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第三部「全能神座争奪戦」編
探し物はいずこに?
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クロトとシロナは鬼種の魔物を倒しつつ<深紅鬼の巣窟>の目前まで来ていた。
「近くまで来たはいいけど、肝心の<欠片>が、ね・・・。」
「<深紅鬼の巣窟>といっても広いからねぇ・・・。もう少し正確な情報があれば良かったんだけど、それは無理だよねぇ・・・。」
シロナの意見にクロトも無言で首肯。
正確な場所が分かっていれば、目撃した人が拾いに行くのは明らかなのだから。
「クロトっ、欠片センサーみたいな神器は無いのっ?」
「ない。」
「即答かぁ~。」
クロトにすげなく存在を否定され、ふにゃふにゃと地面に頽れるシロナ。
広大な範囲を当てもなく探し回ることを想像して力が抜けたようだ。
その難易度を分かりやすく言えば、世界の中でも有数の広さを持つ砂漠の中で土色のボールを見つけるようなものだ。
針を探すほど見つけにくくはないが、色的に周囲に溶け込んでしまうのだ。
シロナがふにゃふにゃしてしまうのも致し方なし。
「ない・・・こともないよ。」
「どっちなのっ!?」
その発言に飛び起きたシロナ。
だがすぐに、クロトの煮え切らない反応に首を傾げる。
というより、ダメ元だったにもかかわらず可能性はありそうな反応に、尋ねた彼女の方が不思議な表情だ。
クロトはコートの内側から赤く輝いている<全能神の欠片を取り出して見せた。
「これを見て、シロナ。 ・・・分かるよね?」
「・・・うん。相変わらず綺麗な手だよね・・・って痛い痛いっ!? 何するのさクロトっ!?理不尽な暴力反対だよっ!」
「誰が僕の手の感想を言えと? <欠片>の方に決まっているよね・・・?」
「分かった分かったっ!私が悪かったからアイアンクローをやめてえええっ!!」
シロナの懇願を聞き入れ、<欠片>を持つのとは逆の手で繰り出していたアイアンクローを彼女の頭から離した。
真面目な話で茶々を入れたシロナが悪いだろう。
「痛いよぅ・・・。クロトのドSめ・・・あ、待って、今の無し! だからその右手をこっちに近づけないでえええっ!!」
「・・・はぁ。話が進まない。いいから早くこれを見て?」
「うん・・・うん?何かさっきより色が濃くなってないかにゃ?」
「・・・そうだね。明らかに濃くなってる。つまり、そういうことだよ。」
クロトはシロナの語尾を華麗にスルー。
スルーされたシロナは気にもせずに欠片に見入っている。
クロトが言いたいのはつまり、こういうことだ。
『欠片同士の距離が縮まれば、反応して色が濃くなる』
もっとも、それが同色の欠片故の反応なのか、欠片全体としての反応なのか。その部分についてはまだ不明瞭なのだが。
「そういう訳だから、この<欠片>をセンサー代わりにできるよ。」
「おおっ!シロナちゃんのお手柄だねっ!」
「・・・否定はしないよ。いきなり欠片を見つけるなんて、おかしいとは思っていたけど、このためでもあったんだろうね・・・。」
クロトは呆れる程の幸運にため息を吐いたあと、ドヤ顔になっているシロナを放置して欠片の反応が強まる方へ歩みを進めたのだった。
「ちょっ、クロト待ってっ!? おいてかないでっ!?」
「おいていってないよ。シロナが勝手において行かれただけで。」
「それなんて屁理屈!?」
▽▽▽
ここは<深紅鬼の巣窟>が一角。
四人の男女が全力疾走にて、何かから逃走していた。
「はぁっ、はぁっ、アンジェっ!もっと速く走れっ! 奴に追いつかれるぞっ!」
「はぁ、はぁ、んっ、そんなこと言ったって、これで限界ですっ!!」
「ちっ、大体何で、あんなバケモンが居んだよっ・・・!」
「俺に聞くなっ! だが、戦っても勝ち目は―――」
ゴガアアアアアアアアアアアアッ!!
