異世界隠密冒険記

リュース

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第三部「全能神座争奪戦」編

魔物討伐完了

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 アッシュたち四人は、五体の<幻灰狼ファンタズマ・ウルフ>を任された。

 指示を出すのはアヤカ。
 その作戦は、アッシュが五体の狼を引きつけ、アヤカ自身はアッシュのサポートをしつつ後衛を狙って抜けてくる狼の牽制と迎撃を行うというものだ。
 そして、後衛二人が魔法で削っていく、と。

 作戦は上手くはまり、当初は余裕こそ殆ど無かったが、五体だったランクBの狼は三体まで減った。ここまでくれば余裕も生まれ、もはや勝利は揺るがない。

 指揮官たるアヤカは周囲を確認する余裕ができ、牽制しつつも意識の一部を他二か所の戦闘場所、クロトとシロナの方へ向けた。


(シロナ、やっぱり強いわね。あの<光輝狼シャイニング・ウルフ>相手にまだ余裕がありそう。私だったら・・・一対一では勝てない相手なのに。)


 そんな風に、改めてシロナの実力に感嘆の想いを抱くアヤカ。

 シロナという女性は、普段の様子からはとても強そうには見えない。
 飄々としていて大抵は笑顔。心の奥で何を考えているのかまるで見通せない。

 お人好しそうでかなり美人の女性。
 それが、大半の者が彼女に抱く第一印象だろう。

 それであの強さだというのだから、半ば詐欺である。
 彼女を侮り、己のものにしようとして痛い目を見たのは、一人や二人ではない。


(それで・・・その相棒であり、こちらも何を考えているのかいまいち分からないクロトの方は・・・あれ?クロトどころか<暗黒狼>さえ居ないんだけどっ!?)


 少し目を離した隙に消えていた二つの存在。


「グルルルル・・・・・・ギャウッ!?」

「えっ? ・・・あ、こんなところに居たのね。」


 その片割れであるクロトは、いつの間にか<幻灰狼>の背後に迫っていた。
 というか、残る三体の内一体を不意打ちで仕留めてしまった。

 アヤカたちからすれば、本当にいつの間に? といった思いであろう。


「クロト、あの強そうな<暗黒狼>はどうしたのかしら・・・?」

「ん?もう倒したから、邪魔にならないように収納しておいたよ?」

「ああ、そうなの・・・はぁ。これだから規格外は・・・。」


 アヤカは自分のことを棚に上げてクロトのことを規格外扱いした。
 この戦場で戦う者たちは、一人残らず規格外と呼ばれる存在なのだが・・・。

 もっとも、一緒にされては困るというのが、比較的普通寄りの規格外であるアッシュたち四人の感想だろう。
 何故、レベルでは同格である敵をあっという間に倒してしまうのか、と。


 あのレベル125魔物<暗黒狼ダークネス・ウルフ>は、進化したての個体ではある。

 だがそれでも、強さは<幻灰狼>よりも一段上であるし、弱くなどない。
 アンジェとエアリスでは一対一で勝てるか怪しいし、アヤカも分が悪い相手だ。

 アッシュならば相性の問題もあり、単独でも勝てるかもしれないが時間が掛かるし、勝ってもそこそこの怪我を負うはずだ。

 それを短時間、かつ無傷で倒されては、規格外と言いたくもなるだろう。


「―――移ろい、流離い、彼の敵を戒めよ!『風帝魔法・嵐天縛』っ!」

「―――妖しく導き、捉え、彼の敵に戒めを!『火帝魔法・妖炎陣』っ!」


 残りが二体となったことで、一同は攻勢に出た。
 エアリスとアンジェリカが魔法で敵を拘束し、アッシュとアヤカがそこを狙う。


「はああっ!!『金剛剣・破断』!!」

「決めるっ!『刀王技・弦月』っ!」


 アッシュとアヤカが一体ずつ<幻灰狼>を絶命させた。


「こっちは決着ね。次、シロナの援護に――――」

「フィナーレだよっ!『白神剣・純白』っ!」

「ガゥアアアアアアアッ!?」

「・・・終わったみたいね。」


 アヤカがシロナの援護に向かおうと口にしようとしたところで、見計らったようにシロナが<光輝狼>の首へ一閃を放ち、切断した。
 太い首が綺麗にずり落ちるさまは、途轍もなく違和感がある光景だ。

 その切り口はやはりと言うべきか、とても綺麗なものだった。


「大・勝・利! ビクトリーだよっ!!」


 シロナは狼の頭の上に着地し、満面の笑みでVサイン。


「・・・さて、<探究者の魔箱>の中身は何かな?」

「ちょ、クロトっ!愛しのシロナちゃんの笑顔を見て無反応なの!?」

「・・・はぁ。馬鹿なこと言ってないで早く降りてきて?取り分を減らすよ?」

「うええっ、それは嫌だっ! ・・・とうっ!」


 シロナは狼の頭部から華麗に飛び降り、魔箱の前に着地。


「さーて、何が入っているのかなぁ・・・?」

「幾つか入っているみたいだから、一つずつ確認だね。アッシュたちも近くに寄って?分配は帰ってからするとしても、ここで一通り確認してしまうから。」


 クロトの誘いに四人は頷き、魔箱の中を全員で確認し始めるのだった。

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