551 / 600
第三部「全能神座争奪戦」編
親友との再会と回顧
しおりを挟む
ここはアウターワールド、その中にあるノーマルエリアの一角。
(・・・ん?僕は今、何をして・・・。確か、神界で・・・っ!)
意識を覚醒させたクロトは、自分たちの身に何が起きたのかを思い出した。
だが、起き上がろうとすると、何かに押さえつけられて身動きが取れない。
状況の把握を急ぐと、後頭部に柔らかい感覚があることに気づいた。
(これ・・・アクアの膝枕を思い出すね。アクア、無事だといいけど・・・。)
クロトはアクアの身を案じつつ、完全に意識が覚醒し、その目を開いた。
「―――あ、起きた!かれこれ三時間くらいかな?具合はどう、クロト?」
「・・・・・・シロナ?」
クロトはしばらくポカンとしたあと、自分の顔を覗き込んでいる女性が誰なのかを把握した。紛うことなく、シロナその人だった。
シロナはニヤリと笑って、珍しいクロト表情を堪能しつつ、問いに答える。
「その通り!クロトが大好きなシロナちゃんだよっ!」
「・・・それはどっちの意味で?いや、それ以前にこの体勢は・・・っ」
「おっ? もしかしてクロト、照れてるの? 顔が赤いよ~?」
「・・・この感じ、間違いなくシロナだ。ということは・・・」
クロトはシロナの揶揄いをつとめて気にしないようにしつつ、考察を開始。
(シロナが居るということは、ここはアウターワールド。そして・・・)
「シロナ、話をお願い。」
「んーとね・・・空から降ってきたよっ!あ、降ってきたのはクロトだけだよ」
「ん、ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして、だよ!」
ごく短く簡潔なやりとりだが、二人の間ではこれで通じるようだ。
話をお願い、という言葉には、ここまでの話、という意味が含まれている。
そして、自分以外に誰かいないかの確認も含めていた。
それと、「ありがとう」には助けてくれたことへのお礼も含まれている。
普段はここまで簡潔ではないのだが、今は状況の把握が最優先。
それ故の言葉の少なさだ。
(やはり、バラバラに飛ばされた、か。一体何者だったのやら・・・。)
クロトは気を失う直前までのことを思い出し始めた。
〇〇〇
クロトはクラリエルにシステムの確認を急がせたが、それは手遅れだった。
既に黒ローブは、システムの介入をほぼ終わらせていたのだ。
そして、その目的は・・・。
「クロトっ!全能神の権能が消失していますっ!!」
「っ、やられたね・・・。」
完全にしてやられてしまい、クロトは珍しく歯噛みした。
神界のシステムを完全に理解していないが為に、後手に回ってしまったからだ。
普通は責められないようなことだが、クロトにとっては失態だった。
黒ローブの手元に現れた、虹色の光。
全能神の権能だ。
それをどうするのか、とクロトは思ったが、その答えは直ぐに出た。
なんと、虹色の光が二十四に分かれて飛び散ってしまったのだ。
「――――――――」
「っ、やはり、時空神の権能を犠牲にしても、それで限界なのね・・・。」
「――――」
「はぁ・・・。アドバンテージの無いタフな争奪戦になりそうね・・・。」
銀ローブのアリスと黒ローブの会話。
そこからクロトは、彼女らの目的について凡その予想をつけることができた。
本当はそのまま権能を手にしたかったのだろうが、それは叶わなかった。
できたのは、その権能をばら撒き、再び回収するという二度手間の下策。
神界のシステムはそこまで甘くないということだろう。
もっとも、彼女らは予め予想していたことのようだが。
クロトはそう結論を出し、この場をどうするかに指向をシフトした。
そもそも、目の前の存在が敵かどうか、未だに定かではないのだ。
自分たちへのスタンスが分からなければ、対応にも迷いが生まれかねない。
そこの確認は急務であろう。
「それで、あなた方は何者なのですか?私たちの敵なのですか?」
混乱から立ち直ったアクアが代表で尋ねた。
「そうね・・・敵、だと思うわ。クロト君であれば私たち、いえ、誰かが全能神顕現を集めて、全能神の座につくことを望まないでしょうから」
「そうだね。そういうことなら、僕の敵になる」
誰かが全能神の座につく。
それは、クロトにとって到底認められることではない。
極論、屑が全能神になれば、自分たちがどんな目に遭うか分からないのだ。
そしてそもそも、創世神であるクラリスが無事では済まない。
不正規の手段で全能神になることが罷り通ってしまえば、膨大なエラーが発生する。システムの中核を担うクラリスが無事で済むはずがない。
よくて、自我の消滅だろう。
クロトとアクアは意を決し、武器を構え・・・・・・ようとしてできなかった。
またしても自体が動いたからだ。
「っ、また神界に侵入・・・いえ、でも、これは・・・?」
「クラリエル?」
ラファエルに憑依したままのクラリスが、何かに驚き、目を見開いた。
その直後、神界に侵入してきたのは・・・巨大な灰色の狼だった。
(・・・ん?僕は今、何をして・・・。確か、神界で・・・っ!)
