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第三部「全能神座争奪戦」編
欠片の情報
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最終的に、クロトから竜肉の保存食十日分を出すことで交渉がまとまった。
自分の膝枕をそんなもの扱いされたシロナがどんよりと落ち込んでいるが、残り三人に華麗に無視され続けている。
クロトとアヤカは周囲に聞かれないように幾つか手順を踏んでから、ねんのために声を潜めつつ会話を開始した。
「私たちが見たのは赤色に輝く欠片。私たちの居た場所の近くに落ちたのだけど、見ての通り少し怪我をしてしまっていたから、仕方なく探さずに引き上げたわ。」
「なるほどね。それじゃあ、かなり正確な位置が分かるということでいいよね?」
「ええ、そうよ。 ここから先は、更に有料。対価次第で教えるかどうかを決めるつもりよ。」
アヤカの話を聞いたクロトは、その言葉に嘘が無いと判断した。
(嘘を吐いている気配がしないのもそうだけど、話の内容にも違和感が無い。赤色という部分も信憑性が高い。)
クロトは自分の嘘看破に自信があったが、常にそれが通用しない相手のことも想定している。
それ故に、あらゆる情報を多角的に判断して結論を下すのだ。
欠片の色について、前払いを行ってでも事前に情報を求めたのも、それが理由だ。
(僕たちが<赤の領域>寄りの<白の領域>で見つけた欠片も赤色。これが無関係とも思い辛いから、欠片は同じ色の領域に惹かれやすい、のかな?)
それはあくまでも、ここまでの情報による推測でしかない。
しかし、クロトはあながち的外れとも思わなかった。
また、それが事実だと仮定した場合、少なくともアヤカたちが欠片を見たのは事実だという可能性が高まる。
場所については嘘を吐かれる恐れもあるが、彼女たちの来た方向を考えれば、嘘を吐かれてもそこまで問題は無いと判断した。
もっとも、時間が経って欠片の情報が広まれば、話は変わるのだが。
まあ、早い話が、クロトの側に情報料を出し渋る理由は無いということだ。
恋人捜索の為なら幾らでも出すつもりだが、無駄遣いして後で困るのも不味い。
クロトが長々と内側の世界に滞在した理由の一つ、開発により手に入れた物的資産というアドバンテージをなくすことになるのだから。
「―――うん。それじゃあ、欠片の場所の情報料として・・・これでどうかな?」
「―――これは、刀? ・・・解析させてもらってもいいかしら?」
「いいよ? それも対価の内だからね。」
「えっ・・・・・・あ、、そうなの。それじゃあ遠慮なく。」
アヤカはあっさりと解析行為が認められたことに驚きつつも、解析を実行。
アッシュは交渉も解析も苦手なようで、先程からシロナ以上に空気である。
クロトが差し出した刀をじっくりと調べ・・・息をのんだ。
それは殆どの者には看破されなかったが、クロトはそれを看破して、この交渉が上手くいくことを確信した。
「――――交渉成立よ。と・・・この刀は、欠片の位置情報がどのようなものでも、貰えると思っていいのかしら?」
「勿論。僕がそう判断した以上は、それについては確約するよ。」
「そう・・・。じゃあ、欠片が落ちた場所のことを教えるわね。」
交渉が終わり、欠片の情報と刀の交換も無事に行われた。
そして、クロトとシロナは、情報を聞いた後で早々にキャンプ地を立ち去った。
「アヤカ、交渉を丸投げしておいて何だが、あんなに簡単に頷いてよかったのか?」
赤髪の男性アッシュは、信頼する仲間兼恋人のアヤカに疑問を呈した。
するとアヤカは、ごく自然にアッシュの手を取りつつ、人のいない場所に連れていって話し始めた。
「―――当然でしょう? だってこれ・・・神器なのよ?」
「んむぐっ!?」
「んっ・・・はぁ。やっぱり叫びそうになったわね・・・。」
神器という言葉に驚いたアッシュが叫びそうになったが、それを予見していたアヤカが余裕を持ってその口を塞いだ。
口の塞ぎ方については・・・何も言うまい。
この二人は内側の世界からずっと続く恋人同士なのだから。
「・・・済まん。だが、驚くのも仕方ないと思わないか? 神器、なんだぞ?」
「まあ、そうね。普通は驚くわよね。私としては、神器をあっさり渡した彼の方が驚きなのだけれどね。」
アヤカが大事そうに抱えているのは、クロトから貰った刀。
その名も、神器<虎徹・巻ノ肆>だ。
クロトとローナ、グレンの三人が、ナツメの刀型アーティファクトを解析し、地獄の主素材などを一部使用して作り出した刀剣区分に属する合作神器である。
「レベルではシロナの方が上なのに、行動指針は殆ど一人で決めていた。シロナの方も、それがごく当然のことだという態度だった。あの二人は対等な立場だと思うけれど・・・レベルが25以上離れた相手と対等って・・・何者なのかしらね?」
「それは分からないが、誠実に付き合う分には問題ないはずだ。」
「そう・・・あなたがそう言うならそうなのでしょうね。」
この二人は、長い付き合いだけあって、役割分担がハッキリしているようだ。
こういう関係性の者は、アウターワールドでは珍しくない。
「・・・ところで、刀を抱き締めるほど気に入ったのか、それ?」
「ええ、勿論。今まで使ってたアーティファクトも好きだけど、この刀も好きよ?だって、この存在感と色合いがこの上なく―――」
「しまった・・・またこれか。」
その後、アヤカは刀について語り始め、アッシュを疲れ果てさせたのであった。
自分の膝枕をそんなもの扱いされたシロナがどんよりと落ち込んでいるが、残り三人に華麗に無視され続けている。
クロトとアヤカは周囲に聞かれないように幾つか手順を踏んでから、ねんのために声を潜めつつ会話を開始した。
「私たちが見たのは赤色に輝く欠片。私たちの居た場所の近くに落ちたのだけど、見ての通り少し怪我をしてしまっていたから、仕方なく探さずに引き上げたわ。」
「なるほどね。それじゃあ、かなり正確な位置が分かるということでいいよね?」
「ええ、そうよ。 ここから先は、更に有料。対価次第で教えるかどうかを決めるつもりよ。」
アヤカの話を聞いたクロトは、その言葉に嘘が無いと判断した。
(嘘を吐いている気配がしないのもそうだけど、話の内容にも違和感が無い。赤色という部分も信憑性が高い。)
クロトは自分の嘘看破に自信があったが、常にそれが通用しない相手のことも想定している。
それ故に、あらゆる情報を多角的に判断して結論を下すのだ。
欠片の色について、前払いを行ってでも事前に情報を求めたのも、それが理由だ。
(僕たちが<赤の領域>寄りの<白の領域>で見つけた欠片も赤色。これが無関係とも思い辛いから、欠片は同じ色の領域に惹かれやすい、のかな?)
