536 / 600
第二部「創世神降臨」編
愚かさ自覚せし再会の時
しおりを挟む
クラリエルはクロトに連れられて路を通り、地上へ降りてきた。
「少し時間はあるから、ギリギリまで話をするといいよ。」
「そうさせて頂きます。・・・久しぶりですね、ユグドラシル、グランディア。」
((・・・!!))
クラリエルは二本の樹へ再会の挨拶をし、その身を抱き締めた。
かれこれ、創世以来会っていないに等しいのだから、感動も一際なのだろう。
そのような機会が巡ってきたことに感謝しつつ、積りに積もった話をしていく。
初めは他愛も無い話だったのだが、ある時から雲行きが怪しくなった。
クラリエルが、二柱の樹が秘めし想いを感じ取ってしまったのだ。
「あなたたち・・・何故、自分を責めているのですか・・・?」
((・・・!!))
「なっ・・・それは、あなたたちの責任ではありません!」
二柱の樹が伝えたのは、母を支えてあげられなかったことへの謝意。
それと、何処までも深い自責の念。
クラリエルは面食らいつつ、二柱の樹に責任が無いことを示した。
しかし、ことはそう簡単なことではないのだ。
母が苦しんでいる間、声を掛けることすら出来なかった無力感。
長い間二柱の樹を苛んできたこの想いは、ちょっとやそっとでは消えないのだ。
「私は気にしてなどいません!ですから、もう自分を責めないでください!」
((・・・・・・。))
「どうして・・・そんなに強情なのですか・・・。
あなたたちが苦しんでも、誰も喜びはしない・・・っ!?」
そこでクラリエルは気づいた。
これはまるで、自分と鏡写しなのではないか、と。
自責の念から自分を過剰に責め続け、誰も幸せにしない行動をとり続ける。
贖罪の意味はあっても、守るべき愛しき者たちを悲しませる、本末転倒な行為。
自分のやってきたことは、今目の前で行われていることと何が違うというのか。
愛しき子たちを苛烈な自責へ追い込んでいるのは、どこの誰が原因なのか。
自分が自分を責め続けているから、これほど悲しませているのではないか。
(私、私は・・・一体何をしていたのですかっ・・・!?どうしてこの子たちを、こんなにまで追い詰めているのですかっ!!)
ようやく己の愚かさに気づき、呆然とするクラリエル。
今まで自分は世界の為に働き、この身を犠牲にしてきた。
それらは全て、愛しき眷属たちへの贖罪と助けのため。
ではどうして、最も自分に近しい眷属を、ここまで追い詰めているのか。
そういった思考が頭を支配し、涙が溢れた。
罪は罪。必ず贖罪は必要だ。
だがそれは、愛する者たちを傷つけてまで行うことではない。
誰も幸せになれない贖罪など、しない方がいいのだ。
クラリエルは長い時を掛けてようやくその事に気付き、覚悟を決めた。
自分を許し、愛する者たちに許される覚悟を。
明確な罰を己に与えないままに、世界を支え続ける覚悟を。
それは、贖罪という自己満足に浸れず、辛いことなのかもしれない。
しかしそれでも、誰も幸せになれない結末よりは何倍もマシだ。
「私はもう、これ以上自分を責めません。
ですから、あなたたちも、自分を責めないで。
お互いの罪を許し、許されましょう・・・!」
((・・・・・・!))
こうして彼女たちは、己の罪を必要以上に責めなくなった。
誰も幸せになれないままの未来は、この瞬間に、砕け散ったのだ。
時は戻って現在。
「まだ、完全に自分を許すことは出来ません。
ですが・・・もう、同じ過ちは・・・犯しません。」
「そっか・・・。僕も苦労した甲斐があったというものだね・・・。」
クロトはクラリエルに恩返しをし、世界樹や地底樹との誓いも果たした。
俗にいう、ハッピーエンド、というやつである。
「さて。それじゃあ・・・遊びにいこっか。」
「え・・・遊びに行く、とは・・・?」
涙を止めてポカンとするクラリエル。
そんな彼女に、クロトは笑顔でこう言った。
「丁度感謝祭のクライマックスなんだし、地上の視察という名目で、参加しない?」
「えっ?ですがそれは・・・問題があり過ぎると思われますが・・・。」
「大丈夫。変装用の神器は作ってあるから、バレないバレない。」
「そういう問題なのでございましょうか・・・?」
そもそも人の手で神器をつくること自体おかしい話だが、そこはスルーらしい。
クラリエルがクロトの異常さに慣れたとも言える。
「さ、みんなで一緒に変装して、あちこち回ってみよう。
僕も末端までは把握していないから、結構楽しみにしていたんだよね・・・!」
そうして、クラリエルはクロトやアクアたちに連れられて、歩き始めた。
それは、ただの一歩であり、新たな世界が始まる一歩だったのかもしれない。
「あ、変装衣装は神界でクラリスが着ていた服でいいかな?」
「それだけは勘弁してくださいませっ!!」
<私もそれだけは嫌でございますっ、クロト様っ!>
「少し時間はあるから、ギリギリまで話をするといいよ。」
「そうさせて頂きます。・・・久しぶりですね、ユグドラシル、グランディア。」
((・・・!!))