意識を覚醒させたクロトは、自分たちの身に何が起きたのかを思い出した。
だが、起き上がろうとすると、何かに押さえつけられて身動きが取れない。
状況の把握を急ぐと、後頭部に柔らかい感覚があることに気づいた。
(これ・・・アクアの膝枕を思い出すね。アクア、無事だといいけど・・・。)
クロトはアクアの身を案じつつ、完全に意識が覚醒し、その目を開いた。
「―――あ、起きた!かれこれ三時間くらいかな?具合はどう、クロト?」
「・・・・・・シロナ?」
クロトはしばらくポカンとしたあと、自分の顔を覗き込んでいる女性が誰なのかを把握した。紛うことなく、シロナその人だった。
シロナはニヤリと笑って、珍しいクロト表情を堪能しつつ、問いに答える。
「その通り!クロトが大好きなシロナちゃんだよっ!」
「・・・それはどっちの意味で?いや、それ以前にこの体勢は・・・っ」
「おっ? もしかしてクロト、照れてるの? 顔が赤いよ~?」
「・・・この感じ、間違いなくシロナだ。ということは・・・」
クロトはシロナの揶揄いをつとめて気にしないようにしつつ、考察を開始。
(シロナが居るということは、ここはアウターワールド。そして・・・)
「シロナ、話をお願い。」
「んーとね・・・空から降ってきたよっ!あ、降ってきたのはクロトだけだよ」
「ん、ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして、だよ!」
ごく短く簡潔なやりとりだが、二人の間ではこれで通じるようだ。
話をお願い、という言葉には、ここまでの話、という意味が含まれている。
そして、自分以外に誰かいないかの確認も含めていた。
それと、「ありがとう」には助けてくれたことへのお礼も含まれている。
普段はここまで簡潔ではないのだが、今は状況の把握が最優先。
それ故の言葉の少なさだ。
(やはり、バラバラに飛ばされた、か。一体何者だったのやら・・・。)
クロトは気を失う直前までのことを思い出し始めた。
〇〇〇
クロトはクラリエルにシステムの確認を急がせたが、それは手遅れだった。
既に黒ローブは、システムの介入をほぼ終わらせていたのだ。
そして、その目的は・・・。
「クロトっ!全能神の権能が消失していますっ!!」
「っ、やられたね・・・。」
完全にしてやられてしまい、クロトは珍しく歯噛みした。
神界のシステムを完全に理解していないが為に、後手に回ってしまったからだ。
普通は責められないようなことだが、クロトにとっては失態だった。
黒ローブの手元に現れた、虹色の光。
全能神の権能だ。
それをどうするのか、とクロトは思ったが、その答えは直ぐに出た。
なんと、虹色の光が二十四に分かれて飛び散ってしまったのだ。
「――――――――」
「っ、やはり、時空神の権能を犠牲にしても、それで限界なのね・・・。」
「――――」
「はぁ・・・。アドバンテージの無いタフな争奪戦になりそうね・・・。」
銀ローブのアリスと黒ローブの会話。
そこからクロトは、彼女らの目的について凡その予想をつけることができた。
本当はそのまま権能を手にしたかったのだろうが、それは叶わなかった。
できたのは、その権能をばら撒き、再び回収するという二度手間の下策。
神界のシステムはそこまで甘くないということだろう。
もっとも、彼女らは予め予想していたことのようだが。
クロトはそう結論を出し、この場をどうするかに指向をシフトした。
そもそも、目の前の存在が敵かどうか、未だに定かではないのだ。
自分たちへのスタンスが分からなければ、対応にも迷いが生まれかねない。
そこの確認は急務であろう。
「それで、あなた方は何者なのですか?私たちの敵なのですか?」
混乱から立ち直ったアクアが代表で尋ねた。
「そうね・・・敵、だと思うわ。クロト君であれば私たち、いえ、誰かが全能神顕現を集めて、全能神の座につくことを望まないでしょうから」
「そうだね。そういうことなら、僕の敵になる」
誰かが全能神の座につく。
それは、クロトにとって到底認められることではない。
極論、屑が全能神になれば、自分たちがどんな目に遭うか分からないのだ。
そしてそもそも、創世神であるクラリスが無事では済まない。
不正規の手段で全能神になることが罷り通ってしまえば、膨大なエラーが発生する。システムの中核を担うクラリスが無事で済むはずがない。
よくて、自我の消滅だろう。
クロトとアクアは意を決し、武器を構え・・・・・・ようとしてできなかった。
またしても自体が動いたからだ。
「っ、また神界に侵入・・・いえ、でも、これは・・・?」
「クラリエル?」
ラファエルに憑依したままのクラリスが、何かに驚き、目を見開いた。
その直後、神界に侵入してきたのは・・・巨大な灰色の狼だった。
0
お気に入りに追加
6,335
あなたにおすすめの小説
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~
ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」
騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。
その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。
この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。
半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界
なぜか俺だけモテない異世界転生記。
一ノ瀬遊
ファンタジー
日本で生まれ日本で育ったこの物語の主人公、高崎コウが不慮?の事故で死んでしまう。
しかし、神様に気に入られ異世界クラウディアに送られた。
現世で超器用貧乏であった彼が異世界で取得したスキルは、
彼だけの唯一無二のユニークスキル『ミヨウミマネ』であった。
人やモンスターのスキルを見よう見まねして習得して、世界最強を目指していくお話。
そして、コウは強くカッコよくなってハーレムやムフフな事を望むがどういう訳か全然モテない。
バチくそモテない。
寄ってくるのは男だけ。
何でだ?何かの呪いなのか!?
ウオォォォ!!
プリーズ、モテ期ィィ!!
果たしてこの主人公は世界最強になり、モテモテハーレム道を開けるのか!?
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
think
ファンタジー
ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。