彼女は俺以外にスルーされてる

三毛猫

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 舞衣の話によると、帝国は敵国が定期的に召喚するスキル持ちのこの世の現代人が疎ましく、いっそこの世に暗殺者を送り込みスキル持ちを根絶しようという強引なプランで異世界人舞衣を送り込み、1人も暗殺できず挙げ句の果て真矢に敗北し今に至る。
そして真矢に惚れた舞衣は真矢に振り向いてもらうため日々お弁当とお菓子作りに励んでいた。


舞衣が俺を駅で襲ってから1か月が過ぎたある日のこと、また学校に転校生が現れた。舞衣の一件以来、と聞くと嫌な予感がする。転校生は同じクラスだそうで、教室に入ってきた。教壇に立った姿にクラスの男どもが騒ついた。
黒髪ロングで8頭身、顔は小顔で鼻筋は立ち、目はキリッとして絵に描いたような美人だった。一方、ショートヘヤーの似合う舞衣は可愛い系、対照的だった。

「転校生の美波青蘭です。よろしくお願いします」

「おー!やべー青蘭ちゃんよろしくー!」

「ふん」

今鼻で笑ったよね?と数人がクスクス笑い始めた。

「これがクールビューティーってやつ」

「美人なのに勿体ないぜ。俺たちと放課後遊ばない?」

お調子者の男子が青蘭をからかう。

「うっさい!」

教室に響く青蘭の強く重みのある声に全員静まり返った。先生ですら、驚いて目が泳いでいる。

「ま、まぁ転校したばかりで気が立っているんだ。みんなもこれから仲良くするように。席は比島の隣で」


俺の隣!?

俺の席は教室の左端の後ろから2番目。
青蘭は俺の右隣に座る。すると青蘭の後ろの女子が「青蘭さん背が高くて黒板が見えません」と言うものだから、結局俺の後ろの席に座ることになった。

青蘭の放つ独特な威圧感だろうか、後ろから物凄い冷気のような冷たい目線を感じる。

昼を過ぎ、5限目になった頃。

「放課後、体育館裏に来い」

突然後ろの青蘭から耳打ちされた、

「あひゃ」

耳に息がかかり思わず声が漏れる。

「おい!比島、授業中に変な声を出すな」

「す、すみません」

教室が笑いに包まれたが俺の心臓は早打ちしていた。
体育館、放課後、これは告白のパターンか。遂に青春の1ページが始まるのかと胸を躍らせていたが、「来い」という命令形ワードが引っかかって仕方ない。

もしかして喝上げだろうか。
中休み、俺は舞衣と真矢を呼び出し頭を下げた。

「なに?だるいなぁ。なんで私がクズの頼みを聞かないといけないワケ?」

「駄目よー親友マイベストフレンドの頼みなんだから」

「真矢様が行くなら私も行きます」

「お願い。舞衣ちゃん」

「はい!」

「それで転校早々に青蘭ちゃんが体育館裏で夏維人に告白するか否か見張ってほしいってことよね?どうして見張るのよ」

「お願い!頼みます!少し怖くて」

「これだから弱虫は」

吐き捨てて舞衣は去った。
真矢は俺の話を最後まで聞いて気持ちを理解してくれた。


放課後、体育館裏に行くと青蘭が待っていた。

「遅い」

「ごめんなさい。話って何かな?」

内心ドキドキしている。喝上げか告白か。
頼むから告白であってくれ。遅れてきたのは天に向かってお願いしていたからだ。どうか転校生の青蘭さんが俺に告白して付き合えますようにと。

青蘭はゆっくり口を開いた。心臓が早打ちして時間がゆっくり過ぎるように感じる。

「実は一目見た時から・・・」

これは告白のパターン!一目惚れってやつか。

「一目見た時からスキ・・・」

スキ!?好き!

「一目見た時からスキル持ちではないかと感じていた」

俺のドキドキ返せ!!
青春返せ!スキルのことか!
心の中で唸る間も青蘭は続ける。

「スキル持ちなら協力してほしい」

よく考えたら、美人が突然告白とかありえないか!俺も馬鹿だよな。漫画みたいな展開期待しちゃったよ!

「聞こえてるのか?前の席の人」

名前すら覚えられてねー!

「聞こえてますよ」

不貞腐れた俺は体育館裏の階段に座り込んだ。

「ふふふ・・・」

建物の影から笑い声が聞こえてきた。舞衣の我慢したような笑い声だ。

「面白い!ウケる!ざまぁー!」

建物から現れた舞衣はゲラゲラ笑いこっちに歩いてきた。

「笑うな!」

「その声はやっぱりアーシェか!」

青蘭が舞衣に駆け寄って抱きついて喜んでいる。満面の笑みで。

「リリィ久しぶり」

「アーシェだと気づかなかった。もうすっかりこの世界の住人だな」

「すごいのよこの世界のメイク。見てこの肌のきめ細やかさ」

「どうやって?」

「最新のファンデとコンシーラーよ。また貸してあげる」

「いいのか?ありがとうアーシェ」

除け者の俺はキラキラした女子の会話と姿を虚な目で見ていた。


「リリィ、いやこちらでは青蘭と呼ぶべきね。青蘭もこの世界に転移して何の任務を?」

青蘭の顔が強張る。

「実はアーシェがこの世界に転移して数ヶ月後、帝国は魔王国と交戦を始めた」

「魔王国と!?」

突如告げられた帝国の現状に舞衣は驚きを隠せないでいた。
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