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西方編
追放
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悟が林の中に行くと倒れて片腕で体を引きずりながら移動している学の姿があった。
「学!」
「うっぐ。て、手がー!」
学の左手首から先はなかった。
「ぎられだんでずよー」
泣きじゃくる学の体を引き釣り洞穴に戻った。
「悟。学は!?」
鈴香を押さえ付けながら大翔が聞いた。
「左手を切られて出血している」
「大翔、退きなさい!私が止血します」
大翔は退くと鈴香は服を破り、学の手首に破った服を手際良くキツく巻き付けた。
「今から林を抜けて村に行くから皆急いで!」
林を抜けると此処が山の上だと分かった。山から見える平原が広がっていた。
「なんだよ……あれは!」
平原には甲冑を着た兵士の軍団が今まさに対峙する鬼のような魔物に突撃していた。
「説明は後でするから走って。学君の手を斬ったのは、おそらく小鬼。まだ近くに居るかもしれないから走るのよ」
「小鬼ってなんだよ!」
「今は一刻を争う。学君を助けたいなら走って!」
山を駆け下りていくと、林の中に民家が見えた。
民家は茅葺屋根の建物が軒を連ねている。
「何者だ!」
集落の入り口で槍を携えた男が叫ぶ。
「志乃村の鈴香です!」
鈴香は走りながら答えた。
「鈴香!もう戻ってきたのか!?」
「達兄、話は後でするから負傷者がいるのよ。三日月様の所に連れて行く」
鈴香は華奢な体とは不釣り合いなほど体力と力があり、学を背負って村の奥まで走って行った。
先を行く鈴香の後を追う悟達だが達兄は村の前で彼らを止めた。
「おっと。君たちは此処までだ」
「ゲンゴ!治療が終わった後でこいつらを三日月様に会わせる。手筈を整えてくれ」
達兄は叫んだ。
「はいよ!」
和服を着たゲンゴは走って行った。
「兄ちゃん達えれぇ時に来たもんだ。近くで大きな戦おっぱじめやがって、鬼と小鬼が集まってきやがった。鈴香が背負ってた兄ちゃんも逸れた小鬼に斬られたにちげーねぇ」
「言っている事分かるか?」
悟は大翔を見ると大翔も首を傾げている。
「だから、大変な時に来ましたね。近くで大きな戦いがあって、逸れた小鬼に学は斬られたって言ってるのよ」
「何でテストの国語が学年最下位の紗夢が理解してる?大翔は分かったか?」
大翔はずっと首を横に振った。
「なぁ、それより悟、なんだか胸の辺りに違和感ないか?」
「ない…けど」
「扉通ってから、ずっと胸が苦しいような痒いような気がするんだ。それに力が溢れるような感覚。体が軽い感じもある」
「そう。それこそが扉を越えた者が授かる不可思議な力」
村の奥から現れた白装束の中年の女が大翔の疑問に答えた。
「三日月様!」
「友の傷は癒し傷口は塞ぎました。青年は奥で休ませている。安心なさい」
「ありがとうございます!」
3人は深く頭を下げた。
「こちらに」
三日月の案内で村の奥の祭壇に来た3人。
祭壇の真ん中には大きな水晶玉が置いていた。
「ここに手を」
最初に紗夢が手を置いた。
すると水晶玉が光った。
「水晶玉の中に見える文字を読み上げてくださいな」
「えーっと。弓術開花、言語能力開花、聴覚能力開花、視力向上、絆を繋ぐ者と見えました」
「素晴らしいこと。次は貴方」
次に大翔が水晶玉に触れる。
「腕力向上、槍術能力開花、体力向上、弓術開花、真心に気づく者」
三日月は弓を大翔に持たせ、外に出た。
「貴方なら見えるはずよ。あの鳥が。さぁ、引きなさい。あの飛んでいる烏を打ち落としなさい」
弓など扱ってことが大翔だが、自然と体が動き、思いっきり矢を放った。
天高く真っ直ぐ飛んだ矢は烏を射抜いた。
「俺がやったのかよ!」
「素晴らしい能力ですこと。貴方の能力はきっと役立ちます。次は貴方」
悟は水晶玉に触れた。
「俺は……」
「貴方の能力は?」
「借りの御霊の器」
「それから?」
「それだけです」
三日月は先程の穏やかな表情が一変。鬼のような形相になった。
「借りの御霊の器?そんな訳の分からない能力より、武術能力開花とかないの!!鈴香を育て15歳で向こうの世界に送り、連れてきた者が無能な人であっては鈴香の努力も水の泡!貴様は追放よ!無能力の異界人はいらない!追放!」
訳が分からないまま悟は捕らえられ、村人によって引きづられていく。
「待ってくれ!俺達には悟が居ないと」
「そうよ!悟が追放なら、私も行く」
「駄目よ」
三日月が制止した。
「貴方達、能力が開花した者は後で使えるから残ってもらうわ。鈴香が助けた手を斬られた青年は私達が預かっているの。しかも無能な貴方より使える能力だった。もし無能な貴方が出て行かなければ青年の命はないわ」
「卑怯だ!俺たちは、何も知らずに此処に来たんだ!助けてもらったけど、卑怯なやり口で此処に引き釣り込んだのはお前達じゃないか!」
大翔は叫んだ。
「お黙り!能力無しを養い育てるだけの余裕はない!なんなら代わりに大怪我した青年を放り出してやろうか?」
「もういい!大人しく追放されてやるよ!」
「悟……」
「友達をよろしくな、クソババア」
「三日月様に謝れ!三日月様はああ見えて145歳なのだぞ」
「尚更ババアじゃないか!」
