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エントの街を魔物の大群が襲来して2ヶ月が経過した。
襲来した魔物の大群はエルマ領の地下鉱道や森や山々に各地に離散したが。未だエントの街には兵士を配備して昼夜警備する日々が続いている。
2ヶ月が経過したある日を境にエントの街では夜間になると街の外を警備していた兵士が殺される事件が相次いだ。
切り口が鋭く、剣の熟練した技で兵士は倒されていた。
死体の埋葬を手伝っていたフィアリは死んだ兵士の深い剣の傷を見て、青ざめた。
そこにゴモラ王国直属、第三騎兵部隊のハートが近づいてフィアリの異変に気付いた。
「久しいな。どうしたのだ?」
「馬で私を街まで連れて行ってくれた騎士さん。たしか名前は……」
「ハートだ」
「ハートさんね。この真っ直ぐな斬り方に見覚えがあります。これは先の戦いで行方不明になったソウダの斬り方に似ている」
「探していた者か」
フィアリは頷く。
ーー 2ヶ月前 ーー
ソウダは戦の最中、無数の魔物によって気絶させられ拐われ、エルマ城下の丘の魔物の巣窟である地下坑道地下25階の一室に運ばれ、目覚めた。
目覚めると、手足は縛られて身動きが出来ない。
部屋の奥から現れたのは幻夢の悪魔リーナだった。
「お久しぶりねぇ。ニートさん」
色っぽい声を出してソウダに近づく。
リーナは人の形をしているが中身は魔物。長い舌でソウダの顔を舐めるとニヤニヤ気味の悪い笑みを浮かべた。
「お前がこの戦いを仕組んだのか!」
「違うわ。それよりまた夢の中で私と遊びましょう。貴方はこの世界にない記憶と感情と感性を持っていて楽しかったから。働かないなんて選択がこの世界にはない。貴方は夢の中で働かない選択をして私を虜にしたわ。どうなるのか楽しみだったけど、結局働くことを決めた貴方には興醒めしたわ」
「所詮、夢の話」
「言い返すようになったわね。でもこれはどうかしら?」
リーナはソウダの服を脱がした。
ソウダの腹には小さな魔物が寄生していた。
「なんだこれは!早く取れ!」
「ふふっ。慌てふためく姿。面白いわ。残念だけど、取れないの。魔王の血が混ざった寄生獣は、魔物へと変化させる。貴方に耐える力があればだけど」
ソウダの体は寄生した魔物の影響で、目や耳が赤くなり、腕と手が左右から2本ずつ生えた。
体格も巨大になり3メートルを超えた。
「すっかり魔物ね」
「……」
「言葉も失ったかしら?」
ソウダは黙ったままだ。
「私の傑作である貴方は、私の命令に従い、ゴモラ王国を潰すわよ。いいわね」
ソウダは黙ったまま動かなかった。
襲来した魔物の大群はエルマ領の地下鉱道や森や山々に各地に離散したが。未だエントの街には兵士を配備して昼夜警備する日々が続いている。
2ヶ月が経過したある日を境にエントの街では夜間になると街の外を警備していた兵士が殺される事件が相次いだ。
切り口が鋭く、剣の熟練した技で兵士は倒されていた。
死体の埋葬を手伝っていたフィアリは死んだ兵士の深い剣の傷を見て、青ざめた。
そこにゴモラ王国直属、第三騎兵部隊のハートが近づいてフィアリの異変に気付いた。
「久しいな。どうしたのだ?」
「馬で私を街まで連れて行ってくれた騎士さん。たしか名前は……」
「ハートだ」
「ハートさんね。この真っ直ぐな斬り方に見覚えがあります。これは先の戦いで行方不明になったソウダの斬り方に似ている」
「探していた者か」
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「所詮、夢の話」
「言い返すようになったわね。でもこれはどうかしら?」
リーナはソウダの服を脱がした。
ソウダの腹には小さな魔物が寄生していた。
「なんだこれは!早く取れ!」
「ふふっ。慌てふためく姿。面白いわ。残念だけど、取れないの。魔王の血が混ざった寄生獣は、魔物へと変化させる。貴方に耐える力があればだけど」
ソウダの体は寄生した魔物の影響で、目や耳が赤くなり、腕と手が左右から2本ずつ生えた。
体格も巨大になり3メートルを超えた。
「すっかり魔物ね」
「……」
「言葉も失ったかしら?」
ソウダは黙ったままだ。
「私の傑作である貴方は、私の命令に従い、ゴモラ王国を潰すわよ。いいわね」
ソウダは黙ったまま動かなかった。
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