無能と判定され追放されたが戦国異世界で最強の侍集団を結成して鬼と魔物を駆逐します 

三毛猫

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西方編

成長する者

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軍の兵士が宿営する陣屋に着いた3人。
軍の兵士達は先刻の平原で鬼と戦っていた。戦後も緊張感が抜けずピリピリとしている。
そこに女とイチャイチャする男が現れ、兵士達は怒った。

「藤次郎殿!このような者を入れれば軍の風紀は乱れます!」

「違うのだ。悟殿は先程、この女子を助けて、女子が悟殿に惚れて引っ付き虫の様に離れない始末。皆、すまぬ。落ち着いてくれ。我らは先に大崎殿に会ってくる故……」

睨みつけらる視線を感じながら陣屋の広間の奥にいた大崎と顔を合わせた。

「残党を一掃して参りました」

「よく戻ったな藤次郎。小鬼の残党の一掃ご苦労。して、こちらは?」

恰幅の良い初老の男、大崎は悟と風花に目を向けた。

「助けた異世界人の悟殿と村人の風花です」
大崎の顔が明るくなる。
「ほぉ、異世界人か!それで弓や剣は使えるか?」

「全くです。山の中腹にある村の三日月という人の水晶玉を見たら『借りの御霊の器』というのが見えただけで、能力はありません。無能だからという理由で追い出されました」

「三日月の魔道具の能力判定をしたのか。能力が無いといえど、異界人なら能力が開花するはず。その他の能力本当に無いのか?」

「ありません」

「借りの御霊の器……聞いたことがない。まぁ良い。しばらく滞在するとよい。なんせ今日は戦勝の吉事があっての。先の戦で小鬼と鬼の軍を打ち負かした。戦勝祝いの宴が始まる。参加せい」

悟は兄を失い、村を失った風花の前で素直に祝いの宴の席に出れる気持ちにはなれなかった。

「宴には出ません。多くの人が傷ついているのに、喜べません」

藤次郎は大崎の手前、誘いを断ることに焦ったが同時にキッパリと断る悟にまたも感服した。


「そうか。ならば宴の準備の前に兵に頼んで稽古でもつけてもらうがいい」

大崎がいる広間を出る。
外では宴の準備をする者や鍛錬する者、馬の世話をする者など戦後というのに休みなく動いていた。

「悟殿に刀、槍、弓の才があるか見極めてくれ」

「へい!」
頼まれた兵士は悟を連れて兵士が鍛錬する道場に入った。

刀など持ったことがない悟に兵士は、構えから斬り方を教えた。

「重い」
真剣は重く、肩や腕にずしりと重さが伝わる。

しばらく振った後、槍、弓と武器を変えて道場の端で見ていた藤次郎に兵士は結果を伝えた。

「才能は全くないです」

「そうだな」

結果が聞こえた悟は肩を落とした。

「悟殿。稽古をすれば貴殿も強くなる!これからは我らが貴殿を鍛えよう。誰かを守る為に強くなりたいだろう?」

「はい!」

「お兄ちゃん頑張れー」

悟は決意した。
また風花のように傷付いた人が現れないように強くなることを。




 ーー それから1年が経過した ーー


大崎陣屋の道場に威勢の良い声が響いていた。

「いち!に!さん!し!ご!」

素振りをする修練兵の中に悟の姿もあった。
稽古後に藤次郎は悟を呼び出した。

「悟殿は大崎陣屋に来て1年が経過したが、馬術は上手くなったものの、剣の腕は上達しない。それに槍も弓も全く成長が見られない。実戦の経験が乏しいからだと感じるが、実戦で見えるものもある。だから少し遠出して戦を見てみないか?見稽古も鍛錬に繋がる。」

藤次郎の提案に頷いた。
修練兵5人と悟と藤次郎は馬に乗り、大崎陣屋を出て、1年前に戦があった平原を抜け、森を抜けた先の丘に待機した。
丘からは畑と平原が広がる大地が見える。

「今から戦が始まる。左手に見えるのは三好と三日月の軍合わせて500人。右手には小鬼、鬼合わせて300体といったところか。皆流れ矢に注意して戦を見てほしい」

「三日月の軍には友達がいるかもしれません」

「これだけの兵数から友を探すのは至難の技ではあるが、見つかるといいな」

しかし悟は直ぐに友達を見つけた。
布陣する陣の最前線に異様に目立つ原色の赤と青と緑のTシャツの服を着た大翔と紗夢、それに学の姿があった。
きっと戦隊ものが好きな学の提案であのカラーで統一したことを悟は察した。
戦が始まると一目散に3人は最前線に出た。

走りながら短弓を放ち見事に小鬼に的中させる赤色の紗夢。

側転やバク宙と無駄にパフォーマンスを織り交ぜながら槍を振り回して鬼達を倒していく緑色の大翔。

見えないぐらいの速さと瞬発力で背後から暗殺していく青色の学。

3人は群を抜いて強かった。
そして華麗で格好良く戦を楽しんでいるようだった。
それに比べ、1年で武術は上達せず。能力のない悟は3人の姿を見ていて涙が溢れた。




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