異世界隠密冒険記

リュース

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第三部「全能神座争奪戦」編

クロト VS 『蒼炎神』サヴァイブ 1

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 クロトの踏み込みにより戦闘が開始された。


「ちっ、ミュースっ!援護しやがれっ!!」

「っ、はっ!」


 サヴァイブという男はプライドが高い。
 そうそう他人の力など借りないし、借りる必要もないことが大半だ。

 だが、そんな男が躊躇いなく援護を要求した。
 これは異常なことで、命令を受けたミュースでさえ一瞬戸惑ったくらいだ。

 それも偏に、目の前のクロトを脅威だと直感的に理解したからだ。
 やはり、下衆ではあれど愚者ではなかったようだ。
 判断力はサラディンやソルブらと比較にならない程に高い。


「サヴァイブ様っ!『剣舞・流ノ盾』!」

「―――『神天龍十字閃・極星』!」

「っ、きゃあああっ!?」


 サヴァイブとクロトの間に割って入ったミュースが全神経を注いだ受け流しを敢行するも、ほんの僅かに攻撃を逸らしただけで失敗。
 衝撃をもろに受けることになり、アクアが横になっているベッドの上を通り抜け、その先にある壁に激突した。


「『神拳・蒼炎拳撃』っ!!」

「くっ・・・『神翼・神毒の守護者サマエライズ・ガーディアン』っ、ぐっ・・・!」

「クロトさんっ!!」


 上手く攻撃を回避したサヴァイブからのカウンターに対して、手持ちの防御技の中で最大威力を誇る『神毒の守護者』を急展開したが、その防御は破壊された。
 その上で蒼い焔を纏った拳がクロトに迫り、命中。
 威力の大部分が殺されていたためにダメージは些細な量で済んだが、もしガードが間に合っていなければ今の一撃で決着していただろう。

 レベルが上がればそれだけ打たれ強くはなる。
 HPの上昇もさることながら、防御力も上昇するのだから当然だ。

 だがそれ以上に、異常なほどに攻撃の火力が上がっていく。
 それは、防御面の向上が全くついて行けない程に。

 つまるところ、このクラスかつ人間同士の戦いでは、大技を一撃でもまともに喰らったらそれだけでも勝負が決まりかねない。
 仮に神格を持っていても、それは同じだ。

 クロトは血を吐きながらも受けた拳を掴み――――


「―――『天神法術・雷走流域サンダー・フロー』っ!!」

「なっ、ぐあああああああああああっ!!!」


 拳から超高電圧による雷を流され、両者ともダメージを負う。
 並の人間であれば今の電流で気絶してしかるべきだが、この場に居る二人は違う。

 体中を痛めながらも、次の行動に出た。


「―――『神拳・蒼炎乱撃』ぃぃぃっ!!」

「―――『神天龍十六夜連閃・三極』っ!!」


 サヴァイブはユニークスキル〖蒼炎乱舞〗による<蒼炎加速フレアアクセル>を。
 クロトはユニークスキル〖神の瞳〗による<神瞳加速ゴッドアイ・アクセラレーション>を。

 各々が多大なリスクを負って、相手の息を止めんと大技を繰り出した。

 剣と拳がぶつかり合い、蒼炎が舞い、黒と白が入り乱れる。
 衝突の余波で部屋はボロボロになり、もはや原形が分からないようになっている。

 力と力のぶつかり合いは、ほんの一瞬かつ、尋常でなく長い間続いた。
 当人たちからすればとても長い時間でも、傍から見れば一瞬ということだ。

 最後の一撃でお互いの思惑が合致し、互いを吹き飛ばし合った。
 終了後に隙を晒したまま止まることを両者共に嫌ったのだ。

 十メートル程距離を置いて、膝を着く二人。



<レアスキル〈黒魔法8〉が〈黒魔法9〉になりました>



「ちっ、これでも駄目とはなっ・・・! 体中が痛ぇじゃねぇかっ!!」

「知ったことではないね。それに、貴様がアクアに与えた痛み程ではないだろうに」

「アアッ!? 俺がやりたいようにやることの何が悪いっ!! 俺はテメェみたいな、ただそこに居るだけで女が寄ってくるような奴が一番嫌いなんだよっ!!」


 怒りを露わにして叫ぶサヴァイブ。


「『神拳・蒼炎重撃』っ!」

「『流星神天龍・零式』っ!」


 お互いの中央で幾多もの蒼炎と天剣が衝突し、火花を散らした。
 
 ここまでの戦いではクロトが不利。
 負ったダメージ量もさることながら、HPが元より半減していたのが痛い。
 能力値とスキルで互角でも、状況がサヴァイブに有利過ぎた。

 クロトはまだ<隠密>を使用していないが、ここまで己を誇示してしまった以上、効き目は無いも同然だと判断して使おうとはしていない。

 他に状況を打開できる手段も、思いついていない。
 根本的にレベル差があり過ぎて、己の手札では有効な戦術を組み立てられないのだ。

 つまり、このまま戦いが進めばクロトの負けは必至。


「動くなっ! この女がどうなってもいいのかっ!」


 そして、状況は更に悪くなる。

 クロトが目にしたのは、アクアに剣を突き付ける満身創痍のミュースであった。

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