異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

愚かさ自覚せし再会の時

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 クラリエルはクロトに連れられて路を通り、地上へ降りてきた。


「少し時間はあるから、ギリギリまで話をするといいよ。」

「そうさせて頂きます。・・・久しぶりですね、ユグドラシル、グランディア。」

((・・・!!))


 クラリエルは二本の樹へ再会の挨拶をし、その身を抱き締めた。

 かれこれ、創世以来会っていないに等しいのだから、感動も一際なのだろう。

 そのような機会が巡ってきたことに感謝しつつ、積りに積もった話をしていく。


 初めは他愛も無い話だったのだが、ある時から雲行きが怪しくなった。

 クラリエルが、二柱の樹が秘めし想いを感じ取ってしまったのだ。


「あなたたち・・・何故、自分を責めているのですか・・・?」

((・・・!!))

「なっ・・・それは、あなたたちの責任ではありません!」


 二柱の樹が伝えたのは、母を支えてあげられなかったことへの謝意。

 それと、何処までも深い自責の念。


 クラリエルは面食らいつつ、二柱の樹に責任が無いことを示した。

 しかし、ことはそう簡単なことではないのだ。


 母が苦しんでいる間、声を掛けることすら出来なかった無力感。

 長い間二柱の樹を苛んできたこの想いは、ちょっとやそっとでは消えないのだ。


「私は気にしてなどいません!ですから、もう自分を責めないでください!」

((・・・・・・。))

「どうして・・・そんなに強情なのですか・・・。
 あなたたちが苦しんでも、誰も喜びはしない・・・っ!?」
 

 そこでクラリエルは気づいた。

 これはまるで、自分と鏡写しなのではないか、と。


 自責の念から自分を過剰に責め続け、誰も幸せにしない行動をとり続ける。

 贖罪の意味はあっても、守るべき愛しき者たちを悲しませる、本末転倒な行為。


 自分のやってきたことは、今目の前で行われていることと何が違うというのか。

 愛しき子たちを苛烈な自責へ追い込んでいるのは、どこの誰が原因なのか。

 自分が自分を責め続けているから、これほど悲しませているのではないか。


(私、私は・・・一体何をしていたのですかっ・・・!?どうしてこの子たちを、こんなにまで追い詰めているのですかっ!!)


 ようやく己の愚かさに気づき、呆然とするクラリエル。


 今まで自分は世界の為に働き、この身を犠牲にしてきた。

 それらは全て、愛しき眷属たちへの贖罪と助けのため。


 ではどうして、最も自分に近しい眷属を、ここまで追い詰めているのか。

 そういった思考が頭を支配し、涙が溢れた。


 罪は罪。必ず贖罪は必要だ。

 だがそれは、愛する者たちを傷つけてまで行うことではない。

 誰も幸せになれない贖罪など、しない方がいいのだ。


 クラリエルは長い時を掛けてようやくその事に気付き、覚悟を決めた。

 自分を許し、愛する者たちに許される覚悟を。

 明確な罰を己に与えないままに、世界を支え続ける覚悟を。


 それは、贖罪という自己満足に浸れず、辛いことなのかもしれない。

 しかしそれでも、誰も幸せになれない結末よりは何倍もマシだ。


「私はもう、これ以上自分を責めません。
 ですから、あなたたちも、自分を責めないで。
 お互いの罪を許し、許されましょう・・・!」

((・・・・・・!))


 こうして彼女たちは、己の罪を必要以上に責めなくなった。

 誰も幸せになれないままの未来は、この瞬間に、砕け散ったのだ。








 時は戻って現在。


「まだ、完全に自分を許すことは出来ません。
 ですが・・・もう、同じ過ちは・・・犯しません。」

「そっか・・・。僕も苦労した甲斐があったというものだね・・・。」


 クロトはクラリエルに恩返しをし、世界樹や地底樹との誓いも果たした。

 俗にいう、ハッピーエンド、というやつである。


「さて。それじゃあ・・・遊びにいこっか。」

「え・・・遊びに行く、とは・・・?」


 涙を止めてポカンとするクラリエル。

 そんな彼女に、クロトは笑顔でこう言った。


「丁度感謝祭のクライマックスなんだし、地上の視察という名目で、参加しない?」

「えっ?ですがそれは・・・問題があり過ぎると思われますが・・・。」

「大丈夫。変装用の神器は作ってあるから、バレないバレない。」

「そういう問題なのでございましょうか・・・?」


 そもそも人の手で神器をつくること自体おかしい話だが、そこはスルーらしい。

 クラリエルがクロトの異常さに慣れたとも言える。


「さ、みんなで一緒に変装して、あちこち回ってみよう。
 僕も末端までは把握していないから、結構楽しみにしていたんだよね・・・!」


 そうして、クラリエルはクロトやアクアたちに連れられて、歩き始めた。

 それは、ただの一歩であり、新たな世界が始まる一歩だったのかもしれない。






「あ、変装衣装は神界でクラリスが着ていた服でいいかな?」

「それだけは勘弁してくださいませっ!!」

<私もそれだけは嫌でございますっ、クロト様っ!>


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