クラリエルは二本の樹へ再会の挨拶をし、その身を抱き締めた。
かれこれ、創世以来会っていないに等しいのだから、感動も一際なのだろう。
そのような機会が巡ってきたことに感謝しつつ、積りに積もった話をしていく。
初めは他愛も無い話だったのだが、ある時から雲行きが怪しくなった。
クラリエルが、二柱の樹が秘めし想いを感じ取ってしまったのだ。
「あなたたち・・・何故、自分を責めているのですか・・・?」
((・・・!!))
「なっ・・・それは、あなたたちの責任ではありません!」
二柱の樹が伝えたのは、母を支えてあげられなかったことへの謝意。
それと、何処までも深い自責の念。
クラリエルは面食らいつつ、二柱の樹に責任が無いことを示した。
しかし、ことはそう簡単なことではないのだ。
母が苦しんでいる間、声を掛けることすら出来なかった無力感。
長い間二柱の樹を苛んできたこの想いは、ちょっとやそっとでは消えないのだ。
「私は気にしてなどいません!ですから、もう自分を責めないでください!」
((・・・・・・。))
「どうして・・・そんなに強情なのですか・・・。
あなたたちが苦しんでも、誰も喜びはしない・・・っ!?」
そこでクラリエルは気づいた。
これはまるで、自分と鏡写しなのではないか、と。
自責の念から自分を過剰に責め続け、誰も幸せにしない行動をとり続ける。
贖罪の意味はあっても、守るべき愛しき者たちを悲しませる、本末転倒な行為。
自分のやってきたことは、今目の前で行われていることと何が違うというのか。
愛しき子たちを苛烈な自責へ追い込んでいるのは、どこの誰が原因なのか。
自分が自分を責め続けているから、これほど悲しませているのではないか。
(私、私は・・・一体何をしていたのですかっ・・・!?どうしてこの子たちを、こんなにまで追い詰めているのですかっ!!)
ようやく己の愚かさに気づき、呆然とするクラリエル。
今まで自分は世界の為に働き、この身を犠牲にしてきた。
それらは全て、愛しき眷属たちへの贖罪と助けのため。
ではどうして、最も自分に近しい眷属を、ここまで追い詰めているのか。
そういった思考が頭を支配し、涙が溢れた。
罪は罪。必ず贖罪は必要だ。
だがそれは、愛する者たちを傷つけてまで行うことではない。
誰も幸せになれない贖罪など、しない方がいいのだ。
クラリエルは長い時を掛けてようやくその事に気付き、覚悟を決めた。
自分を許し、愛する者たちに許される覚悟を。
明確な罰を己に与えないままに、世界を支え続ける覚悟を。
それは、贖罪という自己満足に浸れず、辛いことなのかもしれない。
しかしそれでも、誰も幸せになれない結末よりは何倍もマシだ。
「私はもう、これ以上自分を責めません。
ですから、あなたたちも、自分を責めないで。
お互いの罪を許し、許されましょう・・・!」
((・・・・・・!))
こうして彼女たちは、己の罪を必要以上に責めなくなった。
誰も幸せになれないままの未来は、この瞬間に、砕け散ったのだ。
時は戻って現在。
「まだ、完全に自分を許すことは出来ません。
ですが・・・もう、同じ過ちは・・・犯しません。」
「そっか・・・。僕も苦労した甲斐があったというものだね・・・。」
クロトはクラリエルに恩返しをし、世界樹や地底樹との誓いも果たした。
俗にいう、ハッピーエンド、というやつである。
「さて。それじゃあ・・・遊びにいこっか。」
「え・・・遊びに行く、とは・・・?」
涙を止めてポカンとするクラリエル。
そんな彼女に、クロトは笑顔でこう言った。
「丁度感謝祭のクライマックスなんだし、地上の視察という名目で、参加しない?」
「えっ?ですがそれは・・・問題があり過ぎると思われますが・・・。」
「大丈夫。変装用の神器は作ってあるから、バレないバレない。」
「そういう問題なのでございましょうか・・・?」
そもそも人の手で神器をつくること自体おかしい話だが、そこはスルーらしい。
クラリエルがクロトの異常さに慣れたとも言える。
「さ、みんなで一緒に変装して、あちこち回ってみよう。
僕も末端までは把握していないから、結構楽しみにしていたんだよね・・・!」
そうして、クラリエルはクロトやアクアたちに連れられて、歩き始めた。
それは、ただの一歩であり、新たな世界が始まる一歩だったのかもしれない。
「あ、変装衣装は神界でクラリスが着ていた服でいいかな?」
「それだけは勘弁してくださいませっ!!」
<私もそれだけは嫌でございますっ、クロト様っ!>
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6,340
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。