異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
583 / 600
第三部「全能神座争奪戦」編

鑑定解析と<伝説級>

しおりを挟む
 クロトはシロナの所業にため息を吐きながら、小瓶を手に持って鑑定。


「ランクは<希少級レア>で、名前は<状態異常回復薬>。効果は文字通りの内容だから説明は要らないよね?部位欠損も回復できるらしいよ。」


 こちらはそれほど珍しくないアイテムで、命の水と似たような効果だ。
 エアリスは同じアイテムの心当たりがあったようで、少しだけ反応していた。

 続いて鑑定するのは、黒いブーツ。


「ランクは<希少級レア>で、銘は<闇無効の靴>だってさ。闇魔法を無効化してくれるみたいだけど、その上位属性には効果が無いから注意が必要、と。」

「・・・黒いブーツか。アヤカに似合いそうではあるな。」

「えっ、私? 私はあんなお洒落なブーツ、似合わないと思うけど・・・。」

「そんなことはない。アヤカはいつだって綺麗だからな。」

「ちょっ、そういうことは時と場所を考えて言ってよねっ・・・!?」


 説明が終わるなり、いきなりイチャつきだしたアヤカとアッシュ。
 クロトとシロナのことを責められないくらいに唐突な始まりだった。

 なお、アヤカは本人が言うほどブーツが似合わない訳ではない。
 和洋折衷である装備品たちの組み合わせから、そこはかとない気品が漂っている。

 クロトは二人を無視して、灰色のマントを鑑定。


「ランクは<希少級レア>で、名前は<幻灰狼の外套>で、僅かではあるけど速力上昇効果が付与されているみたいだね。」

「クロト、僅かというと、具体的にはどのくらいなのですか?」


 アンジェリカの率直な疑問が投げかけられた。
 変異深紅鬼に追われるという苦い経験をしたばかりなので気になるようだ。

 問われたクロトは、その部分について詳細まで解析を開始。
 細かい強化率を突き止めた。


「大体ではあるけど、ニ十パーセント、ってところかな?」

「ニ十パーセント・・・どこも僅かという表現が似合わない強化率ですね。」

「そう、かな・・・?」


 クロトとしては、<星天装>での強化率に慣れているせいか、それほど高い効果だとは思わなかったらしい。
 他に、<キャンサーの甲羅>やら<タウラスの角>やら、一部頭がおかしい効果ではあったが強化率百パーセントというアイテムを目にしていたのも原因だ。

 それらのアーティファクトは<固有級>であるので、本当は<幻灰狼の外套>の二十パーセントでもかなりの強化率なのだが。

 つまり、<希少級>としては当たりの部類であるアーティファクトである。


「次は、この首飾り。名前は<幻灰狼の誇り>で、ランクは<希少級レア>。特殊効果は、狼系魔物への与ダメージ1.5倍で他の装備効果と重複可能、と。」

「狼系かぁ・・・。この辺りではあまり見ないけど、<緑の領域>で群れているエメラルドウルフを相手にする時は重宝しそうだね。」


 シロナは何か嫌な思い出でもあるのか、少しだけ顔を引き攣らせながら、過去のことを懐かしむように具体的な例を挙げた。
 クロトは彼女の考えを凡そ察したが、あえて突っ込むことはしない。

 それから二つのアイテムを鑑定したが、どちらも<一般級コモン>だったので、クロトは軽く説明しただけで終わらせた。

 そして、最後に残った十個目のアイテムを鑑定。


「この白い手袋は・・・・・・へぇ、なるほどね。これは中々・・・。」

「・・・ちょっと。自分だけで納得してないで説明をしてほしいんだけど?」

「っと、失礼。ちょっと興味深かったものでね。
 この手袋の名前は<白鬼狼の手袋シャインウルブズ・オーグローブ>で、ランクは・・・<伝説級レジェンダリー>だよ。」

「「「「<伝説級レジェンダリー>っ!?」」」」


 クロトの鑑定結果に、驚きの声が上がった。
 普通は<伝説級>など、そうお目に掛かれるものではないので、驚いて当然だ。
 まだこちら側では新米の部類である四人は、手袋に目が釘付けだ。

 もっとも、クロトとシロナの二人は、それなりに<伝説級>のアイテムを持っているのだが。アヤカに渡した<神器・虎徹>が正にそれである。


「・・・さ、鑑定も終わったし、一度キャンプ地に戻ろうか。」

「ちょ、もう少し見せてっ!だって<伝説級>なのよっ!?」

「それを言うなら、アヤカの刀も<伝説級>だけど?」

「・・・それもそうね。一度戻りましょう。」


 クロトに言い包められたアヤカは、諦めて収納されるのを眺めていたのだった。


 なお、ここだけの話。
 本来<伝説級>が銅色の魔箱から出る可能性は限りなくゼロに近い。

 そんなアイテムが出た理由は・・・勿論シロナのせい。否、シロナのおかげだ。
 この日はあまり発動していなかった、ユニークスキル〖神運〗が、魔箱を開けるタイミングで自動発動した結果である。

 日本に居る一部の者たちは、この神運がほしくて堪らないだろう、多分。

 ガチャというものを好んで回す者たちならば、特に。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国

てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』  女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。