異世界住民が住むアパートで一人暮らしを始めました

三毛猫

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やる気になったのは・・・

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 私は貸し切り小型バスに揺られて関西のとある体育館を目指して移動していた。


「休みもジングルと一緒だって最高だよね」

隣に座るウキウキの美智香に対して、不安で返事もできない。

「忙しい中、集まってくれてありがとう。今日は私達、勇者パーティー関東支部の真の実力を見せる時がきた!」

ライリーは最前席から後ろに座る私や美智香、ミニャ、ロン、セリカに聞こえるように話し始めた。

「聞いてくれ!先日、近畿支部リーダーの舞鶴レイカから『第32回、勇者パーティー対抗試合大会』の招待状を貰った。前回は別の関東支部の勇者パーティーが行ったが、今回は私達が選抜された!絶対優勝するぞー!」


美智香
「ねぇ、見て海綺麗!」


「あれは琵琶湖だよ・・・あー!もう試合とか無理。帰りたい・・・」

セリカ
「お兄様、ちょっとその飲み物分けて下さい」

ロン
「ああ」

ミニャ
「話はそこそこにして、お菓子は300円までと決まってましたから、小さなお菓子を沢山買ってきました。ライリーもどうぞ」

ライリー
「お、おう。ありがとう(誰も話を聞いてないな・・・)」


バスに揺られ、会場の体育館に着いた。

体育館に入ると既に他の支部の勇者パーティーが準備運動や談笑をして集まっていた。

「参加人数は総勢121名。各支部のファイター、弓使い、魔法使い、タンク、シーフが選抜され試合を行う。紗倉と美智香は最後の合同集団戦に出てほしい」

「はい!」
「えー。嫌だよ」

美智香はジングルが近くに居れば何でも良かった。私は昔から競うのが苦手で避けてきた方だ。ジングルがいても嫌なことは嫌。


体育館を出て1人入り口の階段で座っているとジングルがやってきた。

「紗倉、大丈夫?顔色悪いけど」

ジングルが心配して私に声をかけてくれた。

「試合が嫌なだけ」

「こんな対抗試合が嫌なのに、戦いばかりの勇者パーティーにどうして入ったの?」

祖母やライリーに騙された。世界の危機だから。ジングルがいたからとは言いづらい。

結局私は「分からない」と答えた。

「そうなんだ。きっと紗倉自身も気付いてない正義感があったんじゃないかな?」

正義感?そんな清らかな動機じゃない。
推しがいたから。推しと一緒のアパートに住みたかったから。ただそれだけ。

「違う」

「そっか。無理しなくていいから、また何でも話してよ。いつでも聞くから」

頭をポンポンされてジングルは去った。

頭をポンポンされて飛び上がるぐらい嬉しかった。自分でも分かるぐらいに顔と耳が熱くなる。
不安や緊張もあってジングルと普通に喋れた。優しいジングル。もしかしてまたミニャの変身魔法?
見渡すと、体育館の観覧席でポリポリお菓子を食べているミニャ。

ミニャの変身じゃない。ジングル本人が優しく気遣ってくれた。

嬉しい。胸の奥から温かい気持ちが溢れてくる。元気が出てきた。


私は美智香がいる2階の観覧席に戻った。

「頑張れる!私、強くなって皆(ジングル)の支えになりたい!」

「どうしたの急にやる気になって」

「色々あったの」

「嬉しそうだね。紗倉、あれを見て」

観覧席からアリーナ中央でファイターが木剣と盾を構えて模擬戦をしていた。

筋骨隆々の戦士(ファイター)が木剣で攻撃する。木剣は盾に当たる。鉄製の盾は木剣の形に凹み、木剣は折れて地面に落ちた。
攻撃を防いだファイターは木剣を相手の肩に当てると、肩が脱臼して戦闘不能になった。

「これ見ても頑張れる?」

私は首を横に振る。

「ずっと試合見て思ったの」

美智香がいつもと感じが違う。目がギラギラしている。

「私も来年この大会出てみたい!」

「嘘でしょ!!」


勇者パーティーに新たな女性ファイターが誕生した瞬間だった。



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