2 / 5
スキル
しおりを挟む
鏡の前で首筋を触る。首だけ体温が低く、まるで鉄のように硬くなっていた。
「ふーん。そういうことね」
「ひぃぃ!」
突如背後に現れた舞衣に声にもならない悲鳴をあげた。
「ここ男子トイレですよ」
「ツッコむとこそこ?なんで殺そうとしたんですかー?なぜ僕は攻撃されても生きてるのですか?とか色々あるでしょう」
ふざけているような口調でも目は笑っていない。ナイフを指先でグルグルと回し、威嚇している。
「ナイフを下ろしてください!」
「貴方みたいなクズがなぜスキル持ちな訳?」
「スキル持ち?」
「そう。貴方はスキルを身につけてる。私の見立てでは硬質化。心当たりある?」
言われてみれば先月階段から転けて落ちても怪我一つなかった。
俺は何も答えなかった。クズと言われ内心腹が立っていた。
「何も言わないって事は私の推測通りね。あー、厄介な奴相手したなぁ」
舞衣は俺に背中を向けた後、振り返って俺の顔面に拳をクリーンヒットさせた。衝撃で床に倒れる。
「ーーっ!」
舞衣は悶絶し苦悶の表情を浮かべ拳を振って痛みを誤魔化す。俺の方は痛みはない。ただ殴られた頬の皮膚は硬くなっていた。
「急に何するんだよ!」
「刃物も打撃も駄目。そうなると・・・」
「俺が何したんだ!」
舞衣の胸ぐらを掴んで、押すと勢いで2人ともトイレから飛び出した。
そこに同じクラスの須藤真矢と鉢合わせた。
「えっ!夏維人と舞衣ちゃん!もうそんな関係なの?なんで舞衣ちゃんは水着なの?朝からどういうこと!?」
「仲が良いように見えるか!真矢!舞衣を押さえろ!」
「夏維人くんどうしちゃったのその口調!教室でも端っこの方にいるタイプじゃない!今の言い方はワルよ、ワル」
舞衣は俺の腕を抱え込み足払いする。俺は一瞬宙を舞い背中から倒れた。すかさず舞衣は馬乗りになり俺の喉元にナイフを突き立てた。
「きゃー!やめて舞衣ちゃん!何があったか知らないけどダメよ!」
真矢が右往左往する。
「私に体術で勝とうなんて百年早い!この平和ボケしたクズが!」
何の憎しみがあって俺を罵り殺そうとするのか分からない。だが狂気の目をした舞衣は本当の殺意が込められている。
「やめてよ。お願いだからー」
「黙れ!見られたからには、お前からやってやる!」
舞衣は真矢にナイフを突き出した。
真矢はナイフを肘で払い、溝打ちに正拳突きを当てた。
「ぐっはぁ!」
舞衣の口から唾液と胃酸のような液体が飛び散り、腹を抱えてその場に倒れた。
「言ってなかったな。真矢は空手の全国大会一位だって」
「そんなの・・・知らないわ・・・よ・・・」
舞衣は意識を失った。
「起きて舞衣ちゃん」
ゆっくりと目を開ける舞衣。真矢が舞衣の顔を覗き込む。起き上がろうとして上半身を起こすとお腹を押さえてまたベッドに倒れた。
「まだ起き上がっちゃ駄目」
「・・・ここは?」
「保健室」
「何故?私はあのクズを始末しようとしていたのよ」
「夏維人に聞いたわよー。ワルね貴女も。でも同じクラスメイトじゃない。きっと深い事情があるのよね」
舞衣は真矢を見つめ急に顔が赤くなり、布団に潜った。
「どうしたの?話したくないの?」
「真矢様。私より強い人あんまりいないから、急に負けたこと思い出して恥ずかしいのと・・・カッコいいなぁって」
「やだー。カッコいいだって」
俺は終始、冷ややかな目でやり取りを見ていた。
舞衣は布団から出て話し始めた。
「私は異世界から来た異世界人で、ある帝国の命によってこの世界のスキル持ちを駆逐しにきた暗殺者」
「暗殺者だなんて物騒ねー」
「それで俺がスキル持ちだから排除しようと?」
