異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

感謝祭終幕

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「クラリエルさん、食べてみてください。」

「アクアさん・・・では、お言葉に甘えて・・・っ!?」


 クラリエルはアクアが持ってきた唐揚げを一つ口に含み、その美味しさに驚愕。

 二つ目、三つ目と、次々にパクつき始めた。

 食事という娯楽に慣れていないためか、大げさな反応だ。


 なお、クラリエル状態の彼女のことを、アクアはさん付けで呼ぶ。

 この辺りはこれから変化していくかもしれないが、今はこれでもいいのだろう。


「中々お目にかかれない食べっぷりですわね・・・。」

「とても美味しそうに見えるでござるよ・・・。どれ、拙者も一つ・・・。」


 マリアとナツメが無くならないうちにと、唐揚げを口に放り込んだ。

 それを見たクラリエルは、焦ったようにパクつく速度を上げた。


「クラリエルさん、そんなに焦らなくとも沢山ありますからね?」

「ああ。他にも色々あるのだし、そちらも味見してみてはどうだ?」


 アクアが窘め、カレンが他の出店を指し示した。

 するとクラリエルは「ハッ!?」と我に返って頬を赤く染めた。


「創世神ともあろうものが、我を忘れて食に夢中になってしまうなど・・・!」

「ん・・・。美味しい、から・・・仕方ない、よ・・・?」

「エメラはエメラで、よく食べるわよねぇ・・・。」


 顔を押さえて恥ずかしがるクラリエルにエメラがフォローを入れた。

 だが、同じようにパクつかれながら言われても逆効果だろう。

 セーラはそんな様子に苦笑いを浮かべながら自分も一口。


「あ、クロト君。この唐揚げって、鶏肉が材料なのね?」

「正解だよ、セーラ。一口で当てるなんて、流石、年の功だね。」

「クロト君っ!年の事を言うのはやめてってば!」


 そんな風に二人がイチャついている間、ヴィオラとクラリエルは見つめていた。

 ・・・唐揚げを突っついていたフェニアの方向を。


「・・・鶏肉。」

「・・・じゅるり。」

「ピュイ?・・・ピュイーッ!?」


 最初は不思議そうな顔をしていたが、直ぐにどんな目で見られているのかを理解。

 フェニアは慌ててエメラの下に向かい、その陰に隠れた。


「ん・・・。フェニア、も・・・食べ、る・・・?」

「ピュイ?ピュィィィ・・・。」


 フェニアはエメラが目の前に差し出した竜肉の唐揚げを恐る恐る一口。

 何とも言い難い圧倒的な美味しさに絶句した。

 その光景を見ていたヴィオラとクラリエルは・・・。


「・・・竜肉。」

「・・・ごくり。」

「キュイ!?キューイキュイッ!!」


 リュノアを見つめたが、「食べ物じゃないよ!」という非難を受けて目を逸らす。

 クロトはそんなやり取りを見て、愉快そうにこう言った。


「ヴィオラは今更だけど、クラリエルが食いしん坊キャラなのには驚きだね。」

「・・・!?私が食いしん坊・・・!?」

「あああああっ!私もう神界に帰りますっ!!」


 クラリエルは早くも神界に帰りたいと主張したが、クロトはその意向を無視。


「残念だけど、まだまだ帰さないよ?」


 そんなクロトの言葉通り、暫くの間、一行の食べ歩きは続いたのだった。










「あのラーメンという食べ物は、とても美味でございましたね・・・。」

「神様にそこまで気に入ってもらえるなんて、照れますね・・・。」


 ラーメンのお店を臨時で構えていたリンカが、嬉しそうにそう返答した。


「僕も同感。日本全国のラーメンが揃っていて、よく再現できたと感心したよ。」

「クロトさん・・・!」


 クロトに頭を撫でられて気持ちよさそうに目を細めた。

 パタパタと動く犬耳を幻視したクロトは、リンカを抱き締めた。

 急に愛おしさが込み上げてきたようだ。


「わっ!?クロトさん!人前でこんなことっ・・・!」

「大丈夫。誰も気にしないから。だから・・・少しだけ、ね?」

「あぅ・・・!」


 満更でもなかったために、そう言われてはもう何も言えなくなってしまう。


(ふわぁ・・・幸せ、だなぁ・・・。こんな日々が、永遠に続けばいいのに・・・)


 リンカは抱き締められながらそんなことを思い浮かべた。

 だが、それは叶わぬ願いだと分かっている。

 寿命の違うクロトと自分は、いずれ死に別れる運命にあるのだから、と。


 だからこそ、この一瞬の幸せを他の誰よりも、この上なく大事にできるのだ。


(・・・胸騒ぎがする。こんなに幸せなのに、どうして不安になるの・・・?)


 リンカは突然不安と胸騒ぎが押し寄せてきたことで動揺した。

 勘など全く働かないのに、この時だけは嫌な予感を覚えてしまったからだ。

 途轍もなく大きな事件が起こるのではないかと思わされ、体が震える。


「・・・リンカ?」

「・・・クロトさん。何か、嫌な予感がするんです・・・。」


 リンカはクロトを見つめながら、正直に思いの丈を綴った。


「リンカ・・・。」

「んっ・・・。ぁんっ・・・!」


 クロトはリンカを安心させるために、そっとキスをした。

 
(どうか、クロトさんが、幸せでいられますように・・・!)


 リンカは不安を紛らわせるために夢中でクロトに貪りつきつつも、そう願った。


 それから数時間後、何が起こるでもなく、創世神感謝祭は無事に幕を下ろした。

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