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異世界ニート誕生
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「ケトロ……ケトロ!」
力なく揺すっても動かない。傷が悪化して命絶えたケトロ。
俺がもう少し早く来ていたら、ケトロを救えた。
過去に遡って歴史を変えて、信頼できるケトロという従者を失った。
結局、エッジ、ジダ、フィアリも死んだ。
2ヶ月の特訓なんて意味なんかったんだ……。
俺は無力だ。
ケトロを朽ちた家の横に土葬した。
ここ異世界のゴモラ王国の住民は朝から晩までよく働く。
各々が決められた職業通りに働き、働いていても楽しそうに皆笑顔だ。
もちろんモンスターが存在する恐怖や隣国との戦はあっても野に生きる草木や花のように生き生きしている。
ゴモラ王国の外れの朽ちた家に王国初の職業も就かない学業もしない住民が現れた。
住民曰く、何もしないモンスターという噂だ。
ケトロが死に数ヶ月が経過した。
俺は毎日、森を散策して野生の果実などを食べて暮らしていた。
それ以外は寝て過ごした。
コンコン!
ドアを叩く音で目覚めた。
「おはようございます!ニートさん!」
華奢な体に乗っかった小さな顔。前髪を鼻当たりまで垂らし、眼鏡をかけた女の名前はリーナと言った。
ちなみに、ニート言う言葉は俺が教えた。それから気に入ったのかリーナは俺をソウダではなくニートと呼ぶようになった。
「今日も生態を観察させて、もらいます!」
10日前。突然家に入って、街で噂の何もしないモンスターの生態(暮らし)の観察を始めた。
「迷惑だ」
と何度言っても聞かない。
「課題です!興味深くて」
コイツはモンスターの生態を研究する組織の一員で俺をずっと観察してくる。
「働かない奴がそんなに珍しいのか!」
「はい!ゴモラ王国建国以来唯一の存在です。皆、与えられ、選んだ職を全うして生涯を終わらせます。何故貴方は働きもせず毎日を過ごすのでしょう?」
「何回も言ってるが、疲れた。救えない命に、無駄な特訓、勝てないぐらい強い相手、どれも相手にするのに疲れたし、苦しんだ。今はもう何も考えないで動きたくない。だから帰ってくれ」
俺の怒りに満ちた声にもリーナは後ろに下がらない。むしろ、前に出て俺に近づいて鼻息を荒げた。
正直に言って変人に捕まったと思った。
「俺は今から果物を取りに行く!」
変人リーナから距離を置きたい。
森に逃げ込めば追ってこない。
朽ちた家を出て森に入るとリーナは追ってこない。いつもなら……。
今日は森に入って追ってきた。
「待ってください。森の中は慣れていないので」
俺は早足でリーナと距離を離す。リーナの姿が見えなくなった所で果物を取り始めた。
「きゃーー!」
リーナの声だ!走ってリーナの元に行くと頭2人生えた犬の魔獣2体がリーナに襲いかかろうとしていた。
「メラ!」
1体は炎に包まれ焼け死んだ。
リーナに近づく。
「きゃ」
リーナは木の幹に引っかかって後ろに倒れたところを間一髪俺は倒れないよう抱き抱えた。
リーナの鼻まで伸びた前髪が上がり、初めて顔を見た。
人生で見たことがないぐらい美人で思わず顔が赤くなった。
「ニートさん!魔獣がきます!」
しばらく見惚れていた。
「メラ!」
もう一体を倒すと抱き抱えたリーナを起こした。
「ありがとうございます!ニートさんって強かったんですね!」
照れて耳まで赤くなった。
「助けてくれたお礼に家で食事でもどうですか?それに体も臭いのでお風呂お貸ししますよ」
体が臭い発言に心が痛んだが、もう数ヶ月風呂には入っていない。
半月に1度、川で体を洗い流す程度だった。
俺はリーナと共に久しぶりに街に入ったが、奇異の目に晒されることになった。
街の端にリーナの家があった。
木の門があり、衛兵が立ち街では見ない石造りと木造が組み合わさった2階建てのの豪邸だった。
門を抜けて、建物に入る。右の一室に入ると長いテーブルに皿が並べられていた。
「父です」
テーブルの先にいたのは、俺を助けてくれたバルバトスだった。
「バルバトスさん!」
「おー。何時ぞやの青年!元気だったか?君を助けた後、街に戻ったが君の姿がなく心配していたのだ」
「すみません。あの後、俺は草原の外れにある家で過ごしていました」
「無事で何より」
「ニートさんは、私を魔獣から助けてくれたのよ」
バルバトスは驚いた。
「何!?君が娘を!ありがたい」
「いえ、元は助けていただいた命です」
「お父さん、ニートさんにお風呂に入っていただいていい?」
「構わんよ」
俺は風呂に入ると体を洗い流した。
風呂から上がると、豪華な晩御飯を食べた。
「君、顔が暗いぞ。どうしたんだ?」
バルバトスが心配そうに俺を見つめる。
「ニートさんはいつもこんな感じだから……」
リーナの言葉に胸が痛む。
「前は笑ったり、笑顔のことが多かったのに、この世界に来て忘れてしまって、いやこの世界に来る前も残業だらけで笑うことなんて少なかったかな」
「後半は何を言っているのか分からなかったが、『笑えば国が栄え、俯けば国が滅ぶ』という言葉がこの国にはあるようにゴモラ王国の王は人が笑顔になる国を目指している。しかし隣国にして敵国の魔獣や半獣のキャティ率いる黒の森の勢力は違う」
バルバトスは続けた。
「野生の獣に無理やり魔の成分が入った血を入れて魔獣にして勢力を維持している。ゴモラ王国は奴らを倒す。だからソウダ、君も私達に力を貸してくれないか?」
「すみません。即答は出来ないです。考えておきます」
「仕方ない。次に会った時に期待するとしよう」
晩御飯を食べ、リーナの家を出て俺は朽ちた家に戻った。
翌朝。
「おはようございます!ニートさん!」
元気の良いリーナの声で叩き起こされた。
力なく揺すっても動かない。傷が悪化して命絶えたケトロ。
俺がもう少し早く来ていたら、ケトロを救えた。
過去に遡って歴史を変えて、信頼できるケトロという従者を失った。
結局、エッジ、ジダ、フィアリも死んだ。
2ヶ月の特訓なんて意味なんかったんだ……。
俺は無力だ。
ケトロを朽ちた家の横に土葬した。
ここ異世界のゴモラ王国の住民は朝から晩までよく働く。
各々が決められた職業通りに働き、働いていても楽しそうに皆笑顔だ。
もちろんモンスターが存在する恐怖や隣国との戦はあっても野に生きる草木や花のように生き生きしている。
ゴモラ王国の外れの朽ちた家に王国初の職業も就かない学業もしない住民が現れた。
住民曰く、何もしないモンスターという噂だ。
ケトロが死に数ヶ月が経過した。
俺は毎日、森を散策して野生の果実などを食べて暮らしていた。
それ以外は寝て過ごした。
コンコン!
ドアを叩く音で目覚めた。
「おはようございます!ニートさん!」
華奢な体に乗っかった小さな顔。前髪を鼻当たりまで垂らし、眼鏡をかけた女の名前はリーナと言った。
ちなみに、ニート言う言葉は俺が教えた。それから気に入ったのかリーナは俺をソウダではなくニートと呼ぶようになった。
「今日も生態を観察させて、もらいます!」
10日前。突然家に入って、街で噂の何もしないモンスターの生態(暮らし)の観察を始めた。
「迷惑だ」
と何度言っても聞かない。
「課題です!興味深くて」
コイツはモンスターの生態を研究する組織の一員で俺をずっと観察してくる。
「働かない奴がそんなに珍しいのか!」
「はい!ゴモラ王国建国以来唯一の存在です。皆、与えられ、選んだ職を全うして生涯を終わらせます。何故貴方は働きもせず毎日を過ごすのでしょう?」
「何回も言ってるが、疲れた。救えない命に、無駄な特訓、勝てないぐらい強い相手、どれも相手にするのに疲れたし、苦しんだ。今はもう何も考えないで動きたくない。だから帰ってくれ」
俺の怒りに満ちた声にもリーナは後ろに下がらない。むしろ、前に出て俺に近づいて鼻息を荒げた。
正直に言って変人に捕まったと思った。
「俺は今から果物を取りに行く!」
変人リーナから距離を置きたい。
森に逃げ込めば追ってこない。
朽ちた家を出て森に入るとリーナは追ってこない。いつもなら……。
今日は森に入って追ってきた。
「待ってください。森の中は慣れていないので」
俺は早足でリーナと距離を離す。リーナの姿が見えなくなった所で果物を取り始めた。
「きゃーー!」
リーナの声だ!走ってリーナの元に行くと頭2人生えた犬の魔獣2体がリーナに襲いかかろうとしていた。
「メラ!」
1体は炎に包まれ焼け死んだ。
リーナに近づく。
「きゃ」
リーナは木の幹に引っかかって後ろに倒れたところを間一髪俺は倒れないよう抱き抱えた。
リーナの鼻まで伸びた前髪が上がり、初めて顔を見た。
人生で見たことがないぐらい美人で思わず顔が赤くなった。
「ニートさん!魔獣がきます!」
しばらく見惚れていた。
「メラ!」
もう一体を倒すと抱き抱えたリーナを起こした。
「ありがとうございます!ニートさんって強かったんですね!」
照れて耳まで赤くなった。
「助けてくれたお礼に家で食事でもどうですか?それに体も臭いのでお風呂お貸ししますよ」
体が臭い発言に心が痛んだが、もう数ヶ月風呂には入っていない。
半月に1度、川で体を洗い流す程度だった。
俺はリーナと共に久しぶりに街に入ったが、奇異の目に晒されることになった。
街の端にリーナの家があった。
木の門があり、衛兵が立ち街では見ない石造りと木造が組み合わさった2階建てのの豪邸だった。
門を抜けて、建物に入る。右の一室に入ると長いテーブルに皿が並べられていた。
「父です」
テーブルの先にいたのは、俺を助けてくれたバルバトスだった。
「バルバトスさん!」
「おー。何時ぞやの青年!元気だったか?君を助けた後、街に戻ったが君の姿がなく心配していたのだ」
「すみません。あの後、俺は草原の外れにある家で過ごしていました」
「無事で何より」
「ニートさんは、私を魔獣から助けてくれたのよ」
バルバトスは驚いた。
「何!?君が娘を!ありがたい」
「いえ、元は助けていただいた命です」
「お父さん、ニートさんにお風呂に入っていただいていい?」
「構わんよ」
俺は風呂に入ると体を洗い流した。
風呂から上がると、豪華な晩御飯を食べた。
「君、顔が暗いぞ。どうしたんだ?」
バルバトスが心配そうに俺を見つめる。
「ニートさんはいつもこんな感じだから……」
リーナの言葉に胸が痛む。
「前は笑ったり、笑顔のことが多かったのに、この世界に来て忘れてしまって、いやこの世界に来る前も残業だらけで笑うことなんて少なかったかな」
「後半は何を言っているのか分からなかったが、『笑えば国が栄え、俯けば国が滅ぶ』という言葉がこの国にはあるようにゴモラ王国の王は人が笑顔になる国を目指している。しかし隣国にして敵国の魔獣や半獣のキャティ率いる黒の森の勢力は違う」
バルバトスは続けた。
「野生の獣に無理やり魔の成分が入った血を入れて魔獣にして勢力を維持している。ゴモラ王国は奴らを倒す。だからソウダ、君も私達に力を貸してくれないか?」
「すみません。即答は出来ないです。考えておきます」
「仕方ない。次に会った時に期待するとしよう」
晩御飯を食べ、リーナの家を出て俺は朽ちた家に戻った。
翌朝。
「おはようございます!ニートさん!」
元気の良いリーナの声で叩き起こされた。
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