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第三部「全能神座争奪戦」編
ラファエルの忠誠 ―アクア視点―
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クロトとシロナが激戦を繰り広げていた頃、サヴァイブの私室でも争いが繰り広げられていた。
それは、結界を破壊せんとす男と、結界を維持しようとする女性の争い。
すなわち、サヴァイブ VS ラファエル(クラリエル)の戦いであった。
時は二十四時間前に遡る。
▽▽▽
アクア視点
「さて、いつまでもつか。できるだけもたせて俺を楽しませてくれよ、なっ!」
「いやあああっ!!」
サヴァイブという男が、鎖に繋がれて身動きが取れない私の胸を揉みしだき、のしかかってきました。
私は悲鳴を上げて、固く目を瞑って耐えるしかありませんでした。
このままこの男にいいように弄ばれてしまうことを想像し、胸を好き放題されている状況への嫌悪感も合わさり、堪えきれない涙が溢れ始めました。
こんな下衆な男に辱められ、恐怖し、泣かされていることが屈辱的で。
これから行われることに対して、女としての本能が警鐘を鳴らしていて。
それがまた、何故かクロトさんへの裏切りをしているような気にさせられて。
気色の悪い笑みを浮かべて私の体に手を這わせている男に対する恐怖から、私はもう二度としないと決めた、クロトさんに頼るという行為をしました。
クロトさんに相応しい女になると決めて、二度と頼らないと決意したのに。
供に歩けるようになる為に、愛しの人と同じくらい強くなると覚悟したのに。
ようやく背中が見えて、もう少しで手が届くと思っていたのに。
私はっ、どれだけ思い上がっていたのでしょうかっ・・・!!
こんな風に男に蹂躙されそうになっているだけで、みっともなく涙して。
強くなったつもりになって浮かれて、油断して。挙句の果てには圧倒的力を前にして、私はこうして男から、何も抵抗出来ずにいつでも犯せる状態で嬲られている。
私は結局っ、クロトさんに助けられた日から何も変わっていなかった・・・!!
ゴブリンに負けて連れ去られ、情けなく泣き叫んでいたあの日から、何もっ!!
ずっとずっと私はっ・・・!!
今のように弱いままだったっ・・・!!
こんな弱い私をクロトさんに見せるくらいなら、いっそこの男に――――
「―――『永遠の誓域』っ!!」
「なっ、グアアアアアアッ!?」
より固く目を瞑り、そう思いかけた時、聞き覚えのある女性の声と、下衆男サヴァイブの悲痛な悲鳴が聞こえてきました。
「アクア様っ、お気を確かにっ!! 奴の術中に嵌まってはなりませんっ!!」
「っ、ラファエル・・・?」
目を開いた私の傍らに居たのは、私の召喚獣であるラファエル。
いえ、髪色が白金色になっているのでクラリエル、でしょうか。
でも、クラリエルにしては髪色が青みがかり過ぎているように見えます。
もしかしたら、クラリスさんが主導権を渡しているのかもしれません。
「術中、とは・・・?」
「あの男からアクア様に精神波が放たれていましたっ! 何らかのユニーク級スキルだと思われますっ!」
「精神波・・・・・っ!?」
私が己の異常に気付いたのは突然のことでした。
私はっ、どうしてあのようなことを考えていたのでしょうか・・・!!
あんなっ、この下衆な男に身を委ねるような考えをっ!!
その考えに至ったところで、先程の破滅的な思考は霧散していきました。
私の心が弱ったところにつけこまれていたようです。
あんなこと、クロトさんが望むはずがありませんっ!!
「ちっ、何だこの結界はっ!? この俺が、痛みだとっ!?」
「ッッ・・・!!」
傷を負ったサヴァイブに睨まれ、私の体は恐怖で硬直してしまいました。
心では抵抗しようとしているのに、体が言うことを聞きません・・・!
このままでは、先程の二の舞ですっ・・・!
「―――大丈夫です、アクア様。必ずあのお方は駆けつけてくださいます。そしてそれまでは、この私がアクア様をお守りいたします・・・この命に、代えても。」
「っ、ラファエルっ!? あなたっ、HPの最大値がっ!?」
私と魂で繋がっている召喚獣であるがゆえに、ラファエルの生命力がジリジリと減っていることが分かってしまいました。
減りはそこまで速くありません。
でもっ、このままでは約一日で生命力が尽きてしまうっ!
「ラファエルっ、やめてっ!! このままでは貴方がっ!!」
「アァ?この結界はコイツが張ってやがるのか? ・・・生意気なんだよっ!!」
「うあああああっ!?」
「ラファエルっ!?」
サヴァイブが私とラファエルを守る結界を殴りつけました。
その蒼い炎を纏った拳一発に、凄まじいエネルギーを感じます。
サヴァイブの一撃で結界は大きく軋み、ラファエルが苦悶の声を。
「おらあっ!!」
「うぐぅっ・・・!!」
「『神拳・蒼炎蹴撃』っ!」
「っ、うああああああっ!!」
男の攻撃で、ラファエルの生命力がっ・・・!
私は・・・私は何をしているのですかっ!?
眷属である彼女が命を張って私を守護しているというのにっ!!
どうして私はっ、恐怖に震えて縮こまっているのですかっ!!
「もう諦めたらどうだ? 『蒼炎神』である俺の攻撃を防ぐ手腕は褒めてやるが、無駄なあがきだぜ?」
「お断りいたしますっ・・・! 私は、アクア様を守護する者っ!! ここだけはっ、誰にも譲れない一線なのですっ!!」
ラファエルっ・・・!
あなたは、どうしてそこまで・・・!
「ようやく・・・ようやく巡り会えた、主様なのです。この忠誠は、たとえ神が相手でもっ、壊させませんっ!!」
ラファエルの宣言を聞かされた私は、不思議と恐怖が消えていきました。
それは、結界を破壊せんとす男と、結界を維持しようとする女性の争い。
すなわち、サヴァイブ VS ラファエル(クラリエル)の戦いであった。
時は二十四時間前に遡る。
▽▽▽
アクア視点
「さて、いつまでもつか。できるだけもたせて俺を楽しませてくれよ、なっ!」
「いやあああっ!!」
サヴァイブという男が、鎖に繋がれて身動きが取れない私の胸を揉みしだき、のしかかってきました。
私は悲鳴を上げて、固く目を瞑って耐えるしかありませんでした。
このままこの男にいいように弄ばれてしまうことを想像し、胸を好き放題されている状況への嫌悪感も合わさり、堪えきれない涙が溢れ始めました。
こんな下衆な男に辱められ、恐怖し、泣かされていることが屈辱的で。
これから行われることに対して、女としての本能が警鐘を鳴らしていて。
それがまた、何故かクロトさんへの裏切りをしているような気にさせられて。
気色の悪い笑みを浮かべて私の体に手を這わせている男に対する恐怖から、私はもう二度としないと決めた、クロトさんに頼るという行為をしました。
クロトさんに相応しい女になると決めて、二度と頼らないと決意したのに。
供に歩けるようになる為に、愛しの人と同じくらい強くなると覚悟したのに。
ようやく背中が見えて、もう少しで手が届くと思っていたのに。
私はっ、どれだけ思い上がっていたのでしょうかっ・・・!!
こんな風に男に蹂躙されそうになっているだけで、みっともなく涙して。
強くなったつもりになって浮かれて、油断して。挙句の果てには圧倒的力を前にして、私はこうして男から、何も抵抗出来ずにいつでも犯せる状態で嬲られている。
私は結局っ、クロトさんに助けられた日から何も変わっていなかった・・・!!
ゴブリンに負けて連れ去られ、情けなく泣き叫んでいたあの日から、何もっ!!
ずっとずっと私はっ・・・!!
今のように弱いままだったっ・・・!!
こんな弱い私をクロトさんに見せるくらいなら、いっそこの男に――――
「―――『永遠の誓域』っ!!」
「なっ、グアアアアアアッ!?」
より固く目を瞑り、そう思いかけた時、聞き覚えのある女性の声と、下衆男サヴァイブの悲痛な悲鳴が聞こえてきました。
「アクア様っ、お気を確かにっ!! 奴の術中に嵌まってはなりませんっ!!」
「っ、ラファエル・・・?」
目を開いた私の傍らに居たのは、私の召喚獣であるラファエル。
いえ、髪色が白金色になっているのでクラリエル、でしょうか。
でも、クラリエルにしては髪色が青みがかり過ぎているように見えます。
もしかしたら、クラリスさんが主導権を渡しているのかもしれません。
「術中、とは・・・?」
「あの男からアクア様に精神波が放たれていましたっ! 何らかのユニーク級スキルだと思われますっ!」
「精神波・・・・・っ!?」
私が己の異常に気付いたのは突然のことでした。
私はっ、どうしてあのようなことを考えていたのでしょうか・・・!!
あんなっ、この下衆な男に身を委ねるような考えをっ!!
その考えに至ったところで、先程の破滅的な思考は霧散していきました。
私の心が弱ったところにつけこまれていたようです。
あんなこと、クロトさんが望むはずがありませんっ!!
「ちっ、何だこの結界はっ!? この俺が、痛みだとっ!?」
「ッッ・・・!!」
傷を負ったサヴァイブに睨まれ、私の体は恐怖で硬直してしまいました。
心では抵抗しようとしているのに、体が言うことを聞きません・・・!
このままでは、先程の二の舞ですっ・・・!
「―――大丈夫です、アクア様。必ずあのお方は駆けつけてくださいます。そしてそれまでは、この私がアクア様をお守りいたします・・・この命に、代えても。」
「っ、ラファエルっ!? あなたっ、HPの最大値がっ!?」
私と魂で繋がっている召喚獣であるがゆえに、ラファエルの生命力がジリジリと減っていることが分かってしまいました。
減りはそこまで速くありません。
でもっ、このままでは約一日で生命力が尽きてしまうっ!
「ラファエルっ、やめてっ!! このままでは貴方がっ!!」
「アァ?この結界はコイツが張ってやがるのか? ・・・生意気なんだよっ!!」
「うあああああっ!?」
「ラファエルっ!?」
サヴァイブが私とラファエルを守る結界を殴りつけました。
その蒼い炎を纏った拳一発に、凄まじいエネルギーを感じます。
サヴァイブの一撃で結界は大きく軋み、ラファエルが苦悶の声を。
「おらあっ!!」
「うぐぅっ・・・!!」
「『神拳・蒼炎蹴撃』っ!」
「っ、うああああああっ!!」
男の攻撃で、ラファエルの生命力がっ・・・!
私は・・・私は何をしているのですかっ!?
眷属である彼女が命を張って私を守護しているというのにっ!!
どうして私はっ、恐怖に震えて縮こまっているのですかっ!!
「もう諦めたらどうだ? 『蒼炎神』である俺の攻撃を防ぐ手腕は褒めてやるが、無駄なあがきだぜ?」
「お断りいたしますっ・・・! 私は、アクア様を守護する者っ!! ここだけはっ、誰にも譲れない一線なのですっ!!」
ラファエルっ・・・!
あなたは、どうしてそこまで・・・!
「ようやく・・・ようやく巡り会えた、主様なのです。この忠誠は、たとえ神が相手でもっ、壊させませんっ!!」
ラファエルの宣言を聞かされた私は、不思議と恐怖が消えていきました。
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