異世界隠密冒険記

リュース

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第三部「全能神座争奪戦」編

VS《蒼玉の武装団》序列六位&八位 サラディン&ソルブ 2

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 サラディンの奥義に対し、ユニークスキル〖神の瞳〗を使用したクロト。
 その一翼たる<太陽の権能>により一瞬だけ加速し、敵の刺突を見切る。

 心臓を狙っていた槍の軌道を体からギリギリで外し、カウンターの一撃を放つ。


「―――『創世十字閃・神断』っ!」


 一瞬の加速が終了した直後、サラディンは縦に真っ二つになり、その屍を晒した。


(反動は・・・一瞬の加速だったおかげで少ない。いや、僕自身のレベルがあがって許容量自体が増えているのかもしれないけど。)


 ほんの数瞬だけ動きを止めたクロトだったが、直ぐに戦闘へ復帰。
 隙ではあったが、ソルブはつんのめっていたために追撃できなかった。

 クロトはそこまで考えて加速を選択し、普段なら許容できないリスクを負いつつも敵の頭数を減らしにかかったのだ。


<個体『クロト・ミカゲ』が『レベル129』から『レベル131』になりました>


 クロトにレベルアップのシステムアナウンスが流れ、サラディンの死亡を確認。
 その意識をソルブの方に向ける。


「テメェ、一体何なんだっ! たかがレベル129のくせにっ、何故そこまで強いっ!? こいつは気に食わねぇ野郎だったが、それでも俺より強かったんだぞ!?」

「別に何者でもないし、何者でもいい。ただ純粋に、僕が君たちより強かっただけだよ。加えて言うならば、くだらない問答をするつもりもない。」


 ソルブの問いへ適当に答えながらも、詰めの手を打っていたクロト。
 敵の背後にあった崩れた壁の残骸、その中に隠していた天剣を背後から投擲。


「『流星神天龍・壱式』!」

「馬鹿なっ!?」


 一体いつの間に、といった表情をしつつも、ギリギリ回避に成功。
 天神法術を纏った天剣はソルブの首を一部切り裂いただけで終わった。

 そして、そこまでが二人と直接戦ってクロトが予測していた領域だった。


「面白味の欠片も無いけど、急いでいる今は有り難いね。」

「このっ、化け物っ、があああああっ!!」


 一瞬の隙を突いた、ここぞというタイミングで『隠密神』を発動し、ソルブの認識から外れることに成功。間を置かずにその首を大きく切り裂き、勝負あり。

 虫の息となったソルブへ剣を向け、最後に一言。


「たとえ化け物でも、そんな僕を慕ってくれる女性が居る。だからこそ、絶対に助けたいと思うんじゃないかな。君にはどうでも良い話かもしれないけどね。」


 言い終わると同時に首を刈り、ソルブを完全に絶命させた。


<個体『クロト・ミカゲ』が『レベル131』から『レベル132』になりました>
<レアスキル〈黒魔法1〉が〈黒魔法2〉になりました>


 再びレベルが上がり、地味に活躍していた〈黒魔法〉スキルも上昇。
 この〈黒魔法〉は隠密系効果と相性が良く、『隠密神』の効果に重ね掛けすることで隠密度合いに幅を持たせることが可能になったのだ。

 人間、一度無いと思ってしまうと、その考えが固定されてしまう。
 クロトの『隠密神』を自力で見破ったわけではないが故に、〈黒魔法〉の隠蔽と精神誘導を破れず、そこになにもないと思い込んでしまった。
 ソルブが天剣が隠されていることを見破れなかったのは、これが原因だ。

 黒魔法は精神にはたらきかける魔法なので、そういったことも可能なのである。

 すなわち、隠密を見破られる前から、この幕引きをある程度決めていたということになる。途中で何点か修正は入れたが、おおもとの計画は狂っていない。

 最短時間で二人を倒す最適解が、これだったのだ。

 なんの感慨も無く死体と大鎚、槍を回収し、クロトは再び駆けだした。


 結界効果終了まで、残り十分。



 〇〇〇



 クロトがサラディンとソルブを殺したころ、全部隊を殲滅したシロナはとある男たちと戦っていた。


「仕事から帰ってきたと思えば壊滅状態とは!覚悟はできているだろうなっ!」

「デンダ―っ!突出するなっ!死にたいのかっ!」

「っ!?」


 危ういところでシロナの剣閃を回避し、冷や汗を掻くデンダ―。


「あーあ、もう少しで殺せたのにっ」

「・・・貴様が強いということは知っていたが、まさかここまでとはなっ!!」

「褒めても何も出ないよ? 序列五位の・・・ローランド、だっけ?」


 シロナがローランドと呼んだ男は、序列五位とサラディンより一つ上の序列。
 そのローランドがデンダ―と呼んだ男は序列十位。
 デンダ―とローランドはコンビを組んで任務を遂行し、いま帰還したところだ。

 まさか、既に壊滅状態だとは思いもせずに。

 ローランドは既に満身創痍で、デンダ―も同じく。
 二人は僅か数分の攻防でこの状態に追い込まれた。


「連絡を入れたダインとベルクはじきに戻ってくる! それまで粘れっ!」

「くっ、この俺がこんな女相手に時間稼ぎとは・・・クソッ!!」


 二人は当初、自分たちだけで片をつけるつもりだったが、思いの外シロナが強かったせいで防戦一方。近くで防衛任務についていた二人をデンダ―のユニークスキルによる連絡で呼び寄せることになった。
 序列三位のダインと九位のベルクである。

 なお、序列二位の男は遠くまで出向いているので、連絡は諦めたようだ。


「あははははっ! 気合を入れたところ悪いけど・・・もう終わってるよ?」

「・・・は?」


 間抜けな声を上げたローランドは、次の瞬間にはシロナに切り裂かれ、絶命していた。その光景に呆然としてしまったデンダ―も後を追うことに。

 それは、現在の勝利を捨てることで未来の勝利を得る、シロナの奥義。


「始祖烈剣術・導―――『白導の前日譚ファタル・エピソード』。悪いね。 実を言うと君たちの運命は、もう五分も前に決まっていたことなんだよね。」

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