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宴のあと
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4階層まで行って地上に戻ってきた。地下迷宮探索は無事終わり、鞄一杯になった魔石やアイテムを持ってミルクテの町に戻る。
門前で俺が立ち止まるとシュミルは不思議そうな顔を向けた。
「中に入らないのか?」
「入れないです」
「どういうことだ?通行証は?まさか冒険者登録していない?」
「はい」
「大丈夫だぞ、今から登録すればいい」
ザイアスは俺の肩に手を回して「行くぞ」と引っ張る。
門兵が通行証の提示を求める。
三人は首から下げた銅色のプレートを見せた。
シュミルが門兵と話すと俺も許可が下りたのか、門を通れた。
町の入り口に付近にある冒険者ギルドの建物の中に入った。受付で魔法紙という特殊な紙に血を垂らし名前を決めて登録完了。鉄製のプレートを貰い新人冒険者として活動できるようになった。
「よかったな。それじゃあこれから酒場で祝杯だ」
シュミル達と酒場に入る。そういえば昨日リュードさんと入った同じ酒場だ。十年という歳月が経ったのを物語るように壁は昨日見た時より色は剥げ、円卓もかなり痛んでいた。
「いらっしゃい」
ジョッキを持ってきた女将も老けていた。
「今日はお疲れ様!新人冒険者のレンジの門出を祝して、乾杯!」
「乾杯ー!」と俺は叫んだ直後、エレベーターの中で一人、ジョッキを掲げた状態で立っていた。
「え!?なんで!?どうしてだよ!」
また元の世界に戻ってきた。
エレベーターは職場がある階に止まり、扉が開いた。
「あっ!おはよう!えっ?何その服装!?」
扉の前にいた神村先輩と目が合った。俺は自分の服をチェックする。革の服と革の靴のまま元の世界に戻っていた。静かにエレベーターの【閉】ボタンを押した。
閉まる直前、
「先輩、早退します」と告げた。
「えっ!ちょっと連司くん?」
シュミルに身ぐるみ全部あげたから電車代もない。走って帰宅した。
帰宅してシャワーを浴びて着替えて、公衆電話を探して会社に病欠の連絡をした。
ベッドの上で少し静かになった時に、異世界のことが頭に浮かぶ。
最初な不安しかなかったがシュミルやザイアス、リネットに出会って地下迷宮を探索して楽しかった。少し打ち解けてきた矢先にまた元の世界に。どうしてだろう。
1日目も2日目も。同じような場面で元の世界に戻る。考えられるのは、いつも酒場で祝杯を上げる時だ。
俺は宴に参加できない。参加して乾杯を言えず、乾杯がトリガーになる。乾杯と言わなければどうなるのだろう。いや、そもそも酒場に入った瞬間に元の世界に戻るのだろうか。
シュミルたちパーティでもう一度と思っても次に異世界に行けば十年経過しているのだろうか。
十年といえばリネットは何歳になるのか。
そもそもリネットの年齢を知らないどころか、会話もしてない。
あー!とベッドの上で悶えていると、インターフォンが鳴った。
1Kの小さな間取りのマンションに来訪者とは珍しい。親か、大学の友達かと思いインターフォンに出る。液晶に写っていたのは神村先輩だった。
なぜ住所がバレた!?
そういえば神村先輩は人事部。職権濫用か?
