異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

クラリアセレスの羞恥

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「自分自身の、ため・・・?」

「そうだよ?あ、もしかしてクラリス、クラリスの為だと思ってたの?」

「っ!?違います!決してそのようなことは考えていませんっ!!」


 創世神クラリアセレスは図星を突かれて動揺を露わにした。


(私は、どうしてあんな風に思い上がっていたのでしょう・・・!恥ずかしい!!)


 ハッキリ言って、赤面ものの、途轍もなく恥ずかしい勘違いだ。

 恋人でもない男が自分の為に世界を束ねた、などとは。


 更に言うとクラリスは、プロポ―スでもされるのでは?と思っていた。

 途中からは、自分のために壮大な計画を練って告白に来たと思い込んでいたのだ。

 もう恥ずかしいなんてものではないだろう。


(ああああああっ!?私は何てことをっ!!そんな自意識過剰なッッ!!)


 声にこそ出さないが、手で顔を隠してその場に座り込んでしまった。

 これだけで済んでいるのは流石とさえ言える。

 普通の人間なら消えてなくなりたいレベルの事案だったのだから。


 だが、クラリスが勘違いしたのは、クロトも悪かったのだ。

 以前神界に来たときは、口説いているとしか思えないことを何度も言った。

 そして今回、彼女を許すためだけに、これだけの準備をして神界を訪れた。

 これでは勘違いしてしまうのもやむを得ない、と言えなくもない。


 ・・・それでも、思い込みの激しさを完全には否定できないかもしれないが。


 蹲って、真っ赤になった顔を手で覆っているクラリスに、クロトが声を掛ける。


「その恰好でその体勢になられると、際どいのを通り越しているんだけど?」

「放っておいてくださいっ!?」


 座り込んだクラリスは、クロトでさえ目に毒だと思えるくらいだ。

 その程度には凄まじい色気を発しており、目が引き付けられる状態である。

 赤い顔で涙目なのがまた、雄としての本能を刺激させられる。

 元が最高のプロポーションなのだから、その破壊力は推して知るべし。


「・・・マリア、少し頬が赤いよ?」

「わざわざこちらに矛先を向けないでくださいましっ!」


 同じ女性で、クロトにベタ惚れのマリアでもこうなってしまうのだ。

 何と恐ろしい色気なのだろうか。


「大体これに顔色一つ変えないクロトはおかしいですわ!本当に男ですの!?」

「そんなこと言われてもね・・・見た目ほど平気では無いよ、多分。」

「だったらせめて顔に出したらどうなんですの・・・?」

「・・・何か、浮気を推奨されているような言い方だね?」

「断じて違いますわっ!」


 冷静さを欠かしてヒートアップしたマリア。

 自分ばかり反応してしまったのが余程嫌なようだ。

 また、クラリスに見惚れたにも関わらず嫉妬さえしてくれないのも不満だった。


 確かに、普通の男であれば嫉妬して、それを表に出すべき状況かもしれない。

 自分だけにベタ惚れだった恋人が、他の人に興味を持ったのと同じなのだから。

 もしかしたら、寝取られたのにも近い感情を抱く者も居るかもしれない。


 だがクロトは、内面は不明だが、全く嫉妬の類を表に出してくれない。

 今更愛されてることは疑いはしないが、それとこれとは別問題。

 ついつい不満に思ってしまっても責められまい。


 クロトは大体の心情を察して、思ったことを正直に述べる。


「マリアって本当に可愛いよね。」

「何なんですの突然!って、いきなり抱き締めないでくださいましっ!」

「・・・・・・。」

「聞いてますの!?」


 クロトにギュッと抱き締められ、ポカン、ポカン、と叩くくらいしかできない。

 満更でもなく嬉しそうなのはいつものことか。


 座り込んでも絵になるクラリスは悶えており、残りの二人は抱き合っている。

 カオスになりかけた空間に終止符を打ったのは、新たに神界を訪れた人物。


「クロトさん、お待たせいたし、まし、た・・・何があったのでしょうか?」


 神界を訪れたアクアは、その場の状況に綺麗な顔を引き攣らせた。

 それと同時にクロトはマリアを解放し、クラリスに向き直る。


「クラリス、そろそろ立ち直ってくれないと痴女呼ばわり固定で。」

「何故ですかっ!」

「いや、そんな体勢を続けられたら、冗談抜きで痴女だからね?」

「・・・・・・。」


 言われてみればその通りだと思い、どうにか羞恥を脇に置くことに成功した。

 なお、決して立ち直ったという訳ではない。


「あの、クラリスさん。ここまでの様子は、地上に公開されていますよ・・・?」

「・・・・・・え?」

「ボタン・・・端末を基点にして映像を記録し、リアルタイムで映像が・・・。」


 アクアの言う通り、神界での様子は映像で公開中だ。

 現在は二つの映像があり、片方は世界樹の根元、もう片方が神界である。


 つまり、クラリスの畏怖を抱かせる覚悟や際どいなどというレベルでない姿。

 どれもこれも眷属たる人々たちに見られて聞かれていたということで・・・。


「・・・・・・いやぁぁぁぁああっ!?」


 クラリスは蹲るという選択肢も封じられ、悲鳴を上げるしかなかったのだった。

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