「そう。スキル持ちは稀にこの世界にいる。貴方が私の透明化のスキルを見破ったのもスキルの一つ。まさか2つのスキル持ちなんて思いもしなかった」
「夏維人のスキルってなに?」
「硬質化かな。殴っても切っても効かない」
「そうなのー。試しに私もいいかしら?」
真矢は腰を落とし肘を曲げて引き、勢いよく拳を突き出して俺の腹に正拳突きをした。俺の腹は硬く硬化したのだが、衝撃波が内臓に伝わり壁まで吹き飛んだ。
「うそ!やだ!大丈夫ー!?」
「い、いてぇ。硬質化したのに何故?」
「真矢様もスキル持ちの可能性があるわ」
お腹が痛すぎる。硬質化していなかったら腹に穴が空いていたかもしれない。
倒れた俺は舞衣の隣のベッドに運ばれ、しばらく安静にすることになった。
「谷代大さん具合どう?楽になってきたかな?」
保健室に保健室の先生が入ってくるなり、舞衣の隣のベッドで寝る俺に気付いた。
「なんで病人増えてるのよ!」
真矢は苦笑いして誤魔化した。
「比島くん!どうしたの!?」
「お腹が・・・」
先生は俺の制服を脱がすとお腹を曝け出した。
「ぎゃー!」
先生は叫んだ。
硬質化した部分が裂け、お腹に黒い深いアザが出来ている。
「救急車!今すぐ呼ぶから!」
焦る先生を舞衣は止め、ぶつぶつ何かを言い始めた。
「古の秘儀を以て、聖なる泉より生まれし癒しの力よ、我が手に宿りし聖なる加護により、我が魔法が叶えしは、疾患を払い、傷を癒し、疲労を癒やす。我が魔法は聖なる癒し、その名を果てしなき聖なる光よ彼のものを癒したまえ!ヒール!」
白い光が俺を包み心地よい温かさで手足の先まで血が巡り、お腹の痛みは一瞬にして消え去った。
「んなに?どういう現象?夢よね?」
保健室の先生は白目をむいて倒れた。
俺のお腹は元に戻りすっかり元気になった。
倒れた保健室の先生を俺が寝ていたベッドに寝かせた。
「ふーん。そういうことね」
「ひぃぃ!」
突如背後に現れた舞衣に声にもならない悲鳴をあげた。
「ここ男子トイレですよ」
「ツッコむとこそこ?なんで殺そうとしたんですかー?なぜ僕は攻撃されても生きてるのですか?とか色々あるでしょう」
ふざけているような口調でも目は笑っていない。ナイフを指先でグルグルと回し、威嚇している。
「ナイフを下ろしてください!」
「貴方みたいなクズがなぜスキル持ちな訳?」
「スキル持ち?」
「そう。貴方はスキルを身につけてる。私の見立てでは硬質化。心当たりある?」
言われてみれば先月階段から転けて落ちても怪我一つなかった。
俺は何も答えなかった。クズと言われ内心腹が立っていた。
「何も言わないって事は私の推測通りね。あー、厄介な奴相手したなぁ」
舞衣は俺に背中を向けた後、振り返って俺の顔面に拳をクリーンヒットさせた。衝撃で床に倒れる。
「ーーっ!」
舞衣は悶絶し苦悶の表情を浮かべ拳を振って痛みを誤魔化す。俺の方は痛みはない。ただ殴られた頬の皮膚は硬くなっていた。
「急に何するんだよ!」
「刃物も打撃も駄目。そうなると・・・」
「俺が何したんだ!」
舞衣の胸ぐらを掴んで、押すと勢いで2人ともトイレから飛び出した。
そこに同じクラスの須藤真矢と鉢合わせた。
「えっ!夏維人と舞衣ちゃん!もうそんな関係なの?なんで舞衣ちゃんは水着なの?朝からどういうこと!?」
「仲が良いように見えるか!真矢!舞衣を押さえろ!」
「夏維人くんどうしちゃったのその口調!教室でも端っこの方にいるタイプじゃない!今の言い方はワルよ、ワル」
舞衣は俺の腕を抱え込み足払いする。俺は一瞬宙を舞い背中から倒れた。すかさず舞衣は馬乗りになり俺の喉元にナイフを突き立てた。
「きゃー!やめて舞衣ちゃん!何があったか知らないけどダメよ!」