とりあえず出てみる。
「はい」
「連司くんのお宅ですか?大丈夫?」
神村先輩は同期の中では高嶺の花で会社の男連中で俺以外は矢印が神村先輩に向いている。
「連司です。一応熱などはありません。大丈夫です」
「入っていいですか?」
「え?」
入っていい訳がない。床に食べた弁当の空き箱や飲んだペットボトル、それに獣臭がする革の服が散乱した汚部屋だ。
「上がりますよ」
「部屋が散らかっていて」
ドン引きされるに違いない。
「片付けるから、いいでしょ?」
「それは助かります!」
ドアロックを解除した。
ドアを開けると神村先輩が立っていた。
部屋着の俺を見て笑顔で「お邪魔します」と何の躊躇なく部屋に入ってきた。
「確かに汚いねー。掃除はいつ振りかな?なにこれ?これ朝着てたやつだ」
親指と人差し指で革の服を拾い上げる。
「捨てるよ」
「待ってください。大切な物なので」
それは初めてパーティを組んで初めて魔物を倒した時に着たシュミル・ザイアス・リネットとの思い出の品。そんな大切な物を捨てる訳には。
「連司くん。何かに使うの?コスプレが趣味なの?思い出があるの?もう使わないなら捨てるよ」
俺は容赦なくゴミ箱に捨てる神村先輩に心を砕かれ呆然と片付けを眺めていました。
1時間後、綺麗に片付いた部屋に満足した神村先輩は次はご飯を作り始めた。
「どうしてそこまで」
「病欠って聞いて、朝来たのに変だなーって思ったの。それに変な服してたでしょ。昨日も変な感じだったし・・・」
俺は神村先輩から変な奴だと認識されている。
「でも心配で来たら案外元気そう。明日からは出社するでしょ?」
「しばらく休みます」
「なんで?」
「実は・・・」
異世界転移について全てを話した。すると神村先輩は
「明日、精密検査受けに行こう!」と立ち上がった。
「異世界転移の証拠になるものは、さっき先輩が捨てた革の服と靴、それから鉄のプレートです」
首から下げた鉄のプレートを見せた。
それを神村先輩は触ろうとした瞬間、目に見える電気がプレートから放たれて宙を走った。
「きゃ!」
「大丈夫ですか先輩!」
「少しピリッとした。何これ?すごい」
冒険者プレートは他人に奪われないように魔法がかけられているのだろうか。
「魔法で守られているみたいです」
「子どもの頃にアニメに出てた魔法使いに憧れたなー」
「俺もファンタジーとか好きで、よくファンタジーアニメとか映画はよく見てました。そうだご飯食べながら映画でも見ますか?オススメのファンタジー映画があって」
「見る見るー!」
ノリノリの神村先輩。俺も誰かとご飯を食べながら映画は久しぶりで・・・。
ぶっ続けで5本映画見て、朝になってしまった!
「もぅ、朝だね」
少し目の下にクマが出来た神村先輩。
「そうですね朝かぁ。早いなぁ」
「あ、休暇の連絡は私が承りました。会社へ報告は不要だから、一応検査は行ってみてね」
「はい!ありがとうございます」
映画を見過ぎて疲れた神村先輩に対して俺は元気だった。
「じぁあね。行ってきます」
来た時より声が少しガラガラな神村先輩を見送るためエレベーターまで送った。
エレベーターに乗り込む神村先輩。
「先輩、肩にゴミが」
俺が先輩に付いたゴミを取ろうとした瞬間。床が真っ黒になり吸い込まれるように落ちた。
「連司くん!連司くん!起きて!」
神村先輩の声がぼんやり聞こえて目が覚めた。
「連司くん大丈夫?」
「すみません。気を失ってたみたいです」
「此処は何処なの?」
仰向けで気を失っていた俺は上半身を起こす。見覚えのある景色だ。草原に山々が広がりミルクテの町が見える。
「異世界です。はぁ戻ってきた。それより先輩まで何故一緒に?」
「こっちが聞きたいよー」
「とにかくこの辺りは危険です。町に行きましょう」
泣きそうになる先輩を起こして町に向かう。
門兵に止められた。昨日とは違う門兵だった。門には二対の蛇が描かれた青い旗が掲げられいる。門兵の雰囲気も前より厳格で物見台の兵士も多い。
冒険者の鉄プレートを見せる。
「そこの女は?」
先輩はプレートを持っていない。
「中に入れてもらえればギルドに登録します」
「無理だ。冒険者未登録の者は入れる訳にはいかない。それに冒険者ギルドはここから南西に歩いた町の外に建っている」
「わかりました。行ってみます」
俺と先輩は町の塀に沿って南西に歩いた。すると草原の一角に建物が数軒並んでいる。
しばらく歩いて冒険者ギルドに着いた。冒険者ギルドに入ると人で溢れて賑わっていた。
カウンターで先輩の冒険者登録をしていると突然頭を叩かれた。
門前で俺が立ち止まるとシュミルは不思議そうな顔を向けた。
「中に入らないのか?」
「入れないです」
「どういうことだ?通行証は?まさか冒険者登録していない?」
「はい」
「大丈夫だぞ、今から登録すればいい」
ザイアスは俺の肩に手を回して「行くぞ」と引っ張る。
門兵が通行証の提示を求める。
三人は首から下げた銅色のプレートを見せた。
シュミルが門兵と話すと俺も許可が下りたのか、門を通れた。
町の入り口に付近にある冒険者ギルドの建物の中に入った。受付で魔法紙という特殊な紙に血を垂らし名前を決めて登録完了。鉄製のプレートを貰い新人冒険者として活動できるようになった。
「よかったな。それじゃあこれから酒場で祝杯だ」
シュミル達と酒場に入る。そういえば昨日リュードさんと入った同じ酒場だ。十年という歳月が経ったのを物語るように壁は昨日見た時より色は剥げ、円卓もかなり痛んでいた。
「いらっしゃい」
ジョッキを持ってきた女将も老けていた。
「今日はお疲れ様!新人冒険者のレンジの門出を祝して、乾杯!」
「乾杯ー!」と俺は叫んだ直後、エレベーターの中で一人、ジョッキを掲げた状態で立っていた。
「え!?なんで!?どうしてだよ!」
また元の世界に戻ってきた。
エレベーターは職場がある階に止まり、扉が開いた。
「あっ!おはよう!えっ?何その服装!?」
扉の前にいた神村先輩と目が合った。俺は自分の服をチェックする。革の服と革の靴のまま元の世界に戻っていた。静かにエレベーターの【閉】ボタンを押した。
閉まる直前、
「先輩、早退します」と告げた。
「えっ!ちょっと連司くん?」
シュミルに身ぐるみ全部あげたから電車代もない。走って帰宅した。
帰宅してシャワーを浴びて着替えて、公衆電話を探して会社に病欠の連絡をした。
ベッドの上で少し静かになった時に、異世界のことが頭に浮かぶ。
最初な不安しかなかったがシュミルやザイアス、リネットに出会って地下迷宮を探索して楽しかった。少し打ち解けてきた矢先にまた元の世界に。どうしてだろう。
1日目も2日目も。同じような場面で元の世界に戻る。考えられるのは、いつも酒場で祝杯を上げる時だ。
俺は宴に参加できない。参加して乾杯を言えず、乾杯がトリガーになる。乾杯と言わなければどうなるのだろう。いや、そもそも酒場に入った瞬間に元の世界に戻るのだろうか。
シュミルたちパーティでもう一度と思っても次に異世界に行けば十年経過しているのだろうか。
十年といえばリネットは何歳になるのか。
そもそもリネットの年齢を知らないどころか、会話もしてない。
あー!とベッドの上で悶えていると、インターフォンが鳴った。
1Kの小さな間取りのマンションに来訪者とは珍しい。親か、大学の友達かと思いインターフォンに出る。液晶に写っていたのは神村先輩だった。
なぜ住所がバレた!?
そういえば神村先輩は人事部。職権濫用か?
とりあえず出てみる。
「はい」
「連司くんのお宅ですか?大丈夫?」
神村先輩は同期の中では高嶺の花で会社の男連中で俺以外は矢印が神村先輩に向いている。
「連司です。一応熱などはありません。大丈夫です」
「入っていいですか?」
「え?」
入っていい訳がない。床に食べた弁当の空き箱や飲んだペットボトル、それに獣臭がする革の服が散乱した汚部屋だ。
「上がりますよ」
「部屋が散らかっていて」
ドン引きされるに違いない。
「片付けるから、いいでしょ?」
「それは助かります!」
ドアロックを解除した。
ドアを開けると神村先輩が立っていた。
部屋着の俺を見て笑顔で「お邪魔します」と何の躊躇なく部屋に入ってきた。
「確かに汚いねー。掃除はいつ振りかな?なにこれ?これ朝着てたやつだ」
親指と人差し指で革の服を拾い上げる。
「捨てるよ」
「待ってください。大切な物なので」
それは初めてパーティを組んで初めて魔物を倒した時に着たシュミル・ザイアス・リネットとの思い出の品。そんな大切な物を捨てる訳には。
「連司くん。何かに使うの?コスプレが趣味なの?思い出があるの?もう使わないなら捨てるよ」
俺は容赦なくゴミ箱に捨てる神村先輩に心を砕かれ呆然と片付けを眺めていました。
1時間後、綺麗に片付いた部屋に満足した神村先輩は次はご飯を作り始めた。
「どうしてそこまで」
「病欠って聞いて、朝来たのに変だなーって思ったの。それに変な服してたでしょ。昨日も変な感じだったし・・・」
俺は神村先輩から変な奴だと認識されている。
「でも心配で来たら案外元気そう。明日からは出社するでしょ?」
「しばらく休みます」
「なんで?」
「実は・・・」
異世界転移について全てを話した。すると神村先輩は
「明日、精密検査受けに行こう!」と立ち上がった。
「異世界転移の証拠になるものは、さっき先輩が捨てた革の服と靴、それから鉄のプレートです」
首から下げた鉄のプレートを見せた。
それを神村先輩は触ろうとした瞬間、目に見える電気がプレートから放たれて宙を走った。
「きゃ!」
「大丈夫ですか先輩!」
「少しピリッとした。何これ?すごい」
冒険者プレートは他人に奪われないように魔法がかけられているのだろうか。
「魔法で守られているみたいです」
「子どもの頃にアニメに出てた魔法使いに憧れたなー」
「俺もファンタジーとか好きで、よくファンタジーアニメとか映画はよく見てました。そうだご飯食べながら映画でも見ますか?オススメのファンタジー映画があって」
「見る見るー!」
ノリノリの神村先輩。俺も誰かとご飯を食べながら映画は久しぶりで・・・。
ぶっ続けで5本映画見て、朝になってしまった!
「もぅ、朝だね」
少し目の下にクマが出来た神村先輩。
「そうですね朝かぁ。早いなぁ」
「あ、休暇の連絡は私が承りました。会社へ報告は不要だから、一応検査は行ってみてね」
「はい!ありがとうございます」
映画を見過ぎて疲れた神村先輩に対して俺は元気だった。
「じぁあね。行ってきます」
来た時より声が少しガラガラな神村先輩を見送るためエレベーターまで送った。
エレベーターに乗り込む神村先輩。
「先輩、肩にゴミが」
俺が先輩に付いたゴミを取ろうとした瞬間。床が真っ黒になり吸い込まれるように落ちた。
「連司くん!連司くん!起きて!」
神村先輩の声がぼんやり聞こえて目が覚めた。
「連司くん大丈夫?」
「すみません。気を失ってたみたいです」
「此処は何処なの?」
仰向けで気を失っていた俺は上半身を起こす。見覚えのある景色だ。草原に山々が広がりミルクテの町が見える。
「異世界です。はぁ戻ってきた。それより先輩まで何故一緒に?」
「こっちが聞きたいよー」
「とにかくこの辺りは危険です。町に行きましょう」
泣きそうになる先輩を起こして町に向かう。
門兵に止められた。昨日とは違う門兵だった。門には二対の蛇が描かれた青い旗が掲げられいる。門兵の雰囲気も前より厳格で物見台の兵士も多い。
冒険者の鉄プレートを見せる。
「そこの女は?」
先輩はプレートを持っていない。
「中に入れてもらえればギルドに登録します」
「無理だ。冒険者未登録の者は入れる訳にはいかない。それに冒険者ギルドはここから南西に歩いた町の外に建っている」
「わかりました。行ってみます」
俺と先輩は町の塀に沿って南西に歩いた。すると草原の一角に建物が数軒並んでいる。
しばらく歩いて冒険者ギルドに着いた。冒険者ギルドに入ると人で溢れて賑わっていた。
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