異世界魔剣士タイムトラベラーは異世界転移を繰り返して最弱でしたが特殊能力が開花します

三毛猫

文字の大きさ
上 下
3 / 18

初討伐

しおりを挟む
ミルクテの町から北に5kmほど進んだ場所に地下迷宮がある。魔物は地下迷宮など人が近づかない場所を好んでねぐらにしている。定期的に討伐しないと繁殖して地下迷宮から湧き出し、近隣の町を襲う。魔物を倒すと魔石やその他アイテムがドロップする。地下迷宮を塞いでしまうと魔物が集まらず冒険者達も宿がある町を利用しなくなる。という理由で地下迷宮は塞ぐことができないらしい。


草原から森に入り石造りの地下迷宮入り口まで辿り着いた。俺の役目は荷物持ちとドロップアイテムの回収。
ひたすら落ちたアイテムを拾う。

というわけで早速地下迷宮に入った。
暗くて地下の湿気でジメジメした迷宮内。元は坑道で鉄や銅などの金属が廃坑になるまで多く採掘されていた。

一列になって歩く。先頭前衛のリネット。中衛のザイアス、後衛のシュミル、荷物持ちのレンジ。いいバランスだなと思っていると前から金属が引っ掻く音がした。そのあとに魔物の悲鳴が坑道内に響く。


「レンジ、拾っておけよ」
シュミルが忠告する。半分消えかけた大きなネズミのような魔物の体内から、紫色に僅かに光る魔石があった。
魔物は絶命すると体の組織は蒸発して無くなり、魔石やアイテムなどは残るようだ。
手のひらサイズの魔石は濃いアメジストに似て綺麗だった。


「拾いました!」

「いちいち報告しなくていいから鞄にどんどん詰めていけよー」
気怠そうに指示するシュミル。
しかし思ったより進行スピードが速い。ほとんど前衛のリネットが魔物を倒している。
ようやく迷宮内で開けた場所に出た。
ドーム状に広がった空間には他の冒険者もいた。

「あの冒険者の人達は何処から?」

「このミルクテの迷宮は違う地方にも繋がっていて入り口は幾つもある。何処か違う地方の入り口から入ってきた冒険者だろうな」

シュミル、ザイアス、リネットは地面に腰を下ろした。リネットは兜を取って髪をダラリと下ろした。
やはり可愛い顔をしていた。
他の冒険者もリネットを遠くから眺めていた。

「いやらしい奴らだ」
唾を吐くようにシュミルが吐き捨てた。

「姉貴、パーティ内でも気をつけないといけねーよ」
ザイアスが俺を指差す。

俺はリネットに釘付けになっていた。

「レンジではリネットは釣り合わないよ!」
落ちていた石を投げられた。

「いたっ!」

「ところで今までの成果は?レンジ、鞄を開けて見せてくれ」

俺は拾った魔石やアイテムを地面に置くため鞄を開けた。

「あれ?」

鞄を逆さまにしても何も出てこない。

「え?ちょっ、ちょっと待ってください」
鞄の底に穴はない。確かに鞄に詰めた。

「盗ったのか?」

シュミルに睨まれる。

「盗むわけがない」

シュミルに服や体を触られ、そのあと来た道を戻るシュミル。
しばらくしてシュミルが戻ってくると顔が青ざめていた。

「魔石は落ちてない」

疑いは晴れた。しかし魔石や拾ったアイテムは何処に?

シュミルはハッと思い出した顔をして、自分のポーチから小さな魔石を取り出した。
そして徐ろに俺の掌に魔石を置いた。
すると魔石は一瞬にして消えて無くなった。

「レンジお前、まさか・・・マジックブレイカーだったのか!」

シュミルは武器を構えた。

その声に反応してザイアスはナイフを構え、リネットまでも立ち上がってランスを構えた。他の冒険者も武器を構えて俺を狙う。

「どういうことですか!俺はナイフも扱えないただの人です」

「そうだよな。強そうにも見えないし。みんな武器を下ろしてくれ、冗談だよ。悪かった」

ザイアスとリネットは武器を下ろした。

「冗談かよ」
「紛らわしい」
他の冒険者もブツブツ言いながら武器を下ろした。

「マジックブレイカーってなんですか?」

「マジックブレイカーは魔石やアイテムを己の体内に吸収して強くなることができる特殊能力者だ。今、マジックブレイカーはこの世に三人しか存在しない」

「三人だけ?」

「一人は現国王、一人は勇者アミュレシアス、そしてもう一人は魔王」

「魔王!?」

「つまりレンジは四人目にして、マジックブレイカーは過去に魔族多かったからオレは真っ先に魔王の血族だと疑ってしまった」

「戦闘経験もないし、絶対違います」

誤解を解くため俺は元の世界のことや異世界転移の話をしたが、信じてもらえず余計に奇妙がられた。

「絶対にマジックブレイカーのことは他言してはいけない」とキツく忠告された。

魔石を吸収したのなら、少しは強くなってんじゃねー?とザイアスの一言で俺はナイフで素振りすることに。

えい、やー!といつの日か見たアニメの掛け声を真似て素振りすると自他ともに複数のパーティから嘲笑される始末。

「スライムとか低級の魔物狩りから始めようか」

シュミルに肩をポンと叩かれて慰められた。

休息も終わり、地下に続く階段を続々と降りていく。
地下40階層ほどあり、未だに新しい道が発見される巨大な迷宮。
俺たちはまだ2階層。これから4階層までを往復するらしい。

前衛はリネットから交代してザイアス。
中衛はリネット、後衛はシュミル。
見学のレンジという見学者ありの珍しいパーティだ。


2階層からは迷宮入り口から広間に続く一本道よりも大人二人が余裕で通れる道幅がある。その代わり、魔物も動きやすく上下左右あらゆる方向から襲ってくる。

ザイアスは巧みに魔物の動きを捉えて急所をナイフで一撃。リネットは魔物の飛び血がシュミルにかからないように盾で防いでいた。

「あ!やべ!急所外した!リネット頼む」
勢いよく突進してきた魔物が急所を外して転がって跳ねた。魔物が宙を舞い、リネットの盾に当たる。盾が斜めになっていたせいか、魔物は弾かれて宙を舞い更に後方へ。
リネットのすぐ後ろにいたシュミルは弓を引き始めた。
それよりも先に俺は「やー!」と言いながらナイフを天高く突き上げた。たまたま偶然、そこに魔物が飛んできた。そして魔物の急所を貫いて初めて魔物を倒した。

「おー!」
「やるな新人」
シュミルとザイアスは褒めてくれた。
そして何より嬉しかったのが、リネットが鎧をカシャカシャと音を立てて拍手してくれたことだ。

「偶然なんです」とは言えず、照れて顔が赤くなってしまった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち
ファンタジー
引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ当たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地点(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うため、ポンコツ貧乳エルフとともにマイペースで冒険する。 ※『死に戻り』と『成長チート』で異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~から改題しました

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

安全第一異世界生活

笑田
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 異世界で出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて 婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の冒険生活目指します!!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...