真矢が右往左往する。
「私に体術で勝とうなんて百年早い!この平和ボケしたクズが!」
何の憎しみがあって俺を罵り殺そうとするのか分からない。だが狂気の目をした舞衣は本当の殺意が込められている。
「やめてよ。お願いだからー」
「黙れ!見られたからには、お前からやってやる!」
舞衣は真矢にナイフを突き出した。
真矢はナイフを肘で払い、溝打ちに正拳突きを当てた。
「ぐっはぁ!」
舞衣の口から唾液と胃酸のような液体が飛び散り、腹を抱えてその場に倒れた。
「言ってなかったな。真矢は空手の全国大会一位だって」
「そんなの・・・知らないわ・・・よ・・・」
舞衣は意識を失った。
「起きて舞衣ちゃん」
ゆっくりと目を開ける舞衣。真矢が舞衣の顔を覗き込む。起き上がろうとして上半身を起こすとお腹を押さえてまたベッドに倒れた。
「まだ起き上がっちゃ駄目」
「・・・ここは?」
「保健室」
「何故?私はあのクズを始末しようとしていたのよ」
「夏維人に聞いたわよー。ワルね貴女も。でも同じクラスメイトじゃない。きっと深い事情があるのよね」
舞衣は真矢を見つめ急に顔が赤くなり、布団に潜った。
「どうしたの?話したくないの?」
「真矢様。私より強い人あんまりいないから、急に負けたこと思い出して恥ずかしいのと・・・カッコいいなぁって」
「やだー。カッコいいだって」
俺は終始、冷ややかな目でやり取りを見ていた。
舞衣は布団から出て話し始めた。
「私は異世界から来た異世界人で、ある帝国の命によってこの世界のスキル持ちを駆逐しにきた暗殺者」
「暗殺者だなんて物騒ねー」
「それで俺がスキル持ちだから排除しようと?」
「そう。スキル持ちは稀にこの世界にいる。貴方が私の透明化のスキルを見破ったのもスキルの一つ。まさか2つのスキル持ちなんて思いもしなかった」
「夏維人のスキルってなに?」
「硬質化かな。殴っても切っても効かない」
「そうなのー。試しに私もいいかしら?」
真矢は腰を落とし肘を曲げて引き、勢いよく拳を突き出して俺の腹に正拳突きをした。俺の腹は硬く硬化したのだが、衝撃波が内臓に伝わり壁まで吹き飛んだ。
「うそ!やだ!大丈夫ー!?」
「い、いてぇ。硬質化したのに何故?」
「真矢様もスキル持ちの可能性があるわ」
お腹が痛すぎる。硬質化していなかったら腹に穴が空いていたかもしれない。
倒れた俺は舞衣の隣のベッドに運ばれ、しばらく安静にすることになった。
「谷代大さん具合どう?楽になってきたかな?」
保健室に保健室の先生が入ってくるなり、舞衣の隣のベッドで寝る俺に気付いた。
「なんで病人増えてるのよ!」
真矢は苦笑いして誤魔化した。
「比島くん!どうしたの!?」
「お腹が・・・」
先生は俺の制服を脱がすとお腹を曝け出した。
「ぎゃー!」
先生は叫んだ。
硬質化した部分が裂け、お腹に黒い深いアザが出来ている。
「救急車!今すぐ呼ぶから!」
焦る先生を舞衣は止め、ぶつぶつ何かを言い始めた。
「古の秘儀を以て、聖なる泉より生まれし癒しの力よ、我が手に宿りし聖なる加護により、我が魔法が叶えしは、疾患を払い、傷を癒し、疲労を癒やす。我が魔法は聖なる癒し、その名を果てしなき聖なる光よ彼のものを癒したまえ!ヒール!」
白い光が俺を包み心地よい温かさで手足の先まで血が巡り、お腹の痛みは一瞬にして消え去った。
「んなに?どういう現象?夢よね?」
保健室の先生は白目をむいて倒れた。
俺のお腹は元に戻りすっかり元気になった。
倒れた保健室の先生を俺が寝ていたベッドに寝かせた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる