異世界住民が住むアパートで一人暮らしを始めました

三毛猫

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アパートの住人達

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 春から大学生活が始まる。私の名前は九条川 紗倉くじょうがわ さくら、18歳。大学から一駅の高級住宅街近くにある駅からも近い好立地のアパートを祖母が紹介してくれた。祖母は老人ホームに入居する為、私が祖母の部屋をそのまま使う。

都内駅チカで高級住宅街のアパート1K8畳の家賃はなんと4万円。同じような立地だと12万円もするから格安にも程がある。

入居日当時。キャリーケース一つで駅から歩いてアパートを探す。
教えてもらった住所に辿り着くと高層マンションの間にひっそりと二階建てのボロアパートが建っていた。

「嘘でしょ」

祖母から聞いていた話では、とっても綺麗で都会のセレブリティな生活を送れる高級アパートという話だった!

「おばあちゃんに騙されたぁぁ!」

その場に泣き崩れる。
もう入居は決まっている。
外観は昭和初期のモダンなアパート。
外壁は薄茶でザラザラした塗り壁で、階段は鉄骨に白い塗料は剥げて所々錆びていた

とりあえず祖母が住んでいた203号室に入る。中はフローリングに改装され白で統一された壁紙の綺麗な部屋だった。祖母は家具を私の為にそのまま置いていってくれた。少し一安心したのも束の間。

「フゴッ!フゴッ!」

なんの音!?
隣の204号室から奇妙な声が聞こえる。

「フゴッ!フゴッー!」

隣から聞こえる変な声が怖い。でも祖母の話では204号室の方は優しくて特にお世話になった方だと言っていた。
祖母から入居の挨拶は絶対してねと言われていたから入居の挨拶をしなければ。

204号室のチャイムを鳴らす。
ドアが開くと中からムキムキマッチョの上半身裸で赤いマントを羽織った金髪で短髪の髪型をした私好みのイケメンが現れた。


「初めまして、隣に引っ越してきました。九条川です」

「初めまして。私はライリー。ミチエさんのお孫さんですね。ミチエさんから聞いてますよ」

ミチエは私の祖母の名前だ。
白い歯を見せニッコリと笑う姿に少し嫌悪感を抱いた。
顔はタイプだけど私はムキムキマッチョの体型は嫌い。細くてスタイルの良い男性がタイプがいい。

「あのー。先程のフゴフゴという声は?」

「え?あぁ、すみません。声が漏れてましたね。私は勇者をしてましてね。筋トレの気合い入れた声ですよ」

勇者?勇者って何?

頭の中で疑問符がいっぱい浮かんだところで202号室のドアが開いた。ローブに三角帽子を被った緑色の髪をした少女が杖を指揮者のように振りながら出てきた。そして杖の先に浮かぶゴミ袋が2つ。

「あのゴミ袋、浮かんでますよね?」

ムキムキマッチョのライリーに尋ねると

「ハッハッハッ!その通り。彼女は魔法使いのエルフですから」
と笑顔で答えた。

魔法?エルフ?勇者?

「205号室は誰が住んでますか?」

「シーフのロンだ」

「201は!?」

「弓使いのセリカが住んでます」

このアパートって異世界の住人のアパートなの!?混乱して頭がグルグルと回りクラクラする。

「ヒール」

体が白い光に包まれて、なんだか温泉に入った時みたいに温かくて心地よい。クラクラしてたのも一瞬で治った。

「ヒールは、回復魔法。貴女がフラフラしていたから魔法で治した。回復魔法は1秒間に10のダメージを回復する。一般的な人間のHPなら10秒で全回復する」

ゴミ捨てから戻ってきた202号室のエルフの少女がぶつぶつ独り言のように喋っていた。

「ありがとーう!」

ヒールのおかげで移動とアパートの住人の衝撃的な出会いの疲れも吹き飛び、感激してエルフの少女の手を握り締めて喜んだ。

「いえ。私は当然のことをしたまでです」

エルフの少女は顔が赤くなって三角帽子のツバを引き下げて顔を覆った。横に突き出た長い耳も真っ赤になって照れていた。

「私は203号室に今日から入居する九条川。よろしくね」

「私はエルフ族のミニャ」

なんか可愛い。姿も存在も名前も可愛い。
妹のようだ。

「エルフ族は長生きだから1000年は生きる者もいます。私はまだ124歳」

前言撤回!祖母よりも年上!

ここで住人を覚える為にノートに書いた。


201、セリカ(弓使い)
202、ミニャ(魔法使い)
203、九条川紗倉
204、ライリー(勇者)
205、ロン(シーフ)

一階の住人は?
せめて真下の人には挨拶しよう。

「一階は誰が住んでいますか?」

ライリーの顔が一瞬曇った。

「あ、いや、一階は全てダンジョンになってしまった。分かりやすく説明すると一階より下は地下迷宮で魔物が出るんだ」

魔物が出るアパート!聞けば聞くほど格安な理由が出てくる。

「安心してほしい。僕ら勇者パーティーで地下三階層までの魔物は倒したから地上に魔物は出ないよ。ちなみにミチエさんも僕ら勇者パーティーの1人だった」

「おばあちゃんが?」

「そう。ミチエさんはタンクで前衛で活躍していたんだよ」

「おばあちゃん、すごすぎ!!」

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