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第三部「全能神座争奪戦」編
情報収集と情報提供
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クロトとシロナは<赤>地区の北端にあるキャンプ地に辿り着いた。
そこは、村というにも小さい宿泊所のような様相であった。
クロトが数えたところ、そこに居る人は十人未満。
各々周囲の警戒をしつつも寛いでいるのが窺える。
「まずは中央にある掲示板を見に行こっ?」
「掲示板? ああ、向こうで言うギルドの縮小版みたいな感じかな?」
「正解。察しが良いと話が早くて大助かりっ!」
実際には、ギルドの縮小版というにも物足りないものでしかない。
なにせ、任意で情報をやりとりする場でしかないのだから。
例えば・・・
「内容:<紅鬼>の巣の情報アリ 対価:応相談 連絡:赤鬼キャンプ○○」
みたいな感じで載っているのだ。
これを見て巣の情報が欲しいと思った者は、それが書かれた紙を持って連絡先へ向かい、情報を持つ者と直接交渉するのだ。
勿論、掲示板を介さずに直接やり取りするのもありだ。
掲示板は利便性を追求していつの間にか出来たものでしかなく、誰かが管理している訳でもないので。そこがギルドとの違いの一つだろう。
ただし、掲示板が老朽化しているのを見つけたら直すのが暗黙の了解だ。
「あ、一応言っておくけど、勝手に解析とかしたら喧嘩になるよ?」
「敵にならない限りはしないから大丈夫だよ。」
キャンプ地に入ってきた二人を、それ以前からそこにいた者が探るような気配を見せていた。それ故にシロナは忠告をしたのである。
超越者にもなれば、情報の大事さは大なり小なり理解している者が殆どなのだ。
迂闊な解析行為は敵対ルートまっしぐらである。
「それと、これも暗黙の了解なんだけど・・・。自己紹介の時には名前とレベルまでしか明かさないこと!」
「へぇ、そんな慣習があるんだ。中々に合理的だね。」
(きっと、無駄な争いを避ける意味もあるんだろうね。流石は外側の世界。)
クロトはふむふむと頷きつつ、掲示板の下までやってきた。
考え辛くはあるが、アクアたちの情報がないか確認し始める。
「・・・やっぱり、まだそんな情報は無いよね。」
「時期が時期だもんね・・・・・・およ? クロト、何か載せるの?」
「まあね。見た感じ情報を求める方にも使えるようだし。」
クロトは取り出した紙に何事か書き記すと、それを掲示板に貼った。
『内容:光り輝く物体の情報求む。こちらへ来た際に逸れた仲間の可能性あり
対価:情報内容により要相談。場合によってはアーティファクトを進呈
連絡:赤鬼キャンプ(一週間ほど)。こちらは黒髪黒目と白髪の二人組なり』
内容としてはこんな感じだ。
クロトは少し悩みはしたが、<全能神の欠片>についても触れておいた。
どうせ遅かれ早かれ明らかになるので自分から出してしまえ、ということだ。
また、アクアたちの情報も求めつつ、上手く両者を混同させようとしている。
これを見た者の大部分は 謎の光る欠片=人間 と考えて興味を失うだろう。
飛んでいく欠片を目撃した者も、その例に漏れない。
可能性あり、としか言ってないので、嘘だという訳でもないのがまた・・・。
(うへぇ・・・上手いこと書いたね~。ほんの少ししか効果は無いだろうけど、こういう地道な作業を怠らないのは、クロトらしいというか何というか・・・。)
シロナは声に出さずに、心の中でクロトの思惑を反芻。
その相変わらずな思考回路に温かいものを感じて、思わず笑みがこぼれる。
「・・・シロナ、急に笑い始めると、おかしな人に思われるよ?」
「失礼なっ!! こっちではそれくらい普通なのっ!」
「・・・そうなの?」
「ホントホント。こっちには変人しか居ないからねっ!」
(((嘘吐くなっ!! 新入りに変なこと吹き込むんじゃねぇっ!!)))