それはあくまでも、ここまでの情報による推測でしかない。
しかし、クロトはあながち的外れとも思わなかった。
また、それが事実だと仮定した場合、少なくともアヤカたちが欠片を見たのは事実だという可能性が高まる。
場所については嘘を吐かれる恐れもあるが、彼女たちの来た方向を考えれば、嘘を吐かれてもそこまで問題は無いと判断した。
もっとも、時間が経って欠片の情報が広まれば、話は変わるのだが。
まあ、早い話が、クロトの側に情報料を出し渋る理由は無いということだ。
恋人捜索の為なら幾らでも出すつもりだが、無駄遣いして後で困るのも不味い。
クロトが長々と内側の世界に滞在した理由の一つ、開発により手に入れた物的資産というアドバンテージをなくすことになるのだから。
「―――うん。それじゃあ、欠片の場所の情報料として・・・これでどうかな?」
「―――これは、刀? ・・・解析させてもらってもいいかしら?」
「いいよ? それも対価の内だからね。」
「えっ・・・・・・あ、、そうなの。それじゃあ遠慮なく。」
アヤカはあっさりと解析行為が認められたことに驚きつつも、解析を実行。
アッシュは交渉も解析も苦手なようで、先程からシロナ以上に空気である。
クロトが差し出した刀をじっくりと調べ・・・息をのんだ。
それは殆どの者には看破されなかったが、クロトはそれを看破して、この交渉が上手くいくことを確信した。
「――――交渉成立よ。と・・・この刀は、欠片の位置情報がどのようなものでも、貰えると思っていいのかしら?」
「勿論。僕がそう判断した以上は、それについては確約するよ。」
「そう・・・。じゃあ、欠片が落ちた場所のことを教えるわね。」
交渉が終わり、欠片の情報と刀の交換も無事に行われた。
そして、クロトとシロナは、情報を聞いた後で早々にキャンプ地を立ち去った。
「アヤカ、交渉を丸投げしておいて何だが、あんなに簡単に頷いてよかったのか?」
赤髪の男性アッシュは、信頼する仲間兼恋人のアヤカに疑問を呈した。
するとアヤカは、ごく自然にアッシュの手を取りつつ、人のいない場所に連れていって話し始めた。
「―――当然でしょう? だってこれ・・・神器なのよ?」
「んむぐっ!?」
「んっ・・・はぁ。やっぱり叫びそうになったわね・・・。」
神器という言葉に驚いたアッシュが叫びそうになったが、それを予見していたアヤカが余裕を持ってその口を塞いだ。
口の塞ぎ方については・・・何も言うまい。
この二人は内側の世界からずっと続く恋人同士なのだから。
「・・・済まん。だが、驚くのも仕方ないと思わないか? 神器、なんだぞ?」
「まあ、そうね。普通は驚くわよね。私としては、神器をあっさり渡した彼の方が驚きなのだけれどね。」
アヤカが大事そうに抱えているのは、クロトから貰った刀。
その名も、神器<虎徹・巻ノ肆>だ。
クロトとローナ、グレンの三人が、ナツメの刀型アーティファクトを解析し、地獄の主素材などを一部使用して作り出した刀剣区分に属する合作神器である。
「レベルではシロナの方が上なのに、行動指針は殆ど一人で決めていた。シロナの方も、それがごく当然のことだという態度だった。あの二人は対等な立場だと思うけれど・・・レベルが25以上離れた相手と対等って・・・何者なのかしらね?」
「それは分からないが、誠実に付き合う分には問題ないはずだ。」
「そう・・・あなたがそう言うならそうなのでしょうね。」
この二人は、長い付き合いだけあって、役割分担がハッキリしているようだ。
こういう関係性の者は、アウターワールドでは珍しくない。
「・・・ところで、刀を抱き締めるほど気に入ったのか、それ?」
「ええ、勿論。今まで使ってたアーティファクトも好きだけど、この刀も好きよ?だって、この存在感と色合いがこの上なく―――」
「しまった・・・またこれか。」
その後、アヤカは刀について語り始め、アッシュを疲れ果てさせたのであった。
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