無能と判定され追放されたが戦国異世界で最強の侍集団を結成して鬼と魔物を駆逐します 

三毛猫

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決戦編

戦後

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 新浜悟にいはま さとるはカバンを自転車のカゴに入れて家を出る。

茹だる暑さの中、坂の途中にある高校を目指して自転車を漕ぐ。
高校3年の夏。3年間通った学び舎で一番辛かった事は毎日通学で急坂を登る通学だと彼は歯を食いしばり重くなったペダルを恨むように踏み込んだ。


「おはよう悟」

電動自転車でスピードに乗り軽やかに背中まで伸びた髪をなびかせて爽やかに坂を登り悟を抜かして行く女生徒。


「電動自転車はいいよな!」

立ち漕ぎも遂に疲れ果て自転車から降りて歩くと校門に紗夢さくらが待っていた。


「紗夢・・・」

喉が渇き口の中は乾燥し口と舌が引っ付いて言葉に詰まる。

「今日も私の勝ちね!異世界から戻ってから運動不足で体力落ちたよね?」

異世界から元の世界に戻ってから、悟と紗夢は登校時に坂道を登る競争が紗夢との恒例となっていた。

「負けたけど・・・でも次は・・・」

悟に背を向けて紗夢は無言で駐輪場に向かった。

悟は周りを見渡した。
夏休みの真っ只中。学校は部活動か補習をする生徒のみでガランとしている。
駐輪場に自転車を停めて校舎に入ると紗夢の後に続くように廊下を歩いた。


紗夢は「毎日夏期講習辛いよね」と言いながら踵を返す。
バランスの取れた容姿に端正な顔立ちの紗夢は少し赤みがかった艶やかに束ねた髪を二、三左右に揺らしながら顔を近づけて、悟の顔を覗き込む。

悟はドキッとして顔を赤らめ後退りする。
「近いんだよ」

「まだ風花ちゃんのこと忘れられない?」

「魔物が全滅して異世界から何の挨拶も出来ないまま、一瞬で俺達は元の世界に戻ったから。最後に挨拶出来なくて心残りだ」

「そう……」
紗夢は少し俯くと、急に顔を上げた。
そして悟の手を取って走った。

「急にどうした!?夏期講習は?」

「いいから早く!」

紗夢は悟の手を取って校舎内を走って駐輪場の自転車に乗り登ってきた坂を颯爽と下った。
その途中、大翔と学が坂を登ってきた所で紗夢は「大翔と学も付いてきてー」と叫んだ。

訳も分からず大翔と学は自転車を反転させ、登ってきた坂を下る。
街中を走り、紗夢は自転車をある民家の前で止めた。

「なんだよ急に!説明してくれよ……」

民家のチャイムを鳴らす。
玄関の扉を開くと中から鈴香が顔を出した。

「鈴香!なんで?」
大翔は鈴香に詰め寄る。

「誰ですか!?明日香!助けてー」
鈴香は扉を閉めようとした時、奥から双子の妹の明日香が現れた。

「え!なんでぇ!紗夢ちゃんに悟さん達じゃない!」

「明日香の知り合い?」

鈴香の頭は疑問符でいっぱいになった。

「お姉ちゃん。この人達が前に話した異世界で共に戦った人たち。悟さん達、どうぞ中へ。中で説明します」

悟達は明日香の家の中へ入った。

「外は暑かったでしょう。どうして私の家が分かったの?」

「紗夢が突然、走り出して……」

紗夢は口を開いた。
「私の異世界で能力開花した能力覚えてる?弓術開花、言語能力開花、聴覚能力開花、視力向上、絆を繋ぐ者で……絆を繋ぐ者の意味が分からなかったの。異世界から帰ってきて、胸がザワザワとする日が続いて、今日悟と話している時に気付いた。きっとこの胸のざわつきは、悟が想う人の居場所だって……でも少し違ったけど、鈴香ちゃんと明日香ちゃんに再会できた。まだ胸のざわつきは残ってるから、他の人も会えるかな」


「じぁあ紗夢は異世界で戦ってバラバラになった仲間の居場所が分かる人間レーダーってわけか?」

「大翔、言い方に気をつけてよ。私は絆を繋ぐ者よ」

「ごめん。でもよかったよ、鈴香が生きていて」

「それなんだけど……」
明日香は暗い顔になった。

「私の推測だけど魔物を倒して向こうの異世界が無くなって、異世界の歴史と存在自体が消滅して異世界で鈴香が亡くなったことが帳消しになったと思う。代わりに鈴香は異世界と異世界に行く前の記憶がない状態で元の世界に復活したの」

「妹から話は聞いてます。皆様が存在するということは私は本当に異世界に行ってた。それに私は皆様を危険な異世界に誘ってしまった……ごめんなさい」

「謝ることはないよ」

「ええ、友達も増えましたし」
学は笑顔になる。

「そうだな。鈴香には大切なことを教えてもらったしな!」
大翔は得意げに拳で胸を叩いた。

「ホント大翔は鈴香ちゃんに感謝しなさいよ」
紗夢はバシッと大翔の肩を叩いた。
それと同時に全員が笑い和やかな時間が過ぎた。
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