悟は村から追放された。一人知らない土地を歩いていく。その後ろから大翔と紗夢の抵抗する声が響いた。
「学!」
「うっぐ。て、手がー!」
学の左手首から先はなかった。
「ぎられだんでずよー」
泣きじゃくる学の体を引き釣り洞穴に戻った。
「悟。学は!?」
鈴香を押さえ付けながら大翔が聞いた。
「左手を切られて出血している」
「大翔、退きなさい!私が止血します」
大翔は退くと鈴香は服を破り、学の手首に破った服を手際良くキツく巻き付けた。
「今から林を抜けて村に行くから皆急いで!」
林を抜けると此処が山の上だと分かった。山から見える平原が広がっていた。
「なんだよ……あれは!」
平原には甲冑を着た兵士の軍団が今まさに対峙する鬼のような魔物に突撃していた。
「説明は後でするから走って。学君の手を斬ったのは、おそらく小鬼。まだ近くに居るかもしれないから走るのよ」
「小鬼ってなんだよ!」
「今は一刻を争う。学君を助けたいなら走って!」
山を駆け下りていくと、林の中に民家が見えた。
民家は茅葺屋根の建物が軒を連ねている。
「何者だ!」
集落の入り口で槍を携えた男が叫ぶ。
「志乃村の鈴香です!」
鈴香は走りながら答えた。
「鈴香!もう戻ってきたのか!?」
「達兄、話は後でするから負傷者がいるのよ。三日月様の所に連れて行く」
鈴香は華奢な体とは不釣り合いなほど体力と力があり、学を背負って村の奥まで走って行った。
先を行く鈴香の後を追う悟達だが達兄は村の前で彼らを止めた。
「おっと。君たちは此処までだ」
「ゲンゴ!治療が終わった後でこいつらを三日月様に会わせる。手筈を整えてくれ」
達兄は叫んだ。
「はいよ!」
和服を着たゲンゴは走って行った。
「兄ちゃん達えれぇ時に来たもんだ。近くで大きな戦おっぱじめやがって、鬼と小鬼が集まってきやがった。鈴香が背負ってた兄ちゃんも逸れた小鬼に斬られたにちげーねぇ」
「言っている事分かるか?」
悟は大翔を見ると大翔も首を傾げている。
「だから、大変な時に来ましたね。近くで大きな戦いがあって、逸れた小鬼に学は斬られたって言ってるのよ」
「何でテストの国語が学年最下位の紗夢が理解してる?大翔は分かったか?」
大翔はずっと首を横に振った。
「なぁ、それより悟、なんだか胸の辺りに違和感ないか?」
「ない…けど」
「扉通ってから、ずっと胸が苦しいような痒いような気がするんだ。それに力が溢れるような感覚。体が軽い感じもある」
「そう。それこそが扉を越えた者が授かる不可思議な力」
村の奥から現れた白装束の中年の女が大翔の疑問に答えた。
「三日月様!」
「友の傷は癒し傷口は塞ぎました。青年は奥で休ませている。安心なさい」
「ありがとうございます!」
3人は深く頭を下げた。
「こちらに」
三日月の案内で村の奥の祭壇に来た3人。
祭壇の真ん中には大きな水晶玉が置いていた。
「ここに手を」
最初に紗夢が手を置いた。
すると水晶玉が光った。
「水晶玉の中に見える文字を読み上げてくださいな」
「えーっと。弓術開花、言語能力開花、聴覚能力開花、視力向上、絆を繋ぐ者と見えました」
「素晴らしいこと。次は貴方」
次に大翔が水晶玉に触れる。
「腕力向上、槍術能力開花、体力向上、弓術開花、真心に気づく者」
三日月は弓を大翔に持たせ、外に出た。
「貴方なら見えるはずよ。あの鳥が。さぁ、引きなさい。あの飛んでいる烏を打ち落としなさい」
弓など扱ってことが大翔だが、自然と体が動き、思いっきり矢を放った。
天高く真っ直ぐ飛んだ矢は烏を射抜いた。
「俺がやったのかよ!」
「素晴らしい能力ですこと。貴方の能力はきっと役立ちます。次は貴方」
悟は水晶玉に触れた。
「俺は……」
「貴方の能力は?」
「借りの御霊の器」
「それから?」
「それだけです」
三日月は先程の穏やかな表情が一変。鬼のような形相になった。
「借りの御霊の器?そんな訳の分からない能力より、武術能力開花とかないの!!鈴香を育て15歳で向こうの世界に送り、連れてきた者が無能な人であっては鈴香の努力も水の泡!貴様は追放よ!無能力の異界人はいらない!追放!」
訳が分からないまま悟は捕らえられ、村人によって引きづられていく。
「待ってくれ!俺達には悟が居ないと」
「そうよ!悟が追放なら、私も行く」
「駄目よ」
三日月が制止した。
「貴方達、能力が開花した者は後で使えるから残ってもらうわ。鈴香が助けた手を斬られた青年は私達が預かっているの。しかも無能な貴方より使える能力だった。もし無能な貴方が出て行かなければ青年の命はないわ」
「卑怯だ!俺たちは、何も知らずに此処に来たんだ!助けてもらったけど、卑怯なやり口で此処に引き釣り込んだのはお前達じゃないか!」
大翔は叫んだ。
「お黙り!能力無しを養い育てるだけの余裕はない!なんなら代わりに大怪我した青年を放り出してやろうか?」
「もういい!大人しく追放されてやるよ!」
「悟……」
「友達をよろしくな、クソババア」
「三日月様に謝れ!三日月様はああ見えて145歳なのだぞ」
「尚更ババアじゃないか!」
悟は村から追放された。一人知らない土地を歩いていく。その後ろから大翔と紗夢の抵抗する声が響いた。
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