周囲で二人の様子を窺っていた者たちが心の中で盛大なツッコミを入れた。
シロナはアウターワールドでも、変わり者としてそこそこ有名であり、一緒にされては堪らないということだろう。
「・・・怪しいね。シロナは昔から平気で嘘を吐くから。それも無自覚に。」
「酷いなぁ・・・クロトだって変人の一員のくせにっ!」
「僕は普通だよ。どこからどう見ても、どこにでもいる青年だよね?」
「ないない!クロトが普通とかあり得ないよっ!」
シロナは大げさに首を振ってあり得ないと主張するが、クロトは無視。
手頃な場所に腰を下ろして休憩し始めた。
「むぅ・・・クロトの太腿フェチめっ!」
「それは断じて違うから。あらぬ誤解を招くような発言はやめてね?」
「だってだって、クロトは私の膝枕で気持ちよさそうだったし!」
シロナはついつい思ったことを言ってしまったが、直ぐに失態に気づいた。
しかし、時すでに遅し。
「それを言うならシロナだってむず痒そうにしながらも――――」
「わーわーわー!!私が悪かったからそれ以上は言わないでっ!?周りの人が興味津々で聞き耳を立て始めたからあっ!」
そこは、村というにも小さい宿泊所のような様相であった。
クロトが数えたところ、そこに居る人は十人未満。
各々周囲の警戒をしつつも寛いでいるのが窺える。
「まずは中央にある掲示板を見に行こっ?」
「掲示板? ああ、向こうで言うギルドの縮小版みたいな感じかな?」
「正解。察しが良いと話が早くて大助かりっ!」
実際には、ギルドの縮小版というにも物足りないものでしかない。
なにせ、任意で情報をやりとりする場でしかないのだから。
例えば・・・
「内容:<紅鬼>の巣の情報アリ 対価:応相談 連絡:赤鬼キャンプ○○」
みたいな感じで載っているのだ。
これを見て巣の情報が欲しいと思った者は、それが書かれた紙を持って連絡先へ向かい、情報を持つ者と直接交渉するのだ。
勿論、掲示板を介さずに直接やり取りするのもありだ。
掲示板は利便性を追求していつの間にか出来たものでしかなく、誰かが管理している訳でもないので。そこがギルドとの違いの一つだろう。
ただし、掲示板が老朽化しているのを見つけたら直すのが暗黙の了解だ。
「あ、一応言っておくけど、勝手に解析とかしたら喧嘩になるよ?」
「敵にならない限りはしないから大丈夫だよ。」
キャンプ地に入ってきた二人を、それ以前からそこにいた者が探るような気配を見せていた。それ故にシロナは忠告をしたのである。
超越者にもなれば、情報の大事さは大なり小なり理解している者が殆どなのだ。
迂闊な解析行為は敵対ルートまっしぐらである。
「それと、これも暗黙の了解なんだけど・・・。自己紹介の時には名前とレベルまでしか明かさないこと!」
「へぇ、そんな慣習があるんだ。中々に合理的だね。」
(きっと、無駄な争いを避ける意味もあるんだろうね。流石は外側の世界。)
クロトはふむふむと頷きつつ、掲示板の下までやってきた。
考え辛くはあるが、アクアたちの情報がないか確認し始める。
「・・・やっぱり、まだそんな情報は無いよね。」
「時期が時期だもんね・・・・・・およ? クロト、何か載せるの?」
「まあね。見た感じ情報を求める方にも使えるようだし。」
クロトは取り出した紙に何事か書き記すと、それを掲示板に貼った。
『内容:光り輝く物体の情報求む。こちらへ来た際に逸れた仲間の可能性あり
対価:情報内容により要相談。場合によってはアーティファクトを進呈
連絡:赤鬼キャンプ(一週間ほど)。こちらは黒髪黒目と白髪の二人組なり』
内容としてはこんな感じだ。
クロトは少し悩みはしたが、<全能神の欠片>についても触れておいた。
どうせ遅かれ早かれ明らかになるので自分から出してしまえ、ということだ。
また、アクアたちの情報も求めつつ、上手く両者を混同させようとしている。
これを見た者の大部分は 謎の光る欠片=人間 と考えて興味を失うだろう。
飛んでいく欠片を目撃した者も、その例に漏れない。
可能性あり、としか言ってないので、嘘だという訳でもないのがまた・・・。
(うへぇ・・・上手いこと書いたね~。ほんの少ししか効果は無いだろうけど、こういう地道な作業を怠らないのは、クロトらしいというか何というか・・・。)
シロナは声に出さずに、心の中でクロトの思惑を反芻。
その相変わらずな思考回路に温かいものを感じて、思わず笑みがこぼれる。
「・・・シロナ、急に笑い始めると、おかしな人に思われるよ?」
「失礼なっ!! こっちではそれくらい普通なのっ!」
「・・・そうなの?」
「ホントホント。こっちには変人しか居ないからねっ!」
(((嘘吐くなっ!! 新入りに変なこと吹き込むんじゃねぇっ!!)))
周囲で二人の様子を窺っていた者たちが心の中で盛大なツッコミを入れた。
シロナはアウターワールドでも、変わり者としてそこそこ有名であり、一緒にされては堪らないということだろう。
「・・・怪しいね。シロナは昔から平気で嘘を吐くから。それも無自覚に。」
「酷いなぁ・・・クロトだって変人の一員のくせにっ!」
「僕は普通だよ。どこからどう見ても、どこにでもいる青年だよね?」
「ないない!クロトが普通とかあり得ないよっ!」
シロナは大げさに首を振ってあり得ないと主張するが、クロトは無視。
手頃な場所に腰を下ろして休憩し始めた。
「むぅ・・・クロトの太腿フェチめっ!」
「それは断じて違うから。あらぬ誤解を招くような発言はやめてね?」
「だってだって、クロトは私の膝枕で気持ちよさそうだったし!」
シロナはついつい思ったことを言ってしまったが、直ぐに失態に気づいた。
しかし、時すでに遅し。
「それを言うならシロナだってむず痒そうにしながらも――――」
「わーわーわー!!私が悪かったからそれ以上は言わないでっ!?周りの人が興味津々で聞き耳を立て始めたからあっ!」
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