目立つように水着でね。まぁ、一般人には見えない魔法を掛けているから、あなた達みたいな異世界に行ったことのある人間にしか私の姿は見えないわ。そういう魔法なのよ。ここは貴方の通勤ルートでしょ?」

「え?俺は隣の駅が通勤ルートです」

美女の顔が引き攣った。

「あら、そうなの。間違えていたわ。一年間朝は水着で目立つように此処にいたのに無駄だったわ」


「あなたも異世界に行ったことがあるのか?」

「私は元々異世界人。亜弥華だけがこっちの世界に来たわけじゃないわ。私と亜弥華はある日突然こっちの世界に来た。他にも探せば異世界人は沢山いるのかもね。亜弥華から連絡がこないのだけど、何か知ってる?」



俺は異世界での出来事を伝えた。

美女は下唇を噛んで涙を堪えていた。

「そう。残念。亜弥華は私の・・・私にとって親友だったから」

「俺たちは神村先輩を助けます!」

「どうやって?」

「魔王を倒して世界の理を壊す秘薬を手に入れて蘇らせます」

「無理よ。あの魔王を?」

「俺はマジックブレイカーなんです!」

「亜弥華から君の話は聞いていたからマジックブレイカーであることは知ってるさ。しかし本人の目を見て私は確信した。君なら倒せるかもしれない」
美女の目つきが鋭くなった。そして高笑いすると周囲の通勤途中のサラリーマンや学生の目が一斉に水着姿の美女に集まった。

「久しぶりに高揚して魔法が切れたか。私はイール・シャーナ。シャーナと呼んでくれ」

俺と翔吾はシャーナに自己紹介した。

「もう1年も異世界に戻れなくて。シャーナさんは行き方を知っていますか」

「呼び方はシャーナでいい。最近異世界に行けそうな場所を見つけて異世界なら簡単に行けるようになった。戻るのは困難だけど何とかなるだろう」

シャーナは階段を下り始めた。
俺と翔吾は後に続く。

シャーナが街中を歩くと道行く人々から視線が集まった。

「目立って仕方ないです」

翔吾は嫌そうに俺の後ろに隠れて歩いていた。

「いいじゃないか視線ぐらい気にするな」
とシャーナは笑っていた。


路地裏に到着した。

「今から異世界に行くから家族や友に連絡を」

翔吾は家族に携帯電話で連絡した。

シャーナは路地裏の壁をペチペチ叩いた。

「おかしい。先週来た時はこの辺りの壁を叩いた時に真っ黒な壁が現れた。押す場所が違うのか」

独り言を言いながら壁を叩いていると突然、壁に黒い空間が現れた。黒い空間は楕円形で人1人通れる大きさだった。向こうに何があるのか全く分からないブラックホールのようなものが壁に広がっている。

「おそらくここから異世界に行ける」

「おそらく!?」

「行けそうな場所を見つけただけで行ったことはない。行ってみようじゃないか」

「どういう事だよ!中に入った途端バラバラになったりしない!?」
翔吾は楽観視するシャーナに怒った。

「君から行ってみよう」
シャーナは翔吾の胸ぐらを掴み真っ黒な空間に投げ飛ばした。

「ぎゃー!」と叫ぶ翔吾が真っ黒な空間に入ってすぐ声が消えた。

「次は君だ!」
そして俺も投げ飛ばされた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ギルド・ティルナノーグサーガ 『ブルジァ家の秘密』

路地裏の喫茶店
ファンタジー
あらすじ: 請け負いギルド ティルナノーグの斧戦士グラウリーは呪われた高山ダンジョン『バルティモナ山』の秘宝を持ち帰ってほしいと言う依頼を受けた。 最初は支部が違うメンバー同士のいがみ合いがあるものの冒険が進む中で結束は深まっていく。だがメンバーの中心人物グラウリーには隠された過去があった。 ハイファンタジー、冒険譚。群像劇。 長く続く(予定の)ギルドファンタジーの第一章。 地の文描写しっかり目。最後に外伝も掲載。 現在第二章を執筆中。 ※2話、3話、5話の挿絵は親友に描いてもらったものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち
ファンタジー
引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ当たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地点(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うため、ポンコツ貧乳エルフとともにマイペースで冒険する。 ※『死に戻り』と『成長チート』で異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~から改題しました

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...