「「「「っ!?」」」」
四人は直感的に、左右に横っ飛びをした。
流石は超越者というべきか。
その危機察知と反射神経は内側の世界の冒険者とは隔絶している。
そして、その行動は間違いなく正解であったことが直後に分かった。
何故なら・・・
「・・・嘘だろ?」
リーダーの男は呆然としながらそんな言葉を漏らした。
先程まで四人が居た場所は森林地帯だった。
だが今は、ただの更地になっていた。
それも、局地的にではなく、一直線上に遥か先までだ。
怒号を挙げた存在と、四人がさっきまで居た場所を結ぶまで、そしてその延長線上に幅十メートルにも及ぶ道が出来ていた。
これが、内側の世界というならまだ分かる。
森を消し飛ばすくらい、それなりの数の人間が可能である。
しかし、だ・・・ここはアウターワールド。
当然、木や森の強度も天と地ほどの差がある。
こちら側に来た者は超越者であっても、一からスタートと同じなのだ。
そんな森林地帯を一瞬で消し飛ばした存在・・・
「ゴガアアアアアッ!!」
異常なほどの腕力を持った<深紅鬼>に似たナニカ。
解析の通らない、バケモノ。
その者は先程と同じように拳を振りかぶり・・・・・・突き出した。
「近くまで来たはいいけど、肝心の<欠片>が、ね・・・。」
「<深紅鬼の巣窟>といっても広いからねぇ・・・。もう少し正確な情報があれば良かったんだけど、それは無理だよねぇ・・・。」
シロナの意見にクロトも無言で首肯。
正確な場所が分かっていれば、目撃した人が拾いに行くのは明らかなのだから。
「クロトっ、欠片センサーみたいな神器は無いのっ?」
「ない。」
「即答かぁ~。」
クロトにすげなく存在を否定され、ふにゃふにゃと地面に頽れるシロナ。
広大な範囲を当てもなく探し回ることを想像して力が抜けたようだ。
その難易度を分かりやすく言えば、世界の中でも有数の広さを持つ砂漠の中で土色のボールを見つけるようなものだ。
針を探すほど見つけにくくはないが、色的に周囲に溶け込んでしまうのだ。
シロナがふにゃふにゃしてしまうのも致し方なし。
「ない・・・こともないよ。」
「どっちなのっ!?」
その発言に飛び起きたシロナ。
だがすぐに、クロトの煮え切らない反応に首を傾げる。
というより、ダメ元だったにもかかわらず可能性はありそうな反応に、尋ねた彼女の方が不思議な表情だ。
クロトはコートの内側から赤く輝いている<全能神の欠片を取り出して見せた。
「これを見て、シロナ。 ・・・分かるよね?」
「・・・うん。相変わらず綺麗な手だよね・・・って痛い痛いっ!? 何するのさクロトっ!?理不尽な暴力反対だよっ!」
「誰が僕の手の感想を言えと? <欠片>の方に決まっているよね・・・?」
「分かった分かったっ!私が悪かったからアイアンクローをやめてえええっ!!」
シロナの懇願を聞き入れ、<欠片>を持つのとは逆の手で繰り出していたアイアンクローを彼女の頭から離した。
真面目な話で茶々を入れたシロナが悪いだろう。
「痛いよぅ・・・。クロトのドSめ・・・あ、待って、今の無し! だからその右手をこっちに近づけないでえええっ!!」
「・・・はぁ。話が進まない。いいから早くこれを見て?」
「うん・・・うん?何かさっきより色が濃くなってないかにゃ?」
「・・・そうだね。明らかに濃くなってる。つまり、そういうことだよ。」
クロトはシロナの語尾を華麗にスルー。
スルーされたシロナは気にもせずに欠片に見入っている。
クロトが言いたいのはつまり、こういうことだ。
『欠片同士の距離が縮まれば、反応して色が濃くなる』
もっとも、それが同色の欠片故の反応なのか、欠片全体としての反応なのか。その部分についてはまだ不明瞭なのだが。
「そういう訳だから、この<欠片>をセンサー代わりにできるよ。」
「おおっ!シロナちゃんのお手柄だねっ!」
「・・・否定はしないよ。いきなり欠片を見つけるなんて、おかしいとは思っていたけど、このためでもあったんだろうね・・・。」
クロトは呆れる程の幸運にため息を吐いたあと、ドヤ顔になっているシロナを放置して欠片の反応が強まる方へ歩みを進めたのだった。
「ちょっ、クロト待ってっ!? おいてかないでっ!?」
「おいていってないよ。シロナが勝手において行かれただけで。」
「それなんて屁理屈!?」
▽▽▽
ここは<深紅鬼の巣窟>が一角。
四人の男女が全力疾走にて、何かから逃走していた。
「はぁっ、はぁっ、アンジェっ!もっと速く走れっ! 奴に追いつかれるぞっ!」
「はぁ、はぁ、んっ、そんなこと言ったって、これで限界ですっ!!」
「ちっ、大体何で、あんなバケモンが居んだよっ・・・!」
「俺に聞くなっ! だが、戦っても勝ち目は―――」
ゴガアアアアアアアアアアアアッ!!
「「「「っ!?」」」」
四人は直感的に、左右に横っ飛びをした。
流石は超越者というべきか。
その危機察知と反射神経は内側の世界の冒険者とは隔絶している。
そして、その行動は間違いなく正解であったことが直後に分かった。
何故なら・・・
「・・・嘘だろ?」
リーダーの男は呆然としながらそんな言葉を漏らした。
先程まで四人が居た場所は森林地帯だった。
だが今は、ただの更地になっていた。
それも、局地的にではなく、一直線上に遥か先までだ。
怒号を挙げた存在と、四人がさっきまで居た場所を結ぶまで、そしてその延長線上に幅十メートルにも及ぶ道が出来ていた。
これが、内側の世界というならまだ分かる。
森を消し飛ばすくらい、それなりの数の人間が可能である。
しかし、だ・・・ここはアウターワールド。
当然、木や森の強度も天と地ほどの差がある。
こちら側に来た者は超越者であっても、一からスタートと同じなのだ。
そんな森林地帯を一瞬で消し飛ばした存在・・・
「ゴガアアアアアッ!!」
異常なほどの腕力を持った<深紅鬼>に似たナニカ。
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その者は先程と同じように拳を振りかぶり・・・・・・突き出した。
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