異世界隠密冒険記

リュース

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第三部「全能神座争奪戦」編

ユニークスキル「永遠の誓い」

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 ラファエルが持つユニークスキル〖永遠の誓い〗は、主への忠誠心が消えない限りにおいて、全能力値を強化する効果がある。
 そして、このスキルには裏効果があり、それはクロトとラファエル本人のみが知っていることだ。アクアには訳あって知らされていない。

 裏効果の発動条件は、主人であるアクア(ないしクロト)が窮地に陥り、心の底からクロト(ないしアクア)の助けを求めること。
 肝心の効果は・・・クロトとアクアを繋ぐラファエルを基点にして、助けを求めた者の周囲に結界を生成するというものだ。

 この結界はありとあらゆるユニークレベルの効果に優先する強力過ぎる結界。
 発動している間は、ありとあらゆる敵を跳ね除け、発動者が脅威とみなした存在が近づくことを一切認めない。
 近づこうとすれば、超越者であろうとただでは済まないダメージを負う。

 つまり、神クラスが直々に攻撃をしてこない分には、その安全が保障される。
 仮に神が相手でも、しばらくはもたせることが可能だ。

 しかし、効果が強力な分、代償も大きい。

 まず、効果自体が二十四時間しか続かないこと。
 次に、一度使ったら当分の間使えなくなること。

 そして最後に、ラファエルと助けを求められた側の両者、そのHPが徐々に減少していくこと。

 HP最大値か削れるということは、存在そのものが削られているのと同義。
 痛いなどというものではないし、身動きすら取れない激痛になるはずだ。

 今回の場合、アクアが窮地に陥り、心の底からクロトの助けを求めた。
 それにより結界が生成され、クロトとラファエルのHP最大値が削れ始めているというのが現状である。

 アクアがこの効果を知らされていなかったのは、クロトがアクアには必要ないと判断した為だ。いたずらに知らせれば、彼女の成長を阻むことになりかねない故に。
 彼女は、クロトの力を借りることを良しとせず、自分の力で解決しようと努力する女性なのだから。

 しかし今回、そんな彼女がクロトの助けを求めた。
 これを緊急事態と言わずして何というのか。


(場所は・・・<青の領域>か。あまり猶予は無いね・・・っ!?)


 クロトが僅かに焦燥を浮かべたところで、唐突にシロナに抱きしめられた。
 その温もりは、いつになく安らげるものに感じられて、為されるがままになる。


「合理的かつ理性的。いつものクロトらしく冷静に、ね? 大丈夫。私がついてるから、最悪の事態には絶対にならない。そんな運命は、死んでも私が認めない」


 シロナはいつになく真剣に、それでいて温かく、そのように告げた。
 根拠のないなぐさめではなく、確かな自信に基づいた確信のある宣言だった。

 クロトはその焦燥を極限まで薄れさせることに成功。
 本能的にシロナを抱き締め返した。


「・・・ありがとう、シロナ。なんか、再会してからこんなことばかりだね。」

「お互い様だから気にしないのっ!今はクロトにとって不利な状況が続いているから私が引っ張ることが多いだけ!いつだって私たちは、二人三脚だったでしょっ!」


 シロナはクロトに引っ張ってもらった経験を思い出しながら、気にする必要はないのだと断言した。
 二人はいつもそうだったのだから、と。


(寧ろ、私が引っ張ってもらうことの方が多かったんだから、こっちでは先輩の私が引っ張って当たり前! というか、もしかしてこのために転生したのかもっ!?)


 シロナは、運が良い自分が死んでしまった理由にようやく思い至った。
 全ては、数年先の未来に異世界へ飛ばされるクロトと再会し、危機に瀕した彼の者を助ける先導者となるために。

 きっとそれは、クロトを想う無意識の願いが叶った形になるのだろう。
 人はそういう事象を、奇跡と呼ぶのだ。

 バラバラに逸れ、未知の危険な世界へ気絶した状態で放り出され、それでも全員が無事に再会できる可能性など、限りなくゼロに近い。
 もしそれが叶ったなら、それは奇跡としか言いようがない。

 然らばシロナは、そんな事象を引き寄せる奇跡の体現者とでもいったところか。


(私って、本当にクロトが好きなんだなぁ・・・。自分が死んでまで、クロトに不幸になってほしくなかったなんてさ・・・。きっとこれが最善の結果、だよねっ!)


 死に別れる辛さは、転生して再会することで帳消し。
 その上でクロトの手助けをしつつ、その幸せを叶える。

 確かに、これ以上ない最善の結果だったと思われる。

 落ち着いたクロトは抱き合うのをやめて、シロナに尋ねる。


「シロナ、ここから<青>地区北区画まで二十四時間で辿り着くかな?」

「うーん・・・急げば、ギリギリ間に合・・・わないかも?」


 シロナは難しい顔をしながら自分の経験に合わせて推測。
 結果として、ギリギリ間に合うが、助けるまでは間に合わないと判断した。

 なお、クロトが焦っていた理由については既に把握済みである。


「間に合わない、か・・・。なら、全力で走りながら手を考えよう。行くよ?」

「そうしようっ!」


 そうして二人は、全速力で<紫>地区を駆け抜け始めたのだった。

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