魔法で子猫になった第一王子の婚約者選び

三毛猫

文字の大きさ
上 下
2 / 9

婚約候補破棄

しおりを挟む
ルーベルト第一王子の婚約候補者の中でも唯一平民出身の第三候補者ディオ・リノラは王都の外れにある平民街に住んでいた。
半年前にルーベルト第一王子の婚約者候補を国内外で広く公募されるとリノラの親は真っ先に応募した。第一次選考、第二次選考、第三次選考を経て最終5人の中に残った。

リノラが周りからは平民出身者でも平等に扱っているように見せる為のパフォーマンス要員だと揶揄された。


平民街を歩いてルーベルトの別邸目指す。
別邸の隣の林の中の小道を歩く。
もう目の前には別邸の建物が見えていた。
リノラは明日は初めてルーベルトと会食する。他の爵位がある婚約候補者は既に何度も会食を重ねていると聞いて明日は絶対に遅れないように別邸の場所の確認に来たのだが。


「あれは・・・」

別邸の隣の林の小道の脇の草むらに第五候補者のフィナがいた。
草むらを行ったり来たりした後、フードがあるローブを着て素早く塀を乗り越えて別邸の中に消えた。

「フィナ様が何故?」

そのあと、別邸の2階の窓から緑色の光が一瞬放たれる。
再び塀を越えてローブ姿のフィナは林の中に消えた。

しばらくして小道の奥から馬車が走ってきた。
別邸の前の道からも馬車が一台走ってきた。

ほとんど同時に鉢合わせた形で別邸前に二台の馬車が停車すると一台目からレベッカが、二台目からはフィナが降りてきた。


「先程のはなんだったの?」

リノラは色々と思考が巡ったまま、帰路に着いた。


その翌日、第一王子失踪事件が公表されリノラの会食は無くなった。


そして二日後、城に集められた5人の婚約候補者は玉座の前で王に跪く。


「此度は第一王子が失踪し捜索中である。最後に会食予定であったレベッカ嬢とフィナ嬢よ何か知らぬか?」

「はい陛下。私はフィナと共にルーベルト殿下の別邸に入りました。別邸には私と私の従者とフィナ、執事にメイドと一匹の子猫しか居ませんでした」

「一匹の子猫・・・」

クライス王国、国王のクライス二世は白く鎖骨まで伸びた長い白鬚を撫でて考えた。


「その昔、禁断の魔法で人を動物に変える魔法が存在したと聞く。もしも一匹の子猫が王子だとすれば・・・急いで捜索せよ!」

「その必要はございません。子猫は私が保護しております」

「おー。流石は王子が選んだフィナ嬢。よくやった」

リノラは小さく挙手すると王はリノラに発言を許した。

「殿下とレベッカ様とフィナ様の会食予定日に別邸の脇の林の中でフィナ様を見ました。フィナ様はフードを被り、別邸に侵入され別邸の二階の窓から緑色に光る光景を目にしました」

「なんだと!ではフィナが!」
王は立ち上がり怒りを露わにした。


「父上!フィナを叱らないで下さい!」
扉を開けて現れたのはルーベルト王子だった。

「ルーベルト!無事だったか」

玉座まで続く赤い絨毯をゆっくり歩き王の前で跪くフィナの手を取った。

「このフィナこそ、魔法で猫になった私を手厚く保護してくれた恩人である!」

「では先程リノラ嬢が話したのは?どうなのだフィナ嬢」

「リノラの嘘にございます」

「違います!私は嘘などついていません!」

「黙れ!フィナは正真正銘、優しく私を保護してくれた。そのような者が猫になる魔法を私に掛けるとは思えぬ!それにレベッカ」

「はい!」

「レベッカは私に鞄を投げつけた」

王の間にいた従者や兵士達は騒ついた。

「いえそれは誤解です。私は猫嫌いで猫を見ると痒くなるのです」

「その猫が私だ!」

「しかし・・・」
レベッカは泣きそうになっていた。

「私は決めた。フィナを婚約者にする!レベッカは婚約候補を破棄!その他の婚約候補者も破棄する。そしてフィナに罪を被せようとしたリノラは国外追放とする」

「えっ!待って下さい!私は本当に見ましたフィナ様があの日別邸で」

「まだ言うか!衛兵、摘み出せ!」

「はっ!」

リノラは衛兵に連れられて王の間を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】野蛮な辺境の令嬢ですので。

❄️冬は つとめて
恋愛
その日は国王主催の舞踏会で、アルテミスは兄のエスコートで会場入りをした。兄が離れたその隙に、とんでもない事が起こるとは彼女は思いもよらなかった。 それは、婚約破棄&女の戦い?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】白い結婚はあなたへの導き

白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。 彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。 何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。 先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。 悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。 運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

逆行転生、断罪され婚約を破棄された落ちこぼれ令嬢は、神の子となり逆行転生したので今度は王太子殿下とは婚約解消して自由に生きたいと思います

みゅー
恋愛
アドリエンヌは魔法が使えず、それを知ったシャウラに魔法学園の卒業式の日に断罪されることになる。しかも、シャウラに嫌がらせをされたと濡れ衣を着せられてしまう。 当然王太子殿下との婚約は破棄となったが気づくと時間を遡り、絶大な力を手に入れていた。 今度こそ人生を楽しむため、自分にまるで興味を持っていない王太子殿下との婚約を穏便に解消し、自由に幸せに生きると決めたアドリエンヌ。 それなのに国の秘密に関わることになり、王太子殿下には監視という名目で付きまとわれるようになる。 だが、そんな日常の中でアドリエンヌは信頼できる仲間たちと国を救うことになる。 そして、その中で王太子殿下との信頼関係を気づいて行き……

誰もがその聖女はニセモノだと気づいたが、これでも本人はうまく騙せているつもり。

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・クズ聖女・ざまぁ系・溺愛系・ハピエン】 グルーバー公爵家のリーアンナは王太子の元婚約者。 「元」というのは、いきなり「聖女」が現れて王太子の婚約者が変更になったからだ。 リーアンナは絶望したけれど、しかしすぐに受け入れた。 気になる男性が現れたので。 そんなリーアンナが慎ましやかな日々を送っていたある日、リーアンナの気になる男性が王宮で刺されてしまう。 命は取り留めたものの、どうやらこの傷害事件には「聖女」が関わっているもよう。 できるだけ「聖女」とは関わりたくなかったリーアンナだったが、刺された彼が心配で居ても立っても居られない。 リーアンナは、これまで隠していた能力を使って事件を明らかにしていく。 しかし、事件に首を突っ込んだリーアンナは、事件解決のために幼馴染の公爵令息にむりやり婚約を結ばされてしまい――? クズ聖女を書きたくて、こんな話になりました(笑) いろいろゆるゆるかとは思いますが、よろしくお願いいたします! 他サイト様にも